淡色の音が描き出す心象風景――mol-74『「colors」release tour』ファイナル・WWWワンマン

レポート
音楽
2017.7.13
mol-74 photo by MASANORI FUJIKAWA

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「colors」release tour ファイナル 2017.7.2 渋谷WWW

7月2日、渋谷WWWにてmol-74の『「colors」release tour』のファイナル公演が行われた。

最新ミニアルバム『colors』のリリースを記念して開催された本ツアーは、番外編を含む全8公演。満員の薄暗い場内、じっと息を潜めて開演を待つファンの頭上には、等間隔に並んだ黄緑色の客電がすうっと光芒を描き、無人のステージには薄紫色のライトが二等辺三角形をかたどる。 BGMとして流れるオーラヴル・アルナルズの荘厳かつ静謐でクラシカルなピアノと相まって、蒸し暑い現実にぽっかり空いた非現実の落とし穴に足を踏み入れたような気分にさせる。

mol-74 photo by MASANORI FUJIKAWA

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幻想的な雰囲気の中、「complementary colors」でライブがスタート。武市和希(Vo / Key / Gt)の眩惑的なボーカルとディレイのかかったシンプルな音色の残響が、満員の観客の意識を瞬く間に一つの束にした。間を置かずに、キーボードのやわらかな和音とタイトなリズムで幕を開ける「エイプリル」。サビに進むにつれて加速する曲に合わせて緊張感のほぐれてきたオーディエンスの体が少しずつ揺れ始める。

「こんばんは、mol-74です。楽しむ準備はできてます?」という武市の挨拶から、軽快に跳ねるビートの「light」、ポップで爽やかな「yellow」が続けて演奏された。「眠くなるゾーンなので気をつけて」という武市のMCのあとは浮遊感に満ちた「ゆらぎ」、スローテンポな「アルカレミア」「グレイッシュ」と、ゆったりとした曲が続くが、観客の集中力は乱れることなく、だんだんと研ぎ澄まされていった。

mol-74 photo by MASANORI FUJIKAWA

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「不安定なワルツ」が演奏された後、武市の「眠たいゾーン抜けたので」という合図と共に、「3.9」~「待ちわびた音色」では、それまでクールな面立ちで沈着に演奏していた坂東志洋(Dr)とサポートを務める髙橋涼馬(Ba)からなるリズム隊も、一転してダイナミックなフレーズを繰り出したまま「開花」へ。井上と髙橋の弦楽隊が笑顔で交わした視線、坂東のタイトなスナップや波紋が広がるようなフロアタムの打音に、会場の空気も徐々に溶かされ、武市は「すごく楽しい」と満面の笑みを浮かべながら演奏していた。

“親への感謝を込めて作った曲”「hazel」ではミニマルなピアノのフレーズとアンビエントな音像が印象的だ。繊細で静寂な「ヘルツ」、心臓の鼓動のようなプリミティヴなバスドラが牽引する「フローイング」、ドラマチックな曲展開が印象的な「rose」と立て続けに演奏された。ライブ終盤、疾走感を感じさせるサビが印象的な「%」では、大勢の観客と一体になって高速手拍子をする4人の顔は最大級の笑顔で溢れ、本編ラストはエモーショナルで壮大な「tears」でツアーの幕を閉じた。

mol-74 photo by MASANORI FUJIKAWA

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過去作『kanki』『まるで幻の月をみていたような』などの収録曲も織り交ぜた時間はあっという間に終わりを告げた。水彩画にも似た淡色のグラデーションを広げながら満ちる音像からは、人々の胸の内や生き様がどれだけ普遍的で、どれだけ色彩豊かな感情を秘めているかを表現する姿勢とタフネスを感じた。

この夜のWWWは、mol-74だからこそ作り得た異空間であり、“みんな”の心象風景でもあった。これから半年、一年後、彼らが味わったリアルがどのような音楽に化けて、それがどれほど多くの“みんな”の心を掬いとるのか。さらにワクワクさせてほしい。


取材・文=町田ノイズ 撮影=MASANORI  FUJIKAWA

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