神戸セーラーボーイズの定期公演『スウィング・エモーション!』が開幕――頭の中で感情が大暴走、14歳の2人が繰り広げる友情と恋の青春ミュージカル

レポート
舞台
2026.8.21
神戸セーラーボーイズ 撮影=福家信哉

神戸セーラーボーイズ 撮影=福家信哉

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神戸セーラーボーイズ 定期公演vol.7『スウィング・エモーション!』 2026.8.20(THU)〜8.30(SUN)@大阪・扇町ミュージアムキューブ CUBE01

8月20日(木)、神戸セーラーボーイズ 定期公演vol.7『スウィング・エモーション!』が、大阪・扇町ミュージアムキューブ CUBE01にて開幕した。同公演は、脚本・演出を手がける片岡百萬両の書き下ろしの新作で、音楽を大石憲一郎、振付を後藤健流、古謝那伊留が担当。神戸セーラーボーイズ(以下、神戸セラボ)ではお馴染みの制作陣が脇を固める。初主演、そしてダブル主演に抜擢されたのは、ともに14歳の最年少コンビ・南條斗希と山本歩夢だ。先日SPICEで公開した山本と細見奏仁のインタビューで、細見が「夏休み中の無敵の神戸セラボを観に来てほしい」と話していたが、まさに若さと元気120%、甘酸っぱくて切ない青春ミュージカルが繰り広げられた。同公演は単なる青春譚にとどまらず、頭の中で巡る思考や感情の可視化に、誰もが共感できるドラマに仕上がっている。初恋の記憶にキュンとしつつ、人間の深い心理を求めて何度も観たくなる作品だ。直前に行われたゲネプロの模様をレポートする。

幼馴染の2人が繰り広げる、友情と恋の物語

片岡百萬両が神戸セラボの演出・脚本を手がけるのは、『Assort Box 2025』で上演されたショートストーリー『Oh my God!!』以来、約1年ぶりだ。

今回、人間役は山本演じる「凪(なぎ)」と、南條演じる「湊(みなと)」の2人だけで、他の演者は「思考」であり「感情」という内容。10代の多感な時期を過ごす凪と湊の頭の中で、リーダー(津山晄士朗)、ムードメーカー(髙山晴澄)、ロマンチスト(田中幸真)、リサーチャー(日陽龍之介)、エンターテイナー(細見奏仁)、ポジシミュレーター(荒木 碧/候補生)、ネガシミュレーター(新良貴優士/候補生)、カリスマ(石田 隼/ゲスト)が大暴れする。

暗転した会場に「チリン、チリン」と鈴の音が鳴る。客席側に背中を向けてステージに立つ凪と湊。そこにカリスマが登場し、2人の関係性や、これから起こる物語を語り始めた。

凪(山本歩夢)、湊(南條斗希)

凪(山本歩夢)、湊(南條斗希)

高校受験を控える中学3年生の凪と湊は、隣の家に住む幼馴染で大親友。登下校も勉強も、食べ物の好き嫌いも、遊ぶのも全部一緒。文系と体育会系でありながら本当に仲良しで、切磋琢磨しあえる間柄。そんな2人が、中3の夏に初めて喧嘩をする。

「将来のことって考えてる?」と凪。勉強が得意な凪は、教師になりたくて、私立の高校に進学するつもりだと明かす。一方、サッカー部のキャプテンをつとめる湊は、近所の公立高校に進学予定。「高校が別々になったら寂しくなるなぁ。でも凪の夢、応援してるわ!」「心の友!」と気持ちを通じ合わせる。

しかしある日、凪が突如私立への進学をやめると言い出した。教師の夢を諦めてしまうのかと思った湊は、その理由を問い詰める。凪は「ボクだってわからん! 頭の中がぐちゃぐちゃになってるねん。あの人のこと考えたら何も手につかんくなって、もう勉強どころちゃうねん!」。それを聞いて湊は叫ぶ。「それってつまり……好きな子ができたってことなんかあああぁあ〜!」

