welcome to THE 沼!・ 第四沼『galcid沼』<前編>
「沼」。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか。
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへ・・・ゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れることを「沼」という言葉で比喩される。底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。。
第四沼は、galcid、SPICE編集長の秤谷さんと共に、9/21(水)に国内CDリリースされた、galcid 1st full album 『hertz』について、語ってみた。
秤谷:galcid大分攻めてますね。本当に唯一無二で、この世界観はかなりぶっ飛んでます。 音源いただいてヘッドホンで聞いてたんですけど、ふわーーってしてる間に最後のトラックまであっという間に時間たっちゃってたんですよね。
齋藤:そうなんですよ。もちろんサウンドシステムで聴いていただくのが一番なんですけど、ぐるぐる回ってるんで。結構。
秤谷:そう。ぐるぐる回ってますもんね。
lena:回ってるんですよ(笑。
齋藤:中心がないんで。なんか気持ち悪い感じになっています。
秤谷:はいわかります。そもそも普通というのを何と定義するのかは置いておいてですけど、“普通”の音楽はダイナミクスのつけ方が大体一緒じゃないですか。曲に山があって、大体サビで絶頂をむかえてまとまっていく的な。
齋藤:そうですね。
秤谷:それがね、このアルバムの場合すごいミニマムの所で始まって、ミニマムの所で終わっていく感じがすごい好きなんです。
齋藤:ははは(笑)。
秤谷:何ていうんですか、こういう風に行くんだろなっていうところで、全然違う所にいく的な(笑)。
齋藤:これはね、ディレクター不在ということでできたことなんですよね。
秤谷:ああ。そうなんですね。
齋藤:やっぱり、誰かがディレクター的にいると、できないというか、ここまでやらせてもらえないから。本当に、超個人的に作らせてもらった感じなので、すごい荒削りなんですけど。でも今まで、誰もやっちゃいけないこと満載っていうか(笑)。
秤谷:ははは(笑)。やっちゃいけないこと。まあ、エゴ100%で作ったみたいなということですよね。
齋藤:うん。そうなったらどうなるかということで実験してみたんですけど。
やっぱり強者たちが反応してきますよね。
秤谷:強者(笑)。そうですよね。
齋藤:お前らよくやったな、っていう。音楽性というよりは、もう勇気を称えてくれる(笑)。大丈夫なのか?っていう。
一同:(笑)
秤谷:これやっていいのかっていう。
galcid
lena:やっちゃったな、的な(笑
齋藤:本当そうですね。この前もサマソニで来てた、アンダーワールドのカール・ハイドに呼び出されていってきたんですけど。
秤谷:インスタで写真を見させてもらいました。
齋藤:お前らやばいよって。今度一緒にやろうって言われて。。
秤谷:すごい。
齋藤:そう。宇川君もそうでしたし。
lena:あとクリス・カーターね。
齋藤:そうだね。クリス・アンド・コージーのクリスね。スロッビング・グリッスルの女の人からも連絡があってね。
lena:うん。
秤谷:本当の強者からの反応ですよね。
齋藤:強者が心配するぐらいの(笑)。
秤谷:ははは(笑)。
lena:よく見つけたよね、この音源を。
齋藤:いや、だからね、すごいよね。心配されてますけどね。
lena:やっぱりネットの恩恵を受けている感じですね。
秤谷: lenaさんもこれやりたいことだったんですか?
