中川晃教の持つ神秘的な魅力と春琴抄の世界がどう交わるのか ミュージカル『空白の響き』Blanked Soundの稽古場レポートが公開
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
2026年7月5日(日)~7月12日(日)KAAT 神奈川芸術劇場大スタジオ、7月16日(木)~7月26日(日)東京芸術劇場シアターウエストにて上演される、ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound。この度、稽古場レポートが公開された。
本作は実力派キャストとともに届ける、全編オリジナル楽曲によるミュージカル作品。谷崎潤一郎『春琴抄』の佐助と春琴、19世紀アメリカの孤高の詩人エミリー・ディキンソン、そしてクメール・ルージュの恐怖の中で恋人への手紙を書き続けたカンボジアの女性フート・ボパナ。時代も国も異なる三つの物語が、ひとりのナビゲーターの手によって紡ぎ合わされる。
稽古場レポート
中川晃教の持つ神秘的な魅力と春琴抄の世界がどう交わるのか。実力派キャストとともに届ける、気高く崇高で美しい、全編オリジナル楽曲によるミュージカル作品がまもなく開幕となる。
六月某日、ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound の稽古場を訪れた。
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
谷崎潤一郎『春琴抄』に描かれる佐助と春琴、十九世紀アメリカの孤高の詩人エミリー・ディキンソン、そしてクメール・ルージュの恐怖のなかで恋人へ手紙を綴り続けたカンボジアの女性フート・ボパナ——。時代も国も異なる三つの物語が交錯し、やがてひとつの音楽へと結ばれていく。発表されず、改竄され、あるいは握りつぶされた創作。それでも創ることをやめなかった人々。世中に確かに存在する「誰にも聞かれなかった音楽、誰にも聞かれなかった言葉」に光を当て、創作という行為そのものの尊厳を問いかける、壮大な作品である。KAAT大スタジオとシアターウエスト、二つの空間での上演という構想だけでも驚かされるが、公開されている公演情報の端々からも、本作が一筋縄ではいかない実験性をはらんだ国際的なプロジェクトであることが伝わってくる。三つの物語が、国も言語も時代も飛び越えて一本の線上に並べられたとき、それぞれの「響き」はどうなるのか——その問いを、稽古場で目の当たりにすることになった。
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
まず公開されたのは、『春琴抄』のエピソードのなかから、春琴をめぐって春琴と利太郎が対峙する場面 “Ritaro’s Lesson”。中川晃教演じる佐助と、原作やこれまで上演されてきた利太郎像とは異なるアプローチで挑む島太星の利太郎が、火花を散らす。Musical『DEVIL』などで知られる Woody Pakの冴え渡るロックチューンに乗せて、春琴を巡る対立が鮮烈に描き出されていく。中川と島の——よい意味での——厚い信頼関係が、まったく異なる環境に立つ二人の対峙としてこの先どこまで高まっていくのか、実に楽しみなナンバーだ。中川晃教自身が手がけた歌詞には、二人の境遇と思いが幾重にも積み重なり、対立のリアリティと、互いに切磋琢磨し合う熱までもが滲む。文句なしのビッグナンバーである。
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
続いて披露されたのは “Hidden Feelings”。本編は一幕ものとして上演されるが、仮に二幕構成であったなら一幕ラストに匹敵するであろう、本作屈指の名場面となるにちがいないシーンだ。すべての物語がこの一点で交錯し、同じメロディラインのなかで、作品前半と後半の「話法」が静かに移り変わっていく。巧みで、幻想的な構成だ。ここでもまた、中川晃教の詞の奥深さと、その歌声が際立つ。橘未佐子演じるボパナと、剣幸演じるエミリーの無言のすれ違い。そこから立ち上がるエミリー独自の世界観の、その広がりと尊さ。春琴の儚さや孤独さと、真風涼帆が演じるある役の包容力と美しさ。そして佐助に重大な影響を及ぼす役を演じる丘山晴己の、雄弁な身体表現。それらがすべて溶け合って、舞台はえもいわれぬ幻想へと立ち上がっていった。
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
本作には、エミリー・ディキンソンが実際に書き残した詩も登場する。彼女の創造力の豊かさが結晶した “Song Battle” は、愛らしいマーチのような楽曲に乗せて、エミリーの意志の強さと、果てしなく広がる思考・想像力を描き出す。松井工らが実力派が演じるエミリーに教えを伝える人々に対し、剣幸のエミリーはとにかく愛くるしく、詩の世界を心から愛するその素直さが、まっすぐに客席へ伝わってくる。
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
ミュージカル『空白の響き』Blanked Sound 稽古場より 撮影:ツノダユウタ
時代を超え、国境を越え、これまで聞かれることのなかった声に、ひたすら耳を澄ます——。『空白の響き』という作品がいま確かに立ち上がりつつある、その瞬間に立ち会える幸福を噛みしめながら、稽古場を後にした。
取材・文:高橋つばさ
公演情報
Book & lyrics:Musical Blanked Sound Project
Lyrics:Woody Pak/中川晃教
Muisic:Woody Pak
Assistant to Composer & Orchestrator:Johnny (Tzu-Yang) Ho
演出:タカイアキフミ
中川晃教
井澤美遥・鞆 琉那(Wキャスト)
真風涼帆
剣 幸
【日程・会場】
2026年7月5日(日)~7月12日(日)KAAT 神奈川芸術劇場大スタジオ
2026年7月16日(木)~7月26日(日)東京芸術劇場シアターウエスト
終演後 中川晃教・島 太星・丘山晴己・松井 工 アフタートーク
5日(日)14:00 終演後スペシャルトーク
6日(月)19:00 カーテンコール特典有
7日(火)14:00 カーテンコール特典有
9日(木)14:00 剣 幸・真風涼帆・橘 未佐子 アフタートーク
10日(金)14:00 中川晃教・島 太星・丘山晴己・松井 工 アフタートーク
16日(木)19:00 カーテンコール特典有
18日(土)18:00 カーテンコール特典有
19日(日)19:00 中川晃教・島 太星・丘山晴己・松井 工 アフタートーク
21日(火)14:00 剣 幸・真風涼帆・橘 未佐子・井澤美遥・鞆 琉那 アフタートーク
23日(木)19:00 中川晃教・島 太星・丘山晴己・松井 工 アフタートーク
※終演後スペシャルトークおよびカーテンコール特典の内容につきましては、後日発表いたします
【
初日・千穐楽・土日祝 15,800円(税込) 平日 14,800円(税込)
シアターウエストプレビュー公演 12,800円(税込)
公式HP:https://shunkinproject.com
公式X:@BlankedSound_mu
問い合わせ:info@shunkinproject.com
主催:ミュージカル『空白の響き』製作委員会