welcome to THE 沼!・ 第六沼『人間観察沼 挨拶しないオバサン編』

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2017.1.11

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「沼」。

皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。

一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れることを「」という言葉で比喩される。

底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。

毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。

 

第六沼(だいろくしょう) 『人間観察沼〜挨拶しないオバサン編』

みなさんこんにちは、齋藤久師です。私の母親は田舎で美容室を営み、女手一つで私を育ててくれた。

片親だから?商売をしているから?

そのためかどうかわからないが、
「挨拶」だけはしっかりしなさいと厳しく躾けられたものだ。

 

そんなわけで、人と挨拶するという事は超極当たり前の行為であり、コミュニケーションの入り口だと思っていた、、、、、

 

挨拶しないオバサンとの出会い、沼にハマったワケ

近所で良く見かけるオジサンやオバサンや子供たちにも、また釣りに行けば、釣り場で初対面の人だとしても

「おはようございます」
「こんにちは」
「こんばんは」
「失礼いたします」

などの挨拶や声がけを極々当たり前にするものだと思っていた。

ところが昨年、生まれてこのかた48年の間で初めて

挨拶しないオバサン

に出会ったのだ!私にとっては新種の生き物を発見したような驚きなのだ。

そのオバサンは私の息子が通う園で出現した。敢えて言わせていただくと、「オバサン」というほどの年齢では無く、私よりは一回り以上若いはずだが、私は皮肉と悪意と愛を込めてそう呼んでいるのだ。

「挨拶しないオバサン」

と初めて出会ったのは昨年の春。息子を園に迎えに行った時の事だ。
 

子供を自転車に乗せ終わり、帰ろうとするママさんがいたのですれ違いざまに、私は当たり前に「こんばんは」と挨拶をした。

・・・すると、一旦私の顔を凝視し(2秒ほど)完全に無視するような感じで走り去って行った。

 

「挨拶しないオバサン」との記念すべき初対面だ!

「挨拶しないオバサン」誕生!発見!

 

ただの偶然じゃない!本気で挨拶をしないおばさん!!

私はあまりの衝撃に、帰宅後 妻にその事を話したのだが「またぁ〜〜〜!大げさに話を盛ってるんでしょ?」と笑って信じてくれない。

そのときは私も、「日暮れ時だったので視力が弱いか、私の声が聞こえなかったんだろう」と自分に言い聞かせた。

そして次の日、またしても「挨拶しないオバサン」と同じシチュエーションで遭遇したのだ。今度は私も少し大きめの声で「コンバンワ!」と言ってみた。

すると「挨拶しないオバサン」は昨日よりもさらに怪訝な顔つきで無言のまま私の顔を凝視した。

・・・まるで汚いモノでも見るような冷たい視線で。(2.5秒ほど)

そこで私は試しにもう一度、さらに大きな声で

「コンバンワ〜〜〜〜〜〜〜♪」

と「挨拶しないオバサン」に挨拶した。

しかし、「挨拶しないオバサン」は昨日と全く同じ動作で無視し、走り去って行った。走り去った「挨拶しないオバサン」の居た場所であっけに取られて(金縛りに近い)固まっていると、壁に子供の書いた「挨拶しましょう!」というポスターが・・・。

怒りと笑いを同時に得るという初めての快感!

エクスタシー!!!

そこで、私は「挨拶しないオバサン」を人間観察する事にした。人間観察沼にハマったのだ!

 

「挨拶しないオバサン」の分析開始と結果

何故挨拶しないのだろうと、理由を色々考えてみた。

・知り合いでは無いから。

・夕方のため視認性が悪く私が誰かよく見えていなかったから。

・私がデカくて長髪で怖そうだから。

・男性恐怖症か?

・もしかしたら、私がその人に対して過去に何かをやらかしていた可能性は無いか?

