『STAND UP! CLASSIC FESTIVAL 2018』(スタクラフェス )宮本笑里、松下奈緒、髙木竜馬ら登場で午後も盛況 [クイック・レポート②]

レポート
クラシック
2018.9.23
(左から)宮本笑里(Vn)、青島広志 [撮影:石ヶ森三英]

(左から)宮本笑里(Vn)、青島広志 [撮影:石ヶ森三英]

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食べて、飲んで、くつろいで! クラシック音楽、そして音楽全般が「だ~い好き」な向きにはたまらないフェスティバル、『STAND UP! CLASSIC FESTIVAL‘18』(略称“スタクラフェス”)が、秋分の日、2018年9月23日(日祝)に開催された。いわば野外ロックフェスのクラシック版。会場には3つの野外ステージ「HARBOR STAGE」「GRASS STAGE」「Sunday Brunch Classic STAGE」が設置され、クラシック音楽だけでなく、ミュージカルやアニメの音楽まで、誰もがどこかで聴いたことのある音楽ばかり全100曲以上が演奏されるスタクラフェスのクイックレポート第二弾。

午前の部を紹介した前回に続き、今回は日中に上演された4つのプログラム「世界まるごとクラシック~みんなおいでよ、赤レンガ~」「ブランチonクラシック」「クラシック in アニメ」「Passion Classic」について、終わりたての余韻の残る中で、ライブの模様を伝えたい。

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 [クイック・レポート②]『STAND UP! CLASSIC FESTIVAL 2018』宮本笑里松下奈緒髙木竜馬ら登場で午後も盛況
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[撮影:伊藤惇]

[撮影:伊藤惇]

◆「世界まるごとクラシック~みんなおいでよ、赤レンガ~」

<出演:宮本笑里(Vn)、青島広志(指揮d)、シアターオーケストラトーキョー>

「世界まるごとクラシック~みんなおいでよ、赤レンガ~」は、指揮者・作曲家である青島広志の解説付きで、誰もが耳にしたことのあるクラッシック音楽を聴く事ができる贅沢な演奏会。すぐ横に海が広がるHARBOR STAGEは、心なしか広大に感じられる。天候に恵まれ、海から流れてくる風も仄暖かく、清々しい。野外で音楽を聴くにはもってこいの環境が整っていた。

そこに明るいお花柄の衣装を纏った青島が踊るように登場、間髪を入れずに、一曲目の行進曲「威風堂々」第一番の指揮を振り始めた。これで客席を一気に高揚させた後には、チャイコフスキー三大バレエのセレクションとして「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠りの森の美女」からの著名ナンバーを、明快な解説付きで演奏。「くるみ」では筆者の隣なりに座る子供が「運動会の曲だー!」と喜び、駆け回り始めてしまった(笑)。

青島広志 [撮影:石ヶ森三英]

青島広志 [撮影:石ヶ森三英]

宮本笑里はモンティの「チャルダッシュ」で気迫のこもった熱演を聴かせた。

宮本笑里(Vn) [撮影:石ヶ森三英]

宮本笑里(Vn) [撮影:石ヶ森三英]

続いて、626曲ものモーツァルト作品の中から「ドンジョバンニ」「フィガロの結婚」「魔笛」他、青島の編成したという、モーツァルトメドレーも実に見事! その後はミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』からおなじみの「ドレミの歌」。皆が振りを覚え、歌って踊り、会場と舞台が一体となった。そして、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界」より第4楽章が迫力満点に響く。熱烈なアンコールの拍手に応じて、すぐさまヨハン・シュトラウスⅠ世の「ラデツキー行進曲」。盛大な手拍子で会場が揺れたように感じた。もう一つのアンコール曲は、17歳の異才ピアニスト・Kyle(紀平凱成)によるロシアの作曲家カプースチンのジャズ風ナンバー。超越技巧すぎて、最近まで楽譜にならなかったという。

