TVアニメ『ピアノの森』メインピアニスト連続インタビューvol.3~ニュウニュウ(パン・ウェイの演奏を担当)
牛牛
NHK総合テレビにて2018年4月8日より放送中のTVアニメ『ピアノの森』が話題を呼んでいる。一色まことの同名漫画作品をアニメ化した本作は、森に捨てられたピアノをおもちゃ代りにして育った主人公の一ノ瀬海が、かつて天才ピアニストと呼ばれた阿字野壮介や、偉大なピアニストの父を持つ雨宮修平などとの出会いの中でピアノの才能を開花させていき、やがてショパン・コンクールで世界に挑む姿を描く、感動のストーリーである。
TVアニメ「ピアノの森」PV ©一色まこと・講談社/ピアノの森アニメパートナーズ
このアニメに登場するクラシックピアノ曲は、世界で活躍する気鋭のピアニストたちが各キャラクターの役を担いつつ実際の演奏に参加している。阿字野壮介の演奏には反田恭平、雨宮修平には髙木竜馬、パン・ウェイにはニュウニュウ、レフ・シマノフスキにはシモン・ネーリング、そしてソフィ・オルメッソンにはジュリエット・ジュルノーと、それぞれのキャラクターの出身国と雰囲気に合せながら、高い実力と人気を兼ねた若手ピアニストたちが"メインピアニスト"として起用されている。
TVアニメ「ピアノの森」ピアニスト紹介VTR ©一色まこと・講談社/ピアノの森アニメパートナーズ
SPICEでは、この"メインピアニスト"たち5人に焦点をあてたインタビューを連続リレー企画として掲載してゆく。その第3弾として登場するのは、中国出身のニュウニュウだ。6歳でデビュー、2007年にわずか10歳で世界的レーベルと契約し、翌年CDデビュー。日本では12歳でサントリーホールにて初リサイタル。現在は20歳を超え、今年5月名門ジュリアード音楽院を卒業した中国の若き天才である彼が、ショパン・コンクールでカイたちとしのぎを削るパン・ウェイのピアノ演奏を担当する。
――音楽一家に生まれ育ったとのことですが、ピアノとの最初の出会いって覚えていらっしゃいますか?
「僕自身はよく覚えていないのですが、両親いわく、3歳のときピアノの椅子によじ登って、楽譜を広げて弾き出したそうなんです。楽譜を読んでいるというよりも、耳で聴いて覚えた音を手で再現していたらしいのですが、簡単な曲とはいえ、トレーニングも受けていないのに最後まで弾いたというのですから、両親は驚いたでしょうね」
――そんなニュウニュウさんにとって、ピアノとはどういう存在ですか?
「自分にとっては親友と言っていい存在です。ピアノって、弾く人によって違う演奏になりますよね。つまり演奏者が投げかける感情を、無理に形を変えることなく、そのまま投げ返してくれる。これほど客観的で、つねに冷静に自分を見てくれる存在はいません。ピアノは生きているかのように私たちに働きかけてくれますし、刺激を与え、想像力を広げてくれます。親友って、そんな存在ではないでしょうか」
――パン・ウェイとして演奏するにあたって、意識したことはありますか?
「このキャラクターは、すごく僕に似ているところがあります。それは、普段は冷静に見えるけれど、言葉ではなく、音楽を通して感情を表現しているところ。それと、音楽で人生が変えられるんだということを体現しているところですね。確固たる意志を持って、自分の旅路をまっすぐに進んでいくパン・ウェイの姿を想像しながら弾きました」
――ショパン・コンクールを舞台としたアニメということで、ショパンの作品がたくさん登場します。ニュウニュウさんにとってショパンとは?
「親しみやすいメロディや、ジャズを彷彿させるようなスケールが出てきたりして、ショパンはクラシック音楽においてはとてもポップな存在だと思います。しかしながら、よくよく聴くと、美しくてセンチメンタルな音楽の中に、きわめて複雑で一言では表せないような人間の感情を内包している。それは我々が日々の生活の中で直視せず、見逃してしまうような感情です」
――最後にご覧になるみなさんへメッセージを。
「僕の演奏と、パン・ウェイに対して皆さんが抱いているイメージとが、違和感なく合ってくれたらいいなと思います。そして音楽が持つ“魔法の力”というものを、この演奏を通して、あるいはこのアニメから聞こえてくる音楽を通して感じ、クラシック音楽に対する愛を抱いていただけたら嬉しいです」
牛牛/ニュウニュウ(パン・ウェイ):
本名、張勝量(Zhang Shengliang)。1997年中国福建省厦門(アモイ)の音楽一家に生まれる。3歳で才能の片鱗を見せ始め、音楽教師の父より手ほどきを受ける。2003年8月、6歳になった直後にデビューコンサートを行う。8歳で上海音楽院に史上最年少で入学。その後ニューイングランド音楽院等を経て、2014年秋、名門NY・ジュリアード音楽院に全奨学金特待生として入学。2007年最年少で国際クラシックレーベルのEMIクラシックス(現ワーナークラシックス)と専属契約を結び、これまで6枚のCDをリリースしている。近年は、プラハの「ドヴォルザーク・フェスティバル」にてチェコフィル(指揮:イルジー・ビエロフラーヴェク)、ワルシャワ国立フィル(指揮:ヤツェク・カスプシク)、上海交響楽団(指揮:ムーハイ・タン)等と共演。2016年8月には1カ月で中国国内16都市を回るリサイタルツアーを実施して、大成功を収めた。日本においては、2009年10月弱冠12歳でサントリーホール(東京)、ザ・シンフォニーホール(大阪)でデビュー。共にホールのリサイタル最年少記録を更新した。翌年には初のリサイタルツアーで大きな成功を収めた。2011年、佐渡裕指揮兵庫芸術文化センター管弦楽団の定期演奏会にてショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第1番」、ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」を演奏し好評を博す。2017年秋ユニバーサル・レコードと専属契約を結び、デッカレーベルより18年6月に 「リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調」などを収録した新アルバムをリリース。国内では6/22よりデジタル配信される。国内盤は12月頃の発売予定。
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