新潟が誇るNoism×鼓童、ついに初共演! "鬼"をテーマにした新作を全国5都市で披露~記者発表レポート

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2022.5.6
(左から)原田敬子、金森穣、石塚充

(左から)原田敬子、金森穣、石塚充

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りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館専属舞踊団 Noism Company Niigata(Noism)と佐渡を拠点に活動する太鼓芸能集団 鼓童が初共演するNoism×鼓童『鬼』(演出振付:金森穣)が、2022年7月1日(金)~30日(土)に、りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館、彩の国さいたま芸術劇場、ロームシアター京都、愛知県芸術劇場、荘銀タクト鶴岡で開催される。新潟から世界に向けて創造発信する両団体がタッグを組んだ話題作だ。4月22日(金)に新潟にて記者発表(オンラインを併用)が行われ、金森穣(りゅーとぴあ舞踊部門芸術監督、Noism Company Niigata芸術監督)、原田敬子(作曲家)、石塚充(太鼓芸能集団 鼓童)が登壇した。

■"新潟"を出発点に"鬼"というテーマへ

Noism×鼓童の共演が始動したのは2年前。Noism(2004年設立)の活動継続問題が持ち上がった際、金森は「新潟をテーマに作品を創ったことがない」と気づき、「そろそろタイミングなのかなと考えた」という。同じ頃、鼓童代表の船橋裕一郎と対談する機会があったことも後押しとなった。そして、共演のために新曲が必要になる。金森は、2019年に富山県・利賀村で行われた第9回シアター・オリンピックスで『still/speed/silence』(出演:金森、井関佐和子)を演出したが、その時に音楽を担当したのが原田だ。金森は原田から「芸術家として刺激を受けた」とのことで、「いずれまたどこかで、もう一度何かを創りたいなと頭の片隅にありました」と振り返る。そして今回「原田さんに頼むしかない」と考えた。

金森穣 

金森穣 

依頼を受けた原田は金森に「新潟とは何か?」と聞くと「平野(へいや)」と返答された。そこで「環境文化という概念があるのですが、地形であったり、気候であったり、自然環境の中で形成される人の精神性みたいなものですね。人の特徴みたいなものを捉えられたらなと思いまして」と考えた。新潟についてリサーチすると、「皆さんまじめで、堅実で。土地に根付いたものを創っている自信というか、安定というか、そういうものを感じた」という。そして、新潟に鬼にまつわる民話が多いことを知り、「"鬼"というキーワード、世界に通用するようなテーマ」を見つけ出した。「私にとって"鬼"は人間が作り出したものだと思っています」と語る。

今回鼓童からは7名プラス声の出演となる。原田は彼らに対して「訓練をとてつもなくされている」と舌を巻き、「本当に太鼓が好きというところで結び付いている、非常に個性豊かなメンバーの方々です」と評する。原田は、いわゆる「現代音楽」のジャンルにこだわらずに活動してきたと自負するが、前身時代から50年の歴史がある鼓童の様式に驚きつつ「鼓童さん自身の体の中がおかしくなっちゃうというか、変わってしまう、変容してしまうような挑戦ができたらなと思いまして、今回作曲に取り組みました」と意欲を述べた。

金森は鼓童の面々を「凄く大人(おとな)」と話す。「自分が携わっているものに対する責任感とか、芸術・表現・音みたいなものに対する向き合い方が真摯。お互いにコミュニケーションを取れているし。それは鼓童村という場所を持って集団活動している強さなんじゃないかなと思いますね。寄せ集めの奏者だったらこうはいかないので」と分析する。

原田敬子

原田敬子

 