Kyle(紀平凱成) [撮影:石ヶ森三英]

Kyle(紀平凱成) [撮影:石ヶ森三英]

青島は指揮を振りながら観客の方に向かって踊っていたり、親しみやすい話し方で観客に話しかけるので、その様子に会場全体がノリノリになり、いやおうなしに楽しい気持ちになるコンサートだった。

◆「ブランチ on クラシック」

<出演:NAOTO(Vn)、DEPAPEPE(Gt.duo)、他>

GRASS STAGEでは、芝生の生えた観客席で、皆、それぞれに寛いで、今、行われようとしている「ブランチ on クラシック」を待ちながら、寝転んだり、談笑したり、思い思いに演奏を待ち、リラックスした雰囲気だった。

そんな中、登場したのが、楽器を持った、NAOTO(Vn)、DEPAPEPE(Gt.duo)達だった。「みんな楽しんでるかーーーーい!!!」の掛け声に、観客の「イエーイ!」という答えと共に始まった一曲目は、マリンの風を感じさせるような曲で、彼らの表情もまたとても明るく、こちらの会場の雰囲気そのものだった。

潮風が心地よく、今日の3つのどのステージよりも、観客がリラックスして見えた。それは、NAOTO達のキャラが成せる業なのかもしれない。DEPAPEPEの「悲壮」、NAOTOのバッハの「カンタータ」と続き、楽しげな雰囲気としっとりとした雰囲気が交互に織り交ぜられた。曲に合わせて観客が手を振る光景が野外フェスらしさを浮かび上がらせていた。

NAOTO(Vn)、DEPAPEPE(Gt.duo) [撮影:伊藤惇]

NAOTO(Vn)、DEPAPEPE(Gt.duo) [撮影:伊藤惇]

◆クラシック in アニメ

<出演:反田恭平(指揮)、松下奈緒(Pf)、髙木竜馬(Pf)、牛牛(ニュウニュウ)(Pf)、大山桃暖(Pf)、STAND UP!ORCHESTRA>

再びHARBOR STAGE。「のだめカンタービレ」「ピアノの森」など、アニメで使われたクラシックの楽曲が演奏される。STAND UP!ORCHESTRAのメンバーは、皆、若い力に溢れていて、入場すると、まさに、「のだめカンタービレ」に出てきた、学生オーケストラを彷彿とさせた。のだめや千秋が、その中にいるかのようだ。

一曲目は黄色の衣装に身を包んだピアニストで女優の松下奈緒が『ピアノの森』より「月あかり」を抒情性たっぷりに弾いた。会場から「かわいい」の声もあがるほど、彼女は皆の心を最初から掴んでいった。

次はラヴェルの「ボレロ」。最初のフルートの旋律に心を奪われるうち、繰り返されるメロディーが観客の期待をどんどん膨らませていった。

大山はモーツァルトの「ピアノソナタ2番」より第一楽章。「ピアノの森」で、主人公カイの幼少時代のピアノを弾く大山は13歳とは思えない、安定したモーツァルトで、会場を驚きで包んだ。

大山桃暖(Pf) [撮影:石ヶ森三英]

大山桃暖(Pf) [撮影:石ヶ森三英]

そして、ここからが、物凄かった。高木竜馬がショパン「バラード1番 ト単調作品23」を弾き始めると、客席が言葉を失った。ピアノの音の他には、海の音と、汽笛の音のみで、ここは野外ライブなのだろうかと思うほどの静けさ。こんなに人の心を捉えている光景は見た事がないぐらいに、静まり返っていた。さすがは、つい先日グリーク国際ピアノコンクールを制した高木である。

髙木竜馬(Pf) [撮影:石ヶ森三英]

髙木竜馬(Pf) [撮影:石ヶ森三英]

