美術館を擬人化してみた~「原美術館」編~【SPICEコラム連載「アートぐらし」】vol.33 とに~(アートテラー)

コラム
アート
2018.5.29

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美術家やアーティスト、ライターなど、様々な視点からアートを切り取っていくSPICEコラム連載「アートぐらし」。毎回、“アートがすこし身近になる”ようなエッセイや豆知識などをお届けしていきます。
今回は、アートを発信する「アートテラー」のとに~さんによる『【美男化プロジェクト】Mr.ミュージアム』第6弾です。


軍艦、刀剣、城、お米……さまざまなモノが擬人化されている昨今。本企画は、日本全国の美術館・ミュージアムを擬人化していく『【美男化プロジェクト】Mr.ミュージアム』です。毎回イケメン男子の姿となったミュージアムたちが、自己紹介をしながらその館の魅力や展示をお伝えします。今回は「原美術館」編です。

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イラスト=yukimone

イラスト=yukimone

やぁ、鑑賞中にゴメンね。今日は僕に会いに来てくれてありがとう☆ キミみたいに美しい人に出逢えて感激だなぁ。名前は、何ていうのかな? きっとキミは名前も美しいんだろうね。

あっ、ゴメンゴメン。レディに名前を尋ねる前に、まずは僕から名乗らないとね。僕は原美術館。来年で開館40年を迎える、現代アート専門の美術館さ☆

原美術館 外観

原美術館 外観

キミは、現代アートは好きかな? 現代アートが好きなら、間違いなく僕の虜になっちゃうよ。なんたって、僕は、草間彌生さんに蜷川実花さん、奈良美智さんら、国内外の人気アーティストの作品を1,000点以上もコレクションしてるからね☆ それに、常に刺激的な現代アート展を開催してるよ。

えっ、現代アートは苦手? ノンノンノン。心配はご無用さ。現代アートに興味がないって人も、もちろんウエルカムだよ☆

僕をきっかけに、現代アートを好きになったって子も多いからね。一般的な現代アートの美術館って、白くて箱型の無機質な空間に作品が展示されてるじゃない? あれはあれで、作品そのものの鑑賞に集中できていいけどさぁ。しばらくすると、肩が凝っちゃうよね。

その点、僕のところは、木の床に温もりがあったり、窓から光が射しこんだり。人ん家にお呼ばれしたみたいな気楽さがあるからね。みんな、くつろいだ気持ちで、現代アートを楽しんでいってくれるのさ。

「現代美術に魅せられて-原俊夫による原美術館コレクション展」後期展示風景 (2018年3月21日[水・祝]-6月3日[日]開催) 撮影:木奥惠三

「現代美術に魅せられて-原俊夫による原美術館コレクション展」後期展示風景 (2018年3月21日[水・祝]-6月3日[日]開催) 撮影:木奥惠三

まぁ、人ん家みたいな展示空間っていうか、ここはそもそも人ん家だったんだけどね。僕の生みの親、原俊夫館長のお祖父さんにあたる実業家・原邦造さんの私邸だったんだよ。今の眼で見ても十分にモダンでオシャレな建物でしょ。

でもね。建てられたのは、なんと1938年なんだ! こう見えて、今年でもう築80年なんだよ。斬新すぎて、きっと当時は周囲から浮いてたかもしれないよね。

そうそう、浮いてたって言えばね、実は僕自身もなんだ。今でこそ、美術ファンのみんなに、現代アートのオシャレな美術館って思ってもらえてるけどね。開館した当時は、日本で現代アート専門の美術館は珍しかったんだ! 「そんなわけのわからない美術館に、お客さんは来ないよ」なんて忠告されたこともあったっけ。

でもね。クラシック音楽もいいけど、やっぱり最近の音楽のほうがしっくりくるでしょ? 名画っていわれる何十年前の映画もいいけど、やっぱり最近の映画のほうがしっくりくるでしょ? アートも同じで、僕らと同時代を生きてるアーティストの作品のほうが、伝わってくるものが多いはずなんだ。

まぁ、たまには、よくわかんないのもあるけどね(笑)

ともかく、開館から一貫して、自分の好きな現代アートにこだわってきたんだ。そういう風に個性を貫き通した結果、今の僕があるし、現代アートが市民権を得たってわけ☆ 今や東京だけでなく、地方にも現代アートの美術館があるけど、あの頃には、こんな時代が来るなんて考えられなかったなぁ……(遠い目)。

あぁ、キミみたいに美しい人が目の前にいるにもかかわらず、自分の世界に入ってしまうだなんて。僕としたことが、申し訳ない。そうだ、お詫びに、この椿をプレゼントしよう☆

なんで、バラじゃなくて、椿なのかって?椿は、現代美術作家の須田悦弘さんが作ってくれた常設作品の重要なモチーフだからね。

須田悦弘 「此レハ飲水ニ非ズ」 2001年

須田悦弘 「此レハ飲水ニ非ズ」  2001年

そうそう、あの2階にある《此レハ飲水ニ非ズ》っていう作品……えっ? 気づかなかった?!

須田さんの作品以外にも、杉本博司さんや森村泰昌さんらが作ってくれた常設作品が、僕のいたる所に設置されてるよ。展示室以外の場所も、くまなく目を配ってみてね。

ふぅ。いっぱい喋ってたら、なんだか喉が渇いちゃったね。「カフェ ダール」に行って、一緒に美味しいケーキを食べないかい?

カフェ ダール

カフェ ダール

ここのケーキは、ただのケーキじゃないんだ。開催中の展覧会の作品をイメージして、毎回シェフが一からアイデアを練って作っているんだよ。

6月16日から始まる展覧会『小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮』に合わせて作られたイメージケーキを一緒に食べながら、今度はゆっくりとキミの話を聞かせてもらえないかな?

えっ、もう帰る時間?

じゃあ、今度は水曜日においで。僕は、水曜日は20時まで開館してるから!

 

……フッ。

やぁ。そこのキミも僕に会いに来てくれたのかい? 嬉しいなぁ。もし良かったら、僕と一緒に「カフェ ダール」で、美味しいケーキを食べようか☆

文=とに〜 イラスト=yukimone 協力=原美術館

イベント情報

小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮
会期:2018年6月16日(土)〜9月2日(日)
場所: 原美術館
原美術館公式サイト:http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html
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