■難度の高いリズムに対し、ともに向き合っていく

鼓童を監修するのが石塚。Noismは同じ新潟を拠点にする「身近な憧れの存在」だったので共演を喜びつつ「凄く身が引き締まるような、キリっとするような気持ちがしております」と心境を述べる。原田の楽曲については「鼓童の歴史上最高難度と思うくらい難しい」と明かす。クッキングペーパーで太鼓をこすったり、物音のような声を使ったりするが「それらが一音ごとに持ち物が変わって数学的に、複雑に組み合わさっている」と話す。そして「本当に難しいのは、それをまったく拍感とか拍子感がないくらい呼吸するように有機的に表に出していかなくてはいけないところ」だという。だが「Noismの皆さんが前で動いているのを見ながら音を当てこんでいくと、自然に立体的になってくる感じがしているので、難しいけれど、最終的に凄く気持ちよくなって来るんじゃないかなという期待はあります」と展望を語った。

石塚充

石塚充

原田は今回の音楽について「普通はあまりこういうことを言わないんですが」と前置きしながら、「音楽的な旋律みたいなのはなくて、リズムはあります。一番最初に出てくるリズムが実は心臓の鼓動のリズムになっています。三拍子、ゆがんだ三拍子と言われているんですが、なぜそのテーマを使ったかというとダジャレではないですけれど、鼓童さんの名前の由来が心臓の鼓動なんですよね。なので、そのことにリスペクトを持ち、世界に生きている人たちが持っているだろう心臓の鼓動をリズムのテーマにさせていただきました。それが全曲にわたって、いろいろな形で出てきます」と明かす。

Noism×鼓童『鬼』リハーサル 撮影:遠藤龍

Noism×鼓童『鬼』リハーサル 撮影:遠藤龍

金森によると鼓童は「7人で一緒。14本の腕で1つの音を奏でる。曰く14本の腕を持った鬼が演奏しているみたいなんですよ」とのこと。一方のNoismは14名が出演する。「原田さんが創られた世界の中で、14本の腕を持った"鬼"が演奏し、14人の舞踊家が28本の手足でもって踊る。その難しさって、想像いただけますか?」とハードルの高さを語る。「今回のテーマの何が" 鬼"かというと、これは鼓童さんとも共通していると思うんですけれど、こちらにいる原田さんが一番"鬼"だと思います(笑)」と話して笑いを誘った。

Noism×鼓童『鬼』リハーサル 撮影:遠藤龍

Noism×鼓童『鬼』リハーサル 撮影:遠藤龍

 

■Noism版のストラヴィンスキー『結婚』にも注目!

同時上演はディアギレフ生誕150周年・ストラヴィンスキー『結婚』(演出振付:金森穣)。20世紀初頭に伝説のバレエ団であるバレエ・リュスを結成し、今日に至るまでの芸術を刺激するセルゲイ・ディアギレフに関連した作品を創作する。金森はバレエ・リュスのために数々の名曲を書き下ろしたストラヴィンスキーの音楽を聴いていると『結婚』にインスピレーションが湧いたという。「原田さんから楽曲テーマとして"鬼 "という言葉が導き出されリサーチしていると、自分が考えていたストラヴィンスキーの『結婚』のテーマと符合することがたくさん出てきて。"鬼 "という共通テーマでいけるなという感じで今回上演させていただきます」と話す。

金森穣

金森穣

バレエ・リュス版では不世出の天才舞踊手ニジンスキーの妹二ジンスカが振付。金森版はフランスの作家ピエール・ローティの小説『お菊さん』がベースだという。長崎に滞留した白人の海軍士官と日本人の娘を描く物語だ。金森は「戯曲みたいな音楽になっているので、シーンごとに戯曲の構造は踏襲していますが、私の版にあわせた日本語版台本というか歌詞を自分でこしらえまして、それに基づいて上演されます。ストラヴィンスキーの構造はそのままにオリジナルに脚色しているということですね」と語る。そして、Noismが同じくストラヴィンスキーの『春の祭典』に挑んだ舞台(2021年)を引き合いに出し、「今回も一音一音、役柄ごとに舞踊家・担当が決まっていますので、膨大な量のカウントと膨大な量の振付を各舞踊家がこなし、それがアンサンブルで展開されるという形になります」と説明した。

