三木眞一郎・宮野真守【インタビュー】リーディング舞台『怪談贋皿屋敷』“全役入魂”で魅せた、声優の芝居の本質
三木眞一郎と宮野真守がふたりで挑んだリーディング舞台『怪談贋皿屋敷』(2020年12月上演)が、2021年2月7日(日)までの期間限定で映像配信中だ。SPICEでは、本公演の見どころや共演の感想などを、本番直前のふたりにインタビュー。
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“みきくらのかい”第二回公演「怪談贋皿屋敷」撮影:大石隼土
『怪談贋皿屋敷(かいだんにせさらやしき)』は、三木眞一郎と倉本朋幸(演出家・映画監督)によるリーディングユニット“みきくらのかい”の第二回公演。2020年12月19日に東京・日本教育会館 一ツ橋ホールにて上演された。ゲストは宮野真守。作中の10人以上の登場人物を、三木と宮野がたった2人で担当した。
【インタビュー】「三木さんが攻める姿勢を全く崩していないことがかっこいい」
――今回、ふたり芝居が実現したことへの想いをお聞かせください。
三木:宮野真守くんがスケジュールを開けてくれたことが光栄です。実は1年以上前からお声がけしていたので、こうして無事に公演当日を迎えることができてうれしく思います。そして、このような時期でもご来場いただけるお客様には、なにかしら心が動くようなものをもって帰っていただきたいなと思っています。
宮野:三木さんとは、10年以上前に『鋼鉄三国志』で出会ってから、ご縁があってアニメのレギュラー作品を数多くご一緒させていただいてきました。そのなかで、三木さんの背中から学ばせていただくことがたくさんありました。そして10数年経った今も、三木さんが攻める姿勢を全く崩していないことがかっこいいなと。その姿にとても感銘を受けました。僕自身も、自分ができるエンタテインメントを追求し続けてきましたし、新しいことにチャレンジして皆さんに喜んでいただくことを目指してきたので。三木さんが信念をもって作られているリーディング公演に出させていただけること、そして声をかけていただけたことが、改めてうれしかったです。
三木眞一郎
宮野真守
――ふたり芝居に『怪談贋皿屋敷』という演目を選んだ理由は?
三木:“みきくらのかい”は、日本語や言葉を大事にしていきたいという思いで活動しています。そこで、今回も劇作家・横内謙介さんの本を選ばせていただきました。横内さんが書かれる本は、とても情緒のある素敵な日本語を使われているんです。『怪談贋皿屋敷』は、庶民やエリート的な旗本といった異なる立場の登場人物たちが、いろんなものに翻弄されていく姿が描かれています。2020年7月の特別公演『曲がり角の悲劇』もそうでしたが、そういった群像劇のような面のある物語は、いまの時代性にとてもあっているような気がしています。観た人それぞれが、どこかしら身近に感じていただける部分もあるかなと。それから、本作を選んだもうひとつの理由は、個人的にも宮野くんの播磨が見てみたかったから。
――ということですが、宮野さんはいかがですか?
