dustboxが語る会心作『Thousand Miracles』――自身の歴史を物語る「Here Comes A Miracle」を再収録した理由とは
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地元埼玉を拠点に置く3ピースバンド・dustboxのニュー・アルバム『Thousand Miracles』は自分たちの個性を濃くする一方で、新しいチャレンジも試みた会心作に仕上がっている。メロディック・パンクを主軸に、これまで手を付けなかったテンポ感や、美メロを最大限に際立たせた曲調もあり、全13曲一気に聴ける爽快感が今作のミソ。そして、14年7月に行った結成15周年晴海埠頭野外ワンマンで3千枚限定で無料配布された「Here Comes A Miracle」をここに再収録。今回の表題にも繋がるが、なぜこのタイミングで「Here Comes~」を入れたのだろうか。
――今作も素晴らしい出来ですね。で、今回はここ数作のdustboxとはまた表情が刻まれているなと。
SUGA:メンバー交代もあったし、イチからやろうという気持ちもあって。『13 Brilliant Leaves』をまた作り上げるような気持ちがあったんですよ。「Here Comes A Miracle」、『skyrocket』と出して、それをひっくるめたアルバムを出したくて。現メンバーで初のフルアルバムだから、1stアルバムのようなフレッシュなものを作ろうと。
――1stアルバムって、デビュー作『Sound A Bell Named Hope』を指してるわけじゃないですよね?
SUGA:僕らの中の1stアルバムって、『13 Brilliant Leaves』のイメージなんですよ。事実的な1stアルバムは『Sound A Bell Named Hope』で間違いないけど、あれはまだ僕らのやりたいことが明確じゃなかった時代ですからね。こだわりもなく、ただやりたいことをやってただけだから。
――確かに(笑)。あの作品は作品で良かったですけどね。
SUGA:そうですね。メンバーの意志が固まって、しっかり作り上げたものが『13 Brilliant Leaves』だから。今回はそれをもう1回やろうと。
JOJI:あれを作ってるときは楽しかったんですよ。頭の中で描いていたことが全部できたから。今回もそういうことができたらいいねって。
――YU-KIさんは『13 Brilliant Leaves』というイメージは聞いてたんですか?
YU-KI:聞いてないです(笑)。
――あくまでも2人(SUGA、JOJI)の中ではそういうイメージがあったと?
SUGA:はい、気持ち的に長いスパンで作品を作りたくて。『Care Package』を出した後に、すぐにまた作品を出しても面白くないから。次に出すときはライブでも新曲を披露しつつ、全曲この期間で作ったというアルバムじゃなく、いっぱい作った曲の中から形にしようと。そう思っていたら、メンバーが抜けちゃったんですけどね(笑)。
――ですね。dustboxはいままで短期集中型の作品が多い方ですか?
SUGA:『13 Brilliant Leaves』は積み重ねで出しましたけど、その後に『Seeds of Rainbows』、『Blooming Harvest』は短期集中型でしたからね。それで年1枚で出すのは限界があるなと(笑)。
――今作は長いスパンで作った曲を集めたという意味で『13 Brilliant Leaves』に近いと。話は前後しますけど、前回の『skyrocket』レコ発ツアーはどうでした? 現3人で初めてガッツリ回ったツアーでしたよね。
SUGA:YU-KIが入って初のツアーだったから、楽しかったですね。
JOJI:以前よりも安心感はありましたね。良くなるのはわかってるみたいな。
――いい予感しかなかったと。それはいいことじゃないですか。
JOJI:そうなんですよ!
SUGA:一緒に飯に行く機会も増えました。
YU-KI:はははは。
JOJI:メンバー主体で動いているから、ストレスもないし。
――自分たちで舵を取るから、バンドを動かしてる実感もあると?
SUGA:そうですね。15年から独立して、自分たちの理想に近づけるように動いて、それからの『skyrocket』ツアーですからね。で、YU-KIのドラムもそのツアーでどんどん良くなるのがわかったんですよ。前ノリな感じになったから。
――前ノリ、ですか?
