SPECIAL OTHERS 15年間の経験と“ロック魂”が生み出した最高傑作『Anniversary』を語る
アルバム『Anniversary』
――いやいや。感じますよ、ロック魂。「Anniversary」とか、僕的にはザ・バンドを思い出したりして、聴く人によって、いろんな発見があると思います。あと、そうそう、「DECO」のキーボードで使っている“うにょうにょ”っていう変わった音、あれ何ですか。
芹澤:あれはメロトロンと言って、昔はテープに録音した音を鍵盤で鳴らすというものだったんですけど、「DECO」はエフェクターの名前で、それを再現したものなんですね。ヤギがそのエフェクターを持っていて、“すごくかっこいい”って良太が言ってたんですよ。それを聞いて、試してみたというだけです。俺は別に何の興味もなかったんですけど、言われるがままに弾いてみたら、乗ってきちゃった。
柳下:芹澤がだんだん夢中になってきて、演奏が止まらなくなっちゃったのが、このテイクです。
芹澤:最初は俺のアイディアじゃないんですよ。ヤギが持ってた機材を良太が楽しんでいただけ。
宮原:コロナ禍で暇だったので、自分の守備範囲外の楽器も調べていて、“ヤギの持ってるあのエフェクター、面白そう”と思ったので。そのあと自分でも、メロトロンの音源を買いました。メロトロン、好きです。ほしいです。
又吉 "SEGUN" 優也(Ba)
15年やってきて、すべての知識を総動員させたアルバムというか、経験を生かして作ったアルバムだと思います。(又吉)
――昔は、プログレバンドの御用達機材でした。
芹澤:そうそう。あと、ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」も。
柳下:それで、俺のDECOを芹澤に貸して、未だに芹澤の機材ボックスに入ってるから、このままそこに居続けるんだろうなって、今思っているところです。
宮原:俺のフットスイッチも、そこに吸収された過去があるしね。
芹澤:良太のフットスイッチがすごい気に入って、使ってたんですけど、ライブでテンションが上がって、お客さんにあげちゃったんですよ。“お客さんありがとう!”って。
――あはは。人のものを勝手に。
柳下:DECOは客席に投げちゃ駄目だよ。
芹澤:あれは硬いからね。そういう問題じゃない(笑)。
――めちゃくちゃ面白がってますね。目の前にあるあらゆるものを。
宮原:最近、セルフレコーディングにもハマっていて、それのスキルも上がってきて、面白がれることがさらに増えました。たとえばDECOも、ステレオで出力できるから、左と右に振ってみようとか、エンジニア的観点も含めて考えられるようになってきました。だからもう、楽しくてしょうがないですね、最近は。コロナ禍で気づいたことは、すごくいっぱいあったよね? 全然無駄じゃなかったなという気持ちがあります。
――「Yagi & Ryota 2」という曲は、アニバーサリーっぽいなと思いましたね。2006年のアルバム『Good morning』に入っていた「Yagi & Ryota」から、15年振りに第二弾が登場するという。
宮原:さっき言ったグリン・ジョンズ方式の録り方がめっちゃ気持ちよくて、“このやり方でもっと曲を録ろう”ということになって。前の晩に“明日、面白いこと弾いてね”ってヤギに言って、朝来て、弾いてもらったのがこの曲です。それが何気にいい曲になったので、もうちょっと練習して録れば良かったなって、後悔もちょっとあります(笑)。ちょっと未完成なまま出しちゃった。
柳下:だから今後、ライブでどんどん完成に近づいていく曲ですね。
宮原:でも、フレッシュパックされているものは面白いよね。レッド・ツェッペリンとか、ザ・フーとか聴いてても、そんなのばっかりで、そこがクセになっちゃう。そういうマジックがあると思います。
宮原 "TOYIN" 良太(Dr)
Yogee New Wavesとカラオケに行った時にアンダーワールドを歌って、曲として普通に感動して、アンダーワールドブームが来た(笑)。(宮原)
――そしてラストに入ってる「Session 317」が圧巻です。最高です。これは本当に、セッションそのまま?
芹澤:そうです。コードのキーすら決めずに、出たとこ勝負。テンポも決めてないし、ドラムから始まるのかギターから始まるのかもわからない。
宮原:途中でテンポチェンジを入れると、ついて来れない人もいるじゃないですか。わざとそうなるように、入れたりしています。ナマ感を伝えたくて。そこに人間味があって、面白いなと思うので。アルバムの最後に入る曲なので、長いほうが面白いと思って、十何分やってるのかな?