宮野:実はいままで、怪談作品は怖くて演じたことがなかったんです(笑)。
三木:ごめんね(笑)。
宮野:でも、いただいた『怪談贋皿屋敷』の台本を読んでみたら、怪談よりもラブストーリーとして、とてもグッとくる物語だったんです。そこが面白いなと思いました。ただ、みきくらのかいの方向性を熟知していたわけではなかったので、「これだけたくさんの登場人物が出てくる作品を、たったふたりでどう演じるんだろう……?」と。
三木:そうだよね(笑)。
宮野:ドキドキしました(笑)。
「お互いの持ち玉をその場で出しあって芝居を作っていくのは、声優ならでは」
――播磨とお菊のラブストーリーを軸にしながらも、それぞれがたくさんの登場人物を担当されていますよね。
三木:全キャラ、やっていて面白いよね。
宮野:全部面白いです(笑)。
三木:それはつまり、この物語において無駄な登場人物がいない、ということだと思います。庶民の役であれば庶民なりの苦しさを嘆いたり、何かを企んでいる役であればその人なりの目線でものを言ったりするわけで。僕はお菊、宮野くんは播磨がメインになっていますが、同時にこの作品全体を担っているんです。
宮野:僕は最初のリハーサルが印象深くて。どの役をどう演じるかといった打ち合わせを一切しないまま、いきなり始めたんです。でもよく考えてみれば、それって僕らが普段の声優の仕事でやっていることに近いんですよね。アフレコ現場で収録前に、「ねえ、どういう感じで演じる?」みたいには役者同士で相談しませんから。まずは各自が考えてきたものをぶつけて、相手がそうくるならこう返そうといった感じに演じながら芝居を作っていくものなんです。今回はたくさんの登場人物がいるので、「三木さんはそうくるんだ! じゃあ僕はこのキャラをこう演じてみようかな」と、リハーサル中に瞬時に考えながら演じていきました。ときには、「おいマモ、そうくるのか!」なんて三木さんが吹きだしてしまうことも。
三木:だってひどかったんだもん(笑)。
宮野:僕は楽しかったです(笑)。逆に、三木さんが何人ものおじさんをひとりで演じるシーンがあるのですが、そこはさすがに僕も面白くなってしまいました(笑)。そうやってお互いの持ち玉をその場で出しあって芝居を作っていくのは、声優ならではだなと思いました。
三木:そのやり方に、マモちゃんが乗っかってきてくれたので、頼もしかったですね。
宮野:稽古初日にあのライブ感で作っていくことができたのが、僕も面白かったです。
三木:せっかくだから、映像に残しておけばよかったね(笑)。ときには、台本を読み進められないくらい笑ってしまったこともありました。
宮野:お互いに、新キャラの出し合いが盛り上がりすぎましたね(笑)。
三木さんとラブストーリーを演じる!?
三木:みきくらのかいとしては、特別公演を含めると今回が3公演目。いままではメインキャラクターを中心にお話が展開していく作品だったのですが、今回は群像劇になっているので、いろんな面でも楽しめる反面、一番大変な回になりました。それなのに出ていただいて本当にありがとう(笑)。
宮野:僕も最初は、播磨の気持ちがメインで展開していくのかと思っていました。でも、僕が演じた“おマキ”というキャラクターもすごく面白くて。彼女の存在も、物語の上ではすごく重要だったので、いろいろな役を演じることができて楽しかったです! それにしても、台本をいただいて最初に驚いたのは、三木さんとラブストーリーを演じるということ。一体どうなるんだろうと思いました。おじさんとおじさんが演じるラブストーリー(笑)。
三木:ごめんね(笑)。
宮野:でも実際に演じてみたら、問題ありませんでした。物語に入って、その瞬間のその役の気持ちでどうしゃべるかが大事なんです。それは声優ならではの声の技術とはまったく別で、芝居心が大切なんだなと。それに、どんなに声優がいろんな役を演じることができるといっても、アニメーションで僕らが女性の役を演じる機会はほとんどありません。でもリーディング舞台では、それが成立するというのも面白かったです。
――お互いに刺激や発見はありましたか?
