谷佳樹&杉江大志&泰江和明「お待たせしました!」~舞台「文豪とアルケミスト 旗手達ノ協奏(デュエット)」インタビュー
(左から)泰江和明、谷佳樹、杉江大志
アプリゲーム『文豪とアルケミスト』を原作とした舞台は2.5次元と呼ばれるアニメ・ゲームを原作とした舞台群の中でも多く続いており、2024年6月に公演予定の舞台「文豪とアルケミスト 旗手達ノ協奏(デュエット)」は(以下「文劇7」)で7作目となる。
今作では志賀直哉が強大な侵蝕者を前に、かつての友 小林多喜二と大きな危機に瀕した世界に抗う姿が描かれるという。志賀直哉役は谷佳樹、武者小路実篤役は杉江大志、有島武郎役は杉咲真広、里見弴役は澤邊寧央がそれぞれ続投、白樺派と呼ばれる4人が初めて舞台で揃う。さらに新キャストとして石川啄木役の櫻井圭登、高村光太郎役の松井勇歩、広津和郎役の新正俊、小林多喜二役の泰江和明が新たに加わり、「文劇」に新たな化学反応を起こしてくれることだろう。
さらに東京公演の会場であるシアターHは完成したばかりの施設でもあり、「文劇7」が初めての公演(こけら落とし)になることも注目したい。
今回のインタビューは、以前、舞台「文豪とアルケミスト 異端者ノ円舞(ワルツ)」(以下「文劇2」)でも取材に答えてくれた谷と杉江、そしてニューフェイスである泰江が加わっての3名で行われた。にぎやかでわいわい楽しい空気感がありつつも、作品について聞くと鋭く熱い気持ちが飛んできた。
(左から)泰江和明、谷佳樹、杉江大志
「文劇」は思い入れのある作品
ーーご出演の決定を聞いたときはいかがでしたか。
武者小路実篤役 杉江大志(以下、杉江):我々(谷・杉江)は舞台「文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌(エレジー)」(以下「文劇1」)と「文劇2」に出演していましたが、次は「文劇7」なんですよ! お待たせしました、待ってました! という思いです。ふたりで何度も「白樺派、またやりたいよね」って言っていたんです。やっと出番だねという感想と、嬉しい気持ちでいっぱいです。
小林多喜二役 泰江和明(以下、泰江):ありきたりかもしれませんが、嬉しかったというのが率直な感想です。知り合いの方が出演されていたので作品自体は知っていました。7作品目という人気シリーズに参加させていただけるというのも嬉しいですし、シアターHのこけら落としになるという経験をさせていただけるのも有難いです。頑張ります!
志賀直哉役 谷佳樹(以下、谷):本当に嬉しかったというのと、やっと出られるなというのがあります。1、2作目と出て、もしかしたら5作品目くらいでまた出るんじゃない? と、こっそり思ってもいましたが……。
杉江:確かに5作目くらいでの出番は僕もちょっと思ったなぁ。もしかして衣装が真っ白で、すぐ汚れちゃうから出番がなかった?(笑)
谷:でもそれは一生懸命頑張った証だし! この世界も、志賀直哉という役も、白樺派というグループも大好きで、思い入れのある作品です。出演決定はファンのみなさまにも喜んでいただけたので、心が躍りました。その分プレッシャーも感じていますが、より頑張ろうと思っています。
ーー以前、SPICEでのインタビュー時(「文劇2」の2019年11月)に、谷さん・杉江さんはすでに「気の置けない仲」と言っていましたが、その後お互いの関係性や印象の変化はありましたか。
杉江:「文劇1」で初めましてで、「文劇2」の時点でもうこんな感じだったよね。そこからは変わってないな。
谷:ほんとにずっとこんな感じです。なかなか直接会うことはしませんが、よく連絡を取っているので、前回の「文劇2」から時間が経ったという感じもしませんね。
谷佳樹
杉江:「文劇」以外でも共演はありましたが、実はちょっと久しぶりでもあるよね。
ーー泰江さんはおふたりと今回初めてお会いしたと聞きました。
泰江:そうなんです。
杉江:インタビューの準備中に3人でいろいろ話もしましたが、すでに良い雰囲気です。泰江くんも、ちょっと「変」だよね。
泰江:えっ!?
