東京生まれのお酒と厳選された日本各地の美酒がたっぷり楽しめる『第7回 武蔵の國の酒祭り』
『第7回 武蔵の國の酒祭り』
2019年9月14日(土)府中市 大國魂神社参道わき広場
文化の秋、行楽の秋、食欲の秋、そしてやや強引ではあるが日本酒の秋の到来である。また、秋は祭りの季節でもある。東京の西側は元々農地だったので、収穫を感謝する秋祭りが主流。で、今回お邪魔したのは『武蔵の國の酒祭り』というお酒のお祭りである。
今年で7回目を迎えるこのイベントは、東京都酒造組合が主催する日本酒のイベント。東京生まれのお酒だけでなく、日本各地のお酒も揃い、大いに日本酒が楽しめるお祭りだ。会場は府中にある大國魂神社の境内。この大國魂神社には醸造の神様の松尾様が鎮座しているので(松尾神社に関しては、後半に記載するこのイベントの趣意書に詳しいのでご一読を)、感謝を込めて楽しみたい。
早速会場に向かうとしよう。JR府中本町駅か京王線府中駅のどちらからでも、徒歩数分で境内に着けるので、便利な会場である。大きな神社の境内なので、木に囲まれており、とてもいい雰囲気である。イベントの開始から30分ほど経過した、午前11時30分くらいに到着。受付でパンフレットと盃とミネラルウォーターのペットボトルをもらいいざスターである。
会場を見回すと、左手前に東京の酒蔵のブースがある。そこから時計回りに、北は北海道から南は沖縄のブースがぐるりと取り巻いている。その途中にイベントステージとフードのブースがある。会場の真ん中にはテーブルが用意され、参加者がゆっくりと飲食できるようになっている。
パフレットには今回出品しているお酒がすべて掲載されていて、番号が振られている。今回は42の都道府県から美酒が集合。東京の小澤酒造の生酛純米吟醸東京蔵人が1番で、沖縄の泰石酒造の純米酒が136番。ということは136種類の日本酒が「飲んでくれー」と手ぐすね引いているわけだ。
さてとどこから飲み始めようか……。その前にこの手のお酒のイベントの時、酒飲みには鉄則がある。一般的に日本酒は普通酒、本醸造、純米、特別純米、吟醸、純米吟醸、大吟醸、純米大吟醸の順で、値段が上がっていくお酒。なので酔わないうちに(味の分かるうちに)いいお酒から試飲していくのが鉄則である。
では主催の東京のお酒から頂くことにしよう。まずは小澤酒造の生酛純米吟醸東京蔵人である。盃を差し出すとトクトクと1/3ほど注がれる。本日の一杯目である。盃に鼻を近づけ香りを楽しんでグビリ(口の中で転がして)、そしてゴクリ(喉越しを楽しむ)。う〜、美味しい〜。午前中から屋外で堂々とお酒を飲む、至福の瞬間である。
一杯目の余韻は早々にして、二杯目に進もう。すぐ隣の石川酒造の多摩自慢純米大吟醸たまの慶(よろこび)である。盃に注いでもらい、同じようにいただく。これも美味い! このペースでいけば、酔いつぶれる前にかなり飲めるかなぁ……などと不埒なことを考えながら飲み進めるとしよう。まずは東京のお酒を制覇するのだ。
田村酒造の嘉泉の田むら吟ぎんが、野崎酒造の喜正の純米吟醸、中村酒造の千代鶴純米吟醸秋川渓谷、小澤酒造場の桑の都純米吟醸元巳、豊島屋酒造の金婚純米豊島屋十右衛門火入れ、野口酒造の國府鶴純米吟醸と水を飲んでは盃を傾け、水を飲んでは盃を傾け……。ここで一休みしていると、ステージにて鏡開き(鏡抜き)が行われるとアナウンスである。しばしステージに注目しよう。
東京都酒造組合会長・小澤順一郎氏
壇上には東京都酒造組合会長・小澤順一郎氏が登壇し、イベント開催の挨拶である。「このイベントは来年もその先も続けてまいりたいと思っています。ご来場の皆さん、ぜひ肝臓を労りながら飲んでください。来年も宜しくお願いいたします」。この組合長の「肝臓を労りながら」という言葉を、文字通り肝に銘じたのである。その後、東京国税局・大柳 久幸氏、府中市長・高野律雄氏、府中観光協会会長・大室容一氏、むさし府中商工会議所会頭・濱中重美氏、府中市商店街連合会会長・郭 東仁氏、2019 Miss SAKE Japan/ミス日本酒・春田早重さんと順に登壇。重鎮の皆様は酒飲みの心をよくお分かりで、簡潔なスピーチに終始。さぁ、鏡開きである。ステージと会場が一体になって「よいっしょ!」の掛け声で鏡が開かれたのである。