SUGA:最初はYU-KIのドラムもすごくキレイだったんですよ。俺は前ノリなんですけど、たまに俺の前を行くときがあって(笑)。
――はははは。YU-KIさんもライブを重ねるごとに、dustbox仕様になってきたと。
SUGA:その変化が面白いくらいわかるツアーだったんですよ。で、ライブ後に「あそこはこうしたらいいんじゃない?」と言って、改善されましたからね。
――ツアーでは『skyrocket』はもちろん、過去のdustboxの曲もやるわけじゃないですか。
YUKI:それにプラスして、ファイナルの赤坂BLITZ公演(16年5月12日)は『triangle』、『Mr.keating』の2枚のミニ・アルバムを全曲やりましたからね。あのときは焦りました。
――そこでも鍛えられたと。
YU-KI:そうですねえ。やるしかなかったから。ワンマンライブも初めてだったし。
――ファイナルの赤坂ブリッツ公演で、ミニ・アルバム2枚を全曲披露した理由は?
SUGA:『skyrocket』というミニ・アルバムのツアーだし、過去のミニアルバムを全曲やるのも面白いかなと。『triangle』、『Mr.keating』の曲を聴きたいと言われることもあったから、いつかやりたいと思ってたんですよ。じゃあ、ファイナルでやったら面白いかなと。
――なるほど。デビューからずっとdustboxのライブを観続けてきて、赤坂BLITZ公演を観たときに、今は本当に楽しんで音楽をやってるんだな、という空気感が伝わってきたんですよ。そこって一番大事だなと。
JOJI:40歳手前にして、あんな風に楽しめるのは奇跡ですよ。大体、どのバンドもギスギスして終わるじゃないですか。
――例えば?
全員:はははははは!(笑)
JOJI:書けない書けない(笑)!
SUGA:YU-KIとは地元も一緒で10数年の付き合いだし、スタジオも練習してるのか、喋ってるのかわからない感じですからね。
YU-KI:練習してる時間の方が短いっすね(笑)。
SUGA:そういうことができてるのが幸せですね。だから、昔より今の方が何か楽しいことをしよう、という気持ちは強いです。これをやったら楽しいかなって。
――その空気がバンド内に流れているのは素晴らしいことですよ。で、YU-KIさん加入後の第一弾作『skyrocket』はバラエティに富んでましたが、今作は2分台の楽曲しかなくて。改めて、この3人でメロディック・パンクをやろうという気持ちはありました?
SUGA:真ん中にあるメロディックは強くしたいと思ってました。ただ、新しいアプローチのリズムもありますからね。
JOJI:前作とは違ったものを作りたくて。変わったなと思われたかったし、そうじゃないと、YU-KIがかわいそうだし。ある地元の仲間に音源を聴かせたら、YU-KIのドラムに対して「もっとドカドカやって欲しい」と言ってきて。そこで俺が飲みながらキレちゃって。「今のメンバーの音がこれなんだから、それを聴けないおまえの方がダセエ!」と言ったんですよ。それくらい俺は胸を張ってるし。そいつの意見を聞いたときに、変わったんだなと思えたから、逆によっしゃ!と思えたんですよ。
SUGA:一つ言えば、勢いのアルバムにしたかったですね。でもそれ以外はみんなで意見を出し合ってやりました。
――以前よりも、全体的にシンプルになってませんか?
SUGA:3人で合宿で集まったときに、小難しいことをするよりも、爆発的な感じにしたくて。みんなでガーッとやって、かっけー!でいいんじゃないのって。
JOJI:ライブを楽しくやりたいと思って音源を作ってるから。ライブを想定して曲を作ってますからね。YU-KIはdustboxでやってるジャンルより、もっと難しいことができるんですよ。でもライブで楽しめる曲を作るのがdustboxカラーだから。難しいことは、もう一つのバンドでやってもらって……。
YU-KI:(笑)。
JOJI:ライブで難しいことをやってヘコむぐらいなら、できる範囲のことをやって、ちゃんとライブで表現しようと。
SUGA:あと、3人で合わせながら、ギターもいろいろと試すんですよ。だけど、ジャーン!と大きく掻き鳴らす方が歌の抜けもいいし。そっちを選ぶことが多かったから、シンプルになったのかも。こだわるところはめちゃくちゃこだわってるんですけどね。
――ええ。
SUGA:自分たちの個性であるメロディック・パンクは大事にしつつ、メンバー3人とも聴く音楽は違うし、それも随所に入れていく作業もやってますからね。ただ、芯にあるものは濃くなってるし、俺らにしかできない音楽を作れたと思います。
――自分たちにしかできない音楽って言葉にできます?
