新作で東京ロングラン公演に乗り込んだ、オイスターズの挑戦とは?

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 オイスターズ『ここはカナダじゃない』チラシ表

オイスターズ『ここはカナダじゃない』チラシ表


彼らはいったい“どこ”にいる? 持ち味の不条理を徹底的な会話劇で見せる

回を重ねるごとにますますシンプルに、ストイックなまでに会話劇へ集約させた意欲作を次々と生み出している名古屋の劇団オイスターズが、〈MITAKA “Next” Selection〉に初参加。10月22日(土)から8日間にわたり、「三鷹市芸術文化センター」で新作公演を行っている。

三鷹市芸術文化振興財団が主催する〈MITAKA “Next” Selection〉といえば、今後の飛躍が期待される才能豊かな若手劇団を長年にわたって紹介してきたシリーズ企画で、名古屋を拠点とするオイスターズにとっては、関東圏のより多くの観客に存在を認識してもらう大きなチャンスだ。今回、このフェスティバルに参加することになった経緯と、そこで勝負をかける新作について、作・演出の平塚直隆から話を聞いた。

左から・ヤストミフルタ、川上珠来、木暮拓矢、田内康介、芝原啓成、平塚直隆

左から・ヤストミフルタ、川上珠来、木暮拓矢、田内康介、芝原啓成、平塚直隆

── まず、〈MITAKA “Next” Selection〉に参加することになった経緯から教えていただけますか。

『どこを見ている』(2014年上演)っていう作品を「こまばアゴラ劇場」で上演した時に、〈MITAKA “Next” Selection〉を担当されている森元隆樹さんがたまたまだと思うんですけど観に来てくださっていて、終演後に声を掛けていただきました。

── 8日間全11ステージと、上演期間が結構長いですね。

これも森元さんから「この日程で」と言われまして。

── 新作で、というのも森元さんから?

いや、最初は去年参加してくださいと言われたんですけど、去年はもう僕らいっぱいいっぱいだったんで、「ちょっと厳しいです」とお断りしたんですけど、その時の話では新作にこだわってないので旧作でも良いですよと。でも、「こんなに長い期間東京で上演することもないので、せっかくだし新作でいきたいです」と言って、今年にしてもらえたんです。

劇場での稽古風景より。客演のひとり、木暮拓矢

劇場での稽古風景より。客演のひとり、木暮拓矢

── ご自身の中で自信のあるものや高い評価を受けた旧作ではなく、新作で勝負しようと。

本当は勝負する気持ちでした。前の公演が6月だったんで(愛知県知立市の市民劇を演出)、結構時間があるからこれは書けるんじゃないかなと思って…書けなかったんですけど(笑)。一応書き終わったんですけど、ギリギリで。やっぱり書けないものは書けない(笑)。

── 『ここはカナダじゃない』というタイトルはどこから発想を?

漠然となんですけど、〈五感〉とか〈家族〉とか毎年テーマがあって、今年は〈国〉のことを考えてみようかなと思って、日本ってどういう国なのかな? と考えるきっかけとしてこのタイトルにしたんです。ここが日本じゃないんだったら、どこなんだろう?っていうのを書いてみようかなぁと。

劇場での稽古風景より。客演のひとり、ヤストミフルタ

劇場での稽古風景より。客演のひとり、ヤストミフルタ

── 〈国〉のことに着目しようと思ったのは、何かきっかけがあったんですか?

いま世界がなんだかきな臭い感じがするから。そもそもなんで戦争だとかテロだとか、無くならないんだろうなと。今どこかの国が攻めてきたら大変だし守ろうともするだろうし、それで軍隊作るだの核武装するだの言ってるけど、僕は今日本に生まれたから日本人だけど、例えばカナダに生まれてたらカナダ人でカナダを守るだろうなと考えたら、たまたまだなと思って。たまたまのことを何をこだわって守ったり喧嘩したり線を引いたりしてるのかなとか。そんなことを漠然と考えて、今年は〈国〉のことを書いてみようかなと。

カナダじゃなくてもどこでも良かったんですけどね。最初はロシアにしてたんですけど、もうちょっと自然が豊かで綺麗な、行きたいところが良いなと。僕、射手座なんですけど、射手座って自然の豊かなところに行くと全てのストレスがリセットされるらしいんですね(笑)。長野の上高地の映像とか見ると「行きたいなぁ」と思うし、自然はわりと好きなので。そう考えると街中よりもカナダとかがいいなぁと思って。たまたま劇団員がカナダ旅行に行ってたというのもあって、カナダにしたんです。カナダのことを書くわけじゃないから、別にどこでもいいやと。

カナダ旅行に行った男二人がいるんですけど、どう見てもカナダじゃなくて日本だっていう話なんです。「カナダじゃないよな、ここは」っていうのに早々に気づいて、そこからの話です。彼らは飛行機にちゃんと乗ってきてるし、「間違いなくカナダに来てる」って言うじゃないですか。でもそこにいる人は「ここは日本だぞ」って。じゃあ、「カナダじゃない証拠は何なんだ?」っていう話になるわけで、日本人からすると日本っていう証拠は何だろうと。そういう話から日本という国のことを書こうと思ったんですけど、上手くいってるかどうかわからないです(笑)。

劇場での稽古風景より。芝原啓成

劇場での稽古風景より。芝原啓成

── まさに不条理な設定ですね(笑)。

戯曲を書き始めた頃からずっと思ってることですけど、何もないところからなんてことない話がなんとなく膨らんで、当事者にとっては何やら起こった感じにはなるけれども、こっちから見てると何も起こってないじゃんっていう。そういう話を書きたいなと思ってるんです。事を起こすのが好きじゃなかったんですよね、昔から。でもなんか詰まるから事を起こしちゃって、なかなか書けなかったんですけど、今回はちょっとだけ書けたような感覚はあります。

── 何も起こらない事を書きたい、と思ったのは、何か過去に観たものであったり影響を受けたものがあったんでしょうか?