テーマパークのキャストのようにカラフルな衣裳を纏ったリーダー(津山)、ムードメーカー(髙山)、ロマンチスト(田中)、リサーチャー(日陽)、エンターテイナー(細見)、ポジシミュレーター(荒木)、ネガシミュレーター(新良貴)、カリスマ(石田)、つまり感情たちがステージになだれ込み、「この感情の名前は?」と歌い出す。「ザ・ミュージカル」的な、賑やかで華やかなオープニングが期待を高める。

同じ女子を好きになってしまった凪と湊が、自分の思考に翻弄されながらも、気持ちをぶつけて友情を深めていく物語。14歳の山本と南條が演じる2人の心の動きは、等身大でとてもリアルだ。寝ても覚めても好きな人のことばかり考えてしまう、初恋のふわふわとした夢見心地の感覚、胸の高鳴り。好きな人に夢中になるあまり、自分にとっての大事な選択を見失ってしまう危うさも、誰もが一度は経験したことがあるのではないだろうか。

カリスマ(石田隼)、リサーチャー(日陽龍之介)、エンターテイナー(細見奏仁)、リーダー(津山晄士朗)、ロマンチスト(田中幸真)、ムードメーカー(髙山晴澄)

カリスマ(石田隼)、リサーチャー(日陽龍之介)、エンターテイナー(細見奏仁)、リーダー(津山晄士朗)、ロマンチスト(田中幸真)、ムードメーカー(髙山晴澄)

凪と湊の頭の中をさまざまな想いが駆け巡る。それを可視化するのが「感情」たち。リーダー(津山)、ムードメーカー(髙山)、ロマンチスト(田中)、リサーチャー(日陽)、エンターテイナー(細見)、カリスマ(石田)がそれぞれの言い分を主張する。そのわちゃわちゃぶりは目と耳が足りないほど目まぐるしい。しかし、各感情の個性の強さや主張の仕方がエンタメに昇華されていて、とても面白い。これぞ「片岡百萬両節」。そこに全力で応える神戸セラボメンバーも見事だ。

カリスマ(石田隼)

カリスマ(石田隼)

落ち着いたカリスマ性を見せながら、他の感情とテンション高く絡み合う変幻自在ぶりを見せる石田の演技も、良いアクセント。特に、全感情がセリフと動きをピッタリ合わせるシーンはハイライトのひとつ。回替わりゲストが登場する場面もお楽しみに。インタビューで細見が語っていた「男子校みたいなノリ」も存分に味わうことができる。

下段左からエンターテイナー(細見奏仁)、リーダー(津山晄士朗)、ロマンチスト(田中幸真)、上段左からリサーチャー(日陽龍之介)、ムードメーカー(髙山晴澄)、カリスマ(石田隼)

下段左からエンターテイナー(細見奏仁)、リーダー(津山晄士朗)、ロマンチスト(田中幸真)、上段左からリサーチャー(日陽龍之介)、ムードメーカー(髙山晴澄)、カリスマ(石田隼)

ロマンチスト(田中幸真)、リサーチャー(日陽龍之介)、凪(山本歩夢)、リーダー(津山晄士朗)

ロマンチスト(田中幸真)、リサーチャー(日陽龍之介)、凪(山本歩夢)、リーダー(津山晄士朗)

「恋は盲目」状態だった湊に続いて凪も恋に落ち「自分も好きな相手ができた」と湊に告げる。まだお互いの好きな相手は知らないまま。恋をするタイミングも一緒で「おれたちって、どこまでいっても似た者同士やな!」と喜ぶ。そんな中、意中の人と隣の席になった湊の恋が大きく進展。放課後、2人が一緒に帰っているところを見てショックを受けた凪は、ますます思考の渦に巻き込まれていく。