lena:今回ディレクターいないんで、自分たちでやったんですけれども。
結構、(齋藤と)聞いてきている音楽が近しいものがあって、世代は違うんですけど、結構同じもの聴いているんだよね。
齋藤:そうだよね。
lena:色んな影響を受けたアーティストのアルバムがたくさんあるんですけど、その中に散りばめられている要素がいっぱいこのアルバムに詰まってるんですよ。
秤谷:はいはい。
lena:カール・ハイドなんかもそうですけど、彼と私たちの同じルーツがあって、そこに皆んな共鳴してきている感じで。
齋藤:そうだね。
秤谷:うんうん。
lena:そのスロッピング・グリッスルなんかもそうだし。カールと会った時も、全然テクノの話なんかしなくて、ずっとダブの話してたんだよね。
秤谷:へえー。
lena:デニス・ボーヴェルの話しとか、コニー・プランクの話でなんか盛り上がっちゃっているっていう感じでね。
齋藤:僕たちって、家でテクノ聴かないよねっていう話になって(笑)。
lena:家でテクノとか聴くの疲れる!みたいな。(笑
齋藤:何聴くのって言ったら、ダブ、その中でもルーツダブだってカールも言ってて、僕たちも一緒だよって。
秤谷:グルーヴ生まれてる。
齋藤:そこからなんか得たもの、消化したものでテクノを作っていくという。
lena:エレクトリック・ボディ・ミュージックとか私も聴いていたし、カールは実際やっていたりしていたから。
齋藤:そうだよね。
lena:全然ここで出会うのは不思議じゃないみたいなことを彼が言ってて、納得したんですよね。
齋藤:結局、誰も聴いたことのないような新しいものを作ろうというコンセプトのもとでやるんですけど。
秤谷:はい。
齋藤:どうしても、どこかに入ってるんですよ、今までの音楽の記憶っていうのが。それがどうしても全部払拭しきれなくて、出てくるっていう。それをキャッチしてくれるんですよね、みんな。
秤谷:そうなんでしょうし、そうあるべきですよね、音楽って。
齋藤:例えば、歌ものだった場合は、やっぱりみんなメロディと歌詞に耳が行くんですけど。うちは歌が入ってないので。
lena:(笑)。
秤谷:そうですよね。
齋藤:やっぱり音一つ一つに僕らの気持ちが入っているんですね。それは同時代を過ごしてきた人にはすごく分かりやすいみたいで。僕らも何か音楽をきいて、この人が何を聴いていたのか、一発でわかるよね。
lena:うん。
galcid
齋藤:カールも、もう電子音楽にすごい飽き飽きしてたんですって。
秤谷:あ、なるほど。
齋藤:でも自分たちもやらなきゃいけないし、何かフレッシュなものが欲しいなっていう時に、僕らの音源をたまたま見つけたんだよね。多分ね。
lena:そうそう。
秤谷:えー。
齋藤:そしたら、うちのレーベルに連絡が来て、こいつらに会わせろ、つって。たまたま日本に来てたんで。
lena:それで連絡が来ましたね。
秤谷:そういう感じなんですね。もともと旧交があったというわけではなくて。
lena:ないです。ないです!
秤谷:たまたま音で繋がる縁。すごいですねそれ。
齋藤:こいつらやばすぎるってね。それは嬉しかったですよね。純粋にね。
秤谷:そうですよね。
lena:あの人もすごく、苦労人だったみたいだしね。後、私たちの使っている、モジュラー・シンセサイザー、っていうのですけど、そっちの世界っていうのもすごい深い『沼』の世界があって、そっちの世界だと私たちはすごいポップなんですよね。(第1沼のシンセ沼の記事はこちら)
秤谷:なるほど。沼の中ではポップな。
齋藤:ポップですね。リズムが入ってる。
秤谷:(笑)。なるほど。
lena:じゃあ、ポップフィールドでとか、クラブシーンで、この音楽はどうなのか?っていうと、超アンダーグラウンドじゃないですか。
秤谷:まあ、そうですよね。
lena:そんな話をしていたら、カールがすごいわかる!俺たちもそうだった!歌うかクラブかどっちかにしろ!みたいに言われてた、って。(笑
秤谷:(笑)。
lena:ずっと中途半端扱いにされてたんだ、と言ってましたね。
秤谷:へえ。
lena:だから絶対、自分を信じてやった方がいいよ、って言われて。すごい勇気づけられたんですよね。絶対このスタイルを崩すなよ、ってアドバイス頂いて。
齋藤:まあ、一緒にやろうという話してて。
