連続企画『アニメソングの可能性』第三回 葉月ひまり、つんこ対談 D4DJキャストとして見せるDJとしてのバランス感
葉月ひまり つんこ
■D4DJのキャストとしていかにパフォーマンスを見せていくのか
――お二人の場合、D4DJのキャストとしてDJブースに立っているわけですが、DJをするにあたって何か意識していることはあるのでしょうか?
葉月:私はMerm4idのDJとして舞台に立つことが多いので、求められているのはアゲアゲなDJなんですよね。そこは一貫してプレイができるように気をつけています。
――そうすると先ほどお話に出た「For フルーツバスケット」などは、DJでは使いづらくなってしまいますね。
葉月:そうなんですよ。私自身、しんみりした気持ちになった時に音楽を聴く習慣があるのですが、そういう時に聴く曲はDJとしては使えないんです。そこは悩みどころですね。
――求められているものとは合わなくても、好きな曲をやはりDJで使いたいという気持ちはある。
葉月:あります! ただ、ちょっとまだ勇気が出ないです。告知の時点で「今日はしんみりした曲しかかけません!」って言えばできるかな……。
――確かに事前にお客さんに予告をしていればできるかもしれないですね。
葉月:はい、それなら……いや、それでもかけられる勇気が出ないかもしれないです。しんみりした曲をかけた時ってお客さんが楽しんでいるのかどうかわかりづらくないですか? それがすごく怖いと言いますか。
つんこ:そう、わかりづらいよね……。私はつんことしてもプレイするので、しんみりとした曲もかけるんですよ。そういう時は少し不安な気持ちになる。
葉月:やっぱり不安になるものなんですね……。そう考えると、やっぱりアッパーな楽曲でDJをするところからは離れづらい。でも、いつかは挑戦したいですね。理想的には、途中にしんみりした曲を挟んで展開に強弱なんかつけられるようになったらいいなと思っています。
葉月ひまり
――それは楽しみです。ではつんこさんはプレイする際に選曲や展開で気をつけていることはあるのでしょうか?
つんこ:私の場合は逆に、意識的に気をつけないようにしています。“燐舞曲らしいDJ”にこだわると展開や選曲がワンパターンになってきてしまうというか、結果的にお客さんに似たDJを披露することになってしまうんですよ。それは何度も聴きに来てくれている人にとって退屈なDJになってしまうと思っていますから。
――求められるものではあるけど、ワンパターンになるのも怖いと。
つんこ:そうなんです。とはいえ“燐舞曲らしいDJ”から外れすぎてもよくない、そこの匙加減も大事ですよね。そのバランス感はSNSのリアクションを見ながら調整していく感じです。
――そのバランス感はとても難しいですし、選曲も気を使うことになりますよね。
つんこ:そうなんですよね。お客さんの層を考えるとやっぱり皆さんブシロードさんの楽曲が好きな方たちだと思うんです。だからこそ、これまでに見せていない選曲をしつつ、同時に「好きな曲が流れた!」という喜びは作っていく必要がありますから。
――D4DJのキャスト、DJとして、というお話を伺ってきましたが、逆にDJプレイ以外の振る舞いにおいてもキャラクターを意識することはありますか?
葉月:そこはライブの時とDJの時で少し違いますね。ライブの時はキャラクターを全面的に演じながら出演しているんですよ。対してDJの時は素の自分に近いと言いますか。
つんこ:完全にキャラクターを演じてDJをするとなると、他のユニットの曲かけた時どう振る舞っていいのかがわからないというのもありますからね。生身の自分としてでないと中々DJは成立させづらい。
――特につんこさん演じる三宅葵依はクールなキャラクターなので難しそうですね。
つんこ:そうですね、葵依は堂々と構えてDJをするキャラクター。でもあの堂々とした所作を貫いてDJしたらそれは見栄え的にどうなんだろうか、という問題も生まれますからね。やはりDJとしては声や身体も使って、楽しそうにパフォーマンスするのがお客さんにとっていいDJに繋がると思いますから。
■D4DJをきっけけにDJに興味を持ってほしい
――現在DJとしての活動も積極的に行っているお二人ですが、いわゆるプライベートでクラブに行ったことはありますか?