牛牛がショパンのエチュード ハ単調作品10-12『革命』を弾いても、その静けさは続いた。完璧な演奏で、観客を釘付けにしていた。よく、「良い演奏家は、場所や楽器を選ばない」と言うが、牛牛の演奏は、野外という事を忘れてしまいそうになるくらい、純粋で深遠な演奏だった。

ニュウニュウ(Pf) [撮影:石ヶ森三英]

ニュウニュウ(Pf) [撮影:石ヶ森三英]

そして反田恭平が指揮棒を持って登場すると、客席はどよめいた。「のだめ」でおなじみベートーヴェンの「交響曲第7番」より第一楽章を溌溂と演奏してみせるのだった。その後の「剣の舞」でも反田が棒を振り、若さ溢れる演奏をこれでもかと聴かせた。

反田恭平(指揮) [撮影:石ヶ森三英]

反田恭平(指揮) [撮影:石ヶ森三英]

◆「Passion Classic」

<出演:三浦一馬(バンドネオン)/上野耕平(Sax)、伊藤悠貴(Vc)、金子三勇士(Pf)、三浦拓也(DEPAPEPE / E.Gt)、他>

GRASS STAGEでは、グラス(芝)が見えないほどに所狭しと、シートが次々にひかれていった。この演奏を一番のお目当てに来る観客も多いのではないだろうか、と思われるほど。そして、海に向かって叫ぶ子供達。船に手を振る青年。空を飛び舞うカモメ。そんな中で、凄腕メンバー達による「Passion Classic」のセッションが始まった。

「Passion Classic」はアルゼンチンの、アストラ・ピアソラの曲を中心に、その名の通り、パッションな音で、「リベルタンゴ」など、タンゴにクラッシックとジャズの要素を融合させた迫力のある演奏を繰り広げた。

「Passion Classic」 [撮影:伊藤惇]

「Passion Classic」 [撮影:伊藤惇]

◆身体で感じる音楽

空と海をバックに、クラッシック音楽を生で聴いている。子供は走り回り、それぞれがシートに座り、まるで家のリビングにいるように寛いでいる。今まで、こんなクラッシックのコンサートはあったたろうか?

普段のクラッシックコンサートなら、身体を揺らしたりすると隣の人の迷惑になったり、声を発せれば、「シー!」なんて言われかねないが、このスタクラフェスでは、手拍子したり、隣の人の足拍子でさえ、心地よく響いてくる。近くの青年は、指揮者に合わせて、自分も小さく指揮を振っている。結構本格的だった。もっと回りを見回すと、歌いだす子供、踊っている人もいる。皆、自由に楽しんでいることが伝わってくる光景だった。

よく、「音楽を身体で感じる。」と言うが、こんな今日の観客の楽しみ方や行動こそ、本当の意味での「音楽を身体で感じる。」という事なのではないだろうか。この観客の反応が、いつも室内でクラッシック音楽を聴いている人の、心の中の表れなのだと、改めて感じた。今日来た観客も、そう感じる人は少なくないのではないだろうか。

なお、日中の同じ時間帯には、無料鑑賞ゾーンのSunday Brunch Classic STAGEでも、山田姉妹、園田涼(Pf)、横浜市立戸塚高等学校 吹奏楽部、細川千尋ジャズトリオ、藤原功次郎(Tb)、實川風(Pf)、正戸里佳(Vn)らがそれぞれに魅惑の演奏を繰り広げていた。

横浜市立戸塚高等学校 吹奏楽部 [撮影:大橋祐希]

横浜市立戸塚高等学校 吹奏楽部 [撮影:大橋祐希]

取材・文=清川永里子  写真撮影=石ケ森三英/伊藤惇/大橋祐希

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公演情報

『イープラス presents STAND UP! CLASSIC FESTIVAL 2018』
 
■公演日時:2018年9月23日(日・祝日)開場9:30/開演10:30/終演20:30 ※予定
■会場:横浜赤レンガ倉庫特設会場 (神奈川県)
 
