3ペアがそれぞれ違う個性と魅力を披露 ミュージカル『GIRLFRIEND』公開稽古レポート
ミュージカル『GIRLFRIEND』公開稽古より(左から)井澤巧麻、島 太星、高橋健介、萩谷慧悟、吉高志音、木原瑠生
1990年代のパワーポップシーンを牽引した一人である、アメリカのシンガーソングライター マシュー・スウィート。彼が91年に発表したアルバム『GIRLFRIEND』をベースにしたジュークボックスミュージカルの日本初演が、2024年6月14日(金)よりスタートする。
演出を務めるのは、ストレート、ミュージカルともに手がけて注目を集める小山ゆうな。学校に馴染めないウィルを高橋健介、島 太星、井澤巧麻、スポーツ万能な人気者・マイクを萩谷慧悟、吉高志音、木原瑠生がそれぞれトリプルキャストで演じる。開幕まで約2週間のタイミングで、公開稽古が行われた。
まず披露されたのは、ウィル役・井澤巧麻、マイク役・木原瑠生による『Reaching Out』。ドライブシアターで映画を観て解散した後、それぞれが自らの思いを星に重ね、別の場所で同じ歌を歌うシーンだ。まだ付き合いも浅く、会話がぎこちない2人を、井澤と木原は瑞々しく演じる。芝居・歌唱と合わせてセット転換も自分たちでし、マイクはギターの演奏も。緊張感がありつつ、息のあった動きで危なげなく進めていく。力強い井澤の歌声と、それに寄り添うような木原のハーモニーが美しく、ウィルとマイクの関係がどう変化していくのか、ワクワクが募った。
(左から)井澤巧麻、木原瑠生
井澤巧麻
木原瑠生
続いて、ウィル役・高橋健介、マイク役・萩谷慧悟がタイトルナンバーでもある『GIRLFRIEND』を歌った。父親と喧嘩したマイクと、彼に誘われてドライブに付き合うウィルが、ラジオから流れる曲に合わせて歌い、ストレス発散をするシーンだ。先ほど披露されたシーンと比べると、友人として距離がグッと縮まったように見える。2人がロックでポップな楽曲にノって体を揺らし、笑顔で歌う姿が眩しく、観ているこちらも楽しくなってくる。高橋と萩谷は青春の弾けるようなエネルギーを全身で表現。音楽を通して2人がお互いを理解し、距離を縮めていく様子を魅力的に描き出している。
(左から)高橋健介、萩谷慧悟
(左から)萩谷慧悟、高橋健介
(左から)高橋健介、萩谷慧悟
3曲目は、ウィル役・島 太星、マイク役・吉高志音で『We’re the Same』。2曲目の『GIRLFRIEND』を通して距離を縮めた2人が、お互いの気持ちを確かめ合うように歌うナンバーだ。吉高は、最後の一歩を踏み出せないマイクの臆病さ、心の揺れを繊細に見せ、島は誠実でまっすぐなウィルを等身大で演じる。2人が繰り広げる会話の絶妙な間、言葉にできない思いを乗せたような歌唱に引き込まれる。島と吉高は、緊張感と不安を視線や声に乗せ、初々しい少年たちを表現していた。
(左から)島 太星、吉高志音
(左から)島 太星、吉高志音
(左から)吉高志音
いずれのペアも個性的で、美しいハーモニーを披露してくれた公開稽古。それぞれが作り出す『GIRLFRIEND』とシャッフル公演の化学反応に対する期待が高まる。
歌唱披露後は、フォトセッションと翻訳・演出の小山ゆうなも迎えての質疑応答が行われた。
ーー作品への参加が決まった時の思い、意気込みを教えてください。
高橋健介:東宝ミュージカルはベテランの方が出演するイメージがありました。全員初めてというのはチャレンジだし、しっかり次に繋げたいのが一番の思いです。
萩谷慧悟:ミュージカルに興味があり、役者人生でいつかやりたいと思っていました。そんな中でこのお話をいただいてありがたかったです。しかも二人芝居で、トリプルキャスト。初めてのことにチャレンジできるのが嬉しいです。シアタークリエは自分にとって特別な劇場なので、そこに立てることにも感動があります。
島 太星:僕は今北海道に住んでいるんですが、東宝さんからご連絡をいただき、電波が通っていたんだと。
一同:(笑)。
島:わあ! ってなって、素晴らしい皆さんと一緒に作品を作れるのが夢のようです。また、僕にとって今回のテーマである同性愛は遠いものでした。作品を通して新たな発見があったり恋について深く知ったりでき、人生ってまだまだ楽しいことがたくさんあるんだと希望が持てました。
吉高志音:自分も観劇に来ていた劇場に立てることが嬉しかったです。稽古を重ねるなかで濃い時間が流れています。甘酸っぱい青春の中で生きている高校生の生っぽい空気感を劇場で体験してほしいです。
井澤巧麻:決まったとお知らせをいただいた時は信じられませんでした。舞い上がって嬉しかったのにプラスして、ここが勝負どころだとプレッシャーを感じました。元々音楽が好きで、今回も曲が素敵なので、挑戦するのにいい舞台だと感じています。毎日頭がパンクしそうになっていますが、自分にとって大きな財産になる経験だと感じています。
木原瑠生:役が決まる直前にシアタークリエで観劇していたので、そこでやるのかという嬉しさと不安がありました。今後の人生を左右する作品になると思うので頑張りたいです。
小山ゆうな:プロデューサーの江尻さんが、企画書の段階でどう見せたいかなどを明確にしている作品でした。道筋がはっきりしている印象でしたね。シアタークリエで新しいことをやりたいという思いがキャスティングにも現れていると感じます。
小山ゆうな
ーー小山さんから見たキャストそれぞれの魅力や個性はいかがですか?