宮野:久しぶりに三木さんとここまでがっつり絡んでお芝居することができたので、それ自体がうれしかったです。この長尺で言葉を交わし合えることなんて、アニメではなかなかないですから。
三木:そうだね。しかも感染対策として少人数での収録スタイルになってからは、掛け合いができること自体貴重になってしまったし。
宮野:それもあって、一緒に演じられる喜びをかみしめています。
三木:僕も、マモちゃんが、隣でいろんな役になっているのを聞いていられるのはうれしい。「お、かっこいいじゃん!」と思ったり、「お!? そう来るのか…」と戸惑ったりしながら聞いています(笑)。今回マモちゃんとやるコトができて、お芝居に対するハートがいい意味で変わっていなかったことがうれしかった。声優は、声色を変えているのではなく、その役の人生を思い浮かべて瞬間的に芝居を変えていくもの。そうじゃないと、口から出ている音が変わるだけで、芝居としては成立してないことになってしまいますから。
宮野:特に今回のような演目では、声を変えて演じるだけでは成立しませんよね。
“みきくらのかい”第二回公演「怪談贋皿屋敷」撮影:大石隼土
“みきくらのかい”第二回公演「怪談贋皿屋敷」撮影:大石隼土
“全役入魂”で演じる
三木:そう。悲しみや苦しみ……いろんな感情を背負ってる人間がたくさん登場するので、声色や表面的な部分ではなく、中身を瞬間的に変えていく必要があるんです。それを一瞬で変えていけるのが声優。それができるからこそ、ふたりとも声優として生き残っていられたねと思いますし、同時に、これからも残っていようねとも思うんです。
宮野:僕はこれまでずっと、“一役入魂”という思いで芝居をしてきました。だから、たくさんの登場人物を演じる今回のような場合、一体どうなるんだろう? と思っていたんです。でも実際やってみたら、単純に“全役入魂”することになりました(笑)。
三木:(笑)。
宮野:非常に大変ですが、その瞬間にどれだけその役に入り込めるかが大事だったんだなと実感しました。自分の引き出しのなかから新しい表現を探すのも楽しいですし、三木さんの引き出しの中から霊媒師の伊勢福の芝居が出てきたときはすごく驚きました。「先輩、攻めてる!」って。
三木:後半にあの引き出しを出すのはかなりしんどいんだけどね(笑)。
宮野:そうだと思います。僕も三木さんも、一役入魂を全役でやり続けているので。
三木:その様を、お互いに見ることができないのが惜しいよね。
宮野:どんな顔でしゃべっているのか、気になりますよね。
三木:マモちゃんが表情で魅せているであろうシーンは、特に気になります(笑)。
“みきくらのかい”第二回公演「怪談贋皿屋敷」撮影:大石隼土
宮野:三木さんにからは見えませんが、落語のようにころころ表情を変えながら演じています(笑)。そういえば、ひとつ気づいたことがあったんです。よく「動きや目線を使った表現をしないで」といった演出をいただくリーディング作品もあるじゃないですか。声優らしく、声の芝居・読むことだけに徹して欲しいっていう。でも僕の場合、普段のアフレコ現場でもアクションしてるんですよね(笑)。ということは、今回のリーディングでの表現こそ、僕の普段のスタイルだなと。
三木:すごく気になるじゃない(笑)。
宮野:“幽霊らしい幽霊”役のときは、イキイキ演じてます。
三木:マモちゃん、あそこすごく楽しそうだもんね。
宮野:はい。いろんな引き出しをフル活用して演じています。
――本番前日のゲネプロでも手ごたえを感じたのでは?
宮野:手ごたえ、感じましたね。
三木:あったね。ちゃんとした意味で、面白かった(笑)。隣にいるマモちゃんの熱量が伝わってきて、このふたりでやれることが、とてもうれしかったです。今自分はなんて素敵な空間にいるんだろうと思いました。
宮野:演じていても、今自分は見たことのないものをやってるなと、手ごたえを感じました。それだけすごく攻めていますし、確実に僕らにしかできないものをお届けできているなと思えたんです。同時に、声優としてやってきた20年近い自分のキャリアも感じることができました。「自分はこんなことができるようになったんだ!」って。それは稽古場では感じられなかったことだったのでうれしかったです。本番同様のテンションや気持ちになると見えてくるものがありました。
三木:それはあるね。
宮野:そして、とてもじゃないけど、これを2週間演じ続けることはできないなと思いました。
三木:わかる。1日に2公演が限度だよね(笑)。それでもかなりギリギリかもしれない。
宮野:本番の1公演目で燃え尽きないようにしないとですね。
三木:2公演目が燃えカスになってたら大変!
宮野:僕も三木さんも、全力で魂を削って演じるタイプですからね(笑)。
三木:今回は、たった1日限りの公演だからこそ、僕らも全力で燃え尽きることができるんです。いくつになっても全力を出すことは必要ですし、むしろ全力ではない姿を人前でお見せすることのほうが失礼ですから。本番では、僕もマモちゃんを頼る部分があると思うので、ふたりで作りあげていきたいです。
気になる“みきくらのかい”の今後の予定も!
