違うからこそ、支え合える〜ミュージカル『レッドブック~私は私を語るひと~』咲妃みゆ×小関裕太インタビュー

インタビュー
舞台
2026.5.13
(左から)咲妃みゆ、小関裕太

(左から)咲妃みゆ、小関裕太

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稽古を重ねるほどに、相手の見え方が変わっていく。

女性の自己表現や“自分らしく生きること”をテーマに描いた韓国発ミュージカル『レッドブック〜私は私を語るひと〜』が、間もなく日本初演を迎える。

稽古も佳境を迎えた今、主人公アンナ役の咲妃みゆと、その相手役ブラウンを演じる小関裕太に話を聞いた。二人が語るのは、役と向き合う中で生まれた違いと支え合い。互いの印象の変化から、創作現場のリアルが浮かび上がった。

(左から)咲妃みゆ、小関裕太

(左から)咲妃みゆ、小関裕太

 
【ストーリー】
紳士の国・ロンドン。その中でも最も保守的だったヴィクトリア朝時代に生きる、主⼈公アンナ(咲妃みゆ)は少し変わっていた。淑女として振る舞うよりも「私」として⽣きたい―。真面目で“紳士”であることしか知らない新米弁護士・ブラウン(小関裕太)や個性的な登場人物たちとの出会いをきっかけに、アンナは、官能的な小説を書くことで自分を表現し始める。型破りで刺激的な内容は、瞬く間に評判を呼び、多くの読者を熱狂させていく。一方で、「女性のあるべき姿に反している」「社会に悪影響だ」と非難され、ついに裁判にかけられてしまう……。


稽古場で見えてきた、互いの“意外な姿”

ーー稽古も佳境ですが、今感じている手応えを聞かせてください。 

咲妃:早くお客様にご覧いただきたいという想いが、ムクムクと湧き上がってきています。ブラッシュアップしていくべきところはありますが、作品の持つエネルギーを日々感じながら稽古に励めることは、創作に携わる者としてとても幸せなこと。

私はオンオフの切り替えをはっきりしたいタイプなのですが、今回は眠る直前までずっと『レッドブック』のことを考えています。それくらい大好きな作品です。

咲妃みゆ

咲妃みゆ

小関:僕はようやく楽しめるようになってきました。というのも、稽古の序盤はわからないことも多く、それを少しでも早く解消しようとずっと走り続けてきたんです。見えないゴールを目指して、マラソンをしているような感覚でした。苦しくも楽しみながらここまで来て、進むべき方向が見えてきたところです。

初日までまだまだ時間はありますし、試してみたいこともいっぱいあります。今は、もっと新しい景色を見たいという想いが強いですね。

ーー稽古を通して、お互いの印象に変化はありましたか?

小関:ゆうみさん(咲妃さんの愛称)のことは、ずっと“神過ぎる”と思っていたんです。例えば僕が「昨日ニンニク食べちゃったんだ」と言うと、「おいしいものを食べて元気になってくれることが嬉しい。だから匂いとか気にしないでね」と言ってくれる。出てくる言葉の一つひとつが美しくて、まるで神様のように達観しているんです。

ただ、稽古をご一緒していく中で、すごく人間らしい姿もたくさん見えてきました。ちょっと安心しましたし、嬉しかったです。

ーーその咲妃さんの人間らしい姿というのは……?

小関:秘密です(笑)。

咲妃:私が代弁させていただきますね(笑)。私は思ったことを隠せない人間なんです。いつの間にか顔やオーラに出ちゃうみたいで。例えば稽古に対して思うことがあったとき、それがすべて表に出てしまうんです。そういうことでしょう?

小関:そうだね(笑)。僕、そうなるときのトリガーを見つけたんですよ。それは必ず、作品や役のためを思ったときだということ。ゆうみさんは基本的におおらかで思いやりがある人ですが、創作の現場に限っては常に疑問を持っているんです。作品を思う気持ちが強い故に出ちゃう表情なんだろうなと思います。僕は、その顔を見るのがすごく好きなんですよ。

小関裕太

小関裕太

咲妃:私は疑問に思ったことを解決してから先に進むか、疑問に思っている内容を皆さんと共有してから進めていきたいタイプなんです。(小関)裕太くんはその逆のタイプ。もしかしたら疑問は持っているのかもしれないけれど、“とりあえずやってみる”ができる人。だからいい意味でお互い違って、バランスが取れているのかも。私が腑に落ちない顔をしていると、相談に乗ってくれたり、そっと寄り添ってくれたりするんです。すごく頼りにさせていただいています。