 

そしてある日、妻が息子のお迎えに行く事になったので「挨拶しないオバサン」の特徴を話し、お迎え時間も設定し、発見したら直ちに私に報告するように伝えたが、妻は笑うばかりで全く取り合ってくれない。

「そんな人、いるわけないwww」。

しばらくして帰ってきた妻の第一声は息を切らせながら

「出たっ!挨拶しないオバサンが出たっ!」

であった。

まるで「口裂け女」とでも遭遇したかのような興奮ぶりだ。私は妙な満足感と笑いのツボを激しく刺激されつつ、何故かガッツポーズをとっていた。

これで挨拶しないいくつかの原因が無くなったわけだ。

女性にも挨拶しないのだ。

その後も安定の「挨拶しないオバサン」なのだが、新たな発見がいくつかあった。

 

まずは、特定のママさんやパパさんなどとは良くお喋りをする現場が私と妻によって何度も目撃されている。そこで、ちょうど「挨拶しないオバサン」が誰かと喋っているタイミングで挨拶して見る実験を試みた。

ある日、「挨拶しないオバサン」と他のママさん達が園の玄関で3人でお話をしていた。

「チャンスだ!」

心で大きく叫び、さり気なく

「コンバンワ〜〜〜」

とその3人に挨拶してみた。

しかし。。。。

予定通り帰ってきた返事が「挨拶しないオバサン」以外の2人のママさん達で、「挨拶しないオバサン」といえば顔をそらすほどの無視を決め込んでいるのだ!

実験成功!!!!!!

帰宅し、妻に結果報告をすると「私もやって見る!」という事でしばらく妻が息子のお迎えに行く事になった。

 

しかし、というかやはりそのチャンスは思った以上に早くやってきた。

いつものように「挨拶しないオバサン」と他のママさん達2人、計3人で園の玄関でお喋りしているところで妻がすかさず

「コンバンワ〜」

と挨拶をしたところ、私と全く同じ実験結果が出たのだ!

「挨拶しないオバサン」の口が開く時・・・

そして、年が明けたある日の事、、、、、

 

いつもより数分早く息子を迎えに行った私は2階にある息子の教室に向かおうと階段を登った瞬間「挨拶しないオバサン」に遭遇!!

「このシチュエーションは初めてだ!」

私はすかさず、少々強めに

「コンバンワ!」

と発声。

すると油断したのか、反射的に「挨拶しないオバサン」も

「コンバ・・・」

と言いかけ私の顔を確認するとそこで止まってしまった。

しかし、初の反応を得たのだ。

大収穫だ!!

 

しかし「コンバ・・・」の後は何故か私を睨みつけるような仕草で完全無視で去って行った。

その後も数回の「階段チャンス!」が私と妻にも与えられた。

しかし、やはり「挨拶しないオバサン」は

「コンバ・・・」

とか

「コン・・・」

とか、

もっと悪いと

「コ・・・」

で止まってしまうのだ。

 

そして、ついに先日また階段チャンス到来!しかしいつもと違うシチュエーションが一つ。今まで私が階段を登る側で、「挨拶しないオバサン」は階段を降りてくるという状態だったのだが、その日はいつもと反対の位置関係にあった。

なんと、子供を連れて階段を降りる私に「挨拶しないオバサン」が自ら

「コンバンワ」

と挨拶してきたのだ!

 

・・・・・

あまりの衝撃に思わず固まってしまった私は(3秒ほど)

少しレイテンシーがありながらも

「コッ、コンバンワ!」

と挨拶返しをした。

 

余りの嬉しさに、帰って祝杯をあげた。しかし、その後もコンスタントに「挨拶するようになったオバサン」。

もう、ただのオバサンだ。

不思議と残ったのは楽しみを失った喪失感だけだった。

つまらない

人間観察は奥が深い。深すぎる。新たなる「挨拶しないオバサン」を私と一緒に探そうではないか。あ、「挨拶しないオヂサン」でもいいかもしれない。

 

あなたもまだまだ遅くは無い。

一緒に沼の住人になろう・・・。

 

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