――今後のみきくらのかいの活動予定について、お聞かせください。
三木:社会情勢を鑑みつつではありますが、2021年7月に第三回目の公演を予定しております。そして、いずれは地方公演にも行きたいなと思っております。配信でご覧いただくのもいいものですが、やはり一番は生で芝居を観ていただくこと。特に、お子様にプロの役者の密度の濃い芝居を観ていただくのは、いい経験になると思うので。
宮野:僕も10代の頃に狂言を観て、とても刺激を受けました。すべてを理解することはできなかったとしても、芯にある魂の部分は伝わってくるものですよね。同じように、僕らの技術でも、何かしら伝えられるものがあるはず。三木さんは、実際にそれを伝えるべく活動しているところが素晴らしいなと思います。
三木:まさに同じような原体験が、僕にもあるんです。子どもの頃に学校の芸術鑑賞会で劇団四季の芝居を観たんだけど、あまりの衝撃に、その夜熱を出して寝込んでしまって。そういう体験ができる場を作ることってとても大事だと思うので、みきくらのかいでは積極的に取り組んでいきたいと思っています。
――それでは最後に、本番への意気込みをお聞かせください。
宮野:昨日、ゲネプロの後に三木さんが「明日の本番では燃え尽きるから」とおっしゃっていたのがかっこよかったです。先輩が全力で臨んでいらっしゃる姿を見て、僕もそうありたいと思いました。
三木:全力のものをお見せすることで、皆さんの心が少しでも動けばといいなと願っております。もし僕が燃え尽きたとしても、観てくださった皆さんの心が動かなければ何の意味もありませんから。ただただ全力で、舞台に立ちたいと思います。
取材=実川瑞穂、撮影=荒川 潤
『怪談贋皿屋敷』配信情報
配信映像は、舞台の全体が楽しめる編集の【(1)みきくらver.】、三木の芝居に注目した編集の【(2)三木眞一郎ver.】、宮野の芝居に注目した編集の【(3)宮野真守ver.】の全3バージョンが配信される。配信期間は、1月26日(火)〜2月7日(日)。は1公演につき、3,500円。
配信時間は、実際の公演のようにタイムテーブルが組まれているので、確実に視聴可能な時間を確認の上、を購入しよう。
『怪談贋皿屋敷』あらすじ
『怪談贋皿屋敷』の舞台は、江戸時代。ファンキーでいかれた悪徳旗本・青山播磨(宮野)と、自分に自信のないうすのろ女中・お菊(三木)の切ない恋物語が描かれていく。遊び放題、金も使い放題で悪い噂の絶えない播磨は、ある日御用金を枯井戸に隠し、横領することを画策する。
そんな播磨の身辺を探る捜査の目から逃れるため、家老の山岸次郎佐衛門、彦兵衛、謎の協力者・園部上総之介の三人は、播磨にある妙案を進言。それは、枯井戸で死んだ女の呪いをでっちあげ、幽霊の呪いによって、世間や捜査の目をあざむくというものだった。うすのろ女中・お菊は、その幽霊役として彼らの陰謀に巻き込まれてしまい……。
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・応募時の内容に記載不備がある場合。
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公演情報
【配信情報】
みきくらのかい 第二回公演リーディング
「怪談贋皿屋敷」
原作:横内謙介
脚色・演出:倉本朋幸
編集:中瀬俊介
出演:三木眞一郎 宮野真守
料金:3,500円(1公演)
配信期間:1月26日(火)〜2月7日(日)
※3バージョンを配信
【みきくらver.】舞台の全体が楽しめる編集
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【三木眞一郎ver.】三木眞一郎の芝居に注目した編集
https://v2.nex-pro.com/campaign/19520/apply
【宮野真守ver.】宮野真守の芝居に注目した編集
https://v2.nex-pro.com/campaign/19521/apply
【グッズ情報】
みきくらのかい 第二回公演リーディング
『怪談贋皿屋敷』ドキュメントブック
(A4・ヨコ/42ページ/フルカラー)
【販売価格】2,500円
【予約販売期間】1月16日(土)12:00 〜2月28日(日)23:59
【発送時期】1月末より順次配送を予定しておりますが、前後する場合もございます。あらかじめご了承ください。
【予約URL】mikikuranokai.stores.jp
【みきくらのかい 公式HP】https://mikikuranokai.wixsite.com/mikikura
【みきくらのかい 公式Twitter】@mikikura_no_kai