小山:6人が全然違います。ある種ライバルではありますが、お互いに相乗効果でどんどん良くなっています。井澤くんはすごく真面目。ウィルの誠実な部分と重なり、稽古をするたびに良くなっていく安心感があります。島くんはムードメーカー。ユーモアもあって、みんなを楽しい気持ちにさせてくれます。高橋さんは表現の引き出しが多く、提案がとても優れています。萩谷さんは……。
高橋:通知表をもらってるみたい。
一同:(笑)。
小山:人気者とはいえ田舎町の疎外されている2人の物語なんですが、みんなキラキラしています。もう少しキラキラを抑えて! というような稽古です(笑)。萩谷さんはギターもダンスも上手ですし、セット転換などもちゃんと把握してアイデアを出してくれています。吉高さんは、最初ウィルのイメージがあったので、本来どちらの役もできるんだと思う。稽古中も90年代アメリカ風のファッションで来るなど、こだわってくれています。島くんとのペアも、絶妙に助け合っていますね。木原さんは、個人的な話になりますが息子が戦隊ファンだったので以前から見ていました。その時から器用でしたが、センスを発揮して意外な表現やハッとするアイデアを出してくれています。
ーー翻訳や演出におけるこだわりを教えてください。
小山:訳詞が上田一豪さんです。元の曲がポップスなので、同じ歌詞の繰り返しが多い。全部繰り返しではないけど、ある程度その要素を活かそうと判断してくださいました。ウィルとマイクの語彙の多くなさ、そんなに流暢に話せないから間もできちゃうけど、一生懸命「相手にこれを伝えたい」というシンプルな言葉を意識しています。今みんなで、「この言葉の裏にある本当の意味はなんだろうね」と考える作業をしています。
ーー皆さんにとって、音楽とはどんな存在ですか?
高橋:今まで小山さんと稽古をして、僕とマイクでこうしていこうと色々見せていました。でも、今日初めてお客さんに見てもらって、「俺たち2人で楽しんでるんだから、そんなに見んなよ」という気持ちになりました。音楽って人と楽しむものもあるけど、限られた空間で楽しむものもあるんだなと。
萩谷:2人の物語だもんね。
高橋:そう。「見に来てください!」というより、「覗き見に来てください」って感覚。『GIRLFRIEND』を歌ってる途中で「なんで見てんだ?」って思ったもん。
一同:(笑)。
萩谷:「音楽が大嫌い!」って人、いるのかなと思うんです。いろいろなジャンル・ルーツの音楽があって、その人の趣味・嗜好がそのまま出るなと思います。ウィルとマイクの出会いは一つのカセットテープ。テープを1から録音する作業は大変で特別だったと最初に教わりました。音楽を通して繋がれる、コミュニケーションを取ることができるいいものだと思います。
島:僕、会話が苦手なんですよ。全員に向かって頑張って喋っているけど、歌は唯一安心できるコミュニケーション。喋るよりも伝えやすいし気持ちを込めやすい。そのせいで、ウィルを演じている時に自信満々で歌ってしまって役と離れてしまうなど、難しいこともあります。お仕事だと緊張するけど、僕にとって歌は大きな支えです。
吉高:人と人が繋がる一つのツールでもありますよね。僕にとっても大切なもので、音楽・歌が好きというだけで今ここにいるような、不思議な力を感じています。音楽でしか伝わらないものを探し続けていくのが人生の一つの課題なのかなと思っています。
井澤:僕は昔バンドをやっていて、進路を決めるときにも音楽が密接に関わっていました。人生の大事なターニングポイントにいつも音楽があって、その中でいろいろな出会いがありました。作中でも、音楽が生まれていく感覚などは自分の中でリアルに残っていて、音楽に乗せることで気持ちが動く・癒える。音楽は僕にとってかけがえのないものだと感じます。
木原:命なんじゃないかと思います。命と引き換えにできるものが音楽ともう一つありますし、どれだけ歳をとっても音楽をやっていたいと思う。これからも自分についてくると思うので、命くらい大切なものです。
ミュージカル『GIRLFRIEND』プロモーション映像
本作は6月14日(金)から7月3日(水)までシアタークリエにて上演。6月21日(金)~29日(土)昼の公演は、ペアをシャッフルして上演を行う。
取材・文・撮影=吉田沙奈
公演情報
会場:シアタークリエ
高橋健介/島 太星/井澤巧麻(トリプルキャスト)、萩谷慧悟/吉高志音/木原瑠生(トリプルキャスト)
脚本 トッド・アーモンド
作曲・作詞 マシュー・スウィート
翻訳・演出 小山ゆうな
音楽監督 小澤時史
振付 Sota(GANMI)
美術 乘峯雅寛
照明 勝柴次朗
音響 山本浩一
衣裳 伊藤佐智子
ヘアメイク 小林雄美
映像 石原澄礼/上田大樹(&FICTION!)
音楽コーディネート 東宝ミュージック
バンドコーディネート 新音楽協会
ギター指導 成尾憲治
歌唱指導助手 田中俊太郎
稽古ピアノ 杉田未央/西 寿菜
演出助手 末永陽一
舞台監督 馬淵だいき
制作 村上奈実
プロデューサー 江尻礼次朗
スーパーバイザー 増永多麻恵
宣伝フォトグラファー 嶌村吉祥丸
宣伝アートディレクション 大江早季
製作:東宝
【料金】11,500円(全席指定・税込)
https://www.tohostage.com/girlfriend/
【作品公式Instagram】
https://www.instagram.com/girlfriend_toho/