柳下:13分。
宮原:だから、興味ない人は聴かなければいい(笑)。おまけです。
芹澤:でもね、俺らは“これが面白いんだ”って思う。この未完成さが。最近は、完成品社会の息苦しさも感じたりしていて、アニメにしても何しても、完全に説明がつくものしか出さないみたいな感じじゃないですか。歌の歌詞にしても、“君と僕”がどういう状況で、こういうふうにすれば僕は幸せになれるんだ、とか。SNSでも、すぐに“それってソースどこ?”って聞くじゃないですか。すぐに正解を求めたがって、正解の陣地の取り合いになっている。創作物まで全部そうなっている気がするのが、息苦しいなと思うところがあるんですね。
――うーん。なるほど。
芹澤:もちろん、完成度を極めた作品の良さもあると思うけど、そういうものばかりになってしまうと、ちょっと隙があるものとか、ヘタクソだけど何かいいよな、というものとかが少なくなってしまう。俺はそういうものに体温を感じるから。ただ、ナマな音というだけでも体温を感じないこともあるし、打ち込みでも体温を感じるものもあるんですよ。J・ディラのビートは、手で打ち込んだものをクオンタイズ(揃える)しないで、そのまま出しているのが良さだったりするじゃないですか。それは打ち込みでも体温を感じるし、そのニュアンスじゃないですかね。今回のアルバムの良さは。
――納得です。ちなみに個人的には「NEW WORLD」が好きです。ソウルとフュージョンとテクノが混ざったみたいな、すごく気持ちいい音で、まさに体温を感じます。
宮原:「NEW WORLD」は、Yogee New Wavesと一緒にカラオケに行った時に、アンダーワールドを歌ったんですよ。“あんまりカラオケで歌わない曲を歌おう”とか言って、「Born Slippy」を。
芹澤:どこを歌ったらいいのか、よくわからないけど(笑)。
宮原:それを聴いている時に、曲として普通に感動して、“アンダーワールドかっこいい!”ってなったんですね。で、遅れて来たアンダーワールドブームが来た(笑)。そんな、スペアザ流アンダーワールドみたいなものを作ってみようというところから来てますね。「NEW WORLD」は。
――このアルバムは、いろんな人に聴いてほしいですね。SPECIAL OTHERSに何かの先入観を持っている人にこそ、聴いてほしい。インストバンドなので、どうしてもBGMっぽい聴かれ方が多い……とか言うとものすごく失礼ですけど。
芹澤:いや、わかりますよ。
――でも、さっきお話したみたいに、ロックでもあるし、体温のある音だし、楽器の録り方にもこだわってるし、何よりすべてを楽しんでいる。
芹澤:間違いなく、15年やってきてるけど、今の音を出しているという思いがあります。流行りとか、そういう意味ではなくて。
――そこ大事ですね。でもまた、次は“グラスパー、やっぱりいいね”とか言い出すかもしれない。
芹澤:余裕でありますね。
宮原:そういうタイプです、我々は(笑)。聴き飽きたとか言ったけど、来るなら全然見に行きたいし。尊敬してます。
柳下:というか、そういう音楽が増えすぎたということだよね。グラスパー個人というよりは。
宮原:そこで我々は、少数派に回りたくなる気質があるんでしょうね。
芹澤:アマノジャクなところがね。多数派になった途端、気持ち悪さを感じちゃう。そういう、ややこしい性格なんです。
――いやいや。それも、長く続ける秘訣のひとつかなと思ったりもします。そしてこのあと、6月に東京と大阪のビルボードライブ公演。そして、夏以降は全国ツアーを開催。精力的に動きますね。
又吉:2年間空白だったので、取り返すようにやらないといけない。タイミングよく作品が出て、しかも15周年なので、大々的にやりたいなと思います。
芹澤:このインタビューを見てくれて、俺らの音楽がどういう感じだろう?と思ってくれたり、言ってることわかるなと思ったり、シンパシーを感じてくれた人は、きっと楽しめる要素がたくさんあるので、ぜひライブに来てください。我々のライブはみなさん大人の方ばかりなので、安全に楽しめると思います。名前は知ってるけど、とか、初めて聞いたけど、とか、すべての人がウェルカムなので、ぜひとも足を運んでほしいです。
取材・文=宮本英夫 撮影=菊池貴裕
配信情報
SPECIAL OTHERSニューアルバム『Anniversary』発売記念YouTube LIVE. Webラジオ 「SPECIAL OTHERS
RADIO」
URL: https://youtu.be/QfTst1DAdl8
■6月8日(水)21:30〜
SPECIAL OTHERS – Anniversary(Official Video)
URL: https://youtu.be/ctuabUbUzbA
リリース情報
2022年6月8日発売
■初回限定盤(CD+DVD) VIZL-2004 / ¥6,380(税込)
https://jvcmusic.lnk.to/Anniversary_CD_shokai
■通常盤(CD) VICL-65655 / ¥3,300(税込)
https://jvcmusic.lnk.to/Anniversary_CD_tsujo
■CD
01. Spark joy
02. Happy
03. THE IDOL
04. Yagi & Ryota 2
05. Timelapse
06. Flowers
07. DECO
08. Anniversary
09. NEW WORLD
10. WAGON
11. Session 317
■初回限定盤付属DVD
・「SPECIAL OTHERS 野音2020(QUTIMA Ver.29)」
01. TRIANGLE 02. Good Morning 03. JAM 04. Puzzle 05. PB 06. SERI & RYOTA 1 07. WAVE
08. AIMS 09. Laurentech 10.Beautiful Orange 11.BEN
・メンバーのオーディオコメンタリー付きで収録予定。
ライブ情報
6月11日(土)東京・Billboard Live TOKYO
1st ステージ OPEN 15:30/ START 16:30
6月18日(土)大阪・Billboard Live OSAKA
1st ステージ OPEN 15:30 / START 16:30
■
サービスエリア¥7,800(税込) カジュアルエリア¥7,300(税込/1ドリンク付き)
10月9日(日)新潟LOTS open15:30/start16:00
10月13日(木)札幌ペニーレーン24 open18:30/start19:00
10月15日(土)青森Quarter open16:30/start17:00
10月16日(日)仙台Rensa open15:15/start16:00
10月22日(土)福岡DRUM LOGOS open17:30/start18:00
10月23日(日)岡山YEBISU YA PRO open15:30/start16:00
11月5日(土)金沢EIGHT HALL open16:30/start17:00
11月6日(日)長野CLUB JUNKBOX open15:30/start16:00
11月11日(金)味園ユニバース open19:00/start19:30
11月19日(土)名古屋クラブクアトロ open16:15/start17:00
11月20日(日) Live House浜松窓枠 open15:30/start16:00
11月26日(土)沖縄桜坂セントラル open16:30/start17:00
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7月16日(土)発売 4,500円(税込、整理番号付、ドリンク代別)
日比谷野外大音楽堂のみ 指定席 5,500円(税込)