つんこ:私はD4DJのキャストになる前からDJやっていますからね。今でも日常的にいきますよ。
葉月:私はないんですよ。行ってみたいとは思うんですが、なかなか勇気がなくて。
――やっぱりクラブに対して怖いというイメージがある?
葉月:怖いというのもありますが、それ以上に雰囲気についていけるのかに不安があるんです。なので一人ではなかなか行けない。
つんこ:一人の方が気楽だよ? 同行者に気を使わなくていいから。私は一人で行くことの方が多い。
葉月:そうなんですか? 知らない人ばっかりの場所に行ったら浮いちゃう気がしていて……。
――クラブ自体が怖いというよりは、その場に馴染めるかどうかが気になると。
葉月:特にDJイベントって言われると、お金を払ってイベントに行く人たちの熱量に自分がついていけるんだろうか? と不安は出てきてしまいます。もっと気軽に、それこそDJイベントとしてではなくDJが聴ける場所があったらいいのに、そう思う時はありますね。
――それはいわゆるカフェにDJがいて、曲がかかっているようなイメージですか?
葉月:はい、そうであればふらっと入る勇気は湧くかなと思います。そこをDJを聴く入門として徐々にクラブに行けるようになったらいいんですが……。
つんこ:確かにそういう場所、増えて欲しいですよね。居酒屋の端にDJ機材があって、居酒屋に行ったらたまたまDJやっているみたいな場所、もっとあってほしい。そうすればDJカルチャーってもっと広がるとは思います。
――確かにもっとDJというものに気軽に触れる機会があるといいですよね。
つんこ:そうですね。クラブに行ったことがない人でも、DJは聴いたことがあるという人がまずは増えてほしい。そうすれば自然とクラブに行く人も増えるでしょうし。
つんこ
――D4DJもクラブに行ったことない人がDJに触れる機会を作っていると思います。もしかしたら、D4DJを観て影響を受けて、DJデビューする人も出てくるのかもしれないですね。
葉月:SNSを見ているとDJ機材を買ったという人は頻繁に見かけますからね。
――今後もさらに、D4DJの影響でDJを始める人が増えてくるかと思います。そういった人たちにメッセージをお願いできますか?
つんこ:そこからもう一歩、どういう方向でもいいから踏み出してみて欲しいですね。気になるDJさんがいたらその人のプレイを見にいくでもいいし、クラブやDJバーに遊びに行ってみてもいい。とにかく何か一歩踏み出すことが大切だと思います。そこから始まる何かもあると思いますから。
葉月:今は自分のDJプレイをインターネットを通じて発信することもできるので、そういったものも活用してみてほしいと思いますね。そして、もしよければその時にD4DJの楽曲を使ってほしい。私自身もみなさんのDJプレイを聴いて勉強できたらと思っていますから。
葉月ひまり つんこ
DJにとって最も大切で、最も作り上げるのが難しいものが、個性。個性を持ち、その個性を周りが認知されて、初めてそのDJはリスナーから認識されるだけの力を持つ。D4DJのキャストとして活動する二人はスタートラインに立った時点でその個性が与えられている。
しかし、それは決して楽なことばかりではない。個性があるからこそ、個性に縛られてDJに窮屈さを感じてしまうこともあるだろう。
その縛りを磨き続け武器とするかは彼女たちにかかっている。今回の話を聞いて、二人は必ずその個性を独自に進化させてさらなる“武器”としていくだろう、そう感じさせられた。今後もさらなる盛り上がりが期待されるD4DJ、注目していきたい。
インタビュー・文=一野大悟 撮影=池上夢貢
放送情報
TVアニメ『D4DJ Double Mix』
ライブ情報
『福島ノアpresents KAWAII.FES』
『Merm4id×燐舞曲合同ライブ』