坂東巳之助×尾上右近『怪談 牡丹燈籠』ビジュアル撮影レポート 真夏の白昼、怪談で“ととのう”歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』

レポート
舞台
2026.7.8
『怪談 牡丹燈籠』ビジュアル撮影より

『怪談 牡丹燈籠』ビジュアル撮影より

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『怪談 牡丹燈籠(かいだん ぼたんどうろう。以下、牡丹燈籠)』が、2026年8月2日(日)より歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』にて上演される。開幕に向けて、坂東巳之助と尾上右近がビジュアル撮影にのぞんだ。その模様を、ふたりのコメントとともにレポートする。

■明治時代に落語から生まれた怪談

『牡丹燈籠』は、 幕末から明治にかけて活躍した落語家、三遊亭円朝(えんちょう)の長編怪談噺をもとにした作品だ。

カランコロン 、と駒下駄を鳴らし、お露は愛しの新三郎に会いに来る。しかしお露は、すでにこの世の者ではなく……。この様子を、のぞき見て新三郎の下男・伴蔵は恐怖する。やがて魔よけのお札のために、新三郎に会えなくなったお露は、お札をはがすよう伴蔵に懇願する。ためらいながらも、金と引き換えに札をはがすことを引き受けた伴蔵・お峰夫婦。ふたりの運命は、そこから思わぬ方向へ転がり始める。

幽霊の怖さと同時に、人間の業と欲も描く物語だ。本公演では伴蔵を巳之助、女房お峰を右近が勤める。

■ 右近、初めての「世話女房」

ビジュアル撮影では、まず、お峰の扮装の右近がカメラの前に立った。

顔は白く、眉をつぶし、お歯黒をしている。立役と女方を兼ねる役者の右近は、これまでに姫、傾城、娘など、数々の役柄を女方で経験してきた。しかし江戸庶民を描く世話物で、女房役を勤めるのは初めてなのだそう。

「世話女房は、やってみたいと思っていた役柄です。今日の撮影では分からないことばかりで、何から何まで“助けて、菊三呂さん!”状態でした」と、音羽屋のベテラン女方・尾上菊三呂に支えられたことを笑って明かし、「本番に向けて、作り上げていきたい」と意気込む。

巳之助と、夫婦役で本格的に組むのも、これが初めて。

「ここ数年、巳之助さんとは立役同士での共演が増えました。でもそれ以前から、巳之助さんとはずっと一緒に過ごしてきた感覚があります。巳之助さんの、僕にしか分からない部分もあるかなと思っていて、僕が女房役を勤めることで、いつもと違った巳之助さんを見ることができたら嬉しいです。僕の世話女房デビューの相手が巳之助さんであることは、至上の喜びです!」

■巳之助の伴蔵、栗橋宿の一場面を立ち上げる

次に、巳之助の伴蔵の撮影がスタートした。

伴蔵夫婦は、江戸の根津清水谷の長屋でつましく暮らしていた。しかし訳あって江戸を離れることとなり、故郷の栗橋(現在の埼玉県久喜市)へ。

このたびのビジュアル撮影も、ふたりは夫婦が栗橋宿へ移ってからの拵えだ。伴蔵は、羽織姿で“旦那”らしい風情をみせる。

本作の魅力を聞くと、巳之助は次のように答えた。

「『牡丹燈籠』は、落語を元につくられた世話物で、台詞が難しいわけではありませんし、劇中では、松本幸四郎のおにいさんがまさにこの怪談噺を作った本人、三遊亭円朝役で出てきて、落語の高座のようにあらすじを語るところもあります。おかしみもあり、分かりやすくご覧いただけるのではないかと。その中に人間の怖さ、幽霊の怖さなど、色々なものが詰まった怪談噺だと思っています」

伴蔵は、巳之助の父・十世坂東三津五郎の当たり役でもある。

伴蔵は、巳之助の父・十世坂東三津五郎の当たり役でもある。

さらに巳之助と右近、2人そろっての撮影へ。

まず背中をあわせてカメラを見据えた立ち姿から。一通り撮り終えたところで、巳之助が羽織を脱ぎ「立ち位置が入れ替わることに問題はないか」とスタッフに軽く確認。

巳之助は右近の下手側へ回ると、右手に握る小道具の刀を鞘から抜いた。刀身が鋭く光る瞬間があり、緊張感を覚えた。

これに応じて右近は、伴蔵の肩に手をのせたり、幸せそうに微笑んだり、様々な表情を浮かべてみせた。歌舞伎の美しさと、物語に潜む不穏さが、様々に浮かび上がるような撮影だった。

