美術館マニア・石原さとみの注目作は!? 『フェルメール展』記者発表会で、追加の来日作品4点が明らかに
展覧会ナビゲーターを務める女優の石原さとみと日本側の監修者である千足伸行(成城大学名誉教授・広島県立美術館長)
2018年10月5日(金)〜2019年2月3日(日)まで東京・上野の森美術館で開催される『フェルメール展』の記者発表会が、7月24日に行われた。世界に35作しか現存しないともいわれるフェルメールの作品が、日本美術展史上過去最多の8作品が来日する本展(東京展)。昨年11月に続いて2度目の発表会となる今回は、展覧会ナビゲーターに就任した女優の石原さとみも登場し、日本初公開の《赤い帽子の娘》ほか、未発表だった来日作4点が明らかになった。
昨年開催された記者発表会レポートはこちら
フェルメール来日作のうち、未発表だった4点が明らかに!
美術史上最も重要な画家の一人でありながら、その作品が35点ほどしか現存していないともいわれるヨハネス・フェルメール。「それは、このうえなく優雅な事件」を謳い文句に展開される本展は、フェルメール作品のうち8点が来日するという、美術ファンにとってまさに“事件”というべき出来ごとになる。本展については、昨年11月の発表会の段階で大まかな開催概要と来日作の一部が先行発表されていたが、今回の発表会で残りの来日作4点など、さらに詳細な情報が明かされた。
フェルメールブルーで演出された発表会会場
会場では、総合監修を務めるアーサー・K・ウィーロックJr.(元ワシントン・ナショナル・ギャラリー学芸員)のビデオメッセージに続き、展覧会ナビゲーターに就任した女優の石原さとみが登場。フェルメール・ブルーをイメージした青いバンダナとワンピースに身を包んで現れた石原は、来日作品の追加発表を前にして「ドキドキします」とやや緊張した様子を見せた。
かわいらしい衣装で会場に登場した、展覧会ナビゲーター石原さとみ
その後、石原に主催者から1枚の封筒が手渡され、追加発表となる来日作4点の情報が解禁。既に発表されている《牛乳を注ぐ女》、《マルタとマリアの家のキリスト》、《手紙を書く婦人と召使い》、《ワイングラス》に加えて、新たに《手紙を書く女》、《赤い帽子の娘》、《リュートを調弦する女》、《真珠の首飾りの女》も東京展に出品されることが発表された。
石原の発表により、未発表だった4点の来日作が明かされた
《ワイングラス》と《赤い帽子の娘》は今回が初来日。さらにこれら8作品については「フェルメール・ルーム」と称された一室の中にまとめて展示されるという。発表後にこのことを聞かされた石原は、「贅沢ですよね」と驚きの表情。さらに「私はフェルメールの日常とか生活を描いていて、しかも人物にスポットを当てた作品が好きなので、どこを見渡してもフェルメール作品という空間で自分はどんな気持ちになるのだろうと今から楽しみです」と興奮気味に語った。
8作品が一部屋に会する、世界が驚く夢の美術展
続いて、日本側の監修者である千足伸行(成城大学名誉教授・広島県立美術館館長)が登壇し、追加で発表になった4作品について解説。ここからはその内容を抜粋しながら各作品を紹介していこう。
日本側の監修者を務める千足伸行氏(成城大学名誉教授・広島県立美術館館長)
《手紙を書く女》は、黄色い服を着た女性が手紙を書きながらこちらを見つめているかのような作品。手紙はフェルメールの作品に多く登場するモチーフで、「普通の女性でも手紙が書けたというのは当時のイタリアやスペインでは考えられないことで、1枚の絵がこの頃のオランダにおける教育・文化の水準の高さを伝えている」と千足は述べる。一方で、フェルメールといえば「フェルメールブルー」ともいわれる鮮やかな青を好んだことで知られるが、明るい黄色もよく用いた色のひとつで、テーブルのあたりには青と黄色の鮮やかなコントラストが見られる。また、印象的な頭飾りのリボンは当時のオランダの流行にはないもので、「フェルメールによる一種のファンタジーのようにも思える」と千足は説く。
ヨハネス・フェルメール《手紙を書く女》1665年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Gift of Harry Waldron Havemeyer and Horace Havemeyer, Jr., in memory of their father, Horace Havemeyer, 1962.10.1
