リビング落語『春風亭一之輔ノ世界』をレポート 道玄坂のカフェに広がる“少し特別”な寄席の世界

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春風亭一之輔 撮影=髙橋定敬

春風亭一之輔 撮影=髙橋定敬

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第1回リビング落語『春風亭一之輔ノ世界』が、4月6日に最終日を迎えた。東京・eplus LIVING ROOM CAFE & DININGを会場に、オープニングトークと一之輔の落語2席、そして日替わりゲストの演芸が4日間の連続公演として披露された。

春風亭一之輔は、人間国宝・柳家小三治に「ひさびさの本物」と評された落語家で、2012年には異例の21人抜きで真打昇進。古典落語を現代の感覚で楽しませてくれる実力派で、ユニクロのCMや、最近ではPS4とのコラボ『エレクトロ落語』でも注目された。そんな一之輔のリビング落語、最終日の様子をレポートする。

※初日のレポートはこちらよりご覧ください。

 

『春風亭一之輔ノ世界』千秋楽

eplus LIVING ROOM CAFE & DININGは、渋谷・道玄坂にあるユニクロのビルの5階にある大型のライブカフェだ。2015年のオープン以来、バンドやクラッシックのライブが開催されてきたが、落語、演芸のイベントは今回が初めてだという。店名に「カフェ」とあるがワインが充実していることもあり、ワイングラスを片手に開演を待つ姿を多く見かけた。落ち着いた雰囲気の中、数名の和服姿の女性が客席に華を添える。最終日の演目は次のとおり。

一、オープニングトーク:春風亭一之輔、ロケット団
一、落語「短命」:春風亭一之輔
一、漫才:ロケット団
(休憩)
一、落語「居残り佐平次」:春風亭一之輔
 
撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

大きな拍手に迎えられ、一之輔がオープニングトークに登場。めくりを確認するように「春風亭一之輔ノ世界」と読み上げ、「そんなに(世界は)ないんですけれどね、普通に生きてるだけなので」と脱力した心地よいトーンで話し始める。喫茶店でみかけた有名人の話題で会場をざわつかせた後、漫才コンビのロケット団も加わりオープニングトークはさらに盛り上がる。飛行機のシートに備え付けられているオーディオ番組で、ロケット団のネタがほとんどカットされたというエピソードなどを紹介した。

左から、三浦昌朗(ロケット団)、倉本剛(ロケット団)、春風亭一之輔 撮影=髙橋定敬

左から、三浦昌朗(ロケット団)、倉本剛(ロケット団)、春風亭一之輔 撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

初日のレポートでも紹介したとおり、この会場はNYのジャズバーか高級アパートメントといった雰囲気だ。「ここで落語?!」と違和感を覚えた落語ファンの方もいたかもしれない。その点について一之輔は、「打ち合わせで初めてここに来た時は、度肝を抜かれましたよ。(インテリアの照明を指し)ぼんぼりとかイカ釣り漁船みたいなのがぶらさがっているし。しかも悪い人たちが悪いことを相談しそうな雰囲気の場所じゃないですか? 葉巻をくわえてブランデーをのみながら、『あいつを消せ!』とか(客席もスタッフも大爆笑!)。こんなところで落語をやって大丈夫なのかな?とも思いましたが、こうして高座をこさえますと、瞬く間に寄席の世界の雰囲気が広がります」とコメントした。会場からは自然と拍手が沸いた。

 

“はい、あなた”って言ってくれよ

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

この日は一之輔の末娘の小学校の入学式だったという。マクラでは、新1年生と浮足だった父兄たちを見事にまとめ集合写真を撮りおさめたカメラマンの仕事ぶりにふれ、一之輔はその様子をよどみのない長台詞で再現してみせた。客席からは笑いとともに歓声が上がった。「何でも勉強になる。今はスマホでなんでも調べられるが、昔は人に聞いたりしたもの」という流れで「こんちはぁ!」と八五郎がご隠居さんを訪ねるところから『短命』へ(初日は、同じ入り方で『新聞記事』だった)。

あらすじ
『短命』とは、長生きの反対。伊勢谷の美人おかみに婿入りする旦那が、3人続けて1年もたたずに死んでしまった。それを不思議がる八五郎に、ご隠居さんは「おまんま食ってて前をみると、ふるいつきたくなるようないい女。指と指がふれる。他には誰もいない。短命だろ?」と艶っぽい答えを示してやる。しかし察しの悪い八五郎は、見当違いの推察を繰り返し……。