■八月納涼歌舞伎で、白昼の怪談物 

『八月納涼歌舞伎』は、歌舞伎座の夏の風物詩となっている8月の興行だ。1990年、十八世中村勘三郎と、巳之助の父・十世坂東三津五郎たちを中心に、若手の活躍の場として、また歌舞伎に馴染みのない観客に間口を広げる公演として始まった。

ーー歌舞伎座「納涼歌舞伎」では、お二人の共演は初めてです。

巳之助:右近くんとご一緒できることは、もちろん嬉しいですし、「納涼歌舞伎」で毎年のように一緒にやってきた坂東新悟くん、中村橋之助くん、さらに市川染五郎くんや尾上辰之助くんも出てくれる。幸四郎のおにいさんにもお力添えいただきながら、若い世代中心の座組で、第一部を1本の通し狂言で1か月やらせていただけることが、とても嬉しいです。楽しい夏になるのではと期待しています。

右近:僕は、8歳の時以来の「納涼歌舞伎」なんです。前回は中村勘三郎のおじさまの『愚図六』に、子ども時代の信吉役で出させていただきました。その時に信吉を演じていたのが、中村七之助のおにいさん。その七之助のおにいさんに、あの時以来の「納涼歌舞伎」で『牡丹燈籠』のお峰を教えていただきます。三津五郎さんの『牡丹燈籠』も大好きでしたし、巳之助さんが『牡丹燈籠』を僕と、と思ってくださった。その巡り合わせが嬉しくもあり、びっくりでもあります。

ーー『牡丹燈籠』は、第一部(午前11時開演)での上演です。

巳之助:歌舞伎は演目そのものだけでなく、季節感や上演の時間帯など、“いつ観るか”も含めて楽しむ部分があるかと思います。するとお客様の中には、「午前中から怪談を?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも僕は昼に観る怪談も、オツなものだと思っています。

僕自身、怖い話が好きで、ホラー映画もよく観にいきます。昼間の映画館という、真っ暗で閉ざされた空間で、とんでもなく恐ろしい映画を観て、外に出たらまだお昼過ぎということはよくあって、するとサウナの交互浴的な、"ととのい”が得られる感覚があるんです。楽しみ方のひとつとして、あれは意外といいものだなと思っています。

今回の『牡丹燈籠』も、観終わってパッと歌舞伎座の外へ出たら、ギンギンに明るい真夏の日差し。「怖いのが苦手」という方には、夜にご帰宅いただくよりも安心してご覧いただける部分があるでしょうし、多くの方にお楽しみいただけるのではないでしょうか。

右近:時代は、空前の怪談ブームなんですよね。人気怪談師の方のライブはすぐさま完売。ホラー映画も人気で、YouTubeの怪談チャンネルは再生数が跳ね上がり……と、巳之助さんに教えていただきました(笑。うんうん、と巳之助)。

そんなブームの最中にありつつ、歌舞伎は江戸時代から、エンターテインメントを根幹にもちつつ怪談物を上演してきました。『牡丹燈籠』も、明治に生まれて100年以上経った今も、時代に通じるものがある。そこに、歌舞伎として打ち出せる面白さがあると思っています。

ーー怪談物に出演するにあたり、演者として怖さや恐れなど、特別意識することはありますか?

巳之助:このような作品の中に身を置くこと自体に、怖さは感じません。ただ物語の中で、人を殺めたり殺められたり、人ならざるものが現れて消えたり。それらの演出を生の舞台でお見せしようとすると、テクニカルな部分での危険はついてまわります。怪談物に限らず言えることですね。その意味での怖さはありますから、気持ちを引き締めて勤めたいです。

右近:ホラー映画って、撮影現場がとても明るいという話を聞きませんか? 逆に、コメディ映画の撮影現場は、緊張感が漂うと。実感として、分かる気がするんです。

巳之助:分かります。

右近:笑わせる芝居も怖がらせる芝居も、どちらにも難しさはあるけれど、役者としては、怖がらせる方が楽しみが大きいのかなって。8月は怪談物の風を浴びるのを楽しみにしています。『牡丹燈籠』は、五代目尾上菊五郎が初演し、六代目菊五郎が受け継いだ演目。僕の所属する音羽屋にゆかりの演目でもありますので、初めて出演できることも嬉しいです。

完成した特別ビジュアル!本作を知る方は、劇中の場面が頭をよぎるに違いない。これから観劇する方には、目を離せない物語を想像させるだろう。

完成した特別ビジュアル!本作を知る方は、劇中の場面が頭をよぎるに違いない。これから観劇する方には、目を離せない物語を想像させるだろう。

ーー8月21日にはイープラスの貸切公演が予定されています。ご来場をお考えの皆さまへ、最後にメッセージをお願いします。

巳之助:ぜひ皆さんで、貸しきってください。

右近:この記事を読んで終わりではなく、観にきてください。1回観た方はもう1回来てください。

巳之助:この記事を読んで、1か月以内に予約をしなかった人は……。

右近: アーッ! ワアーー!!

