ミュージカル『ファニー・ガール』望海風斗&坂本昌行が惹かれる不完全だからこそ愛おしい「大人の愛と人間味溢れる物語」

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2026.7.17
ミュージカル『ファニー・ガール』(左から)望海風斗 坂本昌行

ミュージカル『ファニー・ガール』(左から)望海風斗 坂本昌行

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実在したブロードウェイのレビュースター、ファニー・ブライスの半生をもとにしたミュージカル『ファニー・ガール』。初演は1964年、1968年には映画化もされたブロードウェイ全盛期の名作だが、これがブロードウェイでリバイバルされたのが2022年のこと。半世紀以上の時を経て蘇ったその現代版『ファニー・ガール』がこのたび日本で上演される。

持ち前のユーモアと根性でショービジネスの世界で駆け上がっていくファニー・ブライスを演じる望海風斗、彼女の夫でギャンブラーであるニック・アーンスティンを演じる坂本昌行が思う、本作の魅力とは。二人に話を聞いた。

待望の初リバイバル版上陸! ファニー役・望海風斗の決定に坂本昌行も「素晴らしいものになる」と太鼓判

――『ファニー・ガール』は1964年にブロードウェイで初演されたミュージカルです。この作品にどんな印象をお持ちでしたか?

望海:もちろん作品のことは知っていて、私も劇中歌をコンサートで歌わせていただいたことがあります。「王道のミュージカル」という印象がありました。ただ、「私で大丈夫かな」という心配も(笑)。この物語はブロードウェイのスター、ファニー・ブライスの半生を描く作品ですが、ファニーのかなり若い頃から描いていきます。でも夢を追っている時だけではなくその先、人生を積み重ねていく過程も生きられるということはなかなかない機会なので、挑戦できることが嬉しく思いました。

坂本:僕もリバイバル版がブロードウェイで上演されていることは知っていましたし、ファニー役を(途中から)リア・ミシェルが演じることになったというニュースも「すごいな」と思って見ていました。ただ、人の半生を歌っていくこと、歌でその時の心情を表現していくことって、かなりパワーがいるんです。僕も『THE BOY FROM OZ』という作品で経験していますが、本当に大変。これを日本の方が演じるのは難しいのではないか、と思っていたのですが、ファニー役が望海風斗さんだと聞いて「それは素晴らしいものになるだろう」と……。

望海:えええ(笑)。

坂本:また新たな『ファニー・ガール』になるんだろうな、と思いました。

ミュージカル『ファニー・ガール』  望海風斗

ミュージカル『ファニー・ガール』 望海風斗

――お二人は初共演だそうですが、お互いどんな印象をお持ちですか?

坂本:(芝居、歌、ダンスの)三拍子、プラス、ユーモアをお持ちの方ですよね……。製作発表会見でも話したのですが、望海さんが出演されている『神経衰弱ぎりぎりの女たち』を観に行きまして、カーテンコールも終わり舞台袖にはける時に望海さんが「おやすみなさい」とおっしゃったんですよ。それが何だか面白くて。本当にファニーにピッタリな方だな、と思いました。ほかにも何本か舞台は拝見していますが、ステージからは、すごく真摯に役と向き合って純粋に表現をされている方だなと感じましたし、月並みな言葉ですが……上手いなぁ~、と……。世に出るべくして出てきた人だよね、という印象です。

望海:ありがとうございます。私の方は、ビジュアル撮影で初めてお会いした時に、ファニーがニックを見てハッとなる、その感覚が理屈ではなくわかりました。でもお人柄はとても紳士で温かくて、ほっとしました。やっぱり舞台のイメージがありますし、今まで本当にたくさんの人を魅了してきた方ですので、キラキラと「ヤァ!」みたいな方かと思っていたのですが……。

坂本:真逆でしたね(笑)。

望海:いえいえ(笑)。言い方が正しいのかわかりませんが……あ、人間なんだ、と……(笑)。すみません。

坂本:(笑)。

望海:気を遣ってくださるし、場の空気をほぐそうと色々なお話をしてくださるし、気を遣わせて申し訳ないなと思いながらもほっとしてしまいました。坂本さんはご自分ではニックの要素がまったくないとおっしゃっていましたね。ギャンブラーの一面とか……。

坂本:1ミリもないんです。

望海:……と、おっしゃっていたので、本来の紳士な坂本さんが役としてどう変わっていくのかを稽古場で見られるのが楽しみです。

坂本:頑張ります!

