「今が生きてきて一番楽しいかも」大トリ・ELLEGARDENらとロック大忘年会『FM802 RADIO CRAZY』最終日レポート
『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022』 写真=FM802提供(撮影:三吉ツカサ(Showcase))
『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022』2022.12.28(WED)インテックス大阪
大阪のラジオ局・FM802が主催する関西最大級のロックフェス『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022』(以下、『レディクレ』)が、12月25日(日)〜28日(水)の4日間にわたり大阪・インテックス大阪にて開催された。今年はコロナ禍を経て3年ぶりにインテックス大阪での開催で、観客にとっても、アーティストにとっても、スタッフにとっても念願となるインテックス大阪での『レディクレ』もついに最終日。遂に出演となるELLEGARDENの大トリ、UNICORN、ザ・クロマニヨンズらレジェンドから、yamaやtonunら気鋭のアーティストまで『レディクレ』ならではの豪華アーティストをピックアップしてレポート!
『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022』
あっという間に最終日となった『レディクレ』。この日も縁日やおみくじなどが楽しめる、音波神社では思い思いの書き納めをしたり、「CRAZY FOOD HALL」でフェス飯を味わったりと、ライブ以外の時間もたっぷりと楽しみ尽くすひとたちで盛り上がりをみせていた。
『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022』
このお祭り空間も3年ぶりかと思うと、少し感慨深く名残惜しいのでついつい長居してしまった。境内ステージでは、この日、L-STAGEのトリを飾るキュウソネコカミが、FM802『RADIO∞INFINITY』の公開収録に参加したりと、ラジオ局主催の「ロック大忘年会」らしい取り組みも盛りだくさんだった。
FM802『RADIO∞INFINITY』公開収録(ゲスト:キュウソネコカミ)
【Spotify Early Noise LIVE HOUSE Antenna】
■tonun
tonun 撮影=ハヤシマコ
LIVE HOUSE Antennaのステージに登場したのは、シンガーソングライター・tonun。ステージにはロゴのネオンが光る。ギター、ベース、キーボード、ドラムによるバンドセッションからスタートしてじわじわと会場の雰囲気を高めると、tonunが軽やかに登場して「東京cruisin’」でゆらゆらフロアを揺らす。甘めの低音ボーカルが心地良く、体が自然と音に導かれる。前半はダンサブルな「d.s.m」、丁寧にラップを紡ぎ出した「Sweet My Lady」などグッドバイブスを連投。楽曲を支えるバンドサウンドももちろんだが、感情を乗せた豊かな歌声でグルーヴを生み出し、チルな空気感で包み込んで会場を魅了した。
MCでは「初めての本格的なフェス」と笑顔で喜びをあらわに。後半もR&BやHIP-HOP、ポップスがクロスオーバーした極上の楽曲でフロアを揺らせ、ホーン隊の同期も入ったラストナンバー「Sugar Magic」で気持ち良くライブを終えた。素晴らしい余韻をくれた、最高にチルな時間だった。
取材・文=ERI KUBOTA
【R-STAGE】
■THE BAWDIES
THE BAWDIES 撮影=井上嘉和
