不条理演劇の傑作イヨネスコの『犀』が極上のエンタテインメントに!
隣人が、友人が、恋人が、犀になっていく──。不条理演劇の傑作イヨネスコの『犀』が、パリ市立劇場の公演として11月21日から23日まで、彩の国さいたま芸術劇場にて上演される。
この作品『犀』は、イヨネスコが祖国ルーマニアで青年時代に見たファシズムの台頭をモチーフにしている。30年代のルーマニアではファシスト組織「鉄衛団」が台頭しており、40年には一時的に政権を獲得するまでに至る。この頃、イヨネスコは日記に以下のように記している。「二種類の種族の人間がいるかのようだ。人間と新人間。新人間は単に心理的ばかりではなく肉体的にも人間とは異なっているように思われる。彼らは犀のモラルを、犀の哲学を、犀の世界を持っている…」「警官たちは犀だ。司法官たちは犀だ。きみは犀たちのなかでたったひとり人間だ…」。
今回の演出を手がけるエマニュエル・ドゥマルシー゠モタは、ランス国立演劇センターの芸術監督を経て、08年より名門パリ市立劇場の芸術監督に就任。11年からはパリの国際芸術祭「フェスティバル・ドートンヌ」のディレクターも兼任しており、現代のパリを代表する演劇人のひとりである。
彼がリバイバル演出した『犀』は、04年にパリ市立劇場で初演、06年の再演を経て、11年からはインターナショナル・ツアーを実施している。これまでにニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、モスクワ、アテネ、バルセロナ、リオデジャネイロなど、12か国34都市で上演、いずれも高い評価を得ている。身体性に富んだスピーディーな演出や壮大な仕掛けを用いた舞台装置は、「難解」「退屈」といった不条理劇に対する観客のイメージを鮮やかに裏切り、極上のエンタテインメントとして観客の目の前に現われる。今回はついに待望の日本初演となる。
【あらすじ】
アル中気味でうだつが上がらないベランジェは、友人のジャンとともに一頭の犀が街を駆け抜けるのを目撃した。騒然とする街の人々をよそにベランジェはどこ吹く風。翌日、ベランジェが出勤すると、オフィスは犀の話題でもちきりだった。そこに欠勤が続くブフ氏の妻が犀に追われて駆け込んで来る。しかし、彼女を追って来た犀こそがブフ氏だと気づくと、ブフ夫人は制止を振り切って犀に飛び乗ってしまう。犀の目撃情報が増える中、仲直りをするためにジャンの家へ向かうベランジェ。だが、ジャンもまた犀に変身し、隣人たちも変身してしまう。いよいよ街は犀に占拠され、ベランジェと同僚のデイジーは二人で生きて行こうと決意するが──。
【ウジェーヌ・イヨネスコ】
1909年ルーマニア生まれ。1911年、両親と共にパリへ移住。帰国後、ルーマニア語を学び始め、1929年、ブカレスト大学へ入学。この頃より詩や評論を書き始める。1938年、奨学金を得て妻と共にパリへ移住するも、まもなく第二次世界大戦が勃発し、帰国。1942年、再びフランスへ移住し、終戦までマルセイユで過ごす。校正係などの仕事を経て、1950年、“反戯曲”を掲げた処女戯曲『禿(はげ)の女歌手』初演。『授業』『椅子』と小品を続けて発表するが、当時の観客たちにはなかなか理解されなかった。1960年、自身の短編小説を基にした戯曲『犀』がジャン゠ルイ・バローの演出、主演によりパリ初演。同年、オーソン・ウェルズ演出、ローレンス・オリヴィエ主演によりロンドン初演。1970年、アカデミー・フランセーズ会員に選出。1994年、84歳で死去。
【エマニュエル・ドゥマルシー゠モタ】
1970年フランス生まれ。母は女優、父は劇作家・演出家。17歳から仲間と共に演劇活動を始める。劇団活動を経て、02年からランス国立演劇センターの芸術監督。ミュージシャンや俳優など様々なアーティストとの共同制作を始め、ヨーロッパ各国の多くの劇団と長期に渡り提携し、その創作と普及をサポート。その他、俳優養成施設の設立、稽古や創作のためのアトリエ建設など多くの功績を残した。08年、パリ市立劇場の芸術監督に就任。11年よりパリの国際芸術祭「フェスティバル・ドートンヌ」のディレクターも兼任している。パリ市立劇場での主な演出作品に『恋の骨折り損』(シェイクスピア)『作者を探す六人の登場人物』(ピランデルロ)『男は男だ』(ブレヒト)など。
【パリ市立劇場】
1862年竣工。数度の改称を経て、1968年からパリ市立劇場。パリを代表する劇場のひとつ。ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団やアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル率いるローザスを始め、ペーター・シュタイン、ロバート・ウィルソン、パトリス・シェローといった、世界の“超一流”アーティストによる作品が年間を通じて上演されている。2014年12月には蜷川幸雄率いるさいたまゴールド・シアターによる公演(『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』)も行われた。
※フランス語上演(日本語字幕付)
作:ウジェーヌ・イヨネスコ
演出:エマニュエル・ドゥマルシー=モタ
出演: パリ市立劇場カンパニー
期間:2015/11/21(土)~2015/11/23(月・祝)
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール (埼玉県)
料金:S席¥6,000 A席¥4,000/U-25:S席¥4,000 A席¥2,000(全席指定・税込) ※当日券は各席種ともに+500円 ※F/Tセット券、ペア、障害者割引あり(いずれも前売のみ)詳細は以下のF/Tセンターまで。
お問い合わせ:
彩の国さいたま芸術劇場 0570-064-939(休館日を除く10:00-19:00)
フェスティバル/トーキョー実行委員会事務局 03-5961-5202(平日12:00-19:00)
公式サイト:http://www.saf.or.jp/ http://www.festival-tokyo.jp/