ミュージカル『FACTORY GIRLS』で再び主演! 柚希礼音が語る、再演への熱い思い
あなたは自分の心と体を汗だくにして表現するリーダーだ
──この題材で改めて驚いたのは、アメリカでも男女格差ってこんなにあったのか、というところでしたし、男女平等という視点はいま日本でも盛んに議論されるようになって、この3年半で作品の見え方も変わってきているかもしれませんね。
それはすごくあると思いますし、特にこの3年半の間にはコロナ禍があって、初演の頃に比べるとあまりに何もかもが変わった時期なので、私たちの感じ方も、作品の見え方も変わってくると思うんです。そうだとしたらやっぱり、「断然良くなっている!」というところに持っていきたいじゃないですか。でもそこを目指す為には、皆、おそらく誰しもがこの3年半で、色々な辛いこと、悲しいことがいっぱいあったと思うので、そういった体験がこの作品のなかの真実として流れる、そんな感情のぶつかりあいをたくさん作れたらと思いますので、自分の体験をしっかり使いながらやっていきたいです。
──いまから、更に白熱したお稽古期間になるのだろうなとお話から感じますが、ダンスや歌の、技術的な面についてはどうですか?
初演の時には、振付も歌もただただ必死だったんですね。セットを動かしながら、衣裳のさばき方も全部ひとつずつこなしていかなければならなかったので。もちろん当時はできる精一杯で踊り、歌っていましたが、今思えば、例えば工場で働いているダンスなどは、もう少しこうも踊れたんじゃないかと思う部分もありますし、サラが初めて登場してくるところも、もっとこうできたんじゃないか、というように色々と客観的に見られている部分はあります。もちろん実際にお稽古に入っていざ自分がやってみたら、いま頭で描いているようにはならないかもしれませんが、「もっとできたんじやないか?」と自分で感じるところがたくさんあるので、それを板垣さんやキャストの皆と一つひとつ作っていくのがとても楽しみです。
楽曲についてもまず譜面がすごく難しかったんです。さすがはブロードウェイの作曲家さんが作られたという感じで。でもまずリズムをしっかり取ることによって、音が出てくるという感じなんだとわかってきて、歌稽古だけをひたすらみんなでしました。グループに分かれてとにかくリズムを正しく身に着けようという稽古や、台詞を入れずに音楽だけで通すことも何度も何度もして、そこにはすごく時間をかけましたし、今回もまたブラッシュアップしていきたいです。向き合えば向き合うほど出てくるものがある譜面ですね。あとは、この作品ではお芝居というものをすごく勉強させてもらったと思っていて、幕開けから終演までお客様が途切れることなく集中して入り込んでいける作り方というものが、とても大切なんだなと感じているので、全てのお客様がぐっと作品のなかに入っていけるように、みんなで力を合わせてやりたいと思っています。
──いま、衣裳のさばきも難しかったというお話でしたが、先日ビジュアル撮影もあり、印象的なモノトーンのお衣裳を再びお召しになっていかがでしたか?
ちょうど前の公演が終わってすぐの撮影だったこともあって、すごく痩せていたんです。でもそれだけじゃなくて、3年半経ってやっぱりみんな大人になったんだなと。ソニンちゃんに会っても、他の人たちを見ても3年半の月日を感じると言うか、皆が歩んできた道のりを感じるので、そこでもう一度同じストライプの衣裳とカツラをつけたことは、色々な発見があって楽しかったです。
──また、先ほど難しかったとおっしゃった楽曲ですが、客席で聞いている側としては、今でも頭に蘇ってくるキャッチ―な曲がたくさんありました。そのなかで難しいとは思いますが、特にお気に入りの曲をあげていただくとすると?
「剣と盾」がやっぱりすごく好きです。サラが剣ではなくペンを手にして戦っていこうと決意する曲なのですが、いつも歌いながら大好きだなと思っていました。他にも本当に好きな曲はたくさんあります。
──演出の板垣さんの言葉で印象に残っているものはありますか?
板垣さんから言われてすごく嬉しかったのは「あなたはみんなに汗をかかせて真ん中にいるリーダーじゃなくて、自分の心と体を汗だくにして表現するリーダーだ。それにとても感動した」というようなことを、千穐楽の時に言ってくださったんです。それは自分で意識していたことではなかっただけに、すごく深いことを言ってもらえたなと思えてとても嬉しかったですし、本当によく見てくださってるんだなと感激しました。その板垣さんとまた作品に一から取り組めるのが、とても楽しみです。
──お話を伺っていて、再演への期待が更に大きく膨らんできました。では改めて、この作品の再演を心待ちにされていらした方達にメッセージをいただけますか?
再演の報を聞いてファンの方々ももちろんですし、お客様からの「待っていました!」というお声を本当にたくさんいただくのですが、私の周りの中学や高校時代の友人もすごく喜んでくれているんですね。それくらい私と同世代の女性たちも含めて、驚くほど多くの方々が、3年半もこの作品を待ち望んでくださっていたということがわかって、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。初演のメンバーと、新たに加わるメンバー全員で一丸となって、こうした皆さんからのお声にお応えできるように、皆さまに色々なことを感じていただける舞台になるように頑張っていこうと思っています。是非6月の開幕を、皆様楽しみにしていてください!
取材・文=橘涼香 撮影=荒川潤
公演情報
出演:
柚希礼音 ソニン/実咲凜音 清水くるみ・平野 綾/水田航生 寺西拓人
松原凜子 谷口ゆうな 能條愛未/原田優一・戸井勝海/春風ひとみ 他