THE BAWDIESはのっけから「IT’S TOO LATE」、「YOU GOTTA DANCE」、「ROCK ME BABY」を爆音で連投して会場を踊らせる。ROY(Vo.Ba)の長尺シャウトもバッチリ決まり、JIM(Gt.Cho)は汗だくでギターを振りかぶり大きくジャンプ! TAXMAN(Gt.Vo)のクールなプレイとMARCY(Dr.Cho)のタイトなビートも安定感抜群。
中盤では彼らのライブではすっかりお馴染み、というよりもはやお家芸と言える「HOT DOG」に繋がる小芝居を披露した。キャストにFM802 DJの樋口大喜を招き、小道具や衣装も綿密に準備。「HOT DOG」リリースから10年余り、回数を重ねて壮大に練り上げられた小芝居には、並並ならぬ情熱(ROY曰く執着?)を感じた。そこから会場を笑いの渦に巻き込み、後半も定番のセットリストで一気に駆け抜けた。最後はTAXMANが音頭を取り、これまた定番の「わっしょーい!」で締め括る。不変のスタイルで、全速力120%のステージを、少しもブレずに貫き続ける彼らの姿勢は本当にカッコ良い。ライブ終わりに「50歳になっても「HOT DOG召し上がれ」言うてるんやろうなぁ」と言っていた観客がいたが、本当にそうだろうなと思う。それほどに音楽を愛し、音楽をライフワークとしていることが伝わってくる、情熱のステージだった。
取材・文=ERI KUBOTA
■ザ・クロマニヨンズ
ザ・クロマニヨンズ 撮影=柴田恵理
虚飾を全部ひっぺがす無垢なるロックンロールがR-STAGEに鳴り響くーーー『RADIO CRAZY』にザ・クロマニヨンズが出現! ド頭「暴動チャイル(BO CHILE)」から仕上がり万全で、甲本ヒロト(Vo)はブルースハープを吹き鳴らし、豪速球ストレートの歌声で私たちの心臓をダイレクトにわしづかむ。桐田勝治(Dr)は時折立ち上がって場を鼓舞し、「タリホー」ではザ・フーのピート・タウンゼントばりに腕をぐるぐる回しながら歌うヒロトに、観ているこちらも力がみなぎるほどだ。
「新曲、今日初めてやるよ、上手にできるかな? 聴いてくれ!」(ヒロト、以下同)と茶目っ気たっぷりに「イノチノマーチ」を続けるも、見事な親和性で会場は沸き上がり、その熱気は初披露とは思えない。
「今年はどんな1年だっただろうか? 今日1日で、どんな1年でも最高のものにしてくださいね。楽しんで帰ってくれ!」
底抜けにらしさあふれる言葉を客席に投げかけ、ガレージ感たっぷりに「ドライブ GO!」、「ごくつぶし」をぶっ放す。真島昌利(Gt)は高らかにギターを掲げ、小林勝(Ba)はソリッドなフレーズをかき鳴らし、4人はその実像よりももっともっと大きなシルエットで大観衆を包み込んでいく。「ナンバーワン野郎!」ではステージを駆け、ついには転がり回り、吠えるヒロト。
「すげー楽しかった! またやろう、絶対やるぜロックンロール!」
純度200%のアンサンブルで「クロマニヨン・ストンプ」まで走り続けたザ・クロマニヨンズ。永遠のヒーローに拍手!
取材・文=後藤愛
■UNICORN
UNICORN 撮影=井上嘉和
光に満たされたステージに浮かぶ5つのシルエット。冒頭「HELLO」から壮大なハーモニーを重ね、どこか神々しいまでの存在感を伴ったUNICORNがR-STAGEのフィナーレに降臨! 奥田民生(Vo.Gt)からABEDON(Vo.Key)にマイクをバトンタッチした「WAO!」を経て、EBI(Ba)が「大事なシ〜メくくりのライブになりますっ!」と「米米米」へつなげる流れには会場のそこかしこから笑いが噴出。手島いさむ(Gt)の華麗なソロを崇め奉っていると思いきや急にクラッカーを鳴らし驚かせたり、マイクを銃に見立てたEBIのアクションのあと、時間差でバキュン! と銃声のSEが続く……etc。メンバーがわちゃわちゃする一連の流れは、偶然か演出か(笑)。
UNICORN
