舞台『呪術廻戦』ゲネプロレポート~「帳を降ろす」可視化される呪術師たちの世界 映像、歌、ダンスで虎杖たちが「生きる」
五条 悟(三浦涼介)
両面宿儺(五十嵐拓人)
「帳を降ろす」可視化される呪術師たちの世界
「帳(とばり)を降ろす」とはこの作品では重要な意味を持つが、舞台でも同様であった。舞台に降りた帳は舞台装置的にも呪術的にも意味を持ち、客席と呪いの世界との隔てとなる。この帳に映像が映され、虎杖や五条らが見る呪術の世界を映し出していた。それは能力がなく呪霊が見えない一般人であるわたしたち観客にもわかりやすいように可視化する役割を担っているのかもしれない。
このように照明や映像技術を駆使することによって、原作の特殊さ、面白さを表現するのは2.5次元舞台の特徴のひとつでもある。映像で呪霊、文字が映し出される様子はまさに漫画やアニメを見ている感覚に近く、2次元と3次元の境界を非常に簡単に飛び越えさせてくれる。
また帳に映し出されるセリフや技は、それ自体が強力な言葉の力を秘めているようにも見えてくる。アニメ、劇場版と数々のメディアミックスをしている本作だが、舞台は舞台で感じ方、捉え方が異なると思う。舞台を観ることで原作ストーリーやキャラクターの理解、考察がさらに深まるのではないだろうか。
製作発表会の会見で「歌が上手いキャストばかり」と演出の小林顕作が言っていたこともあり、作中には歌唱パートが多い。本作は全体的に重悲しいストーリーではあるが、歌唱部分はテンポもよく、歌詞や振付もかわいい、面白い、カッコイイなどそれぞれ曲ごとに特色がある。何度か繰り返されるリズムと音程があり、覚えてしまうくらいだ。
個人的には呪霊組(夏油 傑、真人、漏瑚、花御)の歌が非常にカッコよくて、もう一度見たくなった。ちなみに漏瑚の目は閉じることができるようで、その作りにも驚かされる。
夏油 傑(藤田 玲)
漏瑚(山岸門人)
(左から)吉野順平(福澤希空)、真人(太田基裕)
人間が生む負の感情によって呪いは生み出され、そして人間を死に導く。そんな暗く辛いエピソードも、歌や幕間の笑いによって明暗、緩急のある作品にまとまっている。私たちが日々の生活の中で生まれる複雑な感情も、この舞台が一掃してくれるかもしれない。
(左から)狗巻 棘(定本楓馬)、禪院真希(高月彩良)、パンダ(寺山武志)