東京芸術大学が1年で一番熱い3日間 〜藝祭2015〜

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2015.9.5
藝祭2015ポスター 藝祭2015公式Facebookより

藝祭2015ポスター 藝祭2015公式Facebookより

9月4日〜6日の3日間、上野の東京芸術大学で学園祭『藝祭』が開催中だ。学生たちによるオーケストラの演奏会やオペラ公演など多くの演奏会が行われるほか、美術学部の敷地内では展覧会が行われるなど、数多くのイベントが予定されている。

毎年、藝祭の始まりをつげるイベントは御輿パレード。御輿は音楽学部と美術学部の1年生がタッグを組んで夏休みを使い製作する。タッグを組むといっても実際のところは美術学部の学生がほぼ100%作っている(というより作ってくれる)。音楽学部の学生からすると自分が手伝うと逆に迷惑をかけてしまうのでは…と思ってしまうからだ。ではなぜ、わざわざ学部を越えて一緒に作るのか…。大学側が音楽学部と美術学部を繋いでくれる唯一のイベントで、貴重な出会いのチャンスとなるからだ。この御輿をきっかけに音楽学部の学生と美術学部の学生が交流を深め、のちに音楽学部の学生がチラシのデザイン作成を依頼する…といったこともよくある。また過去には、このイベントで出会った数年後、学部を越えて結婚した…なんていう話も聞いたことがある。

御輿パレードは藝祭初日の朝10時に大学を出発し、上野公園内を練り歩く。どのチームの御輿も迫力があり、本当にすばらしい。その中でも特にすばらしい御輿には上野の商店街から賞が贈られる。また、学長の気分次第で、当日出すかどうか決定される学長賞もあるそうだ。そしてこのイベントが終わるといよいよ藝祭のスタート。

藝祭での演奏会は多岐にわたる。日本の音大で唯一設置されている邦楽専攻の演奏会はもちろん、作曲科の学生が集まって各々の作品を発表する演奏会や、オペラ(今年は魔笛を上演)、オーケストラ、ブラスバンド…3日間で全62公演、会場は6つ。ゴールデンウイークに行われるラ・フォル・ジュルネのように聴きたい演奏会をあらかじめ決めておかないとお目当ての演奏会は聴けないかもしれない。

「クラシック音楽にはあまり興味がないので学園祭として藝祭を楽しみたい。」そんな人もなかにはいるだろう。でも大丈夫。全部が全部堅苦しい演奏会ではないから。いくつかご紹介しよう。

まずは初日の夕方、《藝祭ジャズ2015》。藝大の作曲科に所属しながらジャズ・ピアニストとして活躍し、CDデビューを果たした魚返明未(おがえり・あみ)が登場する。弦楽四重奏にコントラバス、打楽器と魚返の演奏によるピアノという編成だ。

2日目には《藝祭でNコンを歌う会》がある。『聞こえる』や『信じる』など誰もが中学や高校で歌ったり聴いたりした歌を選曲。この演奏会に出演するある学生は「合唱というと個性を殺して、他の人の音色と馴染ませて作るものですが、今回の企画はそういう合唱を目指したわけではなく、藝大声楽科一人一人の“良い声”をちゃんと残して、幅の広い合唱を作りました。そう意味で中学、高校の合唱とは一味違う“藝大声楽科”の合唱をお届けできると思います」と話してくれた。

最終日には《D年オケ第1回演奏会》に注目だ。D年(学部2年生)が中心となって行われるこの演奏会。名前だけ見ると堅苦しそうだが内容はとても興味深い。オケは弦楽器だけで50名、全体では80名にもなるという大オーケストラで編成され、プログラムのメインはムソルグスキー作曲(ラヴェル編曲)の『展覧会の絵』。大編成のオーケストラが作り出すサウンドが聴けるだけでも魅力的だが、この演奏会にはもう一つ仕掛けがある。それは、美術の学部2年生10名がそれぞれ『展覧会の絵』に登場する10の場面をテーマに描いた絵と、プロムナードをテーマに10名が力を合わせて製作した絵、合計11の絵をホールに展示する(10名で作った作品はすでにD年オーケストラの公式Facebookにアップされている)。

今回指揮をするのは現在、学部2年生の女性だ。藝大指揮科に女性が在籍するのは久々のこと。彼女の発案により会場内に絵を展示することが決まり、「彼女のもとで演奏がしたい」と言って集まったメンバーが多くいるそうだ。メンバーの一人が言う。「想像力の豊かさと人柄の良さが彼女の魅力」。そんな女性指揮者の目標は「このオーケストラを何度も続けていくこと」だ。だからこそ第1回の演奏会はチャイコフスキーの『序曲1812年』とムソルグスキーの『展覧会の絵』という華々しい2曲にした。公式Facebookアカウントを使って積極的に広報活動をしており、先を見据えてしっかり活動をしている印象をもつ。まずは第1回演奏会の成功を祈り、第2回が開かれることを楽しみに待ちたい。

プロムナードをテーマに製作した絵

プロムナードをテーマに製作した絵

屋外では、各専攻の模擬店で賑わっている。学生たちは出演する演奏会と演奏会の間をぬってお店のお手伝い。お祭りには欠かせないフランクフルトやかき氷、ビールやおつまみも充実している。また、音大生らしいお店の名前にも注目してほしい。作曲科のお店は「飯庵(メシアン)」、ピアノ科はピアニストからお名前を借りて「ばっくはうす」。お店に行けばアーティストではなく大学生の彼らが見られるだろう。

このほかにも藝大を卒業し、現在は俳優・映画監督として活躍する伊勢谷友介がシンポジウムに特別ゲストとして参加。また、柳家喬太郎師匠の落語トークショーもある。さらに他大学では考えられないミスコン「ミス藝大2015」の開催も決まった。一言では語れないのでご興味のある方は特設ページをご覧いただきたい。そして最終日の夜は藝大生の大好きなサンバのステージがまっている(藝大にはサンバ同好会があり、藝祭や入学式、卒業式で会場を盛り上げている)。

今年度の藝祭のテーマは『みるみる魅せる』。「藝大だからこそ出会える数々の美術、音楽、また芸術作品のみに関わらず、雰囲気や人々その全てをもってみなさんをみるみるうちに藝祭で魅了させる」という気持ちが込められている。

藝大生たちは日常を忘れ、夢中で藝祭に取り組む。そんな彼らに、そんな彼らの藝祭にあなたも日常を忘れて楽しめるだろう。

イベント情報
藝祭2015

日時:2015年9月4日〜9月5日
会場:東京藝術大学(上野)
公式サイト:http://geisai.geidai.ac.jp/2015/

 

 

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