バンドを続ける意味を問うたシンガーズハイと9mmの対バンライブSinger’s High 「Battle Frontier 2026」川崎公演をレポート
シンガーズハイ
Singer’s High 「Battle Frontier tour 2026」2026.7.1 CLUB CITTA’
シンガーズハイの対バン企画「Battle Frontier tour 2026」。6月は大阪で秋山黄色、2本目の川崎公演は9mm Parabellum Bullet、3本目の名古屋はフレデリックを迎え濃厚なバトルが終了したが、ここではツアー2本目となる川崎公演をレポートする。ちなみに昨年11月のZepp Haneda公演で今年11月24日開催のバンド初の日本武道館公演を発表し、それを一つ大きな目標として邁進中のシンガーズハイ。その道程の中に今回の対バンツアー、そして8月5日に最新EP『PLAYBACK』をリリースし、それに伴うライブハウスツアー、さらに夏フェスを並走している最中だ。まさに最初のキャリアハイの真っ只中でバンドの決定的な個性を証明して行く1年を疾走中なのだ。
先攻の9mm Parabellum Bullet。3人体制になって以降、ギタリストの滝 善充がドラムを担当するという、およそ他のバンド、いや、滝以外では考えられないチャレンジが進行中なのだが、そもそもこの日は9mm初見のシンガーズハイ・ファンが大半を占める。だが、内山ショート(Vo/Gt)をはじめ、メンバーが9mmからの影響を語ることも多く(内山は「薄っぺらい愛を込めて」で9mmの「The Revolutionary」へのオマージュと思しき歌詞も書いている)、両者待望の顔合わせだ。歓待を受けて登場した9mmは「Baby, Please Burn Out」でスタート。初っ端から予想不能なアクションと共に図太いサウンドを放つ中村和彦(Ba)のプレイに驚く初見のオーディエンスもいたようだが、同期も用いながら3ピースで屈指の名曲群「The Revolutionary」「Black Market Blues」を連発すると怒濤のリアクションが起きる。菅原卓郎(Vo/Gt)が内山が9mmのファンクラブ会員であること、自分自身にもそうした存在がいることを話し、この日9mmを初めて見るオーディエンスの多さにメンバー全員表情を綻ばせてもいた。中盤には新曲「レーゾン・デートル」、内山のリクエストだという「The World」も盛り込む。「バンドを続けているとファンやスタッフはもちろん、自分たちが作った曲にも救われる」と菅原。近い時期にメンバー脱退を経験した両者。それでも継続する必然は楽曲そのものにも潜んでいることが理解できる場面だった。短いセットながら、終盤は「ハートに火をつけて」を経て、バンドキッズ垂涎の最強リフを持つ「Punishment」でフィニッシュ。ギター同様、自由度の塊のような滝のドラミングも笑ってしまうほど痛快で、想像の斜め上を行く9mm面目躍如のステージを完遂した。
シンガーズハイ
自然体で怪物級のライブを見せたキャリア20年選手の後攻をシンガーズハイがどう切り崩して行くのか、興味津々で待っていると、普段通り勢いよく4人が順番に登場し、お立ち台からアピール。ファンもステージに詰めかけると、内山が「クラップ・ユア・ハンズ!」と煽り、ドラムのりゅーいちのもとに内山、ほりたいが(Gt)、サポートのきょーへい(Ba)が集結して初っ端の「ノールス」からテンションは最高潮。楽曲と同期するように明転と暗転を繰り返す照明もドラマチック。内山のハイトーンがビリビリ響き、ほりのワウを効かせたソロもキャッチーだ。畳み掛けるようにクランチなツインギターのリフがグルーヴを生む「すべて」、内山がハンドマイクに持ち換え、ブルースハープをブッ放つ「サーセン」のイントロに大きな歓声が上がる。ロックンロールのふてぶてしさとハードロックの分厚い音像の混在はシンガーズハイならではのライブ体験だろう。“らーらったらーら”のシンガロングをフロアに託した内山はそのデカさに「最高だ!よくできました、サーセン!」と声を上げた。
内山ショート (Gt/Vo)
内山はシンガーズハイのロゴを指して「これを背にして9mmが歌ってた、ヤバいって!」と感情を溢れ出させる。ちなみに彼はサブスク厳選派らしく「Netflix、Amazon Prime、そして9mm MOBILE」だけだと強調。ギター&ボーカルのロールモデルを探す中で菅原卓郎に出会い、菅原の機材を真似しているのだという。そんな憧れのバンドと対バンした内山の心に残ったのは初見のオーディエンスを見る彼らの美しい目だと言い、自分もそんな目でこの日のライブをやろうと思うと話した。そこからの9mm「The Revolutionary」のオマージュも含まれる(と思しき)「薄っぺらい愛を込めて」はシンガーズハイが9mmから受け取ったものが必ずしも曲調やサウンドだけじゃないことを証明する温かさに満ちていた。