秤谷:はい。
齋藤:galcidがトラックやるから歌ってよって言ったら。俺の歌?邪魔になるでしょ?俺ギター弾くから、って言われて。
齋藤:ギターの方が邪魔になるでしょ、って言ったら本人は爆笑してました(笑)。
秤谷:(笑)カール・ハイド邪魔ってすごいですね。
齋藤:とにかく、いいおじさんだったよね。
秤谷:それがすごいですよね。
齋藤:やりとりとしては、今はコンピューターがあるから、インターネットで、ファイルの交換しつつ、ちょっとトラック作っていこうって話にはなりました。
秤谷:実現したらすごいなー。
lena:彼の話ばかりでアレなんですけど、60年代ってすんごいミュージシャンシップを持った交流が盛んだったんですって。
秤谷:ミュージシャン同志の協力体制的な。
lena:例えば、こういうやり方があるんだけど、って言ったら、面白いね一緒にやろうって流れになった、って。
秤谷:なるほど、なるほど。
lena:70年代、80年代、90年代になった時には、例えばフェスに行って、こっちにビョーク、こっちにオービタルって感じの時、もう絶対に俺たちのやり方は見せない、みたいなのをビンビンに感じたらしいです。
秤谷:あーなるほど、クローズになっていったんですね。
lena:コミュニケーションっていうのが断たれちゃったんですよね。
秤谷:ほうほう。
lena:あの人いろんな人と一緒にやってるんですよね。ブライアン・イーノとやったりとか。
秤谷:はい。
lena:ミュージシャンシップってそうやって築いていくべきだし、僕達だって一緒にできるし、君たちもいろんな人とやって、シーンを盛り上げていった方がいいんじゃないか?みたいな先輩の言葉をいただきました。
秤谷:なるほどね。確かにそうですね。クローズにどんどんなっていっているような気がしますね。手の内見せないっていうか。
lena:そうなんですよね。
秤谷:やっぱ、音楽と商業が結びつきすぎちゃったので、お金にしたいから、コンペに勝ちたいから、手の内見せないみたいな。
lena:うん。
秤谷:日本の作家はそうなっちゃってるのかな。どっちかって言ったら、バンドマンとかの方がそのシップがあるんですよね。
lena:うん。
秤谷:手を組んでやろうよ、一緒にやろうよっていう、一緒にシーンを作っていこうっていう気概が昔からあるような気がしますけど。でもその話聞いて、カールみたいな大物でもそう思ってるんだな、って。
lena:本当に思ってるって言ってましたね。
齋藤:そうだね。
秤谷:で、逆に言えば、音楽のリスペクトで向こうから今回みたいなアプローチがあって、お互いに話してみたらルーツとかでハモって、すごいことだなと思いつつも、『音楽』というもので通じ合うという一点においては、そこが対等になれるって、言ってみたら当たり前ですよね。
齋藤:そうだと思うんですよね。
秤谷:はい。それが当たり前でまかりとおらないんで、中々できないんでしょうけど、その形っていうのが当たり前な感じがして、すごくいいなって思って。
齋藤&lena:そうですね。
齋藤:俺、ファンですからって言ってたよね。
lena言ってた!僕、この人たちの大ファンなんだって彼のマネージャーに紹介された(笑)。
秤谷:(笑)。
lena:すごい愛すべき人だったね。あのキャラクターね。すごいいい人だった。
齋藤:すごく嬉しかったね。
秤谷:あの音源なら納得です。アルバムも聴かせてもらって。ぶっちゃけこの発言自体もすごいチープに聞こえるかもですが、今って音楽自体がスーパーハイファイな世界じゃないですか。
lena:うん。
齋藤:うん。
秤谷:カチカチな世界で。MP3な世界なわけじゃないですか。その中このスーパミニマルローファイなこの感じ、逆行感たまらないですね。
Lena&齋藤:(笑)。
秤谷:ローファイの最たるものというか。あったかいというか、丸みがあるというか。
齋藤:いやー嬉しいですね。それをキャッチしていただけるというのは。もちろんデジタル使ってるんですけども。
lena:うん。
秤谷:いやー、何かあったかいんですよね。
齋藤:あの、そこにはちょっと少しコツがありましてね。発見しちゃったんですよ、僕。
秤谷:なんと。
galcid
