渋谷に満開の桜!『カブキノヒカリ展』レポート テクノロジーで体験する、古典芸能の物語
2019年3月31日(日)まで、東京・渋谷モディ(MODI)6階のhmv museumにて、『カブキノヒカリ展 exhibition: the lighting art of KABUKI』が開催されている。
本展は最新テクノロジーを用いた体験型展示イベントで、歌舞伎の演目『義経千本桜』からインスパイアされた4つのコンテンツを楽しむことができる。主催は松竹株式会社。インスタレーションのプロデュース、制作は、若手クリエイターチームの株式会社ハローと、メディアアーティストの坪倉輝明氏が手掛ける。
テクノロジー×古典芸能のエンタテインメント
『義経千本桜』は、1747(延享4)年に人形浄瑠璃として初演され、翌年に歌舞伎となって以降、現在に至るまで繰り返し上演されてきた、人気の高い歌舞伎の演目だ。源平の合戦で活躍したものの、兄の頼朝から命を狙われる身となった源義経。物語は全五段を通し、義経を追う平家、義経を守ろうとする源氏など、義経を取り巻く人々にスポットをあてて展開していく。
そんな歌舞伎の名作『義経千本桜』の中から、『カブキノヒカリ展』では、二段目にあたる《鳥居前》、四段目にあたる《道行初音旅》と《川連法眼館》が題材として取り上げられている。登場人物は、静御前、源義経、狐忠信。
不可視演舞 ~Invisible Performance~
はじめに見るのは、「不可視演舞(ふかしえんぶ)」と題された映像作品。上手には赤い鳥居がみえる。用意された差出(歌舞伎で使われる手持ちの照明)のような灯篭を手に持ち、スクリーンに差し出すと、人間の影が浮かび上がった。
スクリーンと自分の間に、目には見えない演者がいるかのように、灯篭が影を作る。灯篭を動かし、位置やスクリーンまでの距離をかえると、それに合わせて人の影も変容する。参加者が別の灯篭をかざすと、そちら側からも光をあてたように影が増えた。
ここで登場するのは、静御前、義経、佐藤忠信。スタッフの方によれば、影の動きは松竹株式会社監修のもと、実際に演じてもらい、そのリアルな人間の動きと、映像だからこその幻想的な演出が見どころだ。
光景の奏~The Music of the Scene~
「光景の奏(こうけいのかなで)」は、ホログラムをつかったコンテンツ。黒い台が3つ並び、それぞれに手をかざす参加者たち。台の正面にくると、CGの和楽器が浮かび上がった。この楽器は手をかざすことで演奏もできる。楽器の音色に合わせて、映像にも変化が起こる。
はじめて『義経千本桜』に触れる方にはアッと驚く、『義経千本桜』を知る方ならばニヤリとする展開だ。映像と音による、歌舞伎の名場面の新しい遊び方を楽しんでほしい。
吉野の花道~Yoshino’s Path of Flowers~
足元に目を落としたところに広がるのが、3つ目のコンテンツ「吉野の花道」。桜が満開の吉野路を歩くように、一歩一歩花びらを舞い散らせながら次のコンテンツへ進もう。
桜の下で舞う ~Dancing beneath the Cherry Trees~
最後の「桜の下で舞う」は、タイトルのとおりスクリーンに映し出される登場人物たちと、花吹雪の中をダンスできるコンテンツだ。自分が動くと、登場人物たちもシンクロして動き出す。映像の静御前は、歌舞伎の舞台でみるのと同じ衣裳に身を包んでいる。『義経千本桜』の世界に飛び込むような作品だ。
展示に込められたストーリーは、エントランスで配布されるカードのQRコードから確認できるので、歌舞伎の知識ゼロでも一切心配なし。会場の外には入場者でも購入可能なオリジナルグッズや関連グッズが取り揃えてある。コンパクトにまとまった展示なので、気軽に立ち寄りたい。
渋谷の真ん中で、非日常的な体験ができる『カブキノヒカリ展』は3月31日まで。鮮やかに舞い続ける桜に、一足早いお花見気分を味わってみてはいかがだろうか。