山﨑晶吾、「求めてくださっていることへの恩返し」本格始動となる音楽活動への想いを語る
山﨑晶吾
2016年に上演されたミュージカル『テニスの王⼦様』3rdシーズンで「滝萩之介役」としてデビューして以来、数々の作品に出演している山﨑晶吾。舞台活動10周年を迎えた今年は新たな挑戦に取り組んでいる。6月には初の一人芝居『Nobody knows me』を上演。オリジナル楽曲を歌う音楽プロジェクトも4月から始まった。9月には山﨑晶吾 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR2026「Midnight Drift」が大阪と東京で開催、ツアーファイナルとなる9月25日(金)の東京公演の会場はZepp DiverCityとなっている。そんな音楽活動への想い、ツアーへの意気込みを語ってもらった。
――どのような経緯で音楽プロジェクトをスタートさせることになったんですか?
役者としての活動が10周年を迎えたというのもあって、何か新しいことにチャレンジしたいとずっと思っていたんですけど、「やってほしい」と一番求められていたのが音楽だったんです。舞台作品でZeppツアーをした時、応援してくれる人たちがすごく楽しそうだったんですよね。ああいうのがなくなってしまって寂しい想いをさせてしまうのが嫌だったので、自らそういう場を作りたいというのもありました。
――ミュージカル以外では、バースデイイベントで歌うことがありましたよね?
はい。バラードを歌うことが多かったですね。自分的には激しいロック系を歌いたかったんですけど、さすがにバースデイイベントのあの雰囲気で、それはちょっと違うのかなと(笑)。
――(笑)。学生の頃はELLEGARDEN、X JAPANとかを聴いていたそうですね。
はい。聴いているだけで自然とテンションと心拍数を上げてくれるような曲が好きだったんです。
――ライブに行ったりもしていたんですか?
行ったことないんですよ。友だちのライブくらいしか行ったことがなくて。
――音楽フェスとかは?
太陽が苦手で(笑)。暑いとすぐに眠たくなっちゃうんです。
――少年時代に人前で歌うことはありました?
なかったです。そもそも人前に立つのがそんなに好きではなかったので。どちらかといえば少人数の仲間内で遊ぶ方が落ち着くタイプだったんです。
――俳優になったきっかけは?
スカウトされたのが役者の事務所だったんです。そして、初めて受けたオーディションが舞台のオーディションで、たまたま受かったんです。そこから舞台のお仕事が多くなっていきました。
――小さい頃になりたかったのはオムライスですよね?
そうです(笑)。幼稚園の時に絵で描いた将来の夢がそうだったらしくて。「オムライスになる」と。
――残念ながら夢は叶わず。
挫折しちゃいました(笑)。
――擬人化の舞台作品で、いつかそういう役を演じることもあるかもしれないですよ。
オムライス役のビジュアルを想像するとめっちゃ嫌ですけどね(笑)。ちなみに、オムライスの次の夢は漁師でした。オムライスになる夢は挫折して、その次に「漁師になりたい」と親に言ったんですけど、家の周りは山しかなくて、それも挫折しました(笑)。
――(笑)。歌を褒められることは、俳優を始める前からあったんですか?
全然なかったです。舞台のお仕事を始めたばかりの頃は音も全然とれなくて、歌唱指導の先生にじっくりと教えていただきました。その後もいろいろな方々にご指導していただいた中で、「声が良い」「良い楽器(声)を持ってる」とか言われることはありました。一番長くお世話になってる歌唱指導の先生には、「上手くなったねえ」と言っていただけるようになりました。
――歌うのは好きになりました?
なんて言うんですかね? 「歌ってる自分を『好き』と言ってくださる方々がいるのが好き」というような感じです。
――声に惹かれているファンが多いですよね?
そうなんだと思います。僕の声を聴くと眠たくなるらしくて。今、日曜日のお昼の12時に放送している『山﨑晶吾の正午のひととき』というラジオ番組をやっているんですけど、聴いた後に昼寝をする人が多いらしいです(笑)。
――(笑)。歌う経験を重ねる中でわかった「向いている曲調」とかはありました?