巳之助:なに!?

右近:そういう怪談っぽいの、言っちゃう? そういうノリに乗っかる?(笑)

巳之助:言っちゃう。あえて乗っかる(笑)

右近:そうかー! では皆さん、そんなノリも含め、8月の歌舞伎座『怪談牡丹燈籠』をお楽しみください!

おふたりにイープラスポーズをしていただきました!

おふたりにイープラスポーズをしていただきました!

歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』は、8月2日(日)から26日(水)まで。巳之助と右近が出演する『怪談 牡丹燈籠』は、午前11時開演第一部での上演。

巳之助の袖がつまみ、生地の厚さを確認する右近。

巳之助の袖がつまみ、生地の厚さを確認する右近。

取材・文・撮影=塚田史香

公演情報

イープラス貸切公演
歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』
 
8/21にイープラス貸切公演を実施します!

8/21にイープラス貸切公演を実施します!

 
第一部 通し狂言『怪談 牡丹燈籠』
日程:2026年8月21日(金)11:00開演
会場:歌舞伎座
 
・【最前列から】e+会員(登録無料)ならどなたでもあたるチャンスあり!
・独自席種、独自価格での提供
・開演前講座付の販売(一部席種)
・筋書購入者の中から役者サイン入りが当たるチャンスあり!
(場内筋書売場で販売する10冊分を無作為に混入させます)
 
【独自価格】特別先行受付
7月10日(金)正午12:00より受付開始

詳細・お申し込みは【こちら】から
 

イープラス貸切の広報担当「プラみちゃん」、X(旧Twitter)で最新情報発信中
関東の公演情報 @eplusplm_kanto
関西の公演情報 @eplusplm_kansai
九州の公演情報 @eplusplm_kyushu

公演情報

『八月納涼歌舞伎』
 
■日程
2026年8月2日(日)~26日(水)
休演日:8月10日(月)、18日(火)
 
■会場 歌舞伎座
 
■演目
第一部 午前11時開演

三遊亭円朝 原作・大西信行 脚本
通し狂言

怪談 牡丹燈籠(かいだん ぼたんどうろう)
 
伴蔵:坂東巳之助
お峰:尾上右近
お国:坂東新悟
宮野辺源次郎:中村橋之助
萩原新三郎:市川染五郎
お露:尾上 辰之助
乳母お米:尾上緑
仲働お六:尾上菊三呂
医師山本志丈:澤村精四郎
女中お竹/酌婦お梅:中村玉太郎
酌婦お絹:澤村宗之助
飯島平左衛門:河原崎権十郎
三遊亭円朝/馬子久蔵:松本幸四郎
 
第二部 午後3時10分開演

四世片岡亀蔵を偲んで
岡鬼太郎 作
眠駱駝物語

一、らくだ
 
紙屑買久六:中村勘九郎
手斧目半次:松本幸四郎
家主女房おいく:笹野高史
糊売り婆おぎん:中村梅花
駱駝の馬太郎:片岡市蔵
家主佐兵衛:坂東彌十郎
 
百千鳥沖津白浪
二、鬼神のお松(きじんのおまつ)
 
鬼神のお松:中村七之助
夏目四郎次郎:尾上右近
主水妹藤浪:中村米吉
下部柴平:中村虎之介
茶屋女お福:中村歌女之丞
盗賊小助実は木鼠:中村歌之助
篠原一学:中村福之助
夏目四郎太郎:中村歌昇
牧村主水:中村扇雀
 
 
第三部 午後7時開演
 
萩原雪夫 作
一、舞鶴雪月花(ぶかくせつげっか)

上の巻 さくら
桜の精:中村七之助
 
中の巻 松虫
松虫:中村勘太郎
松虫:中村長三郎
 
下の巻 雪達磨
雪達磨:中村勘九郎
 
二、雪(ゆき)

坂東玉三郎
 
三、残月(ざんげつ)

坂東玉三郎
 
 
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