谷:うん、「変」かも。多分僕らも「変」な部類なの。それをお互い理解して許しあっているんだけど、その僕らにすっと入ってきちゃったから、泰江くんもおそらく「こっち側」。役者仲間や友人から泰江くんの話は聞いていて、優しい子だよって言われていました。「優しい」にもいろいろあると思いますが、実際に会って「これは安心だ! 同じ種族だ!」って感じました。
杉江:ふざけたときに素直に笑ってくれるっていうのは安心感あるよね。一緒に楽しいことをやってくれそうだなっていう印象なので、今の段階で大好き! 稽古場がにぎやかになりそう~!
泰江:谷くんとの初会話はなんと犬の話題で、会って早速笑っちゃいました! 僕も安心感を抱いていて、おふたりが揃った時に夫婦漫才のような会話と、空気感がすごく素敵だなと。優しいお兄さんのようにも見えるし、一緒にふざけてくれそうでもある!
杉江:うんうん、そういう感じ。泰江くんは今作で初めましてだけど、こういう空気感が同じだから良いチームワークができるんじゃないかな。僕らは「文劇2」から5年経っているから、身体には気を付けて頑張りたいよね。
谷:そうだね、怪我とかはしないように。
ーーほかに初共演の方はいらっしゃいますか?
谷:僕は新くん(広津和郎役 新正俊)が初めましてかな。
泰江:僕は新くん以外が初めましてですね。転校生のような気分です。稽古が始まるのがもう本当に楽しみ~!
撮影中もずっとおしゃべりが止まらない3人でした!
ーー「文劇」の好きなところ、大変なところを教えてください。
杉江:「文劇」は脚本も舞台ごとにオリジナルで、意外と自由度が高い、というのが好きなところです。原作から逸脱しないようにはしていますが、その中で遊びを入れるのもやりやすい。史実のご本人様たちの関係性があっても、モノをつくりやすい、想像をしやすいという環境が整っているのが、すごく「文劇」の良いところだなと。真面目なところはもちろん、遊ぶところがあっても作品を創造できるのが良いなと思っています。
谷:僕はエンタメとして「文劇」が好きです。演劇における、作り手の想い・メッセージ性の強さも含めて、共感を得られることが多いのかなと。状況や感情への理解、みんなが抱えている思いなどをスカッと表現してくれるのが「文劇」の良さでもあると思います。そこに立ち回りや史実の関係性も入っているので、すごく良いバランスの取れた上質な作品だな、というのが「文劇」の印象です。そこに芝居が好きでこだわりの強い役者たちが集まるからこそ、良いものができる。その循環で、作品のバトンを繋いでこられたのかなと思っています。
ーー泰江さんは今回初参加ですね。『文豪とアルケミスト』という作品、または「文劇」に初めて触れた時、どのような印象をお持ちになりましたか。
泰江:出演が決まってからは、小林多喜二だけでなくいろんなキャラクターについて調べたり、過去の「文劇」の映像を観たりしています。そして「めちゃくちゃ動くなぁ」と!
杉江・谷:確かに!
泰江:初めてタイトルを聞いたときは「文豪」と言うので、ストレートプレイに近いのかなと思ったんです。想像以上にエンタメ性が強くて驚きました。
今回のストーリーは「王道まっすぐ」
ーービジュアル撮影の感想や、当日の様子について教えてください。
泰江:ウィッグを本当に丁寧に作ってくださったこと。頭の採寸などをするウィッグあわせという日があります。20分くらいかなと思っていたんですが、なんと2時間! 何もない状態からカットしてキャラクターを作っていき、役者に合わせた形にしていくというのを撮影前にしていただきました。周りの方からもすごく馴染んでいると言われて、完成したものは細かい部分までイラストそのもの。そんな一面だけでもスタッフさんの愛を感じました。
杉江:「文劇2」から約5年ぶりの撮影でした。志賀はそのまま歳を取ってもできそうな雰囲気がありますが、武者の特徴的な無邪気さ——そこを5年経った自分がどうするかなと。でもいざやり始めるとそれはもう楽しくなっちゃいましてね! 無邪気にやらせていただきました(笑)!