ほりたいが (Gt/Cho)
りゅーいち (Dr)
そこからパンキッシュなショートチューン「愛の屍」に突入すると、内山は菅原の煽り文句である「行けるかー!?」を連発し始め、3・3・7拍子っぽい拍で締めると、怒濤のガレージパンク「パンザマスト」に突入。爆走する8ビートと激しく明滅するストロボに煽られてフロアではダイバーが続出する。ライブのモードが1バンドと思えないほど刻々と変化するのはシンガーズハイの特徴でもあるが、ここの流れで明らかにタフなライブキッズモードに突入。内山が「ケガすんなよ!踊っていけよ!」と声をかける姿も頼もしい。さらにタイトな四つ打ちのキックが鳴らされると、再びメンバーがドラムの元に集結し、16ビートがフロアを弾ませる「B.O.LIE」へ。トーキングボーカル調のAメロを歌いながら正確なカッティングを決める内山にギター&ボーカルとしての菅原の影響を見る。しかもほりのレスポールならではのファットで圧のあるリフとギターソロはシンガーズハイならではの個性だろう。ハードロック的なギターソロのカタルシスは彼ら世代では抜きん出た見せ場だ。ハードロックの厚みは続く「延長戦」にも接続。イントロでの全ての楽器が重く速く爆走する迫力に突き動かされ、さらにヒートアップするフロア。まだまだ終われない悔しさを溜め込むサビ前からその先にダイブするようなサビのリリックとのシンクロが凄まじい。
熱し切ったフロアを一望して内山が「僕らは全ての要素を持ってるバンドなんでフロアが混沌としてるんですよ」と、9mmのファンに向けて説明すると同時に誇らしげだ。一人ひとり異なる人間が集まってできるライブという空間、そしてバンドという共同体のロマンと難しさを話しながらもこの日の彼は幸せそうに見えた。彼にとっての9mmがヒーローであるように、誰かにとってシンガーズハイがヒーローであれればいい、それは大袈裟な存在じゃなく、バンドだったり諦めたくないことを再認識するきっかけなんだと言いたそうだった。
シンガーズハイ
そこから、この日最大の見せ場になったのがツアー初披露の新曲。クイーンの「We Will Rock You」にも似たリズムのアンセミックなスケール感のミディアムチューンで、やる気を鼓舞する新しいシンガーズハイのメルクマールになりそうな1曲だ。内山のシャウトやほりの松本孝弘直系なハードでスキルフルなリフとフレージングは彼らの同世代にはない新鮮さで、改めてリリックも知るタイミングでより、今のバンドにとっての意味を知ることになるだろう。加えて武道館ライブでもきっと大事な場面で鳴らされる予感がした。そして「何回もやるけど、もう一回いいですか?『行けるか!行けるか!行けるか!』」と、菅原直系の煽りを投下する内山。分厚いリフがホラーなイントロからスリリングにテンポチェンジしていく「ニタリ」で持てるエネルギーを全て爆発させ、本編ラストはバンド界隈のみならず生ぬるいやつらを断罪しまくる「Kid」を投下。しかし、この場はそんな断罪や皮肉が向けられるバンドはいない。ファンもそんな半端なオーディエンスじゃないとばかりに本気で食い下がる。自分たちも含めて、次世代のロックバンドの現場はここにあると言わんばかりの熱量だったのだ。
アンコールではほりが、本編で内山が9mmへの愛をさんざん語っていたが自分もいかに9mmを好きかを熱弁。軽音部員なら誰しも「Punishment」のイントロのコピーをしたはずだ、と。バンドを続けて行くことの真意を先輩バンドから受け取ることも対バンツアーの大きな意義だと実感しながら、最後に「STRAIGHT FLUSH」をぶちかましたシンガーズハイ。「これからも日本のどこかで、そして11月、武道館で会いましょう」と内山は再会の約束を残してステージを後にした。バンドにとって大きな物語を描くこの半年、現在のバンドシーンにとっても見逃せない物語の予感に満ちている。
取材・文=石角友香
シンガーズハイ / 9mm Parabellum Bullet
ツアー情報
9月8日(火)神奈川 KT Zepp Yokohama
9月15日(火)北海道 札幌ぺニーレーン 24
9月18日(金)石川 金沢EIGHT HALL
9月26日(土)香川 高松festhalle
9月27日(日)広島 HIROSHIMA CLUB QUATTRO
10月1日(木)大阪 Zepp Osaka Bayside
10月9日(金)宮城 仙台Rensa
10月16日(金)福岡 Zepp Fukuoka
10月18日(日)愛知 Zepp Nagoya
7月14日(火)21:00~7月27日(月)23:59