ABEDONがロングトーンで魅せる「ミレー」では民生が艶やかなサックスを吹き、パートをさまざまに入れ替えるなども見せ場の一つだ。川西幸一(Dr)が破顔しつつマーチのリズムを刻んだ「ヒゲとボイン」で一層オーディエンスを沸かせたのち、ラストは「雪が降る町」をエモーションたっぷりに奏で、きっちり締めてくるあたりが何とも心憎い。2023年の展望を感じさせる、笑いとキュンあり! な、UNICORNからのお守りのような時間となった。
取材・文=後藤愛
【L-STAGE】
■SCANDAL
SCANDAL 撮影=田浦ボン
L-STAGEをガーリー&ロックに彩ったのはSCANDAL。SEが流れ、ブルーの光に包まれたステージにメンバーが登場。それぞれの個性を引き立てる赤いワンピースが魅力的だ。1曲目は「瞬間センチメンタル」。HARUNA(Vo.Gt)の伸びやかな歌声が会場を満たし、絶好調でライブをスタートした。「今日は色んな時代の曲やってくよー!」とHARUNAが叫ぶ。その言葉通り「最終兵器、君」、「少女S」、「会わないつもりの、元気でね」といった新旧織り交ぜた楽曲を演奏。RINA(Dr.Vo)のパワフルなドラミング、MAMI(Gt.Vo)の音圧凄まじいギタープレイ、TOMOMI(Ba.Vo)のグルーヴィな指さばきと甘いコーラス、全てに迫力が宿っていた。来年結成17周年を迎える彼女たち。ガールズバンドがメンバーチェンジなし&活動休止なしで活動を続ける最長記録に届くそうだ。「SCANDALを初めて観る人いますか?」との問いには結構な人数の手が挙がったが、HARUNAは「初めての出会いがあるのが嬉しい」と喜び、「出会ったくれた人たちと来年も楽しく1年突っ走っていきたい」と笑顔を見せた。「Tonight」からのラストスパートは勢いを増し、昔からのファンも初見の人も楽しめる「攻め攻めセットリスト」で、畳み掛けるように駆け抜けて会場を盛り上げた。
取材・文=ERI KUBOTA
■yama
yama 撮影=田浦ボン
『RADIO CRAZY』初出演、L-STAGEに登場したyama。TVアニメ『SPY×FAMILY』第2クールのEDをつとめたこともあってか、優先観覧エリアに子どもの姿が多く見られ、幅広い世代からの注目を集めていることが伝わってきた。大歓声に迎え入れられたyamaは、まさにその「色彩」からライブスタート。
完全には素顔を明かさない匿名性の高さながら、人気ぶりが凄まじい。なぜか。歌い出せば圧倒的な高音ボーカルで会場を魅了し、同じ社会に生きる人間であることを感じさせるMCで共感を得るからだ。ライブを始めたのがコロナ禍以降のため観客の声を聞く機会がなかったと話し、「自分の名前とか呼んでもらってもいいですか」と照れ臭そうにお願いして喜んだり、「ステージに立ってる時間は日常生活よりも一瞬。自分は口下手でうまく話せなかったり、人の顔色を伺ってしまう性格で、間違ってたかなとか、どうしてできないんだろうと考えちゃうんですけど、笑って楽しそうに音楽を浴びてる皆の顔はエネルギーをもらえるし、やっぱり間違ってないなと思える瞬間でした」と素直に想いを伝えたりする姿は人間味に溢れていて、親近感を感じさせる。きっとそんなところも支持される理由だろう。ラストはACIDMANの大木伸夫が作詞・作曲を手がけた「世界は美しいはずなんだ」を壮大に響かせ、輝くステージで大団円を迎えた。見る者を釘付けにする存在感で、唯一無二のライブを見せてくれたyamaだった。
取材・文=ERI KUBOTA
■キュウソネコカミ
キュウソネコカミ 撮影=田浦ボン
新日本プロレスの高橋ヒロムに呼び込まれて登場したのは、L-STAGEのトリを任された、キュウソネコカミ。ヤマサキ セイヤ(Vo.Gt)が「お待たせしました、戻ってきました。この曲から初めていいですか!」と投げかけ「5RATS」でスタート。活動休止から復活したばかりのカワクボ タクロウ(Ba)も加わった、オカザワ カズマ(Gt)、ソゴウ タイスケ(Dr)、ヨコタ シンノスケ(Key.Vo)の5人そろったバキバキのバンドサウンドがぶつけられ、パンパンのL-STAGEが揺れる。「ファントムヴァイブレーション」では、コール&レスポンスも成功。静寂のなか響き渡った<スマホはもはや俺の臓器>のレスポンスに、耳を傾けるヨコタの感無量の様子はモニターを介さずとも伝わってきた。思わずセイヤも「ヤバ……」と声を漏らしてしまうほど、声出し解禁を実感する、感動のハイライトが早くも訪れる。