男性の平均的なキーだと「気持ちよく歌えないなあ。音がとりづらい」というのがずっとあったんです。「自分にはミュージカルは合ってないのかもしれない」と思ったりもしたんですけど、いろんな作品で歌う機会を重ねる中で「自分に合っているキー」というのがあるのを知りました。どうやら高いキーが歌いやすいみたいです。
山﨑晶吾「Light It Up」【Lyric Video】
――歌いたい曲の方向性みたいなのは、明確になってきていますか?
やりたい音楽に関しては、まだざっくりしたものしかないんです。今後、よりそういうものが出てくるんだと思います。曲についての打ち合わせの時も、ざっくりしたことしかお話できなくて。でも、作っていただいたのがどれもすてきな曲だったんです。配信したら「すごく良いです!」と言っていただけたのが嬉しくて。オリジナル曲のリリースを始めたばかりですけど、楽しい時期を迎えています。
――反応を踏まえながら活動の方向性を少しずつ探っている時期なんですね。
はい。僕は低燃費な人で、のほほんとしてるというか、「何考えてるかわからない」とよく言われます(笑)。でも、そのギャップなのか、ステージ上ではわりと泥くさいタイプの表現が評価されたりするんですよ。ここからどうなっていくのかを自分でも楽しんでいきたいと思っています。
――ミュージカルの歌は演じる役としての表現ですけど、オリジナル曲はそれとは別ですよね?
そうですね。ミュージカルの歌は、心の声を歌に乗せているセリフですから。僕個人としての歌は、それとは別物です。ちゃんと表現できるのか不安もあったんですけど、先日、一人芝居をして自信がつきました。
――打合わせでざっくりしたイメージを伝えて楽曲制作をお願いしたそうですが、どのようなお話をしたんですか?
「生バンドでやりたいです」というくらいでした。
――ざっくりしすぎ(笑)。
あとは「ロックの曲をやりたいです」とか。「よくあれだけの会話でこんなに曲が出来上がってるなあ」って思うんですけど(笑)。
――生バンドでやりたかった理由は?
楽器の音が好きなので、それをダイレクト感じてみたくて。あと、舞台上で1人になるのが嫌だったんです。それが理由です。
――バンドで歌ったことはあるんですか?
2.5次元の役者が何人か出演したイベントで生バンドで歌ったことが1回だけあります。でも、そこまでの曲数ではなかったですし、1人で歌ったわけではなかったので。
――9月のライブで演奏していただくバンドのメンバーとは、もう会いました?
8月に初顔合わせすることになっています。初対面って大事ですよね。どうしたらいいと思います? 小っちゃい声でかっこよく挨拶するのか、大きな声で挨拶をするのか?
――自然体が一番かと。
そうですよね(笑)。
――(笑)。バンドは演劇のカンパニーみたいになっていくと思いますよ。バンドメンバーは、山﨑さんの歌を輝かせるプレイやサウンドを探しながら取り組んでくださると思いますから。
そうなっていただけるように人間力を発揮していかないと(笑)。いろんなみなさんと一緒に作っていくのは好き方だと思います。とはいえ、そんなにみんなでわいわいするタイプでもないんですけど。
――はしゃいで騒ぐことはあるんですか?
仲のいい人たちだけの集まりだったりならば、そういうこともあります。でも、あまり知らない人が一緒だと、静かに見ている側になっちゃいますね。
――ライブはお客さんやバンドメンバーと一緒に作り上げていくものですから、思わぬ自分が出てくる機会になるかもしれないですよ。
そうですね。自分は追い込まれた時にタフなんだなと最近思って。「自分ってこんなにパワー出せんねんや?」って最近気づきました。そういうパワーをセーブせずに出せる場所にしていけたらいいなあと思っています。
山﨑晶吾「Flowin'」【Lyric Video】
―――4月に「Light It Up」、5月に「Flowin’」、6月に「Believe Myself」……曲のリリースが毎月続いていますね。リリース前のものを含むと、現時点で何曲くらい完成しているんですか?
