新しい時代の普遍性とは何か? 新体制となったodolが初のワンマンライブで見せたもの

レポート
2016.12.13
odol 撮影=はまいばひろや

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Variation 2016.12.10 下北沢GARAGE

結成から3年弱、ようやく初のワンマンライブが実現したこの日。チケットは早々にソールドアウトして下北沢GARAGEのフロアは満杯だ。新メンバーとして早川知輝(Gt)加入後の初お披露目ということもあってか期待値が高いのだろう。それでいてファンは皆、静かにステージを見つめている。

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ステージに登場したメンバーは5人、早川はまだいない。静かに位置について1stアルバム『odol』の1曲目であり、odolのライブや物語のプロローグとも言える「あの頃」が“この夜”に漕ぎ出す。そしてゆったりしたBPMで森山公稀のピアノとShaikh Sofianの5弦ベースが生み出す滑らかなグルーヴの上でまっすぐ遠くに投げ出されるようなミゾベリョウのボーカルが宙に浮いている。何らダブ的な処理を施していないにも関わらず、気が遠くなるようなダビーな空間を作り出すodol最強の持ち味が早くも発揮される。出会った当初は静寂に切り込むシューゲイズなギターの音の壁と端正なピアノのフレーズの対照がユニークなバンドとして語られていた彼ら。だが、この日感じたのはそうした生音での浮遊感、素朴さの中に一瞬、都会的な聴感を残すテンション系のコードをさし挟む独特のセンスのオリジナリティが、折衷的な第一印象を完全に上回っていた。odolのユニークさは変わらないけれど、曲の良さとして自分自身の中で定着したのだと思う。

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何気ない日常の中でも感情に起伏があり、終わるはずがないと思っていた関係もいつかなくなる――odolが音楽で立ち上げる情景は、そうした誰もが経験のある事柄の記憶やその時の季節などと分かち難く結びついている。マスロックもかくやな激しいビートと唸りをあげるギターの応酬、淡々と見つめるようなピアノが印象的な「欲しい」から「ふたり」への連なり。甘ったるさは皆無な音像でありながら、思い起こすものは切なくも甘美な記憶だったりする。この人間の曖昧で矛盾に満ちた感覚をバンドで表現できること。それが彼らでしか味わえない世界観になって、リスナーを惹きつけている。そのことをワンマンライブで確信した。

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タフな8ビートにこれぞオルタナなコードカッティングと重いベース、空間を切り裂く井上拓哉(Gt)のフレージングがきらめく「綺麗な人」に続けて、アルバム『YEARS』の曲順通りに、「逃げてしまおう」。グッとBPMを落としてピアノ、ドラムのキック&スネアとベースが躓くようなニュアンスを醸し、ジャズ的な変則的なコード進行の地メロが心地よい不穏を醸す。でもこの曲のカタルシスは<僕らは逃げてしまおう 二人を知る人のない場所へ>というピークポイントが一瞬にして断ち切られるエンディングだったりする。こう書くと難しい曲に思えるが、ライブではもう「逃げてしまおう」の世界に連れ去られる。それぐらいバンドの身体性に沿った演奏に磨き上げられていた。感嘆のあまり拍手もままならないまま、下手からのオレンジの照明に照らされて、とぼとぼ歩くような、宇宙に放り出されたような気持ちになる「17」の世界に浸る。1曲1曲で丹念に心象風景を描くodolの演奏は、いくらサウンドがラウドになろうが、ギターがノイジーになろうが、その演奏が曲にとって必然であるせいかひたすら聴き入り、見入ってしまう。

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森山が「こんなに曲をやることがないので光栄だし、すごく楽しいですね」とフロアとメンバー双方を見ながら話す。いつも通り、ファンにもメンバーにも敬語調のMCもまた彼ららしい。ワンマンが早々にソールドしたことに対し、珍しく全員に水を向けるものの、相変わらず口数が少なすぎて、結局「感謝しかない」という結論へ。とりとめのない間合いすら、演奏ですべて表現することが最大の感謝なのだという彼らの誠実さが伝わる時間になってしまう、そういうバンドだ。

1stアルバムから「君は、笑う」、そして真冬に春を待ちかねるような歌詞がまさに今にぴったりな彼らのスタンダードと言える「生活」が淡々と刻み込まれると、心からの拍手が起こった。そこで再び森山が「『生活』を演奏してもまだ続くライブってなかなか無いので、面白いです、楽しいです」と、ワンマンならではの喜びを表して、ここでようやく新加入した早川を紹介し、ステージに招き入れる。5人でもすでにぎゅうぎゅうのステージはさらに狭くなる。

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そして強烈なシューゲイズ感で音の壁をぶっ立てた「愛している」が、この編成で人前で初めての演奏となった。ギターが2本いるせいなのか、「years」ではミゾベは歌に集中。日本郵便のWeb CMにも起用されるほど、「しばらく会っていなかったけれど、記憶に残り続けている誰か」や「大人になることとはどういうことか」という普遍的なテーマが、彼らの楽曲の中では比較的ストレートに描かれたこの曲。ライブでは井上と早川のギターが呼応し合い、Sofianのメロディアスな高音のフレーズがエンディングに向けて高まりを醸成。さらにモールス信号のようなピアノの単音が始まりを告げる「夜を抜ければ」。ピアノはもちろん、アーバンな味わいを持つ洗練されたギターが、まさに夜のドライブをヴァーチャルに体験させてくれる。2ndアルバム『YEARS』のラストナンバーであるこの曲は、モラトリアムな季節を終えて自分なりに大人への一歩を踏み出すというアルバムのテーマからしても、痛みを伴いながら次のページをめくる助走として、気持ちのいい終わり方だ。ひたすらステージを凝視していたフロアもほんのすこしだけ揺れる、そんな演奏だった。

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が、さすが初ワンマン。ここで終わらずにodolならではのこだわりを見せる。アンコールは得意でないので、公演の告知時にもアナウンスされていた新曲をライブでも初披露するという。終演後、来場者にダウンロードコードが渡されたその曲のタイトルは「時間と距離と僕らの旅」と題されていて、odolの音楽のテーマをそのままじゃないか、と嬉しくて笑ってしまう。

ちなみに6人編成の新体制で作品作りは継続しつつ、井上はライブをしばらく休むらしい。しかし、早川という新しい頭脳が増えたことで新曲への楽しみが増えたことも確か。きたる3月3日には、まだ相手は発表できないものの、彼らが好きなバンドとの2マンライブを新代田FEVERで開催することも発表された。曰く「odolの凄い日と、手帳に書いておいてもらえば間違いないので!」とのこと。様々な対バンが想像できるが、果たして? こちらも楽しみに待ちたい。


取材・文=石角友香 撮影=はまいばひろや

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