木梨憲武「楽しくてしょうがない」 新作EPリリース、ツアー・配信ライブにみる木梨流最後の思い出作りとは
木梨憲武
昨年「思い出づくり」としてソロアーティストとしての活動をスタートさせた木梨憲武。1stアルバム『木梨ファンク ザ・ベスト』には、AI、久保田利伸、SALU、藤井フミヤ、松本孝弘、星野青果店(星野源)、AKLOら豪華ゲストが参加してオリコン週間デジタルアルバムランキングで1位を獲得した。10月には新作EP『木梨コネクション』の配信リリース、ツアー・配信ライブ『木梨の音楽会。』を控え、「いま、将来の夢を少しずつ叶えようとしてるから、ぐったりしてる場合じゃない」という木梨憲武58歳に、楽しくてしょうがないと公言する"今"を語っていただいた。
――昨年10月、EP『木梨ファンク〜NORI NORI NO-RI〜』でソロアーティストとして本格活動を開始。豪華ゲストを多数招いてのアルバムリリースを経て、10月4日にはEP『木梨コネクション』の配信リリースが決定しています。
木梨:今はね、「MVどうすんだ?」ってところから始まって。2発目3発目と来年にまたぎながらさらに新曲発表していけるように。日々、空いてる時間はスタジオに入ってます。
――ラジオ「土曜朝6時 木梨の会」でも進捗について常に話してますが、配信曲以外にも20曲以上の新曲が出来ているんですよね?
木梨:もうね、終わりなき戦いに行くだけ行ってやろうと思って。“最後の思い出”として動いてます(笑)。自分で詞を書いたり、曲書いたりってことがほぼほぼ無いんで。どういう曲を歌うんだ? どういう曲で踊るんだ? バラードなのかどうすんだ?ってところから考えて、顔色伺ってニコッとしてくれた人に参加していただいて。「いやいや」って人は「またお願いします」ってタイミング見てお願いするとして。タイトル通り、コネクションを使って制作してます。一発目の配信なんかもね、森山直太朗くんがトップアレンジャーの河野くんと「まにまに」っていう曲をびっちり仕上げてくれて。前回もAIちゃんが「歌はこうです」なんて言ってくれたり、AKLOくんがヒップホップを教えてくれたり。プロデューサーがたくさんいるからいつも新鮮だし、1曲ずつ仕上がってくのが面白いし。いまは宇崎竜童さんと阿木燿子さんに曲を3曲もらい、案の定すごい良くて。
――ラジオで提供曲の「不機嫌なモナリザ」聴かせていただきました。
木梨:ああいうドラマみたいな物語のある曲を今どき歌いたいなと思ったら、見事な曲が出来てきたんだけど。「これオレ、歌いこなせるのかな?」の大会が、第4次審査まで行われて。そこで習ったのが「だったらキーを一個上げたら良くなるんじゃないか?」とか「この楽器を足したらいいんじゃないか?」とか、発売するまで色々試すんだと。作品として残るものだから、とことんまで追求してやんないとダメだと。それで出来たものをみんなに聴いてもらうんだってことを、大先輩の宇崎さんと阿木燿子さんに教わりに行った感じで。俺は譜面だコード進行だってものは分からず、聴いた感だけで「いいねぇ」とか「ここどうにかなんない?」とか言うと、みんなが直してくれたり。それを味わうのがいいんだなぁと思ったり、こだわったら一生こだわるんだろうなと思ったりして。
――ノリさんはとんねるずから、長く音楽活動をされてますが。ソロで活動して自分のやりたいことがゼロから形になっていくのは、楽しくてしょうがないんじゃないですか?