キュウソネコカミ
MCでセイヤは、大トリ・ELLEGARDENと少し裏被りしていることを嘆きつつも、そんな大役を任されるということは、『レディクレ』からの愛であると感謝する。「住環境」では、楽曲でもコラボしているFM802 DJ飯室大吾が登場! そして新しいライブの夜明けを祝うかのようにして鳴らされた「DQNなりたい、40代で死にたい」では、特大の<ヤンキーこわい>のコール&レスポンス。かつてはフェスの定番曲だったが、あまりに盛り上がりすぎるためほとんど封印してきたこの曲を、年末のそれも『レディクレ』で解き放つことにどれだけ意義があったか。「年末にバカな言葉を叫んでる時が、サイコーに楽しいよな!」と語りかけるセイヤ。<スマホはもはや俺の臓器>と<ヤンキーこわい>と大きな声で言えて、こんなに嬉しい日が来るとは……。
そして「ハッピーポンコツ」から「The band」へと続く、心の底からぶち上がるラストシーン。個人的には、曲中の「10年以上バンドやってると、KANA-BOONとキュウソネコカミで、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとELLEGARDENの裏できるんですね! 夢ありすぎでしょ! 応援してくれてありがとう! 俺たちも最強のバンド目指してます!」の宣言がとにかく刺さった。アンコールの拍手が起こると、観客がエルレのステージに移動する前にダッシュでもどってくるメンバー。「裏で、この曲をやりたかった」と渾身の「サブカル女子」を披露。最後までキュウソらしいエンディングで、ハッピーな余韻を届けてくれた。
取材・文=大西健斗
【Z-STAGE】
■go!go!vanillas
go!go!vanillas 撮影=渡邉一生
リハからボルテージを焚きつけまくっていたのは、go!go!vanillas。12月14日(水)にリリースしたばかりのニュー・アルバム『FLOWERS』収録の「HIGHER」から始まり、「平成ペイン」、「お子さまプレート」と連投。ご機嫌なロックンロールがZ-STAGEに響き渡る。中盤戦で牧達弥(Vo.Gt)はジャケットを脱ぎ、さらに勢いを加速させより歌声にも熱が帯びていく。柳沢進太郎(Gt)と長谷川プリティ敬祐(Ba)はステージをめいいっぱいつかって観客と向き合い会話するように音を鳴らし、鮮やかなメロディに身を任せて自由に踊る観客たちの笑顔でいっぱいに。
「カウンターアクション」ではジェットセイヤ(Dr)のドラムが雷のように轟き、「いろんな思い出があるけども、いつも思ってるのは今日が一番最高だということ。常に自分の人生を最高に楽しんでいこうな! ロックンロールの魔法をかけてかえります!」とラストは「マジック」。代表曲だけでなく、最新の楽曲をたっぷりしっかりと届けながら「今が一番最高でロックンロール」であることをみせつけてくれた。
取材・文=大西健斗
■SHISHAMO
SHISHAMO 撮影=SHISHAMO
『RADIO CRAZY』常連のSHISHAMOは、この日が2022年のライブ納め。サウンドチェックから「ねぇ、」や「君と夏フェス」をフルで披露して会場の熱を引き上げる。吉川美冴貴(Dr)、松岡彩(Ba)、宮崎朝子(Vo.Gt)の順でステージに登場し、1曲目の「狙うは君のど真ん中」で盛り上げ、さらにフェスではお馴染みの「タオル」を投下して一体感を高める。MCでは宮崎が「今年も帰ってこれて嬉しいです」と笑顔。