SUGA:いろんな音楽をメロディック・パンクに落とし込む。それはdustboxがずっとやってきたことですからね。今回はそれが自然にできたし、それをやり始めたのが『13 Brilliant Leaves』なんですよ。
――ああ~、なるほど!
SUGA:あの頃は取ってつけた感があったかもしれないけど、今回は自然にできるようになりました。
――YU-KIさんはどうですか?
YU-KI:バラエティに富んだ曲が揃ったと思いますね。全部がメロコア・ビートになってないし、いろんなリズムがあるし、ほかのバンドとは違う作品に仕上がったと思います。「Pity Party」はウチらにしかできない曲なのかなって。「Broken Toy」もほかの曲とは違うと思うし、これまでのdustboxの印象とはまた異なるものができました。
SUGA:そうだね。「Pity Party」、「Refrain」はYU-KIのドラムの良さがめちゃくちゃ出てると思います。俺がデモを作って、足りなかった部分――打ち込みでは表現できないところをYU-KIにまかせて。「もう少し面白くならない?」って相談したんですよ。歌のジャマをせずに面白くできたし、この辺の曲はYU-KIの良さが出てますね。あと、「Dive」、「Thunder」も激しい曲だけど、所々にオシャレなフレーズがあって、それも考えつかなかったことだから。
――YU-KIさんも『skyrocket』を経て、自分らしさを出せるようになってきた?
YUKI:そうですね。合宿でJOJIさんから「ドラムは、もっとこうしたら面白いんじゃない?」と言われることもあって。フレーズやリズムもみんなで意見を出し合うので、それも楽しくて。
JOJI:YU-KIがどういうプレイヤーなのかわかってるから。もうひとつのバンドでやってることを、ちょっとウチでも変化させてやってもらいたくて。結構注文しました。ダンサブルな感じも上手いですからね。俺は音楽理論がわからないんで、自分が考えたフレーズは手が3本ないと無理みたいなものもあるんですよ。
YU-KI:(笑)。
JOJI:そのときは、「これならどうですか?」って提案してくれますからね。
――dustboxの色に収まる範囲で、新しいアイデアを出してほしいと?
JOJI:そうです、そうです。ドカドカした2ビートもYU-KIは叩けるけど、それだけじゃないから。新しいメンバーを迎えたわけだし、YU-KIらしさも感じてほしいですからね。
SUGA:人間が変わったわけだから、それがいいと思うんですよ。
JOJI:サポートじゃなくて、メンバーですからね。
――でもYU-KIさんにしたら、いろいろできるのに、出し過ぎても困らせる。そこで葛藤はないですか?
YU-KI:一回やってみて、やりすぎたら、ちゃんと言ってくれますからね。
SUGA:難解なのは嫌なんですよね。
JOJI:上手いプレイをずっと聴いてると、「で?」という気持ちになるんですよ。
――ははははは。
SUGA:それよりはパッと聴いて、かっけー!と思う方がいいなと。今回は3人でかっけー!と思えるものを作ろうと。
――『Care Package』は震災後に出たこともあり、どこか切なさも漂ってたじゃないですか。今作は全体的に明るくて、抜けがいいですもんね。
SUGA:ああ、そうですね。
JOJI:『Care Package』の頃はまだ難しいことをしたいというか。ナメられちゃいけないと思ってましたからね。
――今は「ナメてくる?」みたいな自信も付いたと。
全員:ははははは!(笑)
JOJI:できるならやってください!みたいな(笑)。意外とやったら、この感じ難しいよって。直球ってムズいですからね。
――今作が『Care Package』と決定的に違うのは、最初と最後の曲が元気なんですよ。ラスト曲「Twilight」も「行って来まーす!」と去り際も爽やかで。
SUGA:『Care Package』は考えさせたかったから、少し重かったかもしれない。
JOJI:なるほど、いろいろ気づかされるね。
SUGA:荒金さんの方が聴いてる(笑)。今回は自分で聴いても、気持ちいいアルバムですからね。
――そして、今作には「Here Comes A Miracle」を収録されてます。『skyrocket』にも入れようと思えば入れられたと思うんですが、なぜこのタイミングで?
