約4,000㎞離れた俳優と「真横にいる」不思議な感覚に、NTTの最新技術が生み出した近未来ファンミーティングが日タイで初開催

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2026.8.31
体験の様子

体験の様子

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ホロファンミート バンコク⇄大阪 メディア体験会 2026.07.17(FRI)LINKSPARK OSAKA

7月18日(土)に大阪のLINKSPARK OSAKAにて、タイのアーティストによるホログラムを活用したファンミーティング『ホロファンミート バンコク⇄大阪』が開催された。約4,000km離れたバンコク某所から、俳優のハーツ・チンダナイ(Hearth Chindanai)とアーティストのニッキー・ジェイコップ(Nicky Jakob)がそれぞれオンラインで参加。ファンが3分トークと2ショットの写真・動画撮影を自由に楽しめるというものだ。

参加費は無料という太っ腹な企画だが、一番の驚きは「彼らがまるで真横にいるような感覚で会話ができる」ということ。……と言われてもピンとこなかったSPICE編集部は、ハーツとのファンミーティングを一足先に体験してきた。

●絵画の技法から着想?錯覚?「真横にいる感覚」を生み出すNTTの技術

同イベントに活用されているXR技術は、NTT株式会社 人間情報研究所が2022年から手掛けてきたテレプレゼンス表現技術「裸眼XR相席対話システム」だ。これまで「実物と見分けがつかないような立体映像ホログラム」を体験するにはVRゴーグルなどが必要だったが、このXRを用いれば、鏡の前の椅子に座るだけで、遠くにいるキャラクターと同一空間にいるような近未来の体験が可能になる。はじめは初音ミクやVTuberなどバーチャルキャラクターとの相席対話の場として提供されてきたが、3次元の人間へと幅を広げることとなった。

開発のきっかけについて、担当で研究開発者の人間情報研究所の小合健太氏は、奥行きの再現を挙げる。「過去にも、フィットネスやファッション業界向けに映像表示可能な高機能な鏡サイネージにインストラクターや試着服の映像を重ねて映すという表示技術はありましたが、鏡の表面に張り付いているように見えてしまい、鏡の中に映る自分とは奥行きが合っていませんでした。それに対して、映像側も正しい奥行きで表示させれば、鏡の中で奥行き距離が一致し、まるで真横にいるように見えるんじゃないかという気付きがあったんです」という。

とはいえ、実際にやってみると、「たしかに真横にいるけれど、鏡の中に映る自分は3次元の立体なのに、等身大看板のような、のっぺりした平面的な2次元人間が横にいて、人がいるようには見えない」との新たな課題が生まれたそうだ。これに対し、決め手となったのが立体感を強める照明とポーズ、そして対人距離(パーソナルスペース)のコントロールだという。

「人類が描いた初期の絵は平面的でしたが、16世紀のルネサンス期以降、光を斜めから当て、光と影で絵を立体的に見せる新しい表現技法が生まれました。このとき、効果的に影を付けるため、ポーズや光の当て方も工夫されるようになりました。たとえば「モナ・リザ」のように、体を少しひねって光を当てることで立体的にみせる表現です。今回も、真正面からカメラ撮影せず、体を少しひねって光を斜めから当て、やや斜めから撮影することで、トータルで立体的な人物映像にみせています。

ただ、それらの照明と構図の工夫だけの場合、すぐ近くから肉眼で見た場合、人間の左右の目の3次元知覚(両眼視差といいます)は敏感なため、それが「ディスプレイ上の2次元の人物の映像」、か「(3次元の凸凹を持つ)実際の人」かを、はっきり見分けられます。「そこに人がいる」ように感じさせるためには、映像か人かを見分けがつかないように映す必要があるのです。最初にディスプレイの枠が見えないよう工夫した上で、両目から約3m以上離れると3次元知覚が急激に弱くなることを利用して、映像と両目の視聴距離を約3mと十分長めに取ったところ、映像か人か見分けがつかなくなりました。

一方で、3mは、コミュニケーションの対人距離として遠すぎました。現実世界で、人と人とが会うときの、物理的・心理的な距離感を対人距離(パーソナルスペース)と言いますが、親密な対人距離は1.2m以下とされています。対面で会話する際に、 3mも離れていると、相手に距離を取られている、自分と親密でない、と人々は感じてしまうのです。そこで我々は、ハーフミラーを使った認知トリックをつけ加えました。体験者は鏡の中で、ハイタッチしたり、指を合わせたり、ペアハートを作る共有体験を通じて、次第に鏡の中の自分に意識がダイブし、鏡の中の自分を中心に相手との対人距離を錯覚し始めることがわかりました。実際は3mも映像と離れているのに、体感的な対人距離は、映像と、鏡の中に映る自分との見た目距離ですから、約0~60cmと錯覚するのです。最初に説明した照明と構図の工夫に加え、これら対人距離を錯覚させる演出により、結果的に、映像ではなく、「そこに人がいる」、さらに「手の触れそうな、ドキドキする超近距離にいる」を両立できるミラクルなコミュニケーション体験が実現できました」と語る。なんだか難しいが、次々に出てくる様々な課題を、人間の視覚特性や、空間認知に注目しつつ、あきらめずに苦労して解決し、やっとこの仕組みが実現できたそうだ。

