2日間・7公演にパワーアップ! 初参戦の石田泰尚&ピアクロに、石井琢磨プロデュースの新企画も 『スタクラ 2026 in 横浜』初日レポート
クイズあり、演奏ありの新企画!
『石井琢磨 Produce 格付けクラシック』
【日時】8月1日(土)20:00開演@小ホール
【出演】石井琢磨(ピアノ・トーク)、石田泰尚(トークゲスト)、辻本玲(チェロ)、東亮汰(ヴァイオリン)
(辻本玲の「辻」は一点しんにょうが正式表記です)
スタクラ初日の20時からは新企画『石井琢磨プロデュース格付けクラシック』が開催された。「テレビ恒例の格付けチェックをやってみたかった」という石井の願望が実現したものだが、小ホールは遅い時間からの開催にもかかわらず満員御礼。クイズを楽しみながら音楽の奥深さを学び、演奏も楽しめるというハイブリッドな企画は、司会進行も石井本人に加え、スペシャルゲストにヴァイオリニストの石田泰尚を迎え、出題者も超実力派の演奏家たちという超豪華版だ。その模様を少しだけ覗いてみた。
会場の扉を開けて中に入ってみると、客席空間はスゴイ熱気だ。席も驚くほどびっしりと埋まっており、ステージ上にはマイクを持ったヴァイオリニストの石田泰尚と何やら緊張した面持ちの石井琢磨がトークを展開中だった。その後ろにはアコーディオンカーテンと思しき、“蛇腹”で目隠しがされており、後ろでは何か準備中の様子だ。
そう、まさにクイズ進行中。石田と石井のトークを聞いてみると、どうやら、「どちらがエレクトリック・ヴァイオリンで、どちらが本物の高価なヴァイオリンか?」というのが質問らしい。と思いを巡らせていると、蛇腹の裏から エルガー「愛の挨拶」のあの美しいメロディが聞こえてきた。AとBと同じ小節数の旋律が二回繰り返されたが、さて、本物はどちらだろうか?しかし、演奏があまりにも巧み過ぎて、どちらも説得力がありわからない……。壇上の石田も一回答者として参加中なので、どうしてもプロヴァイオリニストの様子を窺ってしまう……。しかし、意外にも石田自身も戸惑っており、簡単そうに思えて、実際そうでもないのだ。矢先、石田の「愛の挨拶は弾かないね。ちょっと恥ずかしいから」という突然のコメントに会場は爆笑。会場の様子もかなり和んだ感じだ。
石井に回答を促されて、オーディエンスがそれぞれに手持ちの札をあげる。AB半々くらいの回答だ。回答はA。「ここでAの演奏を改めてお聴きいただきます」という石井のアナウンスで演奏者の顔がようやく見えたが、何とヴァイオリニストの東亮太の手によるもの。石田も「東君の演奏が上手すぎてハードルが上がってしまったのも確かだね」というコメントに思わずうなずいてしまった。そして、この企画の良いところは、ここで終わりではなく、東と石井の演奏で改めて全曲を楽しめるところだ(石田もマイチェアを客席に置いて、聴衆に混じって演奏を楽しんでいた)。
と、こんな感じの出題が続き、二問目はチェリストの辻本玲による バッハ「無伴奏チェロ組曲 第一番《プレリュード》」冒頭部分の一節の演奏で「高価なチェロ(辻本本人の楽器)と安価なチェロを聞き分けよ」という内容。
三問目は東がヴァイオリンをヴィオラに持ち替え、辻本とともにサン=サーンス「白鳥」の冒頭を演奏し、チェロによる演奏をあてるという趣向。4問目はプロの打楽器奏者が打つシンバルと素人が打つシンバルの音の違いをあてるという、想定外の斜め45度の出題(ここでプロ奏者として登場したのは神奈川フィルで42年、打楽器セクションを務めた平尾信幸氏)。
総じて、蛇腹越しに聴く演奏と、回答が判明し目で演奏者を見つめながら聴く演奏とでは、また印象が違うといことにも多くの聴衆が気づいたようで、皆、それぞれに目から鱗の体験の連続だったようだ。
そして、何と言っても最高潮に盛り上がったのは最終5問目の問題。 「石井琢磨と石田泰尚が演奏する二つの「猫ふんじゃった」のうち、どちらが石田の演奏か?をあてよ」というもの。
ピアノの演奏は大学の試験以来、普段は家にピアノもないという石田と百戦錬磨の石井が蛇腹越しに 猫ふんじゃった の冒頭一節を演奏。これはさすがに会場の3分2くらいが正答(なぜだろう!?)。回答判明後に石田がピアノの前に座り込んで、「猫ふんじゃった」の演奏を楽しんでいたのが何とも微笑ましかった(いや、可愛らしかった!)
全問正解の6人には今宵ステージに登場した全演奏家のサインが埋め込まれたステッカーが贈呈され、第一回『格付けクラシック』の覇者として認定された。締めのコメントを求められると石田は「明日、コンチェルトを二つ演奏しなきゃいけないんだけど……、楽しい時間を過ごせましたね」と最後まで渋目に一言。最後に石井・東・辻本によるピアノトリオ演奏(曲目はクライスラーの「シンコペーション」)で大盛況の新企画ンサートを華麗に締めくくった。
筆者も実際に参加してみて、簡単なようで意外にも正解できないジレンマに一喜一憂しながらも、出題者の演奏の素晴らしさと石井&石田のギャップあり(!)のトーク進行の面白さ、そして、何よりも気楽に向かおうと思っても、思わず真剣になって巻き込まれてしまうその魔力、いや中毒性に驚きの連続だった。この好企画が来年以降も続くことを心から願う。
取材・文=朝岡久美子 撮影=福岡諒祠
【石井琢磨】今後の出演予定
出演 石井琢磨
予定曲目
ショパン:バラード 第3番
グリーグ:君を愛す
J.シュトラウス2世=ドホナーニ:宝のワルツ
グリュンフェルト:ウィーンの夜会
シューマン=リスト:献呈
ほか
ツアー日程
9/21(月・祝)14:00開演 サントリーホール 大ホール【東京】
10/17(土)14:00開演 FFGホール【福岡】
11/3(火・祝)13:30開演 ザ・シンフォニーホール【大阪】
11/7(土)14:00開演 しらかわホール【愛知】
12/19(土)・20(日)13:00開演 札幌コンサートホール Kitara 小ホール【北海道】