《赤い帽子の娘》はA4サイズほどの小さな作品で、フェルメール作品の中では珍しく板に描かれている。暗い部屋の中に女性の姿がふわりと浮かび上がり、その中でも印象的な赤い帽子は「当時のオランダ人からするとオリエンタルな異国趣味なもの」だったと千足は解説する。また、濡れたような艶のある唇や首元の白のタッチはフェルメールの他の作品にはないものだという。なお、こちらは12月20日までの期間限定展示となっている。
ヨハネス・フェルメール 《赤い帽子の娘》1665-1666年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Andrew W. Mellon Collection, 1937.1.53 ※12月20日(木)まで展示
《リュートを調弦する女》には、弦楽器の音色を確かめながら窓の外を眺める女性が描かれている。楽器もフェルメールが多く描いたモチーフで、「恋の雰囲気を高める際に使われることが多かった」と千足は解説する。一方で、調弦というテーマについては「自分を正すとか、人間関係をうまくまとめていくとか、比喩的な意味も込められていたのではないか」と言う。また、ガラスが曇って見えることから、「彼女が見ているのは外の世界ではなく、何かを考えながら視線だけは外に向いているのではないか」と説く。
ヨハネス・フェルメール《リュートを調弦する女》1662-1663年頃 メトロポリタン美術館 Lent by the Metropolitan Museum of Art, Bequest of Collis P. Huntington, 1900 (25.110.24). Image copyright (C) The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY
最後の1点となる《真珠の首飾りの女》は、黄色い服や頭飾りのリボンなど、先ほどの《手紙を書く女》との共通項も見られる作品。身支度をする女性が真珠の首飾りを結ぼうとして壁の鏡を見ている姿が描かれている。フェルメールがこの絵にどんな意味を込めたかは定かではないが、西洋絵画において鏡は「『真実』や『自惚れ』の比喩に使われることが多い」と千足は言う。また、空間の中心を成す白い壁には当時のオランダの地図が描かれていたが、後にフェルメール自身の手によって白く塗りつぶされているという。
ヨハネス・フェルメール《真珠の首飾りの女》1662-1665年頃 ベルリン国立美術館 (C) Staatliche Museen zu Berlin, Gemäldegalerie / Christoph Schmidt
なお、本展にはフェルメールと同時代にオランダで活躍した画家の作品約40点も来日し、肖像画、神話画と宗教画、風景画、そして風俗画と、絵画ジャンルに沿った全6章によって展覧会を構成。また、大阪展(2019年2月16日~5月12日)については来日作や開催概要などを現在調整中とのことだが、東京展には展示されないフェルメール作品《恋文》が展示されることのみ先行発表された。
美術館マニアの石原さとみは《牛乳を注ぐ女》に注目!
千足の解説の後には石原さとみが再びステージに登場し、司会者とのゲストトークを展開。プライベートの海外旅行でも「美術オタクの人をガイドに付けてください!」と旅行会社にリクエストするほど美術館巡りが好きという石原。今回来日するフェルメール作品の中では《牛乳を注ぐ女》が特に気になるそう。
手振りを交えてフェルメールへの思いを語る石原さとみ
「この人の気持ちになってしまうというか、この牛乳は重いのかな~とか、フェルメールから『そこで止まっててください』って言われた上で『でも、ちょっとずつ牛乳流して下さい』って言われているのかな……」などと、描かれた場面を想像。さらに「左の腕の筋肉が盛り上がっているのを見ると、翌日は筋肉痛になったのかな」と、モデル女性の“苦労”を慮り、女優ならではの細かな分析で会場を楽しい雰囲気に包んだ。
石原は本展の音声ガイドも担当。本展では無料で音声ガイドが利用できるシステムなので、珠玉の名作たちをアート愛あふれる彼女の声とともに楽しもう。
石原の女優ならではの分析で、会場は明るい雰囲気に
史上最大のスケールで展開される『フェルメール展』は、10月5日(金)から来年2月3日(日)まで東京・上野の森美術館で開催。なお、本展は日時指定入場制となり、10月分の日時指定券は7月25日から発売されている。11月以降の日時指定券も順次発売となるので、詳しくは公式サイトをチェックしよう。
イベント情報
会期:10月5日(金)〜2019年2月3日(日)
会場:上野の森美術館(東京・上野)
開館時間:9:30〜20:30(最終入場は閉館時間の30分前) ※開館・閉館が異なる日もあります。