山田将司と村松拓──盟友同士の新たなユニット=とまとくらぶ始動 その成り立ちから語る
──今は離れた相手とのデータをやり取りしたコライトとかも当たり前にあって、新たなアプローチとかも生まれる流れがありますけど、それと似たようなことをファミレスで顔を突き合わせてやるっていうのが良いですね。
村松:そうですね。だからよりリアルタイムに、その場でパートナーから出てきた言葉を膨らませても良いわけだし、それに対して「そうでもねえな」とかも言えちゃうっていう。スピード感と進化していく作業は、とまとくらぶならではっていう感じですね。でもこれだけが全てじゃないと思うから、やり方は。
山田:そうだね。「故郷」はこのやり方だったけど。
村松:どちらかがバーンと「ここまで書いたわ」っていう曲をやってみるのも面白いと思うし、将司さんが歌うパートを俺が書いてみたいっていう気持ちもあるし。
山田:決め事は本当にないというか。今2人ともギター持ってるけど、それもどうなるか分からないくらいの感じではあります。
──この「故郷」のサウンドに関しては、最初からこういうイメージだったんですか。
山田:最初はギター2本だけでやっていて、やっぱりリズム欲しいよねっていうことになって。DTMでドラムの打ち込みのパターンを2人で作って、パッドっぽいシンセを入れたりとか。
──ビートと、後ろでうっすら鳴っているのもシンセですか?
村松:シンセですね。
山田:色々混ぜたもんなぁ。クラップと打楽器っぽいのを混ぜてスネアに当てたりとか。2人でやっている感じに合う、邪魔しすぎないでいてくれる音の感じを探すのが結構大変だったよね。温度感というかさ。
村松:この音を絶対使いたいねっていうより、「故郷」の2人の歌とギターを邪魔しないで、世界観をちょっと広げてくれるようなものを選んだ感じです。
山田:曲の「故郷感」もあったのかもね。これだとちょっと都会すぎるなとか、これは肥溜めに足突っ込んでるような音だな、とか(笑)。都会に住んでる俺たちが故郷のことを歌っている、その良い感じの距離感が大事で。
──なるほど。そもそも故郷をテーマにした曲を作ろう、歌おうとなるのには、年齢的なことや世相にも関わってくるのかなとも思うんですね。
山田:大元は、水戸と千葉っていう、お互いの故郷を(ツアーで)回るっていうことで「故郷(仮)」くらいのことになっていて。……それこそ上京して20年くらい経ったりするから、20代とか30代に感じる故郷への想いとは違うし。40くらいになると友達にもそれぞれの生活があったり、亡くなっちゃった友達もいたりとか、そういう今の視点で故郷をどう感じてるかを歌詞にしてみよう、みたいな話をしましたね。
──拓さんとしても、今歌うテーマとしてすっと入ってくるものでした?
