男肉 du Soleil、新作の稽古場に潜入!!(ラップ&コメント付き)
ダンスは熱く、芝居はゆるく。唯一無二の世界を生み出すその現場はこんな感じでした。
実生活では冴えない男肉団員たちが、舞台という名の別次元ではガンガン踊って、最後は地球を救うヒーローになる…というメタ的なステージで(ちなみにタイトルに「大長編」を冠しているのは、映画版がTV版のパラレルワールドになっている『大長編ドラえもん』にちなんでのもの)、着実に中毒患者を増やしていってる京都のダンスカンパニー「男肉 du Soleil(おにく・ど・それいゆ)」。次回新作公演『がんばれ! モグラーズ』は、男肉全員が弱小企業に就職し、会社の立て直しと社会人野球での優勝を目指すという、プロレタリア×スポーツモノな内容になるとか…。一体どんな舞台になるのか見当がつかないので、連日熱い稽古が繰り広げられている(はずの)京都の稽古場を訪れてみた。
開始時間直後に現場を訪れると、団員はみなウォーミングアップの最中。ストレッチをしたり、ここまで稽古してきた動きのおさらいを思い思いに行っている。その片隅で振付・演出の池浦さだ夢団長は、ゴロリと寝転んだ体制のまま、映像も担当するすみだとオープニング映像の打ち合わせ中。この絵だけを見ると「舞台ナメとんのか」という言葉が頭をよぎるが、話してる内容は意外と大真面目だった。
まず始めに、団長が「もぐら工務店」の新しい社長となり、全団員が同社に就職するまでの背景と経緯を、歌とダンスに乗せて見せていく導入部の稽古。一見単純なダンスだけど「ここは動きよりも(身体の)向きが大事。45度ずつちゃんと回って」と、なかなかシビアな指示が飛ぶ。振付によっては、団長自らが実際に動いてみせる時も。その動きがメタボな体型に似合わずなかなかシャープなので、やはりダンスカンパニーを率いる人間だけあるなあと、思わぬ発見をする形となった。
しかし一方でストーリーの方は、相変わらずツッコミどころ満載のエエ加減さ。どうもその一因は、つかこうへいよろしく団長が口立てで即興的に話を作っていくという、そのやり方にあるようだ。一応脚本らしき物は各団員の携帯メールに送られては来ているのだが、稽古中にその場のノリで「やっぱりそこ、○○って言って」とバンバン上書きを重ねていく。この日は、団長がつい口走ったあるアイテムが意外と万能であることがわかったため、急遽そのネタで1シーンを作り上げ「これ、意地でも本編に入れます」などと言い出したりも。良く言えば臨機応変、悪く言えば行きあたりばったり。とはいえこんな感じで、現場の空気感からストーリーを創作していくからこそ、ダンスと一緒になった時に独特のグルーブ感を生むのかなあ…と好意的に考えてみた。
今回のゲストは、大阪の俳優集団「劇団Patch」の岩﨑真吾と、京都の小劇場界で活動している井戸綾子の若手2人。岩﨑は、以前団長が「劇団Patch」と一緒に舞台を作った時に、男肉の世界が似合いそうだと思ったので誘ったそう。一方の井戸は、男肉のワークショップに出席していた縁で出演が決まったとか。それぞれの役は、岩﨑は元高校野球界のエースで、井戸は「もぐら工務店」先代社長の一人娘。稽古を見た限り、男肉の世界に自ら果敢に飛び込んでいってる岩﨑のヤル気と、おずおずと覗き込みながら懸命にしがみつこうとしている井戸の健気さが、対極的ながらもなかなか良いアクセントになるのではないか、と思った。
団長は「僕らはいつも冒険ばっかりしてるから、今回はいわゆる「仕事」をしてみようと思って。そこに社会人野球も絡むんですが、工場で働き過ぎると野球は強くならないし、野球を頑張り過ぎたら工場が潰れるというせめぎあいをどうするか。どれだけ仕事や試合というものを、身体パフォーマンスとゆるいコントで上手いこと見せられるかが勝負ですね」と抱負を語る。一方岩﨑にも話を聞くと「毎日笑いながら楽しく稽古していますが、やっぱりダンスが大変で、やはり男肉はダンスカンパニーだなあと思います。ダンスシーンも見どころですけど、団長ならではのボキャブラリーが散りばめられたお芝居のシーンも注目して欲しいです」とのこと。
今回も中二病的な茶番ストーリー(現時点では出てこなかったけど、最後は確実に宇宙戦争の流れになるはず)と、意外とテクニカルかつホットなダンスで、観る者をライブ感覚で楽しませてくれるはずの男肉 du Soleil。この公演の意気込みを団長にラップにしてもらったので、ぜひこれを聞いてから劇場に行くか否かを決めてほしい。
↑このラップ中に出てくるカンパニーに対しては、団長いわく「リスペクトしかないです」とのことなので、ファンの皆さんはどうか怒って苦情など送りつけないでくださいますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
《京都公演》
※12・13日は、公演終了後に「おまけトークショー」を開催。
《東京公演》
※16・17日は、公演終了後に「おまけトークショー」を開催。
■団長:池浦さだ夢