木村達成、須賀健太、早見あかり、安蘭けいらが名作悲劇に新たな風を吹き込む 『血の婚礼』フォトコールレポート
南スペイン、アンダルシア地方のとある村。母親(安蘭けい)と二人暮しの“花婿”(須賀健太)ら、父親と二人暮しの“花嫁”(早見あかり)と結婚したいと母に告げる。溺愛する息子の成長を喜びつつ、ただ一人の家族の旅立ちに複雑な想いを抱く母親。花嫁は優しく家庭的な娘と聞くが、以前に心を通わせた男がいるという噂があるのだ。その男の名はレオナルド(木村達成)。かつて、母親の夫と長男を殺した一族の青年だった。
かつて花嫁から別れを告げられたレオナルドは、その従妹と意に沿わぬ結婚をし、今は妻子と姑と暮らしている。花嫁は過去を捨てて幸せな家庭を築くと固く決意していたが、彼女の目の前にかつての恋人、レオナルドが現れる。
二人の男の愛が引き起こす、婚礼の日の悲劇とは――。
『血の婚礼』舞台写真
『血の婚礼』舞台写真
舞台の床には砂が敷き詰められ、白い壁は照明によって表情を様々に変える。シンプルながら想像を掻き立てるようなセットだ。彼らを縛る因習や常識を表しているような衣裳も印象的。また、舞台上に存在する壁の一部が扉や窓になるのだが、セットの裏にある劇場の構造が見えるのが面白い。会見で語られていた通り、物語の世界に引き込まれつつ、作り物であることを常に意識してしまう絶妙なバランスが生まれていた。
『血の婚礼』舞台写真
『血の婚礼』舞台写真
まず披露されたのは、冒頭の母親と花婿のシーン。スペインでは「狂気」のイメージである黄色い部屋で、息子への愛情、今は亡き夫・長男への想い、彼らを殺した人間への憎しみなどを吐露する母の激情に圧倒される。
花婿を演じる須賀は、母親が放つ言葉一つひとつを素直に受け止めつつ自らの意思も持っている青年というイメージ。安蘭は息子の言葉によって様々な感情を呼び起こされ、くるくると表情を変える不安定な母親を見事に表現。二人の会話から、当時の人々の価値観や時代背景も伝わってくる。
続いては、結婚式の朝を迎えた花嫁の元にレオナルドが訪ねてくるシーンだ。こちらは紫がかった照明で、甘い中にもどこか冷たく不穏な雰囲気が漂う。準備を進める女中(内田淳子)と花嫁のやりとりに和むのも束の間、レオナルドの登場によって空気は一瞬で張り詰める。激しい言葉の応酬からそれぞれの想いが見え隠れし、固唾を飲んで見守ってしまう。詩的な台詞に感情を乗せてぶつけ合う木村と早見、内田のやりとりが魅力的だ。
『血の婚礼』舞台写真
『血の婚礼』舞台写真
『血の婚礼』舞台写真
『血の婚礼』舞台写真
狂おしい愛を描いた名作悲劇を、勢いあるキャスト陣と演出で描く本作。登場人物たちの狂おしい愛の行く末、それを演じるキャストたちの熱を、ぜひ劇場で見届けてほしい。本作は9月15日(木)~10月2日(日)まで、Bunkamuraシアターコクーンにて、その後、10月15日(土)~16日(日)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティでも上演される。
取材・文・撮影=吉田沙奈
公演情報
<東京公演>
日程:2022年9月15日(木)~10月2日(日)
会場:Bunkamuraシアターコクーン
主催・企画制作:ホリプロ
日程:2022年10月15日(土)~16日(日)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
主催:梅田芸術劇場
https://www.umegei.com/schedule/1064/
原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
翻訳:田尻陽一
演出:杉原邦生
木村達成
須賀健太
早見あかり
吉見一豊
内田淳子
大西多摩恵
出口稚子
皆藤空良
古川麦
HAMA
巌裕美子
公式Twitter= https://twitter.com/chinokonrei #舞台血の婚礼