こうした緻密な調整を経て、2026年6月にはドラマ『スモークブルーの雨のち晴れ』(読売テレビ)主演の武田航平と渋谷謙人、FODの配信ドラマ『コントラスト』主演の井内悠陽と阿久根温世ら、日本にいる俳優陣と台湾のファンをつなぐことに成功。そして7月、満を持してタイにいるアーティストと日本のファンを繋ぐプロジェクトへと至った。

●約4,000km離れた相手と、鏡越しに対話する不思議な感覚

いざハーツとのファンミーティング体験へ。ハーツは自身が俳優・アーティストとして活躍する傍ら、2023年からタレント事務所兼ドラマ制作会社の「Studio On Fire」の共同CEOも務めている。事務所の名前には「仕事というのは情熱や楽しさ、一生懸命さが大切」というハーツの強い思いが込められているそうだ。Studio On Fireが制作に関わり、自身も主演を務めるドラマ『ONE YEAR』(2026)はYouTubeで合計146万回再生を突破。5月に開催された『タイフェスティバル』のステージにもハーツと所属アーティストであるニッキーが出演し、日本でもじわじわとファンを増やしている注目の俳優だ。

会場の様子

会場の様子

会場に到着すると、『ONE YEAR』やハーツの過去のファンミーティングの様子が流れていた。参加者の心拍数を少し落ち着けてくれるような空間が作られている。その部屋の一角にファンミーティングのブースが設けられている。中には大きな液晶パネルとソファーなどが置かれており、喫茶店で待ち合わせているような雰囲気を味わえる。

ハーツ・チンダナイ

ハーツ・チンダナイ

席につくと、画面左側にハーツの等身大ホログラムが登場し、参加者と横並びで座っているかのような映像が映し出される。まずはハーツに体験の感想を聞くと「このようなテクノロジーを使ってのファンミーティングは初めてなので最初は困惑することもありますが、楽しんでいきたいです」という。それもそのはず、頭では隣にいないとわかっているのに、脳がこれを「2次元の映像」として認識できないほどリアルに存在を感じるのだ。お辞儀をしても平面ではなく奥行きを感じ、まるで隣にいる人と鏡越しで話しているような感覚に陥っていた。

立体感以外にももうひとつ、通常のビデオコールとの違いに気づく。普段は手持ちのパソコンやスマートフォンから参加するため、画面が固まってしまったり、音声が途切れてしまったりと通信不良に悩まされることがしばしば。しかし、この『ホロファンミート』であればそんな心配も無用で、クリアに推しの姿を観ることができ、音声のタイムラグもほとんどないため、どちらが話し出すか「お見合い」する時間もない。ストレスフリーで自分だけの時間を楽しむことができるというわけだ。さらに、そもそも画面の枠がないので、画面の中の相手、という感覚もなく、新鮮だ。

ちなみに、服装は何でもOKだが、ホログラムは光で投影するため、全体が黒い服は表現できず、透けてしまうためNGだ。試しにカラフルな服を着てみたが、見づらい色は特にないように思えた。ただ先述の通り、参加者にもしっかりと照明が当たるためメイクは少し濃いめがオススメ。

「ポーズはピースが好き」と話すハーツ

「ポーズはピースが好き」と話すハーツ

さて会話を楽しんだあとは、記念撮影をお忘れなく。ふたりでハートを作ってみたり、某漫画のように合体技をしてみたりポーズは自由。ハーツは「ビクトリーのマークですし、タイでは頑張って(スース―)、ファイトと応援するときにこのポーズをするので好きです」とピースを見せてくれた。さらに「この技術がより一層ファンとの距離を近づけてくれる」と続ける。「実際に会うとなったらファンの方の肩を組むなど接触はできませんが、バーチャルだとより近くに存在を感じることができるのも素敵ですね」と翌日のファンミーティングを心待ちにしていた。

今後の『ホロファンミート』の開催は未定。しかし、ハーツが語るように物理的なスキンシップがないため互いに安全でありながら、従来の握手会やハイタッチ会以上に長くじっくりと会話を楽しめるこの体験は、これまでにない満足感をもたらしてくれるものだった。技術の進化がもたらす新たなエンターテインメントのカタチとして、今後このようなファンミーティングが広がっていくことに期待したい。

取材・文・撮影=川井美波(SPICE編集部)

イベント情報

『ホロファンミート バンコク ⇄ 大阪
with Hearth Chindanai & Nicky Jakob』
日程:7月18日(土)
場所:LINKSPARK OSAKA
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