JOJI:『skyrocket』に入れようと思ったけど……いや、次だなって。3千人の前でやった曲(※「Here Comes A Miracle」、15周年ワンマンライブ・東京晴海埠頭旅客ターミナルで3千枚限定にて無料配布された音源)だし、あそこで初めて披露して、ライブでみんなが歌ってくれた曲を入れたほうがいいだろうと。この曲にはドラマがありますからね。
――そうなんですよ! 「Here Comes A Miracle」はデビューからこれまでの奇跡を刻んだ、いわばdustboxの歴史を物語るシンボル的な楽曲で。そして、またここから新しい奇跡を刻んで行こうという気持ちの部分で、この曲が収録されていることはとても重要なポイントで。
JOJI:唯一、前の体制を繋ぐ曲ですからね。
SUGA:YU-KIが入ってまだ2年ぐらいですけど、このアルバムでdustboxの歴史を感じさせる内容にしたいと思ってました。このバンドは仲間の助けがなかったら続かなかったし、メンバーチェンジがあっても休む期間もあえて作らなかったから。18年続けてきたけど、ライブも1カ月止めたこともないんじゃないか、と思うくらいやってますからね。すべてにおいて奇跡の多いバンドだから。
JOJI:ほんとに何度やめようと思ったか、わからないですからね。
――毎回、インタビューでそう言ってましたからね。
全員:はははははは!(笑)
SUGA:このタイミングで満を持して、『Thousand Miracles』というアルバム名にして、「Here Comes A Miracle」を入れようと。いままでも、これからも"千の奇跡"が待ってるという意味で、この曲が必要だったんでしょうね。
取材・文=荒金良介
発売中
『Thousand Miracles』
FGCA-33
収録曲
1. 1000 Miracles
2. Dive
3. New Beginning
4. Thunder
5. Rise Above
6. Pity Party
7. Broken Toy
8. All We Need Is Hope
9. Here Comes A Miracle
10. Maze -Struggling In The Darkness-
11. No More Tequila
12. Refrain
13. Twilight
2017年2月17日(金)東京都 新宿LOFT
2017年2月22日(水)千葉県 千葉LOOK
2017年2月25日(土)京都府 KYOTO MUSE
2017年2月26日(日)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
2017年2月28日(火)静岡県 Shizuoka UMBER
2017年3月3日(金)茨城県 mito LIGHT HOUSE
2017年3月10日(金)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
2017年3月11日(土)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
2017年3月17日(金)青森県 Mag-Net
2017年3月18日(土)岩手県 Club Change WAVE
2017年3月20日(月・祝)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
2017年3月21日(火)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
2017年3月30日(木)北海道 cube garden
2017年4月1日(土)北海道 CASINO DRIVE
2017年4月2日(日)北海道 函館club COCOA
2017年4月5日(水)新潟県 CLUB RIVERST
2017年4月6日(木)石川県 vanvanV4
2017年4月8日(土)滋賀県 B-FLAT
2017年4月9日(日)長野県 LIVE HOUSE J
2017年4月14日(金)愛知県 DIAMOND HALL
2017年4月15日(土)大阪府 BIGCAT
2017年4月20日(木)岡山県 IMAGE
2017年4月22日(土)長崎県 Studio Do!
2017年4月23日(日)福岡県 BEAT STATION
2017年4月25日(火)広島県 SECOND CRUTCH
2017年4月27日(木)香川県 DIME
2017年4月28日(金)愛媛県 WStudioRED
2017年5月6日(土)三重県 M'AXA
2017年5月8日(月)奈良県 奈良NEVER LAND
2017年5月13日(土)東京都 新木場STUDIO COAST