劇中では、ロマンチスト(田中)がアコースティックギターを、ムードメーカー(細見)がキーボードを弾きながら歌う楽曲も。凪の感情が揺れ動く様を情感豊かにアシストしていた。神戸セラボ候補生メンバーの荒木と新良貴は今回が初めてのお芝居だったが、しっかりと空気に馴染んでいた。

終盤、湊が「もっとホンマのこと喋ってや!」と凪に訴え、2人が本音でぶつかり合うシーンは、本作で最も心に残る場面ではないかと思う。お互いを思いやるからこその感情と葛藤。あふれだす本音と建前。自分の本当の気持ちは? 相手に何を伝えればいい? 涙を流しながら迫真の演技をする山本と南條からは、10代の若さと儚さと青春の痛みがありありと感じられた。

「頭の中にいろんな自分がいて、日々揺れている」とはカリスマのセリフだが、自分の中に浮かんでは消える感情や思考に支配され、翻弄されるのは、大人だって同じだ。ただ多くの大人は、正直な自分の感情を外に出さないことの方が多い。だからこそ、本作は控えめだった凪が最後に湊に本音を伝えるシーンは、涙なしには見られない。そして迎えるエンディングでは、オープニングナンバーがもう一度披露される。最初の印象とどう違って観えるのか、自分の感情を意識してみてほしい。

きっと今回の公演は、リピートしたくなる人が多いだろう。凪と湊の青春を追いかけるのはもちろん、忙しく動き回る感情たちにも目を向けたいと思えるからだ。どの感情がどのタイミングでセリフを言うのか、間や動きに注目すると、物語の世界が広がるのではないだろうか。

そして、カリスマ(石田)が生まれたての感情であるポジシミュレーター(荒木)とネガシミュレーター(新良貴)に「楽しみにしてるよ、キミたちの成長する姿を」と告げる場面は、神戸セラボ候補生メンバーである2人の姿と相まってこれからの神戸セラボへのメッセージだった。

新曲連発! ギター、フラメンコ、連弾まで飛び出すライブパート

「真夏の文化祭」と称された第2部のライブパート。ラジオ部の髙山、田中、津山が、学校の放送部で番組を放送するかのような趣向でトークを繰り広げる。

髙山晴澄、田中幸真

髙山晴澄、田中幸真

1曲目は、神里優希作詞で細見作曲の「ジェットコースターラブ」を特別バージョンで披露。冒頭、細見の伴奏と山本のソロのアカペラで幕を開けると、髙山と田中がアバニコ(扇子)とパリージョ(カスタネット)を使い、華麗なフラメンコで加わる。

新良貴優士(候補生)、田中幸真、石田隼

新良貴優士(候補生)、田中幸真、石田隼

続けて候補生の新良貴がエレキギター、日陽がカホン、津山がダンスで次々と加わり、楽曲を彩っていく。南條は念願だった細見とのキーボードの連弾を見せ、候補生の荒木は津山と共にタップダンスを踊るなど、これまでにないパフォーマンスに挑戦。ボーカルを担う山本は、舞台の中心で伸びやかに歌い踊る。音楽部、フラメンコ部、ダンス部のメンバーが個々であたためてきたスキルが1曲の中にギュッと詰め込まれたのは初めてで、予想外の展開に驚かされるとともに、才能の多彩さに感嘆した。

神戸セーラーボーイズ

神戸セーラーボーイズ

神戸セーラーボーイズ

神戸セーラーボーイズ

ここで、インタビューでも「念願だった」と話してくれた、細見作曲の自己紹介ソング「カラフルミライ」が披露された。歌詞は田中を中心にメンバー全員で考え、振付は津山が担当した。歌詞は他己紹介でアイデアを出していったそうだが、歌で紹介されたメンバーが次のメンバーについて歌唱(ラップもあり!)するという、制作過程を反映するスタイルになっていた。どんなステージでも一気に盛り上がりそうな、ポップでキャッチーな曲調。何よりもメンバーが本当に楽しそうで誇らしげで、自分たちでこれを作り上げた頼もしさに、胸が熱くなった。