今のところ7曲です。
――毎回、新しい面を見せているという印象です。
「Believe Myself」は、おそらくみなさんがイメージする僕の感じでしょうね。「Light It Up」と「Flowin’」はイメージしていなかった曲調だったのかなと思います。
――「Light It Up」は、とても爽やかなサウンドです。
「僕の内側を表現しました」みたいな曲です。僕って「なんとかなるさ精神」で生きてるんですよ。自分のことを表現した曲を歌ったことが今までになかったので、配信する時、どきどきしました。「お客さんの反応、どうなるんやろう?」って。
――どのような反応を感じました?
すごく評判が良くて。僕のことを知ってくださっているみなさんは「山﨑くんっぽい」と感じたみたいです。
――「なんとかなるさ精神」は、俳優のお仕事を始めてからずっとですか?
はい。今のところそれでやってきました。何回か「今年楽しいと思えなかったら役者をやめよう」と思ったことがあったんですけど、その度に楽しい作品と出会うことができたんです。そういうことの繰り返しですね。
――なんとかなってしまう理由は、何だと思います?
わからないんですよ。運がいいのかもしれない。僕は生まれてからずっと運がいいんです。
――「なんとかなるさ」は、お客さんに伝えたいメッセージでもあるんでしょうか?
僕は押し付けることが好きじゃなくて。なんでも共感しようとすることが多いように感じるんですよね。ただ、なんでもかんでも共感する人にはなってほしくないというのが僕の中にあります。例えば会社の人に何かを言われて「こう思わなきゃいけないんだ」というような落ち込み方をすることがあると思いますけど、「そういう考えも理解はできるけど、私は違う」と思える強さがあってほしいなと。
――ファンのみなさんは、山﨑さんの曲とどのように向き合っていると感じていますか?
YouTubeの動画とか、好きな時に観たり聴いたりできる選択肢がいろいろある中、「仕事行きたくない時に山﨑くんの音楽を聴いてます」とか言っていただけるのが嬉しいんですよ。みなさんの生活の中に自分の音楽があるっていうのは、昔の自分がテンションを上げるためにロックバンドの曲を聴いていたのと同じ。あの感覚をみなさんに渡せているのを感じて、「音楽やってよかったなあ」と思いました。
――「Light It Up」を通勤する時とかに聴いたら、穏やかに気持ちを上向かせられるでしょうね。《思ったよりもbeautiful life》とか、とても心地よい響きです。
僕、「思ったよりもいい人生歩んでます」みたいなことをイベントで言ったことがあって。それがそのまま歌詞になってます。嬉しいですね。自分のために書いてくださった曲、歌詞っていうのは、やはり特別感があります。
――曲と向き合うことで、自分自身への理解が深まったりもしています?
どうなんでしょう? 僕、自分がどういう人間なのかよくわかってなくて。気分屋で、やりたいこともコロコロ変わりますし。この前の一人芝居のタイトルも『Nobody knows me』。「自分のことを本当に知らないんだな」と改めて思いましたし、周りにもそう思われているんだろうなと。
――5月に配信した「Flowin’」も、山﨑さんが表れているように思います。悩みと向き合いつつ、弱い自分を受け入れていく姿を描いていますが、これもある意味「なんとかなるさ精神」ですよね?
そうかもしれないですね。
――悩みが深いと、なかなか「なんとかなるさ」とは思えないかもしれないですけど。
孤独だと感じると、特にそうでしょうね。僕に関しては、応援してくださるみなさんに間違いなく支えられています。本当にありがたいことだと思っています。求められなかったらやっている意味がない仕事ですから。
――この曲、サウンドに関しては80年代ポップスの感じですね。
はい。「好き」って言ってくれる人が多いです。今までに歌ったことがない曲調だったので、歌うのがすごく難しかったですけど。
――音楽プロジェクトは、表現の幅を広げる機会にもなっているみたいですね。今後、ヘドバンをするような激しい曲もあり得るんでしょうか?