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

ご隠居さんに「もう(家に)帰ってほしい」と言われても意に介さず「なんでなんで? なんで?」と食い下がる八五郎が、うっとおしくも愛らしい。たびたび脱線する話題に、時には一緒になって悪ノリするご隠居さんもチャーミングだ。終盤の八五郎と奥さんの掛け合いにめいっぱい笑わされて、「“はい、あなた”って言ってくれよ」と語気を強める八五郎の色気にはドキッとさせられ、急にしおらしくなる奥さんにはほっこりした。まさに“大盛り”の30分だった。

 

TVでは観られない、TwitterもNGのぎりぎりネタ

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

野球拳の出囃子で再登場したロケット団は、一之輔と年が近いこともありいっしょにプロレスを観に行ったりする仲なのだそう。ロケット団の2人を危険にさらさないためにも詳細は伏せざるをえないが、自ら「No Twitterでお願いします!」と断りを入れるほど扱い注意の話題を、四字熟語や、某プロレスラー、山形弁、某演歌歌手などのネタに織り交ぜる。千本ノックのように畳み掛ける三浦のボケと、それをすべて拾ってかえす倉本のツッコミは職人技だ。放送コードをたびたび踏み越える、テレビでは観られないネタに会場は大いに盛り上がった。

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

 

プロの居残り・佐平次の物語

あらすじ
佐平次は、友だち4人を連れ立ち「1人1円」の予算を約束して品川の遊郭へ。派手に遊んだ後、佐平次は、実は払えるだけのお金はなく、元々払う気もなかったことを友だちに打ち明ける。心配する4人を明け方、先に家へ帰らせると、清算にくる店の若い衆を嘘と勢いで追い返す。誤魔化せるだけ誤魔化して無一文とバレたら「居残り」として、閉じ込められるはずの布団部屋に自ら進んで身を置く始末。佐平次は太鼓持ちのような振る舞いや気遣いで、花魁や客に気に入られ、指名まで入るようになる。しかしそれでは若い衆が面白くない。店の主は、佐平次を追い出すことになるが……。世話になった主からもお金や着物を平気で巻き上げ、飄々と生き延びていく、プロの居残り・佐平次の物語。

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

母親思いの一面や、佐平次自身の体の具合が良くないなどの事情をうかがい知るクダリはある。当時の感覚からすれば、遊郭の主や若い衆に一杯くわせてやりたいという思いもあったのかもしれない。とはいえ、騒がしい、反省しない、痛い目にもあわない佐平次には、寄席で聞くたびにモヤっとした気分にさせられてきた。

しかし今回、一之輔の『居残り佐平次』で、はじめて佐平次の魅力に触れた。まず顔がいい。友だちに事情を打ち明ける時の困ったような笑顔には、思わず心を開かされる。ずるい顔だ。廓を出た後、若い衆に「よく覚えておけ」と開き直り啖呵を切るシーンは善悪を忘れるかっこよさ。居残りでありながら、客や花魁に可愛がられるのも納得がいく。

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

この席のマクラでは「センター街には美人局が数メートルおきにいそう」という話から、「人をおこわにかける」の言葉の意味を解説。「人をおこわにかけて(だましやがって)」という主に対し、若い衆の「主の頭がごま塩だから」というサゲで締めくくられた。しかし、最後の「ごま塩」を、一之輔はほんのわずかに噛んでしまったのだ。エンディングトークで、一之輔はあえてそれを自白して、またずるい笑顔をしてみせた。

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

 

第2弾は喬太郎、第3弾は三三

平成に入り2度目の落語ブームだという今、都内ではオリジナリティある落語会が次々に立ち上げられている。その中でも、一之輔は『リビング落語』の会場を「少し特別な空間」と表現する。『リビング落語』は、食事とワインを楽しんで、独演会でもホールをいっぱいする噺家の高座を、贅沢な距離感でたっぷり楽しむことができる落語会だ。落語ファンはもちろん、生の落語は初めてという方にも、落語は知らないけれど楽しいことはなんでも好きという方にも、一度足を運んでみてほしい。第2回は柳家喬太郎、第3回は柳家三三が出演する予定だ。

会場で提供される料理 撮影=髙橋定敬

会場で提供される料理 撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

撮影=髙橋定敬

イベント情報
リビング落語『春風亭一之輔ノ世界』春の陣 
※終了
日時:4月3日(月)~4月6日(木)
会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING(渋谷区)
共演:林家二楽、おしどり、コラアゲンはいごうまん、ロケット団

「リビング落語」 第二回 柳家喬太郎 「柳家喬太郎と道玄坂の夜」
日程:4月24日(月)~4月26日(水)
共演:一龍斎貞寿、一龍斎貞橘、神田茜
 
「リビング落語」 第三回 柳家三三 「Salon De 三三」
日程:5月8日(月)~5月11日(木)
共演:柳亭市馬、古今亭菊志ん、尾瀬あきら

公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/theliving/rakugo/index.htm
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