氣志團、高橋優、Creepy Nuts、橋本絵莉子ら出演 四星球が地元・徳島で開催した20周年記念フェス『徳島ジッターバグ』1日目のレポートが到着(画像:全47枚)
四星球 撮影=石井麻木
2020年7月4日。徳島のコミックバンドである四星球がアスティとくしまにて1日2回公演のライブを開催した。コロナ禍の一番大変な時期であり、多くの催し物が開催を躊躇する中、約5000人収容できる会場で、1公演80人限定という特殊形態での開催であった。検温や問診票の徹底具合、そしてソーシャルディスタンスを徹底的に守る為に80本のフラフープが等間隔に床に配置されて、その中に観客が立ちライブを楽しむという徹底的なコロナ禍対策をされた上でのライブ。私もライブ前日から今回と同様オフィシャルライブレポートで現地入りしていたが、その日の事を想い出すと、健気さや必死さというとお涙頂戴みたいでコミックバンドの彼らに合わないので嫌なのだが、未だに胸が締め付けられる。当たり前だが、密が駄目と言われていた時期に、密を推進したから偉いとか格好いいとかいう短絡的な事を言いたいわけじゃない。ライブバンドはライブをする事が使命であり、その楽しさを決められたルールマナーを徹底的に守った上で一生懸命伝えようとしていた姿勢に誠実さを感じたのだ。彼らは、こんな言われ方を望んでいないだろうが、日本のライブシーンにおける大切な第一歩だった事を、2年4ヶ月経った今、改めて声を大にして言いたい。
2020年7月
あの時、私もとにかく夢中にライブレポートをしていたが、徳島から帰ってきてから、一番何を強く想ったかというと、アスティとくしまにて、なるべく制限がない状態で、なるべく多くの人数の前で、四星球に思いっきりライブをしてもらいたい、その一点であった。2022年四星球は結成20周年を迎える事になり、自身初のフェスを開催する事になった。4年前に徳島の中学校跡地で文化祭を2日間開催する事はあったが、あくまで文化祭であり、いわゆるロックフェスティバルではない。別にロックフェスティバルと言ったところで、誰も文句はつけなかったが、あの時、文化祭と言い切ったのは潔い。誰もしない事をやるというロックスピリッツ的には、ロックバンドが、いやコミックバンドがロックフェスティバルではなくて、文化祭を開催するのは正しかった。しかし、あれから4年経ち、その間にコロナ禍もあり、先述の物語もある中、アスティとくしまで満を持してロックフェスティバルを開催するのも当然正しい。カウンターひな壇的立ち位置では無くて、メインMC席的立ち位置を、このタイミングで四星球は堂々と引き受けた。
前置きが長くなってしまうが、彼らのやる事は丁寧に説明したい。なので、もう少し説明すると、徳島ジッターバグというフェスタイトルは、彼らが初めて出演した今は無きライブハウス名。現在は徳島グラインドハウスという名前に変わっているが、そのオーナーが地元名物徳島ラーメンを楽屋ケータリングとして、演者たちに振舞っている姿も素敵だった。四国を代表するイベンターDUKEも勿論全面支援しているが、東京や関西という都市とは違った村の秋祭り的な穏やかさと親しみやすさが、徳島ジッターバグにはある。それはライブで使う小道具などを自分たちで作ったり、事務所も自分たちで運営する彼らの自主精神の表れかもしれない。
1000字をとっくに超えているので、そろそろ本編的な事を書きたいのだが、開催日は10月29日・30日。その前日10月28日には、前夜祭的に生配信ライブも行われた。私も前乗りして立ち会ったが、1時間弱でアコースティックライブだったとはいえ、ライブ構成はいつも通りの小ネタ大ネタありで、全く緩やかなちょっとしたライブではなかった。よしんば緩やかなちょっとしたライブだとしても、あくまで前夜祭であるので、誰も文句は言わないし、何もせずに準備日に当てたってよかったわけだ。しかし、何かしら前夜祭として盛り上げたい彼らの気概には頭が下がる。彼らは頭を下げて欲しいわけではないし、ただただ楽しませたいだけなんだが、それにしても頭が下がる。開催場所はステージぞめきと呼ばれる当日のサブステージ。メインステージの大演舞場の上にある約150人収容のミニホールだが、フェス2日間は、このステージに四星球は本格的なライブ出番としては上がらないから、敢えて前夜祭で上がったという。が、彼らは2日間4人全員が細かくステージぞめきに顔を出して、時にはゲストとしてステージに上がっていた。プロフェッショナルとして力を一切抜かないのが基本とはいえ、力の一切抜かなさ加減は前夜祭から徹底されていた。