小関:いやいや、大したことはしてないですよ。いつも思うのは、ゆうみさんが抱く疑問はすごく長けているなあということ。彼女にとっては当たり前のことかもしれないけれど、僕にとってはひとつ先のことが見えているような感じ。ゆうみさんの疑問を解決すると、不思議とそのシーンが膨らむんです。すごいなあと毎回驚かされますね。

愛情に溢れたアンナと、おおらかな紳士ブラウン

ーーお二人が演じる役を、他己紹介形式で教えていただけますか? 咲妃さんはブラウンを、小関さんはアンナについて教えてください。

咲妃:ブラウンは、自分の感情主体で行動するというよりは、書物から得た知識の中に答えや道筋を見出す論理的な英国紳士。時代や階級を象徴するような役どころです。裕太くんのブラウンは、純粋さとおおらかさを根底に持っているところが魅力的です。

ブラウンはアンナと出会ったことで、初めての出来事に次々と直面し、困惑し、動揺し、思い悩みます。様々な経験を重ねながら彼自身が成長していく過程はすごく魅力的ですし、きっとお客様全員が虜になるブラウンだと思います。

小関:ゆうみさんのアンナは、すごく愛情に溢れていると思います。稽古の最初の頃は、意志が強くて我が道を行くアンナ像を感じました。でも今対峙しているアンナからは、ブラウンや周りの人への思いやりが強く感じられます。決して自分の考えを押し付けるのではなく、相手を尊重して言葉を発しているんです。

ブラウンとしては、アンナの愛情深い言葉の一つひとつがとても新鮮。ストレートに本心をぶつけてくれるので、胸に刺さるんですよね。ただ、それは当時の時代の価値観に合ったものではなかったので、ブラウンも最初は“変”だと受け取ってしまいます。そんな彼を、アンナの愛情の込もった言葉が少しずつ変えていくんでしょうね。

(左から)咲妃みゆ、小関裕太

(左から)咲妃みゆ、小関裕太

ーーご自身の演じる役に対して、共感できるところはありますか?

咲妃:アンナにはとても近しいものを感じています。この作品のことを考えているとき、自分の経験がフラッシュバックすることもあります。ただ、これはあくまでアンナの物語。私の話ではないので、そこは切り離して挑まなくてはと、本名の自分の心にブレーキをかけています。アンナの言葉を、共感できるからといって私の心を通してそのまま発してはいけないなと……。(小関さんに向かって)これでも切り離して考えているんだよ。

小関:自分と役を切り離しているのは感じはありますね。でも、「心にブレーキをかけている」というのは面白い考え方ですね。

咲妃:私、“憑依型”という言葉で表現していただくことが時々あるのですが、俳優自身が“憑依している”と感じるのはとても危険なことだと思います。そういった意味でも、心にブレーキをかけるように意識しています。

小関:なるほど。僕は作品と向き合い始めるときは、まず自分自身からスタートするんです。自分の身体だからこそできる表現を目指したいので。でも、ブラウンとは向き合えば向き合うほど、時代背景はもちろん、思考や仕草も違うなあと感じる日々。スタート地点の自分から、どんどん切り離されていく感覚があります。それ自体は決して悪いことではないのですが、結論、ブラウンと僕自身は全然違うと思います。

ーー役へのアプローチの仕方もそれぞれ違うんですね。現時点で、初日までに改善したい課題はありますか?

咲妃:各シーンで胸に込み上げてくるものがたくさんあるので、つい感情が爆発してしまうときがあります。初日を迎えるまでに、アンナとしてのベストな感情表現を見つけたいなと思っています。 

咲妃みゆ

咲妃みゆ

小関:課題はめちゃくちゃあるんですけど、わざわざ言葉にすることではないかなと。そこを見てほしいわけじゃないじゃないですか。

咲妃:さすが“紳士”! スマート〜!

小関:いやいやいや(笑)。 

“指示ではなくヒント”——小林香が生み出す創作現場

ーーそんな稽古場を支えているのが、演出の小林香さんです。お二人ともそれぞれご一緒された経験がありますが、共に創作をする中で、今どんなことを感じていますか?

