2日間・7公演にパワーアップ! 初参戦の石田泰尚&ピアクロに、石井琢磨プロデュースの新企画も 『スタクラ 2026 in 横浜』初日レポート
バルトーク独特の美。洗練された美しさ際立つ
『YAMATO String Quartet ーバルトークを追ってー』
【日時】8月1日(土)15:15開演@小ホール
【出演】石田泰尚(ヴァイオリン)、執行恒宏(ヴァイオリン)、榎戸崇浩(ヴィオラ)、阪田宏彰(チェロ)
周知の通り、石田は、石田組組長、神奈川フィル及び京都市交響楽団のコンサートマスターとして、大活躍。昨年からは、ここ横浜みなとみらいホールで「プロデューサー in レジデンス」も務めている。執行は元パシフィックフィルハーモニア東京コンサートマスター、榎戸は読売日本交響楽団メンバー、阪田はYSQ代表である。
『バルトークを追って』と題されたコンサートは、20世紀前半のハンガリーを代表する作曲家、バルトークの弦楽四重奏曲第1番、第2番、第3番というプログラム。YSQにとってはいずれも初レパートリーである。いささか難解で渋いとされるバルトークの弦楽四重奏曲であるが、前売りで完売。聴衆の9割以上が女性であった。
まずは第1番(1908)。石田を先頭に4人が入場。石田は、彼らしく、拍手にはほとんど応えず、素っ気なく着席。演奏自体は、ゆっくりと丁寧に始まる。4つの楽器が絡み合い、良いハーモニーを作り上げていく。石田が、慎重ながらも自由にアンサンブルをリード。それに、執行が真摯に寄り添う。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの溶け具合が素晴らしい。全体として、繊細で美しい演奏。第3楽章のチェロのソロも力むことなく奏でられる。4人で呼吸を合わせ、クールに高揚。最後は、石田を中心に鮮やかに締め括られる。バルトーク初期の作品であるが、民族色よりは印象派的な色彩が際立った演奏となった。
第2番(1917)のゆったりとした第1楽章も美しい演奏。石田の艶のある音色が活かされ、それに執行が合わせていく。榎戸は力むことなく、阪田も瑞々しい音色。いささか音程の難しさを感じるところもあったが、柔らかな響きが印象に残る。民族舞踊的な第2楽章では、石田がかなり攻めの演奏。執行はアンサンブルに目配り。4人で躍動感のある演奏が繰り広げられたが、粗野になることはない。テンポを落としたところではとても洗練された表現を聴くことができた。第3楽章もYSQとしての美意識が際立つ演奏であった。
第3番(1927)では、第1ヴァイオリンが多彩な技巧を披露。民族舞曲風の音楽になると、石田のグルーヴ感が増す。終盤は、4人で、バルトークの後の「弦楽器、打楽器、チェレストのための音楽」を思わせる、迫力のある表現。
全体を通して、第1ヴァイオリンの石田がこの弦楽四重奏団をリードし、バルトーク作品においても、ときに自由にノリの良い演奏を展開しながらも、決して粗くなることはなく、美しく魅力的な演奏を繰り広げた。そして、第2ヴァイオリンの執行が、全方向にアイコンタウトを取りながら、献身的にアンサンブルの要となっていたことも強く印象に残った。ヴィオラの榎戸はクールに寄り添い、阪田は渋くも美しいチェロを聴かせてくれた。
バルトークの弦楽四重奏曲といえば、いささか難解で、渋く、不協和音でテンションが高く、民俗的で野性的なところもあるというイメージが強い。しかし、YSQの演奏では、むしろ作品の洗練された美しさが際立ち、弦楽四重奏としての充実感を味わうことができた。多くの聴衆にバルトーク独特の美が伝わったのではないだろうか。
アンコールには、ジミ・ヘンドリックスの「リトル・ウィング」が演奏された。バルトークからジミ・ヘンドリックスに自然に流れていくところが彼ららしい。石田がたっぷりとメロディを歌い、執行もグリッサンドを交えながらブルース的に奏でる。そして、最後は、石田が輝かしくヴァイオリンを鳴らし、4人で鮮烈にコンサートを締め括った。
取材・文=山田治生 撮影=福岡諒祠