内野聖陽、saraら全キャストが解禁 脚本・鈴木アツト×演出・白井晃、舞台『ヨハンナ』上演
鈴木アツト(脚本)
人間の本能的な営み「食」が、大量生産大量消費のために産業化していった20世紀前半。そこに経営者による従業員への搾取の構造を看破し、ブレヒトは「聖ヨハンナ」を書きました。ブレヒトの時代よりも社会システムが複雑化した現代において、「理想論」にどんな意味があるのか?それを問うていく作品になる気がしています。
白井晃さんからは、旧世代と新世代の対立をよりはっきりと打ち出してほしい、というオーダーがあり、内野聖陽さん演じる食肉業界のドンで資本主義の権化モーラーと、saraさん演じる活動家ヨハンナがどうぶつかっていくと面白いのか、頭を悩ませているところです。今、国際社会および地球環境は、劇的に「システム」を変えなければ破滅しかねないところに来ています。しかし、多くの人は極端な正論や徹底的な変革にはついていけません。そのジレンマを描くことがこの作品のポイントですし、演出家を刺激し、挑発するような戯曲に仕上げなければと思っています。
白井晃(演出)
ブレヒトの「聖ヨハンナ」は、100年前に書かれたにもかかわらず、経済格差が広がる現代社会においてますます重要なメッセージを持っています。こうした作品が再び必要とされている時代に、今回の上演があることに大きな意義を感じています。
内野聖陽さんが演じる経営者モーラーは、揺れ動く複雑なキャラクターです。内野さんの特別な存在感と深く繊細な演技力によって、モーラーの内面的葛藤や権力構造を効果的に描いていただけるものと確信しています。また、若手実力派のsaraさんには、彼女の力強さと情熱的な表現によって、社会の矛盾を指摘する現代の弱者の立場を際立たせてくれると期待しています。
さらに、鈴木アツトさんとの出会いは私にとって特別な意味があります。鈴木さんの独自の視点は、現代のジェンダーや世代間にある格差と、正義の根拠の不確かさを浮き彫りにし、ブレヒトの作品に新たな視点を加味します。この共同作業を通じて豊かな表現が生まれ、演劇に新しい力を与えることができることを願っています。
内野聖陽
原作を初めて読んだとき、シンプルな物語のなかに、深く鋭いメッセージを秘めた戯曲だと感じました。鈴木アツトさんがこの作品を現代に向けてどのように生まれ変わらせるのかを心待ちにしつつ、ブレヒトの叙事的演劇の哲理に楽しさを見いだし、モーラーという役を通して、新たに立ち上がる世界を自在に泳ぎ回りたいと決意を新たにしています。
また、演出の白井晃さんの、世の中と真摯に向き合い、生真面目に作品づくりをする稽古場が僕は好きなので、 久しぶりにご一緒できることに喜びを感じています。そしてsaraさんという若い才能をはじめ、大好きな俳優の皆さんと、初めて立つシアタートラムの濃密な空間でものづくりができることに、今から心が躍っています。
作り手の興奮と舞台に生まれる熱が、そのままお客様に届くような作品になることを期待しています。
sara
ブレヒト作品に参加させていただくのは、音楽劇『コーカサスの白墨の輪』に続き、二度目となります。はじめてご一緒させていただく演出の白井晃さん、脚本の鈴木アツトさん、そして内野聖陽さんをはじめとする素晴らしい座組の皆さまとともに、シアタートラムの濃密な空間で、再びブレヒト作品の激動の世界を生きられることがとても嬉しく、身も心も引き締まる思いでおります。信念と現実、相対するものの狭間で、ヨハンナという少女はどう生きるのか。抗う中で、ひとりの人間からどんなエネルギーが生まれるのか。そして、劇場という空間でどんな化学反応が起きるのか。作品の持つ大きな力に身を委ねながら、その旅路を体感していただけるように演じられたらと思います。
公演情報
『ヨハンナ』
【ツアー公演】2027年3月~4月 兵庫、静岡、愛知、ソウル(韓国)
【原作翻訳】酒寄進一(『聖ヨハンナ』奈落への道行き 岩波文庫刊)
【脚本】鈴木アツト
【演出】白井 晃
大鷹明良 粟野史浩 斉藤悠/
朝海ひかる
【衣裳】西原梨恵 【ヘアメイク】佐藤裕子 【演出助手】山下茜 【舞台監督】田中直明
世界の食肉市場を支配する巨大食品企業の経営者モーラーは、競合会社を破綻に追い込み、数万人の労働者を失業へと追いやる。慈善団体「世界善意の会」に所属するヨハンナは、困窮する人々を救おうと現場へ向かうが、祈りやスープだけでは何も変えられない現実に直面する。悲惨を生み出す仕組みを知るためモーラーを訪ねた彼女は、富と貧困、経済と倫理の狭間へ深く踏み込んでいく。やがて労働者たちの連帯に希望を見いだしたヨハンナは、社会を変えるための重大な役目を託される。しかし、その正義は巨大な「システム」に呑み込まれ、利用されていく。その一方で、ヨハンナの言葉に一度は心を揺さぶられたモーラーだったが、果たして彼が選択する道とは――。