『仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐』レポート 「見る」ことの快感を教えてくれるデザインの力

レポート
アート
2017.2.2
『仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐』

『仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐』

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2017年3月18日(土)まで、ギンザ・グラフィック・ギャラリーでは仲條正義の個展が開催中だ。仲條は1956年に東京藝術大学美術学部図案科を卒業後、資生堂宣伝部、株式会社デスカを経て1961年に仲條デザイン事務所を設立。以後、40年以上にわたり資生堂の企業文化誌『花椿』のアートディレクションやデザインを担当するほか、松屋銀座、スパイラル、東京都現代美術館のコーポレート・アイデンティティなどを手がけてきた。

本展では「MOTHER & OTHERS」をテーマにした新作ポスターと、代表作である『花椿』などを展示。一目見てわかる仲條正義ならではのユーモアと、83歳にして果敢に繰り広げられるその独創性は、「見る」ことの楽しみを教えてくれるようだ。

 

新作ポスター22点を展示

会場1階では「MOTHER & OTHERS」をテーマに新作のポスターが22点並んでいる。タイトルを含めてこうしたテーマ名にも、“仲條節”と呼ばれる言葉遣いの面白みがうかがえる。

スイスサイズという大きさで作られたポスター群はそれぞれに様々なモチーフが使われているが、過去作からの引用やどこかに共通のアイコンがあったり、1枚のポスターの枠を超えて仲條のパラレルな世界観が存在している。中には、既存の記号に新たな解釈を加えて生み出されたような図案もあり、思わずハッとする仕掛けを見つけるのも楽しい。

 

過去作や『花椿』も大集合

地下にはこれまでの個展で発表されたポスター作品や、『花椿』が所狭しと並ぶ。富士山、顔、太陽、どくろ……など、どれもがそれと分かりながらも、実に幅広い表情を見せてくれる。これらの作品たちは、多くのものが複製可能であったり、絵文字やスタンプといった抽象的な意思伝達が一般化する現代において、理解や認識の極を意識させるような批評性に富んでいるといえよう。

また仲條がアートディレクションを担当した『花椿』には、1枚のページとして完成された構図や色使いが、今もなおいきいきと存在している。

さらに2階のグラフィック・アーカイブ・ライブラリーで見ることができる、仲條のインタビュー映像も必聴だろう。『花椿』をはじめとするこれまでの仕事にまつわるエピソードや、創作に対する真摯な姿勢が仲條らしい語り口で話されている。

 

 

アヴァンギャルドの中に潜む“知性”

なお、本展に出展された新作を含む作品集『IN & OUT, あるいは飲&嘔吐』も発売される予定だ。こちらもあわせてチェックしてみてほしい。

“仲條正義らしさ”としか形容できないようなアバンギャルドな作品たちだが、これらには一環してデザインとしての知性が筋を通している。だからこそ、力強く私たちの前に立ち上がるのだろう。「見る」ことでスッと情報が伝達されるこの快感には、粋な風情すら漂っている。

イベント情報
仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐

日時:2017年1月13日(金)~3月18日(土)
11:00am~7:00pm ※2月6日(月)は6:00pmまで
日曜・祝日休館/入場料無料
会 場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
〒104-0061 東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
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