前夜祭 撮影=オオグシマサオ
前夜祭 撮影=オオグシマサオ
ようやく10月29日初日。朝9時会場入り。私が宿泊するホテルまでメンバーのモリスが自家用車で迎えに来てくれる。普通は裏方が主催者を迎えにいくものであり、主催者が裏方を迎えに来てくれるなんて前代未聞…。到着して会場前に行くと、ちらほら観客の姿も見える。そして、会場前にランダムに置かれたメンバーのまさやん制作の段ボール小道具たち。ここはアートな島で知られる直島かというくらいの置きっぷり。会場内には出演バンドたちの顔写真を使ったパネルもランダムに置かれている。たいそうな扱いをしないランダムさが何とも言えないし、前回のアスティとくしまライブもそうだったが、地元のイベンターやライブハウスが手伝う様に、地元のバンドマンや実際の家族たちも小道具制作や運営を手伝っている。リアル3ちゃん農業とも言える身内総出の秋の村祭り的ロックフェスティバル。マジで、こんなフェス全国どこにも無い。このやり方で商業的に成立させようとしているのが特筆すべき点だ。
風景
風景
10時半、司会を務めるマキシマム ザ ホルモンのダイスケはんが会場入り。メンバーの北島康雄が楽屋で確かめていたが、フェスに司会だけで参加するのは初だという。本来はバンドで参加したかったが、スケジュール上参加できなかったという。そんなのはよくある話だし、仕方のない事。それでも何とか参加したいという事でのダイスケはんの司会。この20年全国各地を隈なく回ってきたライブバンドだからこそ、全国各地のライブバンドから愛されているのだ。その上にダイスケはんは徳島お隣香川県高松市出身。だからこそ、アスティとくしまが来年開館30周年を迎える事や眉山やそごうなどご当地の思い出話をしっかりしてくれる。また、ダイスケはんが11時50分からのオープニングで、観客にアンケート的に聴いた結果、集まった数千人は四国より四国以外の方が多かった事がわかった。村おこし町おこし的役割をしっかりと四星球が果たしている事を、ダイスケはんが本気で喜んでいるのが伝わって来たし、ダイスケはんとと共に開会挨拶をした当の本人たちも驚きを隠せなかった。
12時トップバッターHump Back登場。2日間通して一番若い彼女たちと四星球の出逢いが、このアスティとくしまというのも良かった。4年前、彼らの地元盟友ともいえるチャットモンチーのフェスにHump Backが出演した時に出逢ったという。ボーカル林萌々子の父親も四星球が好きで来場しているエピソードも微笑ましかった。基本的に大演舞場演者は35分ライブをして、その5分後にステージぞめき演者がライブを開始する。その繰り返しの始めとなる12時40分ステージぞめきには、四星球とダイスケはんも登場して、ぞめきトップバッターとなる古墳シスターズを呼び込む。規模感がライブハウスだとダイスケはんが話していたが、古墳シスターズの『我々の役割は、ここをライブハウスにする事です!』と意気込みも何とも言えなかった。香川在住という四国の後輩バンドをトップバッターにする四星球の四国ライブハウスシーン愛の揺る気無さも再確認できた。
Hump Back 撮影=石井麻木
Hump Back 撮影=石井麻木
古墳シスターズ 撮影=北川成年
演者主催のフェス、それもキャリア20年にもなると出演してもらいたい知り合い演者は山ほどいるだろう。2つステージがあるとはいえ、1日11組2日で22組しか出演してもらえない。だからこそ、2日通して四星球の軸のぶれない筋の通った出演選びには目を見張るものがあった。古墳シスターズの流れから、ステージぞめき出演者を観ていくと、2日通して最年長56歳ひとりトモフスキーことトモさん出演は、四星球のカルチャー愛・音楽愛を特に感じた。康雄が少年時代から大好きなミュージシャンであり、康雄が腰痛を押してトモフをおんぶして共演する姿はたまらなかった。それから20年というキャリアの中で一番重要な関係ともいえる同世代ライブハウスバンドたちをしっかりと呼んでいるのも、とても四星球らしかった。