(左から)原田敬子、金森穣、石塚充

(左から)原田敬子、金森穣、石塚充

本公演は全国5都市での上演となり、多くの観客との出会いが期待できる。石塚は「原田さんも金森さんも、空間全体をすごく意識されていらっしゃる感じがしています。楽器が、というより空間全体がどう響くか、どう空間を味わえるかということを意識した舞台創りになっていると感じているので、それを味わいに来ていただければ」と意気込む。金森も「我々のやっていることは後日映像で配信されてもなかなか伝えられないですので、ぜひ劇場に足を運んで、その瞬間、その時間を味わっていただきたい。同じ時間と空間を共有することが今ほど難しい時代はないですから。だからこそ、その価値を全身で浴びに劇場に来ていただきたい」と抱負を述べた。

【新潟から世界へ】Noism 金森穣 × 鼓童 船橋裕一郎 代表対談

取材・文=高橋森彦

公演情報

Noism×鼓童『鬼』
 
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館×ロームシアター京都×愛知県芸術劇場×荘銀タクト鶴岡 連携プログラム
 
第一部 ディアギレフ生誕150周年・ストラヴィンスキー『結婚』
演出振付:金森穣
音楽:I.ストラヴィンスキー(録音を使用)
衣裳:堂本教子
出演:Noism0、Noism1
 
第二部 Noism×鼓童『鬼』
演出振付:金森穣
音楽:原田敬子  演奏:太鼓芸能集団 鼓童
衣裳:堂本教子
出演:Noism0、Noism1
 
[新潟]2022年7月1日(金)~3日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
[埼玉]2022年7月8日(金)~10日(日) 彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉
[京都]2022年7月17日(日) ロームシアター京都〈メインホール〉
[愛知]2022年7月23日(土) 愛知県芸術劇場〈大ホール〉
[山形]2022年7月30日(土) 荘銀タクト鶴岡〈大ホール〉
 
共同製作:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館、ロームシアター京都、愛知県芸術劇場、荘銀タクト鶴岡協力:株式会社北前船  助成:一般財団法人地域創造

新潟公演
2022年7月1日(金)19:00 / 2日(土)17:00 / 3日(日)15:00
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
入場料:全席指定5,000円 U25 3,000円 高校生以下1,000円(税込)
*未就学児の入場はご遠慮いただいております。
*U25は公演時25歳以下の方対象(未就学児を除く)。U25・高校生以下の方は入場時に身分証をご提示ください。
*託児サービス、車椅子席等の詳細はりゅーとぴあHPをご覧ください。
https://www.ryutopia.or.jp

埼玉公演
2022年7月8日(金)19:00 / 9日(土)17:00 / 10日(日)15:00
彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉
入場料:全席指定6,000円 U25 3,000円(税込)
*未就学児の入場はご遠慮いただいております。
*U25は公演時25歳以下の方対象(未就学児を除く)。U25・高校生以下の方は入場時に身分証をご提示ください。
*託児サービスはございません。
https://www.saf.or.jp/arthall/

京都公演
2022年7月17日(日)16:00
ロームシアター京都〈メインホール〉
入場料:S席6,000円 A席4,000円 ユース(25歳以下)S席3,000円 18歳以下S席1,500円
*ユースおよび18歳以下のは公演当日、受付にて年齢が確認できる証明書をご提示ください。
*未就学児入場不可。(託児サービスあり/詳細はロームシアター京都WEBサイトをご覧ください)
https://rohmtheatrekyoto.jp

愛知公演
2022年7月23日(土)16:00
愛知県芸術劇場〈大ホール〉
入場料:S席6,000円(U25 3,000円) A席4,000円(U25 2,000円) B席3,000円(U25 1,500円)
*U25は公演日に25歳以下対象(要証明書)
*未就学のお子さまは入場できません。(託児サービスあり。有料・要予約)

山形公演
2022年7月30日(土)16:00
荘銀タクト鶴岡〈大ホール〉
入場料:一般5,000円 訳あり席2,000円  学生2,000円 訳あり席1,000円
*学生券は25歳以下対象、要学生証。 *当日は500円増し
*未就学児は入場不可(託児サービスあり / 詳細は荘銀タクト鶴岡HPをご覧ください)
https://tact-tsuruoka.jp

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