木梨:楽しくてしょうがないです。昨日も所ジョージさんの「私は神様を知っている」って名曲があるんだけど、「所さん歌っていい?」って聞いたら「全然いいよ」って言うから、「アレンジ変わんないかなぁ? ギターだけだとどう?」とかって探しながら作ってくのが楽しくて。結局、ロカビリーに仕上げてオケ作って。「所さんの声を入れていい?」って聞いたら「全然いいよ」って言うから、二人の声がジョイントするところを考えたり、またギター一本で弾いてみたり色々試して。所さんに「いつもこんなことやってんでしょ? 楽しそうだね」なんて言われたから、「その通りです」って言って。
――最高ですね。で、そんな話をすぐにラジオで報告して、デモもすぐ聴かせちゃって。
木梨:そう。みんなが言う発売日がどう、宣伝がどうっていうのは、オレには遅すぎて。昨日あったことを今日話して聴いてもらって、そこからどんどん変わっていってもいいから。いまはデモテープも聴いてもらう形式に変わってます。「この辺の人とコラボしそうだよ」っていうのも言うようにしてます、OKなくても(笑)。
――ノリさんがまるで台風の目みたいに周囲を巻き込んで、大きな渦を作って。規制の概念やルールもぶち壊して進んでいく様がすごい痛快です。
木梨:ルールなんてそれぞれだから。「やっちゃダメ」って線を超えると怒られたり、クビになったりするけど。それ以外はその時々でルールを変えていかないとつまんないし、飽きちゃうから。それに付き合ってくれる人じゃなきゃ、俺は付き合わないし。そうじゃなかった場合は数秒で謝って、ダッシュで逃げていきますけど(笑)。
――あはは。そんな中、EP『木梨コネクション』の配信リリースがあって、東名阪を回るツアーも決定しています。
木梨:そうなんです。だから、いまからライブの構成やらを決めて。ライブは何回かやってるから何となく見えるんだけど。配信を初めてやる時に人の曲を歌っちゃいけないとか、マニュアルがあって基本があるから。それでちょっと手こずりながら、内容を決めてくっていうのが始まるところです。国際フォーラムみたいな大きなところでやらせてもらうんだけど、お客さんが半分になっちゃうのかな? それで配信っていう、この時期のライブのやり方もあって。ま、やる方としてはどっちでもいいっちゃいいんですけどね。
――色々と規制がある中ではありますけど、その規制さえも逆手に取って面白いことをしてくれるんじゃないか? と期待してます(笑)。
木梨:配信見てもらう人に向けても作っていかなきゃいけないなっていうのは今んとこありますけどね、仕掛けをね。一曲一曲、なんか仕掛けられないかな?って考えてます。お金はソニーさんが出すから全く問題ないし(笑)。バタバタしてたら出来ないけど、そうやって嬉しく事が進んでいくから、その先の予定も日に日に決まっていったり。曲もず~っと新しいのを作り続けてると思うから、どんどん形にしていこうと思って。全ジャンルに挑戦していこうと思ってるんです。レゲエ、スカ、バラード、パンクからロックからR&Bから、AIちゃんにはゴスペルを頼んでたり。ここからさらにやったことないところへ突入出来そうなんで、面白いなぁと思って。
――『木梨コネクション』の4曲を聴いても、全部違ったジャンルですもんね。
木梨:だから、いま悩んでる最中はどの曲がメインなのか? どの番組でどの曲を歌うのか? がバラバラしてて。全部オレがやってるもんなんだけど、聴いてもらう人は自由だから。そういうアルバムになってもいいかな?って。
――なかなか選びにくいと思いますけど、4曲の中でノリさんの今のお気に入りやライブでみんなの前で歌いたい曲は?
木梨:今度のツアーでは4曲とも歌うと思うけど。この間、朝5時とかに網代の海に車で向かってて。4曲かけた時、どれも良いけど「いま子供たちに問う」は朝5時にうるさいなって(笑)。その時は「サンシャイン ラブ」をMV撮影しながら行ったんだけど、ラッパの音が気持ちよくて。朝、誰も見てないから、調子に乗ってオープンカーにして。爆音で自分の曲聴いて、喜んでました。出来た曲を聴く喜びもあって、一人で幸せでしたけど。
――僕は「ホネまでヨロシク feat.DOBERMAN」が好きで。演奏も歌詞もアドリブもすごく良くて、聴いててすごい元気になります。
木梨:あの曲は大阪のDOBERMANってスカのチームがいて。一枚目の思い出アルバム『木梨ファンク ザ・ベスト』で着てる衣装は彼のとこで作ったんですけど。バンドやってるって、色んな楽曲貰ったりして。「ちゃんとやってるじゃん! じゃ、オレにスカの曲ちょうだいよ」って言ったら、あんないい曲くれて。自分と彼女の昔と今みたいな思い出の曲だったんだけど、「歌詞を変えていい」って言うから2番をいじり始めて、「みんなでどっか行こうよ」って曲になって。あれもどんな歌い方がいいか何回も録り直したんだけど、結局、一発目に戻ったり。後半のアドリブもみんなが「いいんじゃない?」っていうからそのまま残して。よく聴いたらハワイの曲になってました(笑)。でもあの曲がライブで音鳴ってきたらカッコいいな、盛り上がるなっていうのは見える。
――ライブでも早く観たいですが、この状況で家にこもって暗い気分になってる人も、気持ちが明るく晴れ晴れする4曲になりました。
木梨:我々の年代は聴いてくれそうな気がするんだけど、長年やってるミュージシャンでもない58歳のジジイがやってる音楽を聴いて、若者がどういう顔色になるかを見て。「青春ど真ん中のみなさん、どうですか? おじさん、こんなことやってるんだけど」ってところでね、伝わったらいいんだけど。
――若い世代にもきっと伝わると思いますよ。
