パリの展示レポート:実際に香りを楽しめる『パリ香水博物館』
今回の「パリの展示会レポート」は、昨年末に新しくオープンした、Grand musée du Parfum(香水大博物館)を紹介します。この美術館では視覚だけでなく、実際に臭覚を使って楽しめる香りの仕掛けが盛りだくさんなのだそうです。
この美術館がある地区は、東京でいうところの銀座ともいえるところ。有名なブランド・ブティックが並び、すぐそばにはフランス大統領官邸もあるような場所です。パリに住んでいる一般人である筆者は、こんなエリアに来る用事はまずなく、来たとしても緊張してしまうほどです。
美術館入り口は、通りの番号をしっかり探さないと見過ごしてしまいそうにひっそりしていますが、一歩足を踏み入れると、控えめで上品な玄関が迎えてくれます。1,400㎡の広さをもつこの美術館は、元々、ファッションブランドの『クリスチャン・ラクロワ』のブティックに利用されていた邸宅でもあります。
エジプト時代の香水からシャネルN°5まで
黒い細身のスーツを着こなしたイケメン従業員に入場料を払うと、まずは階段を降りて地下の展示室から見学スタート。真っ白な螺旋階段を降りて冷たい地下へ降りて行くと、香水の始まりなど、歴史を紹介する展示から見ることができます。
その昔、エジプトではミイラを良い状態で保存するために香水が使われていたこと、またヨーロッパでは伝染病の予防のための薬品としての効果もあった……等の解説が続きます。それに合わせて設置されている、白く大きな器に顔を埋めてみると、大昔の香水の香りをかぐことが可能。とても繊細で、やさしく香るハーブのような香りがしました。
隣の部屋に移ると、私たちにより身近な20世紀の香水の歴史紹介へと続きます。有名ブランドごとにヴィンテージの香水瓶が並ぶ中で、ひときわ目を引いたのはシャネルの『N°5』。他のブランドがロマンティックで、女性的な形や装飾を意識しているのに比べて、シャネルだけ薬品瓶のようにシンプル。 当時としては、そのシンプルさゆえにモード界に衝撃を与えたことでしょう。
シャネルの香水『No5』
フロアを変えると、さらに香りを実体験できる仕掛けがいくつもお目見え。「香りの庭」と題されたエリアでは、花の形をしたオブジェから、バニラやキャラメル、そしてジャスミンなど、私たちの生活に溢れた香りを鼻で感じることができます。まるで花から花へ飛び回る蜂にでもなったような気分でオブジェに顔を近づけ、子供も大人も一緒になって楽しんでいる姿が印象的でした。
さらに別のフロアには、水滴型オブジェの中におかれた金属のボールを手にとり、それを鼻を当ててかいだあと、耳にあてて、解説を聞くという独特な仕掛けを体験できます。それぞれのボールには、香水の原料の香りがついています。中には鳥肌がたつほど野性的な香りもあり「これが香水の元になるとは!」という興味深い発見がありました。
観光ではお土産コーナーがおすすめ
全体を通してもった感想は、たしかに「嗅覚で楽しむ」という新しい試みを体験できる面白さはある、ということです。ただし、全てがフランス語での解説なので、観光客にはすこし向かないかもしれません。しかも、展示されている機械の故障で体験できないものも少なくありませんでした。もし日本から観光でいらっしゃった場合は、入場料をはらわずとも入場できる一階フロアの、お土産コーナーの見学がおすすめです。
お土産コーナー
ここにはゆうに100を超える香水が販売されており、心行くまでテスターで吟味することができます。また、パリ在住者でもなかなか体験することのない、パリの高級な建物の雰囲気を十分感じ取ることができます。玄関前にある踊り場のオシャレなテイクアウト・カフェもあるので、パリの高級エリアでウィンドウ・ショッピングに疲れたら、この香水大美術館で休憩してみるのもよいのではないでしょうか。
香りを当てるクイズコーナーも
住所:73 rue du Fbg St-Honoré, 75008 Paris
URL : www.grandmuseeduparfum.fr