2019 Miss SAKE Japan/ミス日本酒・春田早重さん
ステージでは地元の子供たちのお囃子や踊りのほか…
石川酒造の石川彌八郎聖豊社長がハーモニカを手に飛び入り参加
東京のお酒を堪能したので、ここからは全日本酒紀行であるが、その前に今回いただいたお酒のおつまみを紹介しておきたい。すべて地元の飲食店から、中華風の塩焼きそば、もつ煮込み、焼き鳥などからスイーツも出店。どれもリーズナブルでとても美味しく、酒が進んでしまう。「私は煮込み王子なんだよ」とおっしゃる、少々酔いの回った先輩が「このもつ煮は老舗居酒屋より美味い。食べなさい、食べなさい」とかなりの推し。本当に美味しかったのである。
ブースを時計回りに、酒紀行を続けよう。北海道、東北、関東、中部東海、近畿、山陰山陽、四国、九州、そして沖縄。東京を除いて、41の道府県から出品しているが、流石に全種類は肝臓が音を上げてしまう。でも、各県1銘柄は飲みたい! 主催の東京都酒造組合は酒造りのプロの組合である。プロが各県から、特徴的で美味いお酒を集めているのだからなるべく飲みたいのだ。頑張れ肝臓と心で叫ぶのである。
楽しそうにお酒を楽しんでいる参加者に話を聞いてみよう。つくね串を片手に盃を傾けている20代くらいの女性3人組は「3人とも昨年初めて参加したんですけど、日本酒の美味しさと、いろいろな味があることを知って、日本酒が好きになりました」と主催者が大喜びしそうなコメントをいただいた。また、かなりベテランの男性二人組は、60代後半とのこと。なかなかのツワモノで「今年こそは全銘柄飲むつもりできたけどさぁ、でも、もう酔っ払っちゃんだよねぇ。でも飲みたいんだよねぇ。美味しいんだよねぇ」とややろれつが心配な感じで楽しんでおられる。
悪酔いしている人はいないか、水を持って場内を見回っている「お水飲ませ隊」
あとは時間の許す限り、日本中の酒を堪能するのみである。午前11時から始まり、午後4時に終了である。忘れずに水を飲みながら、5時間かけてゆっくりと日本酒を味わう。幸せな一日である。日本酒好きにも、日本酒を知らない人にも『武蔵の國の酒祭り』はうってつけのイベントと言える。帰りに松尾神社をお参りし「悪酔いしませんように。来年も参加できますように」とお願いをして、会場を後にしたのである。
が、しかし、気をつけなくてはいけないのは、4時に会場を後にすると、居酒屋さんなどが続々と開店し始めるのである。それもちょうどハッピーアワーなのである。もう一度、組合長の言葉を肝に銘じて、勇気と節度を持って暖簾をくぐりたいものである。くれぐれも飲み過ぎにはご注意を。
取材・文=ハルマキケンジ 撮影=SPICE編集部
<趣意書>
東京の酒造りの起源は定かではありませんが、ある古文書に、元禄15年(1702年)幕府が酒改めを行ったということが記録されていることからも、かなり古い時代から行われてきたと考えられます。
酒は神代の昔からあったと言われておりますが、武蔵総社の大國魂神社境内に鎮座されております松尾神社は、寛政12年(1800年)に、武蔵國の醸造家(酒・味噌・醤油)が穀醸祖神である京都松尾神社より勧請し、この地に鎮斎した御社で、祭神は太古より醸造の守護神としても御神徳高き神であらせられます。現在は昭和32年に東京都酒造組合が奉納した覆屋内に御鎮まりになっています。
この度、東京都酒造組合は、醸造の守護神が鎮座しておられる歴史あるこの地において、地域と日本酒文化の高揚をはかるため「武蔵の國の酒祭り」を開催することにいたしました。この酒祭りは、東京の蔵元はもちろん、全国の酒造組合に協力をいただき、また、地元の府中市の皆さま方にもお力添えをいただき、「単に日本酒文化の普及にとどまらず日本酒ファンと府中市の新たな出会いと交流の場」となるべく取り組んでいく所存でございます。
開催概要
【日時】2019年9月14日(土)11:00~16:00(最終入場は15:30)
【入場料】前売り券2000円