谷:僕はスタッフさんの段取りが素晴らしすぎて感動。「これ何枚撮るの!? すごく時間かかるだろうし、予定時間過ぎるな」って覚悟するくらい本当にたくさん撮るものがあったんですよ。でもスタッフのみなさんがテキパキと段取りを整えていてくださって、進行もスムーズで。逆に「えっ、もう終わり?」ってなるくらい。
泰江:これは本当にすごかったです。
杉江:「こんなに撮る項目あるの!?」って枚数に驚いてたけど、進行の早さにもまた驚いた。
谷:気付いたら僕の次に撮影だった寧央(里見弴役 澤邊寧央)が、もう近くにいました。あっという間の撮影だったから自撮りする時間も余裕もあったくらい。画角が変わるとライティングも変わるから、調整するのでちょっと待ってくださいっていう「待ち」があったりするものなのですが、そんな時間ほとんどなかったです。
杉江:枚数も相当撮ったな。
杉江大志
泰江:本当にたくさんでしたね。いろんなアイテムを持ったり。
ーーX(旧Twitter)では杉江さんが苗を持ったビジュアルも公開されていましたね。
杉江:ありましたね~。史実の武者小路さんは田んぼを作られていたようで。
泰江:本当に史実であるんだ。
谷:そういう情報を下調べして、前もって撮るものや構図を決め込んで準備しておくってすごい仕事。こういう一つひとつに「文劇」の歴史を感じます。スタッフさんも毎回反省して、次に活かそう、反映しようとしているのが、同じひとつの作品に向き合うチームとしても頼もしい。今回のビジュアル撮影では何よりその段取りに驚きました。
ーー脚本(台本)を読んだ感想を教えてください(※物語の中核となるネタバレはありません)。
杉江:僕は良いバランスだなって思いました。展開としてはすごく「王道まっすぐ」なんだけど、「深み」を感じるのは「文劇」ならではなんじゃないかな。軸だけ見るととてもシンプルなお話ですが、そこに文豪たちの背負っているものや、想いが乗っている。もう一段階深く感情移入して見られる良い作品になっているんじゃないかなって思いました。
谷:僕も最初読んだ時は、シンプルだなって思いました。でも、かみ砕いていくとすごく肉付けのし甲斐があるし、そこにキャラクターたちの想いや関係性が加わることによって、逆にシンプルなのが良いよねってところに行きつくのかなって。
有碍書の中へ潜書して浄化できても、また違う作品が有碍書になって……の繰り返しだけでは単調ですが、有碍書になってしまった原因や潜書するメンバーも異なっているので、作品としての色合いも変わってきます。
それと白樺派ってやっぱりかっこいいんだなって思いました。2人よりも4人、3人よりも4人ってなったときの心強さは全然違う。
(C)2016 EXNOA LLC / 舞台「文豪とアルケミスト」7製作委員会
杉江:戦隊ヒーローみたいだよね。
谷:登場の仕方もね。だから4人で揃ったところを早く楽しみたい!
泰江:白樺派4人のキービジュアルを見て、本当にかっこいいなって思いましたもん!
谷:衣装も白だし、統一感あるよね。
泰江:僕は「文劇」の世界観っておもしろい! って、わくわくする思いでした。王道ストーリーであるのもそうだけど、文豪たちの転生や彼らの性格、侵蝕者が文学を奪おうとするという世界観が深くて広い。そして本当にメッセージ性が強い。まさに「文劇」でしか描けないお話でした。その深みを出せるかが「文劇」の見どころにもなるし、おもしろさでもあると思う。その反面、頑張らなきゃなと焦る気持ちも覚えました。今回小林多喜二を含めて新しい文豪たちが転生したことによって生まれる、新たな関係性や物語、「文劇」の深さを表現出来たらなと思いました。プレッシャーもありますが、それを超えていく、楽しんでいくというスタイルでやっていきたい!
(左から)泰江和明、谷佳樹、杉江大志
初めて入る新劇場・シアターHのこけら落とし
ーーご自分が演じるキャラクターをどのような人物だと捉えていますか。
泰江:まずビジュアルがカッコイイ。フードを被っていてちょっと闇を抱えていそうな雰囲気で、それなのにおはぎが好き。心を開いたら優しい一面もある。モデルとなる方がもちろんいらっしゃるわけですが、『文豪とアルケミスト』のキャラクターとして、すごくかっこよく、可愛く、キャッチーだなと思いました。
杉江:武者(武者小路実篤)の一番根幹にあるものは、「何かがあってもブレない強さ」という印象を持っています。だから白樺派の中でも光、太陽みたいなイメージです。白樺派の柱のような存在である志賀を照らす、光のような印象ですね。あの意志の強さというものはすごく類稀れなものなんじゃないかな。それゆえに上手くいかないこともきっとあったんだろうと思う。
谷:志賀は、真っ直ぐな男です。人間関係も含めてとても苦労してきたんでしょう。でもそれでいいと思っています。自分が好きな人は好きって言うし、真っ直ぐがゆえに自分の環境にコンプレックスを持っている。貴族の生まれではあるけど、人間らしく泥臭い一面もある。強がっている反面、弱さも見える。そこを、武者が言葉でも行動でもサポートをしてくれています。夫婦感のような支え合いが武者と志賀のキャラクターなのかなと「文劇」過去作を経て、そして調べていく中でもそういった関係性であるのが良いのかなって思います。
ーータイトルである「協奏(デュエット)」より、「協力し合って共同で何かをしたこと」をテーマにして、最近あった出来事を教えてください。
杉江:仕事以外で言うと、釣りかな~。いつも一緒に行く人がいて、年々釣りの幅も広がっています。新しい釣りをやった時に、試行錯誤するのが楽しい。どういう釣りを一緒にやって来たかっていうのを話し出すと永遠に話し続けちゃうので、この辺でやめておきます!
