中山美穂が、萩原聖人、橋本淳、勝村政信との四人芝居『魔術』で舞台に初挑戦!
撮影:福岡諒祠
深夜のおでん屋を舞台に繰り広げる四人の男女の濃密な会話劇
歌手として女優として唯一無二の存在感を示してきた中山美穂が、デビュー30周年にして待望の初舞台を踏むことになった。作品は、南河内万歳一座の座長にして劇作家、演出家としても活躍する内藤裕敬による新作書き下ろし『魔術』だ。萩原聖人、橋本淳、勝村政信という新鮮な顔合わせの濃密な四人芝居となる。舞台は深夜、とある終着駅の高架下。おでんの屋台を囲む3人の男と1人の女。彼らの交わす会話からさまざまな人間模様が浮かび上がる……。内藤が紡ぐこの不思議な世界観で、中山が演じるのは不安を感じながらも凛と立ち続ける強さを持った女性。どのような思いでこの作品と向き合おうとしているのか、初舞台への意気込みも含めて語ってもらった。
――『魔術』という、この作品へのオファーを聞いた時はまずどう思われましたか。
もともと舞台は、若いころからやりたかったお仕事なんです。だけど当時はスケジュールが合わなかったり、舞台に立つイメージもなかったのか、あまりお話自体も少なくて叶わなくて。でも今回、まず初稿の脚本を「ちょっと読んでみて」という感じでいただいて、読んでみたらとても面白くて。これなら私、できるかもしれない、ぜひやってみたい!と思ったんです。もう、今はこの舞台に立てることが、とにかくうれしくて楽しみで仕方がないくらいです。
撮影:福岡諒祠
――舞台のお仕事に興味を持たれたきっかけは。
コンサートはこれまでたくさんやらせていただいていまして、そこで得られるライブ感というものが本当に好きだったんです。それで、そのライブ感を味わいながら芝居をするということもすごくやってみたかった。女優として舞台を経験することは、きっとプラスになるだろうとも思いましたし。
――脚本のどういうところに魅力を感じられましたか。
少し難解な部分もありましたけれど、4人の登場人物によるセリフのかけあい、その微妙なやりとりが、本当に舞台っぽいなと思ったんです。実際にそのように演じることはすごく難しいことでしょうけれど、そのニュアンスを観に来ていただいたお客様に伝えられたら、そこにきっと何かがあるように思えて。そう思えるところもすごく面白かった。
――初舞台でいきなり四人芝居の会話劇に挑戦なさるというのも、度胸があるなと思いました。
そこはプレッシャーでもあります。すごくがんばらないと、と思っています。
――今回共演される萩原さん、橋本さん、勝村さんという3人の俳優さんたちとは。
みなさんと、これが初共演になるんですよ。
――いろいろなことで初めて尽くしなんですね。
撮影:福岡諒祠
そうなんです。まさかこの年齢になって、こうして初めての大きな経験ができるなんて思ってもいませんでしたけど。人生一回きり、みたいな精神で飛び込んでみます(笑)。
――そうやって、初めてのことに挑戦するのはお好きなほうですか。
本当は飛び込む前に考え過ぎちゃうタイプでもあるんですが、でも決めてしまえばとことんやる!という感じですね。
――今回演じられる役柄は、どういう感じの女性なんですか。
それがちょっと、まだ脚本の中からはあまり読みとれていないんです。物語自体がとても不思議なお話だし、キャラクターもそれほど強くは主張してこない感じなので。だからそれもお稽古が始まってから作っていくのかなとは思っているんですけれど。だけど舞台で役を演じるということはやっぱり映像とは違って、本当にいろいろな方向から観られるわけですからね。そうして観られてもいい自分にならなければいけないというのは、かなり難しそう。だからその場ではもう中山美穂ではなくて本当にその役になりきっちゃわないと、私の性格だとたぶん成り立たないかもしれないなとは思っています。
撮影:福岡諒祠
――作・演出の内藤裕敬さんの印象は。
お会いするのは今日でまだ2回目なんですよ。なんとなく演劇の方とか、演出家の方って気難しいイメージを勝手に抱いていたんですけど、内藤さんは全然そんなことなくて。すごく頼りがいのある感じの方だなというのが第一印象でした。さっき、ちょっとクマさんみたいだな、とも思いました(笑)。
――日本のファンの前に立つのもすごく久しぶりですよね。
そうですね。コンサート自体はもう……15年近くやっていなかったかもしれません。
――きっとみなさん待たれていたと思います。しかも東京公演は本多劇場ですから、距離もものすごく近そうですね。
近いですよね! でも実は本多劇場も、一度やってみたかった場所でもあったんですよ。今回初めて演劇をやらせていただくことになり、本当に1からという気持ちで挑みたかったので、そういう意味でもちょうどいいなと思っているんです。といっても、これがどれだけ大変なことかっていうことを、まだしっかりわかっていないのかもしれませんが(笑)。
撮影:福岡諒祠
――お芝居を演じる楽しさは、どういうところにあると思われていますか。
演じるということも含めて、どんなお仕事でもやはり大切なのはチームワークだと思うんです。作品が良ければそれだけスタッフも役者も盛り上がりますし、さらに良くしようという気持ちが生まれてくる時のエネルギーもすごくなるし。みんなで同じ気持ちになって一緒に作っていると、奇跡もしばしば起こるものですしね。そういうことが楽しいですし、醍醐味でもありますね。
――チームワークをよくするためにご自分で働きかけることもあるんですか。
私、本当は人見知りな性格が強いんですけれど、でも現場ではできるだけ良いところも悪いところもすべてさらけ出すようにしているんです。相手が望んでいなくても、積極的にどんどん見せていきたいなと思っています。
――稽古場では恥をかく、失敗するのも大切なことだと言われていますが、でも全部さらけ出すのって勇気がいりそうですね。
でも私、恥ずかしいことなんてもうそんなにないので(笑)。失敗から学ぶことのほうが大きいと思っていますしね。特にそうやったことで相手が心を開いてくれて、うまくセリフのキャッチボールができたらその分すごくうれしくなりますから。
撮影:福岡諒祠
――今回、ご自分の課題はどんなことですか。
課題というか、とにかく舞台に立つということではみなさんが大先輩ですし、演出の内藤さんからもどんどん厳しくやってほしいなと思っています。
――厳しくされてもそれほど傷つかないほうですか。
いえ、傷つきはしますけど(笑)、そこから逆にワーッと反動で上げていくことだけを考えたいほうですね。それができるところまで、早く持って行けたらいいなと思います。
――何も言われないよりは言われたいタイプ。
ええ、もうなんでもどんどん言ってもらいたいほうですね。
――今回、舞台にはずっと出ずっぱりという感じなんですか?
はい、4人とも出ずっぱりですね。ひたすらおでん屋さんで会話をしている感じ。それを内藤さんがどういう風に演出されるのか、私にはまだ全然想像もつかないですけどね。みなさんも果たしてこの舞台でどんなものが出てくるのか、どんな私が見られるのか、もしかしたら心配も含めていろいろな気持ちを持たれているかもしれませんが。他の3人のキャストのみなさんも、演出の内藤さんも本当に素晴らしい方ばかりが揃っていますので、ぜひ楽しみに観に来ていただけたら本当にうれしく思います。劇場でお待ちしています!
撮影:福岡諒祠