齋藤:今まではそれこそすごいハイファイな機材で、シールドもすごいの使ってやってたんですよ。ところがどうしてもね、中学生の頃作ったような音にならないんですよね。なんていうんでしょう。あったかいというか。
秤谷:はいはい。
齋藤:もちろんテープを使えば、それに近くなるんですけど。ちょっと待てよと思って。シールド。
秤谷:出た。
齋藤:実家にシールドあったよなって。自分で作ったやつ。それをね、一発刺したんですよ。そしたら1979年の音になるんですよ。音が細くて。ノイズがすごい(笑)。
秤谷:はいはい。そうですね。伝わってなさすぎるんですよね。伝導率が悪いなこれ、みたいな(笑)。
齋藤:それ込みでシンセの音だったから僕。やっとその音が作れたんですよ。
秤谷:なるほど。
齋藤:それをね、あんまり企業秘密で言ってなかったんだけど。悪いシールドを使うっていうのは結構いいことだと思いましたね。
秤谷:逆にね。今はシールドも伝導率が高いもの、高いものをというか。
齋藤:そうなんですよ。それはそれで原音を伝えるっていう意味では大切な技術なんでしょうけど。
lena:うん。
齋藤:やっぱり僕らはエフェクトだと思ってるんで、すべてが。
秤谷:シールド高いの使うのやめようかな(笑)。
齋藤:そうなんですよ。シャーって言ってるやつがいい。
lena:重いですけどね(笑)。
秤谷:重い(笑)。
齋藤:そのシールドを通過させた録音したものっていうのは、結構中毒性が高くて、倍音じゃないですけど、何か聴こえてくるんですね。
秤谷:いやー、何かすごいわかりますね。
齋藤:ノイズなのかな、ちょっと一回試してみるといいと思いますよ。がっかりすると思いますよ。
秤谷:(笑)。
齋藤:あとは、本当に3人で即興で、シールド3本しか繋がないでモノで録音しました。
秤谷:やはりモノ。
齋藤:ほぼ、3トラックでできてますね。
秤谷:そうですね、音数がやっぱすごい少ないから。
lena:スリーピースですよ。
秤谷:これが本当の(笑)。でも、空間や休符をつくというか、すごい感じがするんですよ。なんていうのかな、シールドの件もそうなんですけど、不自由さの美というか。
齋藤:あ、そうです。まさにそこですよね。キーボードが前にあると、バーって弾けるじゃないですか、ギターもそうですけど。今回キーボード使ってないですし、それってやっぱり制約の中から出る発想なんで、実は自分たちでも予期しないことが起こるんですよ。
秤谷:なるほどね。
齋藤:でも、ギターがうまかったり、ピアノがうまかったりする人って、すごい表現できちゃうんですよね。でもずっとやってると飽きちゃうんですよね。
予定調和だから。それを崩してくれるのがスイッチだったりとか、そういうアナログの機械なんですよね。ちょっと触っただけで自分の思ったようにならないんですよ。ちょっと不自由さが残る。
秤谷:なるほど。
齋藤:あとは和音で旋律や情感を表現するんじゃなくて、たった一個の音しか僕ら使ってないから、それでどうやって人の心を動かすかっていう。
秤谷:でもそれって難しいし、怖いですよね。
齋藤:怖いですよね。
lena:でも例えば赤って色を作るとしたら、色々フィルターだったり、いろいろなモジュールの部分で、それをいかに朱色に近い赤、ピンクに近い赤、みたい触りながらしていくか、っていうのはやってて楽しい部分ですね。
齋藤:そうだね。
lena:もともと私、ずっとピアノをやっていたんですね。
秤谷:ああ、そうなんですね。
lena:そうなんです。もともと音楽歴自体はピアノ、フルート、その後バンドを始めてずっとボーカルだったので。
秤谷:もともとバンドをやられていたんですね。
lena:はい、ずっとやってて。そこではもうずっと歌だったので、作詞・作曲・歌っていうよくあるスタイル。電子音楽ではあったんですけれども。でも、魅了されちゃったんですよね。シンセサイザーに。
秤谷:なるほど。そういうのにはまる素質があったんですかね。
lena:実家が、もともと刀鍛冶っていうのも影響してんのかな?(笑
秤谷:え。いや、すごい。
lena:工場っていうか、板金工場みたいな。ずっとメタルなんですよ。家自体がインダストリアルで。
齋藤:インダストリアル。
秤谷:インダストリアル(笑)。
齋藤:本当にこのジャケットが小さくなったようなものですよ。
秤谷:あーなるほど、なるほど。
齋藤:生まれた時からね。