木梨:だといいんだけど。ラジオ番組でオーディションしたリスナーの青春の曲を俺が歌ってみたり。直ちゃん(森山直太朗)が「ノリさんはレゲエがいいと思う」って俺をイメージして作ってくれた「まにまに」を歌ってみたり。なんかやっぱ、自分じゃ何も動けないのをプロの手によって仕上がってくことの面白さもあったし。それは音楽だけじゃなくて、テレビにしてもなんでもそうだと思ってて。いま、同時に展覧会の準備をやってて、コンサートの合間に富山の展覧会がオープンするから、そこを仕上げてライブしたりするんだけど。富山のガラスを扱うアーティストが10~20人いて。オレがディレクションしたものを見事に形にして、ガラス細工にして作ってくれたから。「いいね! 色はこんな感じで、500本作っといて」ってお願いして。「ちょっと一回やらせて。熱っちぃなぁ、これ! うわ、玉が落ちちゃう」みたいな経験しながら、オレのを作ってもらうっていうのが、音楽を作ってるのと一緒の気がして。この暑い中、1000℃の熱のところで作ってくれる姿を見ると感謝しかないんですが。展覧会の時にそれを並べてね、「どういうレイアウトかな? 光を当てたら上に影行くかな?」とか考えて、みんなで作品を作るっていうのが楽しいですね。一人じゃなんにも出来ないから。
――そんなエピソードをラジオで喋って、また作品を作って、音楽も作って。いまのノリさんの活動って全部地続きで繋がってるし、それが見えるのが面白いです。
木梨:ま、一緒なんですけどね。やってることが少しずつ変わってるけど。いまは自分の気持ちの中で「漫才師になる」っていうのがあって。若い頃から漫才ってやったことなくて、とんねるずでも2人で立って話すみたいなことがなかったんで。「漫才やりたいな」っていうのを叶えてくれたのが、ベテランのハイヒール・リンゴ姉さんで。プロの対応で、何やっても「何してんねん!」「どこ行くねん!」ってやってくれるから。
――最近結成した漫才コンビ・リンゴと梨ですよね(笑)。楽曲リリースがあって、展覧会があってって大忙しなのに、なんでそんな余計なことを思いついちゃうんですか?(笑)
木梨:いま、将来の夢を少しずつ叶えようとしてるから。いま後半戦になったから急がないといけないから、ぐったりしてる場合じゃないの。そしたら、昔からよく知ってる秋元(康)さんが日本テレビの人に話してくれて、「「笑点」で漫才出来るよ」って言ってくれたり、「さっしーと歌ったら?」って曲作ってくれたり。漫才のネタやんなきゃって思ったり、歌番組の振り付けやんなきゃってのもあるんだけど、意外とどっちも似たような動きしてるだけだから、近かったりして。いまは一人で忙しぶってます、頭の中で。でもオレの言ったことをチームがちゃんと覚えててくれて、「あ~、あれやんなきゃいけない! 忘れてた」とかやってくれたりするから助かって。団体活動やチーム戦っていうのは一番好きな世界でもあるので、楽しいです。
――一人で動くようになって、改めて仲間やチームで動く楽しさも感じてると。
木梨:若い頃から直系のコンちゃん(ブラザー・コーン)もね、「「WON'T BE LONG」カバーしていい?」って言ったら、「もちろん!」って言ってくれて。ウォンビーまで歌いますから、オレ。したがって、ライブ盛り上がること間違いナシなんです。
――では、ライブに話を戻すと今回、東名阪でライブが行われますが。各地で違った演出やサプライズもあるかも知れない?
木梨:前の日に入って映像撮ろうかな?とか、配信がないからメニューも色々出来るかな?と思ったり。名古屋、大阪で見えたものを東京の配信に持ってくるとか。東京だったら、誰か暇な人に電話して「来て歌って!」ってお願いしてみて。一緒に歌うんじゃなくて、名曲を歌ってもらったりとか。そうしたらお客さんも喜ぶと思うし、否が応でも盛り上がるようにしたいと思ってます。
――配信だと全国どこでも見てもらえますしね。
木梨:一度、横浜で(藤井)フミヤの配信ライブに出て2曲歌ったんだけど、お客さんいなくて。「みんな見てる?」なんて言いながら、テレビの中継みたいなムードで歌って。「じゃあね」って別れて、いま出てたところを携帯で見ながら「変なの」みたいな新しい感じになってましたけど。そんないまの時代に対応しながら、やれることやって。笑えていいムードが出せるように、考えたり探したり出来たら面白いなと思って。あとは普段は頭の中だけで、全力でリハしないから。本番一発ライブをやると、体ぶっ壊れんだよね。
――頭の中のイメージではそんなこと無かったのに?(笑)
木梨:そうなんです。起きたら背中痛いし、なんだこれ!? って。あんなデカイ声出したことないし、踊るから足もパンパンで。2~3日ぶっ壊れてるんだけど、それが連チャンであるみたいなこと聞くと、怖ぇ怖ぇ! だからゴルフも含めて出来るだけ歩いたり、屈伸背筋腕立てでストレッチじじいを中心としてやって。徐々に作っていこうと思ってるんだけど、「58歳の作り方」って本は出てないでしょ?
――出てないし、まだ58歳を経験したことないから分からないです!
木梨:でしょ? だからぶっ壊れないように自分で調整するしか無くて、上手くいったら「58歳の調整」って本出そうかと思って。アミノ酸かな? ビタミンが足りないのかな? なんて言いながら、トレーナー付けて回ろうと思ってます。嬉しくって、酒ばんばん飲んだ次の日の58歳なんて分からないでしょ? 70歳まではね、矢沢永吉さん、小田和正さんのように動きたいし。その辺のバランスの調整もツアーに向けて、やっていきたいですね。ライブはどうせフザケると思うんで、ぜひ観に来て下さい。
取材・文=フジジュン
「サンシャイン ラブ 〜差し替え ザッキー〜」Music Video (Short ver.)