ミュージカル『ファニー・ガール』  坂本昌行

ミュージカル『ファニー・ガール』 坂本昌行

「不完全だからこそ愛おしい」ファニーとニック、二人が理屈抜きで惹かれ合うポイント

――望海さんが演じるのがジーグフェルド・フォリーズの大スター、ファニー・ブライス。坂本さんが演じるのが、その夫で賭博師のニック・アーンスティン。ファニーは大スターではありますが正統派スターというタイプではなく、ニックも魅力的な男性ですが欠点もある、二人とも完ぺきではない人間だというのが面白いところです。まだお稽古前だと思いますが、この役の愛すべきポイントは。

望海:ファニーの魅力、いっぱいあります。まずは、とにかく自分のやりたいことを貫き、信じる道を突き進む力があること。誰しもそういうパワーは子どもの頃は持っていると思いますが、大人になるにつれ、一つずつ諦めていく。ファニーはそのピュアな情熱をずっと持ち続けられるところが、私は本当に魅力的だなと思います。

私自身、10代で宝塚音楽学校に入学しましたが、受験すると言ってもまわりの人は「受かるわけないだろう」と思っているんです。高校の先生も「きっと来年もまたここに通うんだろうけど、一応宝塚に挑戦してみたいんだろうな」と思っていたはず(笑)。でも私は「絶対に合格して宝塚の舞台に立つんだ」と思っていた。今考えたら何の根拠もない、自分が好きでやりたいというだけ、現実を知らないからこその自信です。その頃の気持ちを思い出し、ファニーに共感しています。

坂本:ニックの役柄の説明に「ギャンブラーでハンサム、プライドが高くて……」等々とある中に「人を惹きつける力がある」とありました。このワードが僕の中でポイントになりそうです。人を惹きつけるってどういう人なんだろうと考えると、ピュアなんだろうなと思う。言葉を変えればそれは「子どもっぽい」かもしれません。ニックは色々なことに挑戦し、失敗し、色々な人を傷つけていますが、根底にあるのはピュアな思いで、だから彼のやることにワクワクさせられるのかもしれない。目指す場所は違うけれど、それはファニーと通じるところかなと思います。

――ニックは結局、ファニーと道をたがえてしまいますが、その心境も男性としてはわかりますか?

坂本:そうですね。愛する女性をサポートしようと思っていたけれど、好きな人がどんどん売れていくことに反比例して自分は落ち目になっていく。手放しで「おめでとう」とは言えないジレンマは、非常に人間的です。

――大人の男性ですよね。

坂本:そうなんですよね……。実はそこも正直、ビビッているところ。最近、自分の実年齢と俳優のレベルが伴っていないなとふと気付いて、子どもの頃は55歳ってもっとおじいちゃんだと思っていたのですが、ぜんぜんおじいちゃんじゃないし、(ニックの役を演じるにふさわしい年齢ではあるが)俳優として自分はまだまだだな、もっと中身を成長させなければいけないなと思っている今日この頃です。稽古場で足を引っ張らないように頑張ります。

望海:その話をうかがったら、私なんてまだ赤ちゃんです(笑)。

坂本:自分一人でもがいてもしょうがないので、あとは稽古場で演出家の方と話し、共演者の皆さんとセリフで対話する中で作り上げていけたらいいですね。

――ファニーはニックの、ニックはファニーのどんなところに惹かれたのだと思いますか?

望海:最初に出会った時に、それが愛とはまだ気づかないまま心ごと“射抜かれた”のだと思います。自分が舞台に立つんだと思ったのと同じように、理屈ではなく直感的に「この人だ!」と刺さったものがあったのではないでしょうか。だからずっとニックを信じ、その思いが強すぎて……ということになるのだと思います。

坂本:僕はやっぱり、力強さとキュートさだと思う。明るくてポジティブ、そこがファニーの一番の魅力だと思うし、ニックが惹かれたのもそこだと思います。外側ではなく、内面が美しい。

ミュージカル『ファニー・ガール』  望海風斗

ミュージカル『ファニー・ガール』 望海風斗

リバイバル版で増えたニックの楽曲&ダンス、「パレードに雨を降らせないで」を日本語で歌う望海の挑戦

――坂本さんは演出のマイケル・メイヤーさんとリモートでお話したとか。2022年にメイヤーさんが手がけたブロードウェイ・リバイバル版では、もともとあまり歌っていなかったニックにずいぶんナンバーが増えています。ダンスシーンも。日本版もあると思って大丈夫でしょうか?

坂本:どれくらいブロードウェイ・リバイバル版に日本版が準じるのかまだわかりませんが、台本上はその楽曲はあります。

――望海さんもショーシーンがある。

望海:タップのシーンがかなり大変そうで、私、本番までにどれくらいタップをやるんだろうというのは不安要素(笑)。でもこの作品は、芝居部分はもちろん、ミュージカルならではのダンスシーン、華やかなパフォーマンスの両方が楽しめるのが一番の魅力だと思うので、そこは楽しみにしてほしいです。

