MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』第四回ゲストは阿部真央 怒りや悲しみの歌はどうやって人を救うのか

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音楽
2018.5.11
MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』

MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』

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MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』のゲストは初の女性アーティスト、阿部真央が登場。——怒り、悲しみ、悔しさ、人間の底にある思い。誰かを代弁するわけでなく、常に自分の目線で、自分の言葉で歌ってきた両者。だからこそ、日常から生まれる感情をどのように曲へ昇華するのか、迷いや葛藤やその先に見つけた答えを語った。どうして僕らはMOROHAと阿部真央の音楽に胸を熱くして、痛みを感じるのか、その理由が今回の対談でわかるハズだ。ともに自分をさらけ出すパーソナルな音楽を作る両者だからこそ共感するポイントや、お互いの魅力について、1万字というボリューム感たっぷりの内容をお届けする。

●男性に好かれる女性、女性に好かれる男性とは●

MOROHAスタッフ:飲み物を失礼します。

阿部:ありがとうございます。あ、ストローまで挿していただいて。

アフロ:なんで、俺はストローないんだよ。

阿部:多分、私がリップを塗ってるから。

アフロ:あ、なるほどね。

MOROHAスタッフ:(アフロは)いらねーだろ。

アフロ:おい! 自社のアーティストを粗末にすんなよ(笑)!

阿部:女性の人には(ストローを)挿してくれがちですよね。「リップを塗ってるんでストロー挿しときました」みたいな。

アフロ:でも、そういうのでキュンとくる女も容易いけど。

阿部:アハハハ。でも、嬉しいですけど。

アフロ:女の人が思う優しい男性って、飲み物にストローを挿してくたり、歩道側を歩かせてあげるとか。それって、俺たちからしたら気遣いのできる奴なんだよね。それを優しいっていうじゃない? そこに憤りを覚えたことがある。「優しさっていうのはそういうもんじゃない!」って。

阿部:そうですね。でも、結局「やだぁ〜アフロさんったら!」とか「虫が怖ぁ〜い」って女の子を男子が嫌いじゃないのと一緒ですよ。

アフロ:うわぁ、完璧なアンサーだね。MCバトルだったら完敗だわ。なんだかんだ嫌じゃないっていうね。

阿部:そうです。

アフロ:それは、ずっと前から気づいてた?

阿部:うん。男の子はそういう子を可愛いと思っちゃうし、女の子だって優しくされたら嬉しいし。

アフロ:阿部ちゃんはトライしたことあるの?

阿部:ブリっこですか? いやぁ……ないですね。

アフロ:俺は優しい男になろうとしたことはあるよ。

阿部:男性は良いんですよ。優しい気遣いって、意識していると本当に気遣いできるようになるじゃないですか。

アフロ:わかるわかる!

阿部:ね! それが優しさとして染み付くからプラスだと思うけど、女の子の場合は……。

アフロ:それも自然になってくるんじゃないの?

阿部:えぇ、なってきちゃうのかな。……なんか嫌だね。

アフロ:アハハハハ! 同性として?

阿部:ううん、自分にそれが馴染んでいくことが。男性に女性が喜び得る気遣いが馴染んでいくことがプラスだとすると、同じくらいのプラスに感じられないっていうか。何かを自分の中でそぎ落としている気がしますね。でも、世間的にはそれを出来る女の子が可愛いんだと思う。私は「そんなのできない」って言ってるから、可愛げがない。

アフロ:30歳になってくると男も女性の見方が変わってくる気がするけどね。そういう弱々しさのある女の子って、今は周りにいないからさ。実際にされたらドキッとするのかなぁ。

阿部:嫌ではないと思う。

アフロ:そうだよね。おじさんはそういうの好きだし。

阿部:その仕方に下品さを感じて嫌に思うことはあるけど、タッチされることだったり「うわぁ、これ可愛い♪」って言う女の子は嫌いじゃないと思う。いや、それで良いんですよ。

アフロ:音楽関係はそういう女の子いなくない? むしろシャキっとしてる人が多い気がする。例えばカメラマンさんもさ、音楽媒体の人も。

阿部:自立している女性はしっかりしてますよ。同性からも好かれ得ると思いますけど、何かしなっとなってたり、「会社に守ってもらってます」ってことではないじゃないですか。写真を撮ることもクリエイティブだし。たしかに音楽業界でいうと、レコード会社の人もしっかりキャラが立ってないとアーティストを売り込めない女の人ばっかりだから、必然的にカッコイイ女性が多いけど。いわゆる普通のOLは全員がそうじゃないと思いますね。

アフロ:同業者でしなってる人はいる?

阿部:あんまりアーティスト同士って、一緒にならなくないですか?

アフロ:そんなに対バンしないのか。

阿部:しないし、対バンをしたギャルバンの女の子もそういう人は残ってないかも。みんなしっかりしてる。ステージで「よし、やるぞ!」って挑む行為が男性的なことだから、そういう顔になるのかもしれない。自分もそうだと思いますしね。

●MOROHAの音楽を阿部真央が語る●

アフロ:(Twitterにあげた )2人で「うし!」ってやった動画は良かったね。

阿部:ね! 良かったですよね。仲良しな感じで。それこそ、この間のラジオ(『MOROHAの!オニヤンマ獲りにいこうぜ!』)に出させていただいた時に好きな曲のことをいっぱい言おうと思ったんですよ。だけど……。

アフロ:ふざけて終わっちゃったよね。

阿部:あの場に入れたことが楽しすぎて、ちゃんと言えず。本当に良い曲を作りますよね。

アフロ:本当?

