異彩を放つ国芳一門の傑作が大集結「国芳イズム展」

レポート
アート
2016.2.27
国芳イズム―歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション

国芳イズム―歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション

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武者絵を格好良く描いたかと思えば、猫狂いのユーモラスな絵もお手の物。多彩なセンスと腕が自慢の江戸時代の浮世絵師・歌川国芳。国芳作品の個人コレクターとして世界的にも有名な洋画家・悳俊彦(いさお としひこ)氏のコレクションの中から、代表作、希少品、初公開作品を選りすぐり、悳氏自身の作品も含めた約230点を紹介する『国芳イズム―歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション』展が、2月19日(金)~4月10日(日)東京都練馬区立美術館で開催中だ。

大家の代表作から、無名絵師の傑作まで

悳コレクションは作者の有名・無名に関わらず、自身の審美眼により系統立ってコツコツと蒐集されたもの。100人以上にも及んだという国芳の門人の中には、優れた腕前を持ちながら時代の中で忘れ去られた作家も多い。そうした絵師にこそ今一度スポットを当てたいという想いで集められた作品群は、大家の代表作から他では見られない知られざる傑作まで網羅され、「国芳イズム」の真骨頂を浮かび上がらせている。

国芳イズム展会場内ポスター

国芳イズム展会場内ポスター

粋から洒落まで描き切る腕前を堪能

展覧会場は粋で格好良い武者絵、物語絵からはじまる。2~3枚続きの大画面を大胆に使った構図は、それまでの浮世絵ではあまり見られなかった国芳独自のもの。見る側を圧倒しながら、絵の中の世界へと引きずり込んでいく。

歌川国芳「相馬の古内裏」

歌川国芳「相馬の古内裏」

続く章では、一変してたくさんの人物がところ狭しと細かく描かれた群像作品が並ぶ。一人ひとりの表情や仕草を追えば、まるで映画やアニメーションのワンシーンを見ているかのよう。画面から当時の賑わいが聞こえてくる。

歌川国芳「子供遊土蔵之上棟」

歌川国芳「子供遊土蔵之上棟」

美人画や役者絵に多くの制限がかかった時代だからこそ生まれた、国芳の洒落や遊びの効いた戯画も堪能できる。影絵や落書き風の絵などさまざまな手法が見られるが、中でも擬人化された二足歩行の動物たちがわいわいと動き回る絵は特に印象的。こうした浮世絵を江戸の人々がこぞって買い求めたということだから、ゆるキャラ好きな現代の日本人としては親近感を覚えずにはいられない。

歌川国芳「流行 猫の曲手まり」

歌川国芳「流行 猫の曲手まり」

受け継がれる「国芳イズム」

多彩な国芳作品をたっぷりと鑑賞し「国芳イズム」が感じられたところで、さらに続く28名の門人たちの作品群が鮮やかに映る。躍動感ある構図が迫力満点の河鍋暁斎や、血みどろで怖ろしくも美しい役者絵の月岡芳年、端正で正統派な筆法で洋の美も取り入れた小林永濯など。国芳の画法を受け継ぎながらも、独自の世界が幕末から明治にかけて花開いていったことがわかる。

月岡芳年「膳之城裸責之図」

月岡芳年「膳之城裸責之図」

小林永濯「高瀬口大進撃図」

小林永濯「高瀬口大進撃図」

たたみ掛けるような浮世絵の世界に圧倒されたころ、悳氏自身による美しい武蔵野の四季の風景画が、ホッとひとときの休息をくれるのも本展の嬉しい点。コレクターの美に対する誠実な想いがにじみ出るような展覧会だ。

春も近づく武蔵野の地に、ぜひ足を運ばれてはいかがだろうか。

悳俊彦「晩秋むさしの」

悳俊彦「晩秋むさしの」

 
イベント情報
国芳イズム―歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション
 
会期:2016年2月19日(金曜)~4月10日(日曜)※会期中展示替えがあります。(展示替え日程:3月14日、3月28日)
休館日:月曜日(ただし、3月21日(月曜・休日)は開館、翌22日(火曜)休館)
開館時間:午前10時~午後6時 ※入館は午後5時30分まで
観覧料:一般800円、高校・大学生および65~74歳600円、中学生以下および75歳以上無料、障害者(一般)400円、障害者(高校・大学生)300円、団体(一般)600円、団体(高校・大学生)500円ぐるっとパスご利用の方300円(年齢等による割引の適用外になります)
美術館webサイト:http://www.neribun.or.jp/museum.html

 

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