■出演者(50音順):
【ソリスト】
伊藤悠貴(Vc)、伊礼彼方(Vo)、上野耕平(Sax)、大山桃暖(Pf)、金子三勇士(Pf)、北川辰彦(Bar)、紀平凱成(Pf)、小林沙羅(Sop)、小林美樹(Vn)、サラ・オレイン(Vo,Vn)、反田恭平(Pf)、髙木竜馬(Pf)、丹呉由利子(Mez)、DEPAPEPE、NAOTO(Vn)、中井亮一(Ten)、牛牛/ニュウニュウ(Pf)、藤田真央(Pf)、麻衣(Vo)、松下奈緒(Pf)、松田理奈(Vn)、三浦一馬(バンドネオン)、宮本笑里(Vn)、山本耕平(Ten)、LE VELVETS、他
【指揮】
青島広志、岩村力、横山奏
【アンサンブル】
シアター オーケストラ トーキョー、STAND UP! ORCHESTRA、ぱんだウインドオーケストラ、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、岩城直也(Pf,編曲)

 
【Sunday Brunch Classic Stage】※無料ステージ
1966カルテット、こぱんだドラムス、佐藤芳明(Acc)、實川風(Pf)、園田涼(Pf)、新倉瞳(Vc)、藤原功次郎(Tb)、細川千尋ジャズトリオ、正戸里佳(Vn)、mille baisers、山田姉妹、横浜市立戸塚高等学校 吹奏楽部、米津真浩(Pf)
【総合司会】松下奈緒
 
料金:
1日券シーティング:13,800円
1日券スタンディング:9,800円
1日券スタンディング(学生) :4,800円
半日券(14時まで):5,500円
※1日券スタンディング(学生)はイープラス限定の販売となります。
※シーティングエリア内は座席あり・自由席になります。シーティングエリアへのご入場は「1日券シーティング」「半日券(14時まで)」をご購入のお客様に限ります。
※半日券(14時まで)は夜まで楽しみたいけど、小さなお子様がいてお昼過ぎまでしかいられない方の為にご用意した枚数限定の特別なです。開場から14時まで、シーティングエリア・スタンディングエリアの両方をご利用いただけます。それ以降はご退場をお願い致します。
※スタンディングエリアはすべてのお客様にご入場いただけます。
※雨天決行 ※4歳以上必要(3歳以下は保護者1名につき1名のみ入場無料)
※ステージ内容は変更になる場合もございます。予めご了承ください。
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[当日券料金]
1日券(シーティング)\14,300
1日券(スタンディング)\10,300
半日券(~14:00)\6,000
※当日券の販売は午前9:30~となります。「当日券」窓口までお越しください。
※各席種ともに、予定枚数が終了次第、販売終了致します。
[半日券アップグレード券料金]
\8,300
※「半日券(~14:00)」をお持ちの方のみの販売です。何卒ご了承ください。
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:当日券は2018年9月23日(日祝)AM9:30より会場「当日券」窓口にて販売(詳細は上記)。
 
■関連サイト:
公式サイト:http://standupclassicfes.jp
e+(イープラス):http://eplus.jp/
株式会社イープラス:http://corp.eplus.jp/
Twitter:https://twitter.com/stacla_fes2018
Facebook:https://www.facebook.com/Stand-Up-Classic-Festival-2018-216194119151436/​
■主催:イープラス/朝日新聞社/BSフジ
■協賛:クレディセゾン/ファミリーマート/テラダ・ミュージック・スコア
■後援:神奈川県/横浜市文化観光局/横浜港運協会/(一社)横浜港振興協会/tvk/FMヨコハマ
■企画制作:イープラス/Zeppライブ
■制作協力:クリエイティブマンプロダクション
■協力:日本クラシック音楽事業協会/ソニー・ミュージックエンタテインメント
■問合せ:イープラス:0570-01-2244(受付時間10時~18時・土日祝含む)
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