今年CDデビュー10周年イヤーに突入したSHISHAMO。「CDデビューした2013年から『レディクレ』に出てるんですよ」と宮崎が言うと吉川が「SHISHAMOにとって初めてのフェスです」と明かす。「自分たちの10年間と共にあってくれた『レディクレ』に今年も出れて嬉しいです。気合い入っております!」と放ち、楽曲を紡いでゆく。同期にホーン隊を入れた「明日も」では、ビジョンに宮崎の背中越しのアングルでステージ視点のフロアが映し出される。手書きのリリックが出る演出で、その場にいた全員を肯定した。ラストは「明日はない」を披露。骨太で生々しく、エモーショナルなステージングで今年最後のライブを終えた。
取材・文=ERI KUBOTA
■THE ORAL CIGARETTES
THE ORAL CIGARETTES 撮影=渡邉一生
広大なZ-STAGEをブッ壊すような大狂乱を巻き起こしたのは、THE ORAL CIGARETTESだ。「お前らそんなモンか!?」と、満員のフロアの一人も残らずあおるフロントマン・山中拓也(Vo.Gt)を筆頭に、超絶猛攻のパフォーマンスを展開する彼ら。中西雅哉(Dr)のテクニカルな変速リズムにアドレナリン大放出の「カンタンナコト」では、全員ヘドバンの絶景が湧出! 散弾銃のごとく言葉を放出する「ENEMY feat.Kamui」、あきらかにあきら(Ba.Cho)が紡ぐ極太リズムの「BUG」と、脳髄へ直接注入されるような快楽に、パーティーは加速する一方だ。
「最大限、現状で楽しめるライブをつくろうと頑張ってきた1年。一番我慢したのはあなたたちだと思ってます。俺たちのやり方で、あなたたちが楽しめる最大限の方法を模索してセットリストも遊び方も考えたから、素直に、正直に俺らについてきてくれ! 今日集まってくれたことに感謝します」(山中、以下同)
そう導いた「mist...」では、鈴木重伸(Gt)が弾き倒す泣きのギターソロに加え、シンガロングが自然発生する両者のあうんの呼吸には、見事と言うほかない。「いつも帰る場所を用意してくれてありがとう!」と、ひときわ明るい音景色を描いたラスト「LOVE」まで、終始共鳴し合うバンドとオーディエンスの美しき相互関係を見たTHE ORAL CIGARETTESのステージだった。取材・文=後藤愛
■ASIAN KUNG-FU GENERATION
ASIAN KUNG-FU GENERATION
どデカいZ-STAGEを難なく埋め尽くし、開演前から絶景を生み出したASIAN KUNG-FU GENERATIONが、大トリ前にオン・ステージ。心地よいビートを鳴らす「Re:Re:」のお次は「リライト」と、序盤からアンセムも惜しみなく披露し、ファンも初見のオーディエンスも等しく巻き込んでいくパワーはさすがだ。ハンドマイクでステージの端から端まであおる後藤正文(Vo.Gt)は、「今回はどうやら25%ぐらいなら歌っていいそうで。だから俺たちでこの辺が25%なんじゃねえの?というのをやる」と、前代未聞のささやき声でのコールを披露! 「バンドの演奏もデカい! 25%くらいの演奏にして。俺も某船場吉兆の女将くらいにする」とたしなめ(笑)、ルールすら楽しませるショーマンシップで、ライブの醍醐味を凝縮していく。たった一音出すだけで歓声が噴出した「ソラニン」では、喜多建介(Gt.Vo)の爪弾くエバーグリーンなメロディに、生命力を感じる伊地知潔(Dr)のリズムに、何とも心を揺さぶられる。
ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=渡邉一生
「みんなそれぞれ自分らしく楽しんで。誰のまねもしなくてもいい、あなたがあなたであるように楽しんでくれたら俺たちは最高です。知らない曲もやるかもしれないけど、地蔵(状態)でもいいから。願わくばこの2年分の溜まった何かを落として帰ってくれたらうれしいです」(後藤)と、やさしい言葉からつないだ「You To You」では、心地よい音のレイヤーを丁寧に重ねていく。山田貴洋(Ba.Vo)のビートが快走する「君という花」、ラストは「Be Alright」を朗らかに歌い上げ大団円を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATION。揺るぎない力を持つ楽曲と血の通ったプレイで、レディクレに鮮やかな存在感を刻みつけていた。