阿部:本当にそう思う! この間、母に「今度、MOROHAっていうアーティストさんと対バンするんだけど、マジで良いから聴いて」って「ハダ色の日々」を聴かせたら「良い歌だねぇ」って泣いてたんですよ。私は「ハダ色の日々」を車の中、青山通りを差し掛かるところで初めて聴いたんです。本当に良い歌だなと思って。しかも、あの曲を書いたのは今の私よりも年が下の時ですよね。アフロさんが25歳くらい?

アフロ:そうだね。よく存じてくれて。

阿部:同じアルバムでいうと「バトル鉛筆」もすごい好きなんですけど。あのアルバムを聴いて、どうして25歳でこんな曲が書けるんだろうって。アフロさんの歌詞と歌声、あとはUKさんのギターも相まって二人がステージに立って、あの強い言葉を言うとスッと入ってくるというか。何も自分の中で抵抗が生まれないんですよね。音楽なんだけど崇高なヒーリング・ミュージックを聴いてる感覚になるんです。鼓舞もされるんだけど、それ以上に浄化されることが多くて。だから、なんでこんなに強い言葉を人に抵抗を感じさせずに歌えるんだろう、と思って。

アフロ:人によると思うよ。反発する気持ちは物凄いわかる。それは図星を突こうとしてるから。

阿部:そこを突かれるのは嫌だ、ってこと?

アフロ:うん。本当のことを言われるのは嫌じゃない? だから俺は反発してくれる人が一番響いてる人じゃないかなと思う。例えばネットで「MOROHAが嫌いだ」って言ってる人こそ、響いてるんじゃないかな。

阿部:実は見つめるのが嫌なだけでね。

アフロ:だから、そういう声に向かってやろうとしたりする。「良いね」と言ってくれる人に関しては、既に自覚してることを再確認するからヒーリングなのかもしれないね。持っているからこそ。

阿部:光栄です。

アフロ:逆に、持ってるけど、自覚しようとしてないというかさ。そういう人に対して歌うことの方が俺自身ワクワクする。

阿部:その人たちが変化をもたらすキッカケってことですね。

アフロ:うん。逆に15歳の自分が今やっている音楽を聴いたら、きっと嫌だろうし。

阿部:なんでですか?

アフロ:ムカつくと思う。図星すぎちゃって、本当のことをガンガン言われるのが嫌だし。

阿部:痛いことを突かれて目を背けたくなるって感じですか。

アフロ:そうだね。多感な時期っていつだったの?

阿部:高校の時、曲を作ることで「私は多感なんだ」って分かった感じでしたね。元々、シンガーソングライターって道があるんだとか、ギターを弾いてみたいなと思うきっかけになったのは、中学2年生で聴いたアヴリル・ラヴィーン。あとはYUIちゃんもバーっていってたので、和製アヴリル・ラヴィーンみたいな扱いだったじゃないですか。そういうのにふれて、ギターを弾く女の人が全面に出つつ、バンドブームも一緒に来たんですよ。アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の名前が世に知られるようになったり、ラッド(RADWIMPS)がメジャーデビューし始めた頃で。そういう自分たちで曲をクリエイトしている人たちを中学2年生以降に聴き始めました。

アフロ:アヴリル・ラヴィーンは衝撃的だったよね。「Sk8er Boi」のMVは可愛いかった。

阿部:可愛かった! ぴょんぴょん跳ねて、走ってね。

アフロ:あれは凄かったな。俺も初めてちゃんとふれた洋楽はアヴリル・ラヴィーンでさ。中学で初めて付き合った彼女が、カラオケでアヴリル・ラヴィーンの「Complicated」を歌ってて。初めてだったのよ、日本人が英語の曲を歌ってる姿を見たのが。しかも自分の彼女でしょ? すごいカッコイイ、と思って興奮したのを覚えてる。その人は、今、漫画を描いてるんだって。

阿部:えっ、すごい!

アフロ:それこそ、アヴリル・ラヴィーンを聴いてた流れで洋楽が好きになって。「いつか海外へ行きたい」って言ってたら、本当に海外へ行って。今は日本に戻ってお子さんを育ててる。

阿部:すごい! クリエイティブカップルだったんだね。

アフロ:強い人だったなぁ。

阿部:強い人が好きですか?

アフロ:どうだろうなぁ……でも、そうかも。

阿部:強くてオーバーオールを着てる子が好きなんでしょ?

アフロ:なんで知ってんの?

阿部:だって聞きましたもん。

アフロ:それはシーズン前で、今はGAPのグレーのVネックのニットを着て、タイトなジーンズを穿いてる子が好き。

阿部:良いですね。

アフロ:どんな人が好きなんですか?

阿部:……尊敬できる人ですね。

アフロ:今、遠い目をしてたけど……。

阿部:アハハハハ! 「素敵だな」とか「こういう面を持ってるんだ」っていう人の方が良くないですか。

アフロ:どうなんだろうねぇ。聞きたかったんだけど、その貫禄はどこで拾ったの?

阿部:デビューした時に良く言われたのが「ふてぶてしい」って。でも、しょうがないみたいで……私の魂って“おばあさん”らしい。

アフロ:へぇぇぇぇーー! それは見てもらったの?

阿部:はい、占いやスピリチュアルが大好きで。だから私の友達は歳上ばっかり。親友は42歳。

アフロ:どこで知り合うの?

阿部:エステをやってる人で、その人はママ友なんです。他には4、50代の人もいて。なので昔から言われてるんですよ。可愛げがないっていうか、若さがないって。

アフロ:そう思うと、歌の阿部真央の方が若くない?

阿部:そうですね。若いときもあると思います。

アフロ:もしかしたら、話していくうちに若い部分が出てくるかもしれないよね。

阿部:(マネージャーに向かって)でも、普段からこんな感じだよね? あ、うなずいてます。

アフロ:歌ってる方が若いのは“音楽の魔法”なのかな。

阿部:良い言葉ですね。

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