lena:一番初めに嗅いだ臭いはシンナーの臭いだったもん(笑)。
一同:(笑)
lena:そんな感じだったんで、ホントはそういう音が大嫌いで。
齋藤:まあ、最初はそうだろうね。うるさいから。
lena:うるさいし、昼寝もできないですね。うるさすぎて、そこから離れよう離れようとクラシックをずっとやってたんで。
秤谷:はい。
lena:そこで途中渡米するんですけど、エイフェックス・ツインとかが出てきて。またそっちに行っちゃって。結局なんかもう。
秤谷:原点に戻って(笑)。
lena:血が騒いだんだな(笑)。
秤谷:インダストリアルの血が(笑)。
一同:(笑)。
秤谷:ピアノとかやられたりとかすると、例えば、頭に和音が鳴ったりしないんですか。
lena:今はもうないですね。全く違う物だと思ってて。もちろん、ピアノの前に行くと、手グセは出ますが。
秤谷:はいはい。
galcid
lena:表現がちょっとおかしいかもしれないですけど、私日本語と英語を両方しゃべるんですね。それで昔は日本語を浮かべて英語を喋ってたんですけど、今は英語で英語をしゃべってるんです。多分シンセサイザーとピアノの段階スイッチもそういう風にあるのかな?と思いますね。
秤谷:正にそれ僕も気になってて、こういう曲を作る時って、和音とかが鳴って、自分の中に鳴ってるものを、エクスポートしてるのか、そのまま直感のままにストレートにエクスポートしてるのかというのが、どっちなんだろうとおもってたんです。これはもう後者なんですね。
lena:そうですね。最初はもしかしたら、ミニモーグとか触り始めた頃というのは、和音があって、それを一生懸命。
秤谷:そうですね。単音に縮めて。
lena:それでよしんば和音を作ろうみたいな。
秤谷:なるほど。
齋藤:結局ね、鍵盤っていうのが一番罪なんですよ。
秤谷:というと。
齋藤:あれがあるというのは、西洋音階になっていますし、それを弾くという前提じゃないですか。
秤谷:まあ、そうですね。
齋藤:そこに鍵盤がなくなったものがモジュラーシンセなんで。だからギターでいうと、フレットも弦もない状態で。どうやって弾くんだっていう。
秤谷:はははは(笑)。
齋藤:もう叩くしかないみたいな。
齋藤:そっちの発想になってますよね。弾こうとしていませんよね。
秤谷:なるほどね。もう別物なんですね。やっぱり。
lena:シーケンサーってもうオルゴールなので。電子オルゴールっていうか。あの突起、そこもコントロールできるんですけど。それが走り始めたらそれがずっと鳴ってる。
秤谷:まあ、そうですね。
lena:あとは、もう、金属をどう加工しようかという発想しかないですね。
齋藤:そうだね。確かにそうだね。
lena:オルゴール館に行くとあるんですけど、オルゴール琴の音を出すためにオルゴールで、紙を挟んであるんですよね。そうするとパインパインパインって。共鳴してそれが琴っぽいらしくて。
秤谷:なるほど。
lena:そういうことだよね、私たちがやろうとしてることって。すごい原始的っていうか。
齋藤:原始的だよね。
秤谷:どういう風に加工したら今想像してる音になるのかみたいな。例えば組み合わさってどうなるかってことですよね。
lena:そうですよね。
秤谷:まさに、聴いたらそういう感じでしたもん。
lena:とりあえずディレイは突っ込んでおこうみたいな感じとか(笑)。
齋藤:僕らのちょっと変わっているところは譜面もなくて、それを全部即興でやるんですよね。
秤谷:即興感すごいですよね。
齋藤:そうなんです。だから最初にどういうイメージっていう感じで言っておいて、さあやろうドーンってやるんですけど。テレパシーみたいなものでやっぱやってますね。
lena:うん。
秤谷:ほお。
齋藤:こっちが盛り上がってくると、向こうも付いてくるし。
秤谷:うんうん。
齋藤:で、あっちが出すぎるとこっちも引くしみたいな。ちょっとジャズの。
秤谷:セッションですよね。
齋藤:セッションですよね。幸い、五線譜に入らないような音ばかりなので、ルールがないんですよ。だから失敗がないんですよ。どんな失敗しても許されるというか。それがずっとやってられる楽しさですね。
かなりのコアな話に、盛り上がりが止まらず、相当な長尺対談となったため、急遽前後編にわけてお届けいたします。