あったら嬉しいですね。
――デスボイス、スクリームとかにも挑戦したり?
出し方がわからないですし、そもそも需要もないかもしれない(笑)。
山﨑晶吾「Believe Myself」【Lyric Video】
――(笑)。6月にリリースした「Believe Myself」は、ロックサウンドですね。生バンドのライブで聴いたら気持ちいいと思います。
レコーディングも楽しかったです。「ついにロックがきた!」という反応も頂いています。
――新曲のリリースは、今後も続くんですか?
はい。9月にリリースするEPには配信済みの曲も含めた7曲が収録されます。ツアーのタイトル曲とか。
――「Midnight Drift」というタイトルの曲?
はい。音楽プロジェクトが始まってから間もない頃に頂いた曲で、「いい曲!」ってなりました。レコーディングもすぐにしたので「いつ出るのかな?」と思ってたんですけど、引っ張りに引っ張ってます(笑)。多分、みなさんに気に入っていただけると思います。他には、今までに歌ったことがないタイプが2曲。あと、ロックがもう1曲。「Light It Up」「Flowin’」「Believe Myself」以外の4曲は、そういう感じですね。その内の1曲は、「ライブで最後に一緒に歌ってほしいな」とか思っています。あと、あれはなんて言うんだろう? 田舎の山が見えるような感じの曲?
――穏やかな曲調ということでしょうか?
はい。田舎の山道が見えました(笑)。
――楽しみにしています(笑)。EPのリリース後は、大阪と東京で開催される10周年ライブツアー『Midnight Drift』ですね。どのようなライブになりそうですか?
僕個人としては「殻を破っていきたい」というのが一番にありまして。それは僕だけでなくて、観に来てくださるみなさんも含めて。マナーは守らなきゃいけないものだけど、許容範囲が狭くなってきているような感じが、僕らとお客さんの両方にある気がするんですよね。全員が殻を破って許容範囲を広げたら、息苦しさがなくなっていくだろうし、そういう場所になることを目指したいです。「自分のライブってこういうものだよ」というのをここで確立できたらいいなあと。お客さん同士でちょっと肩とかが触れたりしても気にならないくらい一緒に盛り上がっていただけたら嬉しいです。
――他に何か考えていることは?
見どころに関しては全部な気がします。音楽活動を始めてから最初のライブ、初めてのツアーなので。何事も「初めて」は特別感があるので、全部が見どころです。そういうライブを観てくださるみなさんに逆に「おめでとう!」と言いたいくらい(笑)。あと、僕自身のままだと多分テンション上がらないと思うので、ちょっと1つ、2つテンションを上げていかないといけないなと。でも、学んだことがあるんですよ。「楽しませよう」と思ったら駄目。「自分が楽しまな他人って楽しまれへんのや」っていうのがあるので、頑張って楽しみたいと思っています。「頑張って」はおかしいか?(笑)。
――(笑)。9月19日の大阪公演は梅田Shangri-La。9月25日の東京公演はZepp DiverCityですね。
「どこでライブをしたいですか?」と訊かれた時にZeppしか知らなかったので「Zepp!」って言ったんですけど、まさかの会場をとることができまして、びっくりしました。僕が音楽をやりたいと思ったきっかけも、舞台のお仕事でのZeppツアーだったので、「いつかZeppでやりたいな」というのがあったんですけど、いきなりZeppとは(笑)。求めていただいているからこそできることなので、そういう環境にいられているのが幸せです。ライブは舞台やお芝居とは違いますが、求めてくださっていることへの恩返しをしたいですね。やるからには本格的にやると決めていたので、次回にも繋げていきたいです。
取材・文=田中大
ライブ情報
2026年9月19日(土)梅田Shangri-La(大阪) ※SOLD OUT
1部 開場15:00/開演15:30 2部 開場18:30/開演19:00
スタンディング 7,700円(税込)
開場18:15/開演19:00
指定席9,400円(税込)