谷:趣味の釣りで番組もやってるよね。
杉江:ありがたいことに! 一度これってなったら集中しちゃうタイプだからね。釣り楽しい!
泰江:僕はずっと筋肉たちと協力しあって、身体を作ってますね。足に負担がかからないようにするには、足そのものの筋肉を鍛えるのではなく、足の筋肉を動かすための筋肉を鍛えるようにするとか。身体の使い方について、トレーニングの先生たちに教えてもらいながら……。
泰江和明
杉江:じゃあその「先生たち」っていう答え方で良かったのでは?
泰江:あっ……もう一度やり直していいですか!? うわあああ!! で、でも先生とは時間があくけど、筋肉とは毎日対話しているから。常に一緒にいて、よく話し合ってるから!
一同:(笑)。
谷:僕は事務所を退所してフリーになって約1年になります。そこからいろんな挑戦をしてきました。3月に朗読劇をプロデュースして、それをひとつやりきったということに達成感を感じています。衣装の新朋子さんと「おもしろいことをやろう」というところから始まったもので、お互い過密なスケジュールの中、ゼロからイチを作り上げて成し遂げました。とても有難く、とても楽しかった経験でした。
ーー最後に、ファンの皆様へメッセージをお願いします。
杉江:お待たせしました! 武者としてはやっと帰ってこられたなという思いです。白樺派としても4人揃って「文劇」の世界に出られるのはすごく嬉しいですが、それ「だけ」ではありません。白樺派の武者として作品を支えられるように頑張りたいなと思っております。
泰江:今回、個人的にはいろんなことが重なっています。シアターHのこけら落としでもあり、すごく思い入れの多い京都での公演ということもあります。こんなにもみなさまに愛されている作品に参加できるというのがすごく嬉しく、感謝しています。小林多喜二という役として、その嬉しさや感謝をぶつけていければなと思っています。よろしくお願い致します。
谷:僕自身も心待ちにしていた「文劇」への出演です。志賀として戻ってこられたのがすごく嬉しいです。作品に対して、スタッフさんの愛がとてもある作品は、みなさんが役者に対しても愛を向けてくれるので、その愛をまたみなさんに届けるという良い連鎖、良いムーブが巻き起こる、ということをこの現場では身に染みて感じることができます。全て余すところなく楽しんでほしい、骨の髄まで楽しみ尽くしてほしい。本当に端から端まで、舞台の足音でさえも楽しんでほしい。初めてのシアターHの空気感、初めて入る劇場の忘れられない瞬間——この先、人生でも一度あるかないかの経験になると思います。そういった想いと共に、楽しんでもらえるように頑張るので、一生懸命志賀直哉として生きます。「文劇」で、みなさんの生きる力にもなっていきたいと思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。
ーーありがとうございました!
(左から)泰江和明、谷佳樹、杉江大志
ヘアメイク:太田夢子(earch)、神田愛美(earch)
スタイリスト:小林洋治郎
衣装協力:
【谷佳樹】
シャツ/Casper John/Sian PR
【杉江大志】
メッシュロンT/AIVER/Sian PR
【泰江和明】
シャツ/wizzard/TEENY RANCH
ブルゾン/CULLNI/CULLNI FLAGSHIP STORE
パンツ/CULLNI/CULLNI FLAGSHIP STORE
他スタイリスト私物
取材・文=松本裕美 撮影=中田智章
公演情報
(C)2016 EXNOA LLC / 舞台「文豪とアルケミスト」7製作委員会