取材・文=後藤愛
■ELLEGARDEN
ELLEGARDEN 撮影:三吉ツカサ(Showcase)
オープニングMCを担ったFM802のDJ大抜卓人が、「僕は2009年の第1回目でthe HIATUSを、2016年にはMONOEYES、そして公開収録でも「細美武士!」と呼び込んできました。でも、ずっと付き合ってくれているFM802リスナーの前でこの名前だけは紹介したことがなかったんです」と、咆哮したその名はELLEGARDEN! 2008年の活動休止を経て2018年に10年ぶりにライブ活動を復活。そしてこの12月には実に16年ぶりのニュー・アルバム『The End of Yesterday』をドロップし、リスナーを歓喜に導いてきた4人がいよいよ『RADIO CRAZY』の舞台へと姿を現した。「行こうぜ大阪!」と、細美武士(Vo.Gt)の号令を開幕ののろしに、「Supernova」を投下! 復活後のライブの1曲目として数々の会場で奏でられてきたこの曲が『レディクレ』でも高らかに鳴らされる。リリカルな「風の日」は、色あせないどころか初めて耳にした衝撃をリバイバルするようなときめきにあふれ、促さずとも高速クラップが創出される「Fire Cracker」の轟音に吹き飛ばされそうな心地に。高橋宏貴(Dr)の強靭なビートが腹の底から響きわたる「Salamander」と続き、眼前に繰り広げられるELLEGARDENがあまりにELLEGARDENで、何だか夢を見ているんじゃないかと思えるほどだ。
ELLEGARDEN
「ヤベーな! マジでお前らが歌うだけでここまで楽しくなるの? 来年以降、モッシュやダイブができるようになった日には、どこまでいっちゃうんだろうな。生きてきてよかったです。俺たちは最高の1年になりました。10年以上帰りたくて仕方がなかった場所にやっと帰ってこれて、神様本当にありがとう。みんなも来てくれて本当にありがとう!」(細美、以下同)
くしゃっと笑いながらフロアへの敬愛を込めた言葉に、喝采が起こるのは言うまでもない。続けて新作からセンチメンタルな「Mountain Top」を鳴らし、細美の歌声はタフネスな演奏の中でも鮮やかな存在感を成す。
ELLEGARDEN
ELLEGARDEN
「マジで俺、今が生きてきて一番楽しいかもしんない。雪が溶ける頃、また俺たちツアーやります。それまで絶対生き延びろよ!」とうれしいニュースも挟み、「ジターバグ」では生形真一(Gt)とのハーモニーに何とも胸を打たれる。高田雄一(Ba)の温かみあるリズムを感じる「虹」では、生形のきらめくソロに心が沸き立ち、間違いなく世界の中心はココだと実感。ナイーブなシンガロングからパンキッシュに猛攻する「Make A Wish」、疾走感たっぷりの「Strawberry Margarita」で本編を締め、アンコールの「スターフィッシュ」まで全12曲。年齢も立場も何もかもをとっぱらい、誰しもがひとりのロックキッズとなった瞬間、それはELLEGARDENだからこそ成し得たかけがえのない時間だった。
史上最長の4日間にわたり、総勢約100組にも及ぶアーティストがさまざまなドラマを描き出した『RADIO CRAZY』。心地よく身体に残る余韻を感じながら、また2023年、インテックス大阪に集えることが楽しみでならない。
取材・文=後藤愛
写真提供=FM802
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掲載しきれなかったアーティストのライブ写真やソロカット、セットリストを一挙に公開!