『スルース』神様からの贈り物と西岡徳馬 新納慎也と音尾琢真(TEAM NACS)が火花を散らす!?

レポート
舞台
2016.11.18
『スルース』左から新納慎也、西岡徳馬、音尾琢真、演出の深作健太

『スルース』左から新納慎也、西岡徳馬、音尾琢真、演出の深作健太

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トニー賞受賞の推理劇の傑作『スルース』が、11月25日(金)より全国4か所にて上演される。演劇界、役者の中にも多くのファンをもつ本作は、映画化や舞台の再演で世界中の観客を魅了してきた。

パルコ・プロデュース公演となる今回は、作家で富豪のアンドリュー・ワイク役に、西岡徳馬。その妻の若い愛人であり、アンドリューと対峙するマイロ・ティンドル役を、ダブルキャストで新納慎也音尾琢真(TEAM NACS)が演じる。男同士の息の詰まるような心理戦と、目の離せないスリリングな展開が見所となるだろう。※正しくは「德」

11月16日に都内の稽古場で、出演者3人と演出家の深作健太が取材に応じた。ダブルキャストの新納と音尾は、年齢が近く、ダブルキャストの経験もこれがはじめて。お互いにライバル心を燃やしている。そんな2人に西岡がつっこみを入れ盛り上げるなど、サスペンス劇『スルース』の緊張感とは対照的に、笑い声の響く取材会となった。

大先輩の西岡をはさみ、火花を散らす新納と音尾

大先輩の西岡をはさみ、火花を散らす新納と音尾

俳優の力で日々変化し、育つ『スルース』

4人が口を揃えて言うのは「探偵バージョン(西岡VS新納)」と「スルースバージョン(西岡VS音尾)」は、同じ脚本でもまったく別の舞台になるだろうということ。

演出:深作健太

演出:深作健太

「日々芝居は変化し、作品が育っていきます。俳優さんたちの力、演劇というものの根源的なパワーを感じます」

そう語るのは、演出の深作だ。新納と音尾、それぞれが演じるマイロを、西岡が懐深く柔軟に受けとめ、それぞれの作品に仕上がっていくのだそうだ。

「役者さんが変わればマイロという青年の造形も、まったく別のものになります。演出も、衣装も含めて変えていこうと思っています。もしかしたら、上演時間さえ変わってくるかもしれません」と笑った。

西岡が『スルース』への思い

西岡德馬

西岡德馬

「稽古時間が短くて短くて、あっという間にすぎてしまうんです。頭だけはずっとスルースのことを考えていたい」

西岡は、目を輝かせる。それというのも『スルース』は、西岡にとって1973年に映画版を観て以来、念願のキャスティングとなるからだ。

「いつかはマイロ役を、と思っていましたが、日本での上演の権利の獲得がむずかしかった時期もあり、そのうちに自分もマイロからアンドリューに近い年齢になり半ば諦めていました。それがこの秋、降ってわいたようにアンドリューを演じる機会をいただけました。しかも、マイロはWキャスト。それぞれキャラクターも違いますから、僕は、念願のスルースを2倍演じることができるんです。ドキドキしながらワクワクしています。神様からのプレゼントだと思っています」

2人のマイロ・ティンドル

登場する人物が少ない本作では、誰が西岡の相手役マイロを務めるのかが非常に重要だ。西岡が「ぜひお願いしたいと考えていた2人」と紹介したのが、NHK『真田丸』への出演で注目の新納慎也と、今年結成20周年を迎えた演劇ユニット「TEAM NACS」の音尾琢真。役作りについて、新納は次のように答えた。

「相手ありきのお芝居なので、一人で役を作りこむほうではないのですが、徳馬さんと作るマイロが今、自然に生まれてきているのを感じます。マイロはイタリアからイギリスにきた移民。ユダヤ人の血が入っていて、移民というマイノリティーを抱えてきた青年。そういう彼が大富豪の家にやってくる。彼はどう、性格の中に反映し、どう対峙するかを考えてやっています。人種差別や階級の問題、お金があるとかないとか、根底に流れる現代にも通用する問題を意識しながら役を演じていけたらなと思っています。」

これに対し音尾は、「へぇ~! そんなこと考えてらっしゃるんですねぇ。そぉですか。僕はそれにプラスして」とけん制し、笑いを誘いつつも、

「人間の老いと若さが、テーマになってくると思っています。いつか若者はおいていく。老いてしまったら取り戻せないものがある、でも若い者にはないものがある。情熱的に、無鉄砲で勝ち気で、けれども本当は弱くて情けなくて。誰しもがある人間の部分をなまめかしく、全面に出るようにしたいです」と役柄への真摯な思いを語った。

音尾琢真

音尾琢真

「そこが新納さんとの違いかな」とけん制する音尾に「言い方がやらしい!」と西岡・新納

「そこが新納さんとの違いかな」とけん制する音尾に「言い方がやらしい!」と西岡・新納

2バージョンともに、期待が高まる『スルース』。最後は西岡が、アンドリューの妻、マイロの愛人であるマーガリートにふれつつ、話を締めくくった

「彼女は舞台には登場しない。けれど、ストーリーの核となる存在です。それがどんな女なんだろうと想像いただき、お客さんの中に彼女が浮かび上がればこの芝居は成功です。それを推理する、スルース(探偵)になるのは客席のあなたです!」

パルコ・プロデュース公演『スルース』メインビジュアル

パルコ・プロデュース公演『スルース』メインビジュアル


取材・文・撮影=塚田史香

公演情報
スルース~探偵~
 
■日程
2016年11月25日(金)~16/12/28(水) 新国立劇場 小劇場 (東京都)
2017年1月14日(土) ももちパレス 大ホール (福岡県)

2017年1月16日(月) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール (愛知県)
2017年1月18日(水) 仙台電力ホール (宮城県)

■出演:
新国立劇場 小劇場のみ2バージョン公演
[ 探偵バージョン:西岡徳馬/新納慎也 ] 11月25~12月11日 
[ スルースバージョン: 西岡徳馬/音尾琢真(TEAM NACS) ] 12月17日~12月28日
※福岡・愛知・宮城公演はスルースバージョンのみ上演
[ スルースバージョン: 西岡徳馬/音尾琢真(TEAM NACS) ]
 

 
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