咲妃:私は2020年の『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』ぶりにご一緒させていただくのですが、さらに尊敬が増している最中です。というのも、(小林)香さんは、こちらが心配になるぐらい作品やキャスト・スタッフに対して目配り、心配りを常にしてくださります。一緒に創作をする上で、みんなが対等であると感じさせてくださる方です。改めてすごい方だなと思いました。

小関:僕は10年前、成人式を迎える少し前のタイミングでご一緒させていただきました。個性豊かなキャストが集まったカンパニーを見事にまとめる香さんの姿を見て、当時からすごい方だなあと。時を経て、より配慮が広く深くなっていらっしゃるなと感じています。香さんは演出の際に指示をするのではなく、ヒントを添えてくださるんです。僕ら演じ手が思考を凝らすための言葉を、ちょこんと置いてくれる。そのヒントをきっかけに、自分の思考に新しいアイディアを取り込んでいく。そうやってひとつの作品を作っていくことができるんです。演出家としても人としても、とても尊敬できる方ですね。

小関裕太

小関裕太

ーー最後に、本作に初めて触れるお客様へメッセージをお願いします。

小関:この作品に登場する一人ひとりの人物が、本当に活き活きとしています。今回の稽古場は、香さんが指し示す方向性の中で個人が重視され、同時に個人が試されています。だからこそ、みんなが自ずと同じ高みを目指すことができているんです。今までに関わったどの作品の稽古場も素晴らしいけれど、特にそこに特化している現場だと感じています。それらが俳優の発する言葉やメロディーに乗ることで、躍動感が生まれているんです。

舞台には、必ずその日にしか見ることができないゴールがあります。カーテンコールの景色も毎回違うんです。それこそが、僕が舞台をやっている中で一番楽しみにしていること。東京、大阪、愛知と、お客様にも毎回新鮮に楽しんでいただけるよう、頑張りたいと思います。

咲妃:素晴らしい楽曲をたくさんお楽しみいただける作品です。加えて、我々が日々の暮らしの中で、悩み事に直面した時、そっと背中を押してくれるような温かいメッセージの詰まった作品だと思います。

人はそれぞれ多面的な魅力を持っています。この作品を通して、お客様一人ひとりの唯一無二の魅力を再認識していただけるのではないでしょうか。多くの方に『レッドブック』に出会っていただけますよう、心から願っています。

(左から)咲妃みゆ、小関裕太

(左から)咲妃みゆ、小関裕太

 

■咲妃みゆ
スタイリスト:國本幸江
ヘアメイク 本名和美

■小関裕太
スタイリスト:吉本知嗣
ヘアメイク:堀川知佳


取材・文=松村蘭(らんねえ)      撮影=荒川 潤

公演情報

ミュージカル『レッドブック~私は私を語るひと~』
 
脚本 ハン・ジョンソク
作曲 イ・ソニョン
演出・上演台本・訳詞 小林 香
音楽監督 桑原まこ

出演
咲妃みゆ 小関裕太 花乃まりあ エハラマサヒロ
中桐聖弥 加藤大悟 伊東弘美 KENTARO 可知寛子 栗山絵美 高井泉名 井上花菜
伊藤広祥 感音 坂元宏旬 シュート・チェン 鈴木大菜 米良まさひろ  池田航汰(Swing) 石田彩夏(Swing)
/ 田代万里生

公式サイト https://redbookjp.com
X アカウント @redbook_jp
Instagramアカウント @musicalredbookjp

企画製作 AMUSE CREATIVE STUDIO
 
【東京公演】
日程 2026年5月16日(土)~5月31日(日)
会場 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
◎アフタートーク 
①5/20(水)18:00:小関裕太、中桐聖弥、加藤大悟
②5/21(木)13:00:咲妃みゆ、花乃まりあ、エハラマサヒロ
③5/27(水)18:00:小関裕太、中桐聖弥、加藤大悟
④5/28(木)13:00:田代万里生、可知寛子、栗山絵美
 
料金
平日 S 席 14,000円 A 席 9,000円 B 席 6,000円(全席指定・税込)
休日 S 席 15,000円 A 席 9,500円 B 席 6,500円(全席指定・税込)
主催 AMUSE CREATIVE STUDIO、AMUSE ENTERTAINMENT INC.
お問合せ スペース 03-3234-9999(10:00~15:00※休業日は除く)
 
【大阪公演】
日程 2026年6月27日(土)~6月30日(火)
会場 森ノ宮ピロティホール
料金 平日 13,500円 休日 14,500円(全席指定・税込)
主催 関西テレビ放送 / DEAR FIELD / リバティ・コンサーツ / サンライズプロモーション
お問合せ キョードーインフォメーション 0570-200-888
(12:00~17:00/土日祝休業)
 
【愛知公演】
日程 2026年7月4日(土)13:00/17:30 公演 ・ 7月5日(日)12:30 公演
会場 御園座
料金 S 席 15,000円 A 席 10,000円 B 席 7,000円(全席指定・税込)
主催 御園座
お問合せ 御園座・営業部 052-222-8222(平日 10:00〜18:00)
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