同じく全国各地を回る北九州のSHIMA。四星球のアルバムジャケットを巨大プリントした段ボールを持って、ボーカルEGACCHOがまさやんとの顔酷似をアピール! 徳島の先輩もメンバーにいるTHE 春夏秋冬。単なる地元の先輩や同世代ではなく、彼らは今回も含めて、四星球のライブを現在もスタッフとしてお手伝いしている。本番開始前の仕込みから本番終了後の後片付けまで、このフェスは最初から最後までTHE春夏秋冬無しでは考えられないと言っても過言ではない。また、ステージぞめきトリは、コミックバンド界の先輩である花団。セットリストもセット図もスタッフに提出していないというフェスでは有り得ない所業も、彼らだとご愛嬌で許されるのもワンダフル! 康雄が嬉しそうに先輩方の所業を怒っている姿も可愛らしかった。
トモフスキー 撮影=北川成年
SHIMA 撮影=北川成年
THE春夏秋冬 撮影=北川成年
花団 撮影=北川成年
さて、大演舞場に戻ると、13時15分にORANGE RANGE登場。ボーカルのHIROKIは、康雄が事前にTwitterで出演バンドをユーモア交えて紹介していた事に触れる。特に2日目出演のBRAHMANに関する紹介では、メンバー全員の名前を言った上で、その後の話にメンバー全員の名前が触れられて見事に回収していくという落語的魅せ方があった事について、本当に感激した事を伝える。そこから四星球メンバー全員の名前を言った上で、HIROKIも康雄と同じく四星球メンバー全員の名前を回収しながら、お祝いの言葉を述べていく…。どれだけ出演者に四星球が愛されていたかがわかったし、どの出演者にも普段のライブとは全然違う熱情を感じた。ちなみに、この演出の為に1曲削ったらしく、中盤の司会コーナーでダイスケはんと康雄も脱帽していた。
ORANGE RANGE 撮影=石井麻木
ORANGE RANGE 撮影=石井麻木
ORANGE RANGE 撮影=石井麻木
続く高橋優は、徳島県マスコットすだちくんグッズをサポートメンバーに事前にプレゼントしている手の込んだ演出でほっこりさせてくれる。そして、これは2日目でも感じた事だが、四星球は地元でフェスを開催する演者への多大なる敬意を持っている。高橋も地元秋田でフェスを開催しているからこそ、地元でフェスを開催する大切さ大変さがわかるわけで、だから四星球へ丁寧な心遣いが物凄く光って見えた。四星球の楽曲『Mr.Cosmo』を取り込みながら、自分の楽曲を披露したのも憎かった。
高橋優 撮影=石井麻木
高橋優 撮影=石井麻木
高橋優 撮影=石井麻木
そうそう、初日の大演舞場でいうと、いわゆるバンドだけが出演者じゃない事に興味を惹かれた。前述の高橋もそうであるし、Creepy Nuts。ヒップホップな彼らだが、ジャンル関係なく四星球とはライブハウスで顔を合わせてきたわけだし、康雄が以前ヒップホップイベントで『陰と陽の陰(韻)の部分を踏みつぶしに来ました!』といった事を本当に感慨深く振り返っていた。そして、『楽器無いけど能書き垂れるし、楽しむ器はあるので』と咄嗟に韻を踏んで熱い熱い想いをぶちまけたのも、真のヒップホッパーであり、本気を感じた。
Creepy Nuts 撮影=石井麻木
Creepy Nuts 撮影=石井麻木
Creepy Nuts 撮影=石井麻木
早くも夕方17時。ロックンロールとエンターテインメントを突き詰めた大先輩でもある氣志團。この日の氣志團の、綾小路 翔の気迫は凄すぎた…。『俺たちコミックバンドじゃないけど、勝ち目が無くて悔しいのでロックンロールで乗り越えます』と告げるも、しっかりコミカルな法被衣装で自虐した歌を歌ったり、早乙女 光が段ボールで作成したまさやん人形を披露したり、油淋鶏と名乗り『カーニバル博士と俺』という四星球『クラーク博士と僕』のオマージュ曲(?!)も披露したりと、とにかく、ここでしか観れないライブを魅せつけてくれた。
氣志團 撮影=石井麻木
氣志團 撮影=石井麻木
氣志團 撮影=石井麻木
氣志團 撮影=石井麻木
氣志團 撮影=石井麻木
次ページでは、トリ・四星球前の橋本絵莉子のステージや、
ダイスケはん、氣志團、ORANGE RANGEの騎馬が待ち受けている“何故か騎馬戦から始まる四星球のステージ”の模様などをお届け。