――「People」「パレードに雨を降らせないで」と、スタンダードナンバーになっている楽曲があるのも本作の魅力です。この楽曲を歌う思いを教えてください。

望海:「パレードに雨を降らせないで」は私もコンサートで歌ったことがありますが、気持ちをしっかり理解しないと歌えないし、レンジも広く技術的にも非常に難しい曲です。ただ、勇気を与えてくれる曲ですのできちんとお届けしたいですね。本当に皆さんに広く知られている曲ですので、歌うのはドキドキします(笑)。個人的にも、コンサートでは英語で歌いましたので、日本語で披露するのは今回が初めてになります。英語のニュアンスならではの格好良さがありますが、これが日本語の歌詞に落とし込まれたときにどのような響きに生まれ変わるのか。私自身も新たな挑戦として、とても楽しみにしています。

――『ファニー・ガール』自体はコメディではありませんが、ファニーはコメディエンヌとして一世を風靡しました。お二人はコメディはお好きですか。

望海:ファニーは劇中のショーで自分の持ち味を出そうと“新婦”を“妊婦”にしてしまうような人。その型破りな発想力と、しかも初日の本番で(プロデューサーの許可も取らず)舞台に出ていく勇気は凄まじい度胸で憧れます。喜劇というものは、悲劇より冷静に緻密に重ねていかないといけないものですし、その場の空気に敏感にアンテナを張っていないと成立しない繊細なものですから。

ただ、私はコロナ禍で、喜劇の重要性に目覚めたんです。当時はまだ宝塚歌劇団に在籍しており、宝塚歌劇団は出演作品がほとんど映像化されますので「生で舞台が観られないなら映像を観よう」ということができるわけです。でも私の出演作、悲劇しかなかった(苦笑)。世の中が不安に包まれている時って、人生の深みを描く作品より、笑えるものに心がふわっと救われたりするじゃないですか。その時になぜ喜劇をやってなかったんだろうと後悔し、そこから私もコメディ欲が生まれています。舞台に観に来ていただいて、笑って日常を一時忘れてもらえるって、とても素敵なことだと思います。

ミュージカル『ファニー・ガール』  坂本昌行

ミュージカル『ファニー・ガール』 坂本昌行

坂本:僕もコメディは好きですし、常にユーモアは持っていたいと思っています。ニックがフリルのシャツをいつも着ていたのは「こんなの、なかなかないでしょ」とコミュニケーションをとるきっかけ作りだったそうです。それもユーモアですよね。

――改めて、お二人がこの『ファニー・ガール』という作品に惹かれるのは、どんなところでしょうか。

望海:これはファニーのサクセスストーリーのように見えますが、彼女が色々な人に出会い、ニックと出会い、お母さんの愛を感じ……愛の物語だなと思います。その中には、すれ違ってしまう切ない愛もありますし、わかりやすいハッピーエンドでもありませんが、大きくは“愛の物語”。ファニーが傷つき、失敗しながらも、最善の道を選んで人生を進んでいく。大人になってから見ると、目に見えるサクセスストーリーより、そういったところが響きます。

坂本:僕は非常に人間味溢れる物語だなと感じました。エンターテインメントを求める人の話ですが、その表も裏も、良い面も悪い面も描かれている。良い時はそれを利用する人がいて、悪い時こそ母親や仲間といった支えてくれる人の存在に気付く。それはエンタメの世界だけでなく、誰もが経験するストーリーなのだろうなと感じます。

――最後に、楽しみにしているファンの方にメッセージをお願いします。

望海:非常に有名な作品ですので、ご存知の方も、大好きな方もたくさんいらっしゃると思いますが、皆さんが知っている『ファニー・ガール』がリバイバルされ、また新鮮な魅力的な面もあります。『ファニー・ガール』の新しい世界をご覧いただけると思いますので、ぜひ楽しみに劇場にいらしてください。色々な世代の方に観てほしいですね。昔映画をご覧になった方が、親子でいらしていただいたりしたら嬉しいです。

坂本:とにかく元気とパワーと自信をもらえる作品です。ファニーの半生を見て、自分と重ねて、もう一歩頑張ろうと思ってもらえるような舞台にしていきたいです。お待ちしています。

取材・文=平野祥恵  撮影=iwa

公演情報


ブロードウェイミュージカル『ファニー・ガール』

製作:東宝/ワタナベエンターテインメント
東京公演  9月8日(火)~9月29日(火) 日生劇場
大阪公演 10月9日(金)~10月18日(日) 梅田芸術劇場メインホール
福岡公演 10月24日(土)~11月1日(日) 博多座
愛知公演 11月10日(火)~11月15日(日) 御園座

<出演>
望海風斗、坂本昌行
水田航生、高泉淳子、益岡徹、中尾ミエ ほか

<スタッフ>
音楽:ジュール・スタイン
歌詞:ボブ・メリル
脚本:イソベル・レナート
改訂台本:ハーヴェイ・ファイアスタイン

演出:マイケル・メイヤー
振付:エレノア・スコット
タップ振付:アヨデレ・カセル
演出補:ジョハンナ・マッケオン
 
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