村松:そうでしたね。仮タイトルの時点で「歌いたいことあるかも」って直感的に思ったんですけど、それは今だからっていうのは本当にそうで。最近よく思うのは、僕は実家が千葉にあって、いつか千葉に帰るのかな、帰らないのかなって思いながら暮らしてるわけじゃないですか。でも例えば家族ができてここを家にしたら、その先に続いていく自分の子たちにはここが故郷になっていく。
──そうですね。
村松:そういう営みみたいなものって自分たち次第というか。その場所の意味を変えられるし、そこから始まる何かがあるよなって思ったりすると、自分の親たちがもともと地元じゃないのにあそこに住んでたりすることとか、そういう人たちがたくさん集まってニュータウンが出来てとか、そこで育った人がまた東京に出て行ったりとか、そういうことに想いを馳せたりしていて。故郷っていう言葉って、人によって意味が違うというか。自分が今思う視点で故郷について書けたらいいなと思って書きました。
山田:時代的にも、どんどん時間の流れがスピード感を増しているのもあるし、下手したら場所なんか無くてもできることが多くなってきちゃってるから、それこそ拓と顔突き合わせて飲んだり曲作ったりしてるのも同じだけど、人の温度感を感じられる場所──それがたとえ新たな場所であっても、そこで自分が出来上がっていくわけだから。忙しくて上ばっかり見たりっていう気持ちになればなるほど、そういう場所や人を無かったことにしがちだけど、自分を作ってくれたものはやっぱり故郷だから、そこを何度でも見直したいなと。それはより自分を知るためだし、そこから新しい場所へ行くために、全てを見つめ直して認めたい気持ちはありますね。
──シンプルでありながら、年齢や経験を重ねることでそこにどんどん意味が乗ってくるというか。良いタイトル、テーマです。
村松:嬉しいです。僕らの世代だとやっぱりこの言葉に意味合いを感じますよね。
──はい。30だったら多分……
村松:またちょっと違うかもしれない。
山田:30だと、語弊はあるかもしれないけど、上京して夢破れちゃった人が戻る場所が故郷、みたいなのはあったから。
村松:ああ、そう思ってました。ずっと。意地はってやってましたもんね。
山田:ね。
──自分の地元も、過去は新興住宅地だったのが今はみんな出て行っちゃったから閑散としてるんですけど、そういう景色も思い浮かんだりして。
村松:その出て行った人たちも別のところでまた街を作っていくわけですよね。……そう思うとめっちゃ深いですね。
山田:深いね。こんな深い曲だったんだ(笑)。
──話は変わりますが、お二人は地元が隣同士の県じゃないですか。そうなると共通の景色とかも見てたりするのかなって。
山田:えー……マックスコーヒーくらいじゃない?
村松:マッ缶かぁ。
山田:いや、「マッ缶」とは呼ばなかったけど、あの黄色と焦げ茶色の……
村松:そうそうそう。友達はステドリにしてましたよ。
山田:嫌だー!(笑)
村松:あとは「だべ」とかじゃないですか、方言的な。
山田:そうだね。「だべ」は共通してる。
村松:あと、お互いのホームのライブハウスが結構交流あったっていうのもあるかもしれない。
山田:LOOKとLIGHT HOUSEがすげえ仲良いからね。あとは、東京への想いとかもちょっと近いかも。
村松:「チバラキ」とか言いますしね。意外と仲良いかもしれないなぁ。
──最後に、とまとくらぶとしてこの先の展望をお聞かせいただけますか。
村松:音楽的な展望は、トマトを活かした曲をやりたいっていう。
山田:とりあえずカゴメとかデルモンテのタイアップ狙いで曲作っていこうかなって。
村松:(笑)。俺個人としてはちょっと洋楽っぽいメロディを将司さんに歌ってほしい気持ちがあるんで、それにトライしたい。……まあ、できた曲から順番にやっていくくらいの器でありたいですね。
山田:そうだね。普通に良い曲もありながら、遊べる曲もありながら。なんか出来たからちょっとやってみるか!みたいな感じでやれるくらいでいたいですね。……ライブはね、『麦ノ秋』のあそこ(埼玉・東松山のcoedoビール醸造所)で。
村松:あそこのステージを初ワンマンって決めてるんで。
──都内からのアクセスは正直微妙ですけど、ああいうフェスみたいなワンマンにしちゃうのも合いそうだし、面白いですね。
村松:野音くらいのイメージでやりたいですよね。だんだん暗くなってきて照明が効いてきて。それだったらいけそう。
山田:いつにしようかね。
村松:「とまとくらぶ」ってモジったら何になる?
山田:「とお」「とお」で10月10日?
村松:「ま」は何にするか……まあ、10月10日っすかね!
山田:雑!(笑)
村松:ま、そういうのも色々楽しみながらやれるのが“とまくら”の良い所だから。冗談を現実にしていくみたいな。
山田:名前自体がそういう感じだからね。
取材・文=風間大洋 撮影=大橋祐希