「ここからはノンストップでお届けします!(細見)」とギアを上げると、夏にぴったりの「ハニーレモンかき氷」をのびのびと届け、ユニットでのカバーを2曲連続で披露した。ラジオ部の髙山、田中、津山によるJUDY AND MARYの「RADIO」は、平成を知る者にとっては懐かしい楽曲で、思わず口ずさんでしまう。3人はアカペラを交えつつキュートに歌い、くるくると軽やかにステップを踏んだ。

日陽龍之介、細見奏仁

日陽龍之介、細見奏仁

「RADIO」が「柔」だとすると、細見と日陽によるピンク・レディーの「サウスポー」は「剛」だった。アイソレーションを多用したキレのあるダンスに、力強さと男らしさを感じる。細見の豊かな表情や左利きの野球経験者である日陽のピッチングも見どころだ。

神戸セーラーボーイズ

神戸セーラーボーイズ

ラストスパートは新曲のオンパレード。田中作詞、大石作曲の「門限はよるしちじ!」は南條&山本ペアがボーカルを担い、石田と他のメンバーが華やかに2人を引き立てる。まだ線の細い最年少2人だからこそ生まれる、今しか出せない表現は必見だ。

メンバー1人ずつの挨拶を経て、最後はFlying Botz、C-BOU作詞で大石作曲の「シーサイドセーラー」で幕を閉じた。波を想起させる振付がみずみずしいアッパーチューン。ここから伝説を作っていく、その一歩を踏み出した2026年度の神戸セラボの勢いを表した1曲を、全力で披露するメンバーたち。真っ直ぐな瞳からは自信と決意が感じられた。「今この瞬間」も青春の1ページをしっかりと刻んでいる姿が、本当に眩しかった。

取材・文=久保田瑛理 撮影=福家信哉

公演情報

神戸セーラーボーイズ 定期公演 vol.7『スウィング・エモーション!』 
【期間】<大阪公演>2026年8月20日(木)~30日(日)
【会場】大阪・扇町ミュージアムキューブ CUBE01 
価格】平日 6,000 円(全席指定/税込) 土日 6,500 円(全席指定/税込) 

【脚本・演出】片岡百萬両 
【音楽】大石憲一郎 
【振付】後藤健流・古謝那伊留 
【美術】田尻尚大 
【音響】藤森暖生(結音) 
【照明】橿林真也(Kassy120) 
【衣裳】川島加菜果 
【ヘアメイク】小屋敷裕子 
【歌唱指導】今泉りえ・東 ゆい・飯田俊樹 
【演出助手】鎌江文子・夏目れみ 
【舞台監督】久保克司(スタッフステーション) 
【制作協力】尾崎商店 
【宣伝美術】西本恵理子 
【宣伝写真】宮坂浩見 
【宣伝スタイリスト】手塚陽介 
【宣伝ヘアメイク】小屋敷裕子・小竹珠代 
【出演】 
凪:山本歩夢 
湊:南條斗希 
リーダー:津山晄士朗 
ムードメーカー:髙山晴澄 
ロマンチスト:田中幸真 
リサーチャー:日陽龍之介 
エンターテイナー:細見奏仁 
ポジシミュレーター:荒木 碧(候補生) 
ネガシミュレーター:新良貴優士(候補生) 
カリスマ:石田 隼(ゲスト) 
※髙山晴澄の<たか>ははしごだかが正式表記 

【主催】神⼾セーラーボーイズ製作委員会 
【公演に関するお問い合わせ】ネルケプランニング https://www.nelke.co.jp/contact/
【公演公式サイト】https://kobesailorboys.com/stage/teiki7-swingemotion
【ハッシュタグ】#スウィエモ #神戸セラボ #神戸セーラーボーイズ
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