舞台セットのすごいものとか照明がバンバンなものとか、派手な演劇を観ると「わぁ~面白いな」とは思うんですけど、そういうのを観るたびに、イリュージョンとかサーカスとか、それこそ花火大会でもこの感動は得られるわけで、似てるなと思って。だからそういう風にワッと来る感じじゃなくて、「何もないのに、観ていて心がザワつくようなものってないのかな?」って思ってはいたんです。僕が知らないだけかもしれないですけど、そういうものをあまり観たことがないので、じゃあやれるかなと思って。

劇場での稽古風景より。田内康介

劇場での稽古風景より。田内康介

── 現代美術とか、それに似たような感覚を覚えることはありますよね。ただそこにあるだけなのに、見ているとなぜか心がザワつくような思いにさせられる作品があったり。

そうですよね。そういう風にはしたいですね。コンテンポラリーダンスの公演なんかでもそういうのがあるじゃないですか。でも、あそこまでワケがわからない感じも好きじゃなくて(笑)、やっぱり喋りで行きたくて、面白い会話を作りたい。面白い会話を聞かせるためにどんどん省いていった結果、壁もいらないよね、音楽もいらないよねって。やるかやらないんだったら、やらない方が良いんだろうなっていうことになってきてる。

── 今回も舞台美術や音楽など無い状態で?

素舞台ですね。何も無い(笑)。字幕ぐらいは出すかもしれないですけど。

稽古風景より

稽古風景より

── 本当に役者さんの身体だけで見せるということですね。

そうですね。だから役者の言葉の言い方とか声のトーンとかを、ものすごく神経使ってますね。音の高さやらボリュームやら、それだけでいろんな情報がお客さんには伝わるじゃないですか、何もないだけに。だからすごくそれは気をつけてはいるんですけど。

── 書きたい会話、というのも思うように盛り込めた感じですか?

書けたような気はします。なんか落語に近いですね、やってることが。会話で魅せられなかったら、もう辛いだけですね、お客さんは(笑)。楽譜じゃないですけど、最初はこれぐらいのテンポでゆっくりめから徐々に徐々にテンポを上げて、盛り上がって、また静かになって終わろうか、みたいな演出で。やっぱり、テンポやボリュームやトーンだけで、その人が何を考えているのかとかどんな感情なのかっていうのは変わるので、それは役者が意図しようがしまいが、僕の方から指定したりします。「音さえ出してくれればいいよ」、って。それはもうこっちのコントロールなんで。

『ここはカナダじゃない』っていうタイトルで、よくぞこれだけ引き伸ばしたなって褒められるか、怒られるか(笑)。本当にそれぐらい内容が無いです。KERAさんのやってるようなナンセンスコメディのような派手さもないし、何を観るんだって、本当に怒られちゃいそうな。「じゃあ、会話を聞いてください」としか言いようがないですね。

稽古風景より。演出をつける平塚直隆

稽古風景より。演出をつける平塚直隆

この言葉どおり、稽古場では同じシーンのセリフ回しについて何度も丹念に調整を重ね、役者に指示する平塚の姿があった。
特徴的な声と飄々とした人物像に定評のある田内康介、透明感と可憐な佇まいが魅力の川上珠来、そして平塚の固定メンバーに加え、今回からオイスターズに新加入した芝原啓成、木暮拓矢とヤストミフルタの客演による初タッグやほぼ“男芝居”といった構造も、オイスターズを見慣れている当地のファンにとっても新鮮な一作と言えそうだ。
今のところ名古屋公演は予定されていないので、ぜひ三鷹で彼らの挑戦を見届けよう。
 

公演情報
MITAKA “Next” Selection 17th
オイスターズ 第19回公演『ここはカナダじゃない』


■作・演出:平塚直隆
■出演:田内康介、川上珠来、芝原啓成、木暮拓矢(流山児★事務所)、ヤストミフルタ(ノックノックス/ユニークポイント)、平塚直隆 ほか

■日時:2016年10月22日(土)15:00・19:00、23日(日)15:00、25日(火)19:30、26日(水)15:00・19:30、27日(木)19:30、28日(金)19:30、29日(土)15:00・19:00、30日(日)15:00 ※24日(月)は休館日
■会場:三鷹市芸術文化センター 星のホール(三鷹市上連雀6-12-14)
■料金:前売2,500円、当日2,800円 会員前売2,200円、会員当日2,500円 学生1,500円(当日学生証拝見)、高校生以下1,000円(当日学生証拝見) ※26日(水)15:00公演は平日マチネ割引あり。詳細は公式サイトを参照
■アクセス:JR三鷹駅 南口⑤番または④番のりばからバスで「八幡前・三鷹市芸術文化センター」下車すぐ
■問い合わせ:オイスターズ 080-1860-2149
       三鷹市芸術文化センター 0422-47-5122(10:00~19:00)
■オイスターズ公式HP:http://www.geocities.jp/theatrical_unit_oysters/

 

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