BANBANBAN鮫島ヒロミ・山本正剛インタビュー 「偏見が偏見を生むのが嫌なんです」
――大谷さんからやってみなよと、要は山本さんを待ち受けるまでの受け皿として作ったアニソンディスコですが、今年で7年目。
鮫島:そうそう、7年目。
――その間にメンバーも結構入れ替わっているじゃないですか。
鮫島:だいぶ入れ替わりましたね。
――今のメンバーはどうですか?
鮫島:そうですね。みんなそれぞれ…。なんですかね、不満もありますよ、もちろんそれぞれ不満もありますけど、頑張っているなと思うこともいっぱいあります。僕が全員に対して同じ方向を向こうぜというよりは、適材適所にみんなの活躍する場を作るのが今一番良いかなという感じですかね。もうなんか、変に期待しない。みんなに期待しないで。僕から指示を出すだけで、それぞれそこで頑張ってくれたら良いかなって。あとはもう、無理させないというのがありますね。
――ソロのDJ活動も増えていますもんね。
鮫島:そうですね、アニソンディスコとしてしかDJできないのはフットワーク悪いですからね。フットワーク軽くできたほうがいいと思うし。あと絶対周りのDJからバカにされないくらいのある程度の技術というか、そこはできた方がいいなというのを感じて、それは鍛えましたね。一人であちこち武者修行とか行きましたし。それで今、おかげさまであちこち一人で呼ばれることも増えたし、一人でもある程度の盛り上がりはできるようになった。必ず終わったあとは「今日は僕一人でしたけどアニソンディスコではもっといろんな面白い仲間がいて、今日以上に絶対楽しいので来てください」という風に言うようにしていますね。
撮影:大塚正明
――それでやっている中で気持ちの変化とかあったりするんですか?アニソンに対する考え方とか。
鮫島:もともと普通に音楽が好きで、ロックとか好きだからアニソンはちょっと、偏見で見ていたところがあったんです。でも「もってけ!セーラーふく」を聞いた瞬間に「あ、すごいんだな」というのがわかって。アニメのOP90秒という尺で作品のことを伝えて、収めて、曲としても展開がしっかり盛り上がって。お客さんもライブで楽しめるようなギミックもいっぱい入っている。なんか、アニソンって90秒のとんでもないコマーシャルソングだなって気づいたんです。それからは偏見もなく。今はもうアニソンしか聴いていないくらいですからね。アニソンってすごいなって思いますね、やっぱり。
――「もってけ!セーラーふく」は当時結構衝撃的に迎えられましたね。
鮫島:いや、ベースがすごいじゃないですか。黒人が弾いてるの?っていうくらい。
――それでもアニソンディスコって、芸人さんがジャイアンナイトの流れを汲んで始めたものじゃないですか。ダンサーがいて振付があって、というものですが、最初無茶苦茶ネットで叩かれました。
鮫島:めっちゃ叩かれましたね!
山本:すごかったですね。
鮫島:ツイッターでもずっとバトってましたからね。
――あの頃ってやっていてどうだったんですか?固定のお客さんはいらっしゃったじゃないですか。
鮫島:ファンはいたんですけど、叩かれて心は正直辛かったです。でも来てくれるお客さんが喜んで帰ってくれることが全部答えだと思っていたので。絶対間違ったことはやっていない!絶対楽しいことをやっている!という自覚はずっとありました。そんな声には負けないぞっていう。絶対俺ら、楽しいことを間違いなくやっているよっていう気持ちはありましたね。今もありますし。
――主将が戦い続けていることを山本さんはどう思いますか?
山本:いやなんか、こう、二人で行くのは違うなと思って。だって鮫ちゃん叩くとき絶対僕に言うんですよ。「これ、叩いていい?俺行くわ」っつって。絶対言うんですよ。で、僕は「うん、いいよ。いこう」って言うんです。
鮫島:一回山ちゃんが、フリーザの感じで「殺しますよ」とリプを飛ばしたら「予告殺人だ!」みたいになって(笑)。それはそれでまた炎上しちゃって。もうお前何にも言うなって言ったんです。
山本:そうそうそう。これはダメだと思って。
鮫島:殺しますよはまずいよ!って言って。
――まあ多分、叩かれた理由って、鮫島さん自身があんまりアニメを見てないって言っていたからだと思うんですよ。
鮫島:そうなんです、そこなんです。
――でもなんか、偏見がないなと言う気がします。僕らアニメファンって、いい意味で思い入れがあって、悪く言うと作品に対する偏見があると思うんです。このアニメはこうだ!とかこの作品はこうだ!とか。それがないんだなっていうのは感じました。
鮫島:それこそ昔ブログに書いたんですけど。偏見がまた偏見を生んでいるのがいやなんです。オタクをカテゴライズすると、多分昔ってそこに入る人は世間からちょっとずつ偏見を受けていたと思うんです。今でこそ世間の認知も増えましたけど、その人たちがまた違うジャンルのことを穿った目で見ているのは違うんじゃないかと俺は思っていて。ジャンルは違えども、偏見を受けているもの同士で戦っても変じゃない?っていう。
――確かにそう言う所はあるかもしれませんね。
鮫島:もっと共存して、お互いを尊重し合えた方が。偏見を持っている側の人たちに対して勝てるんじゃないの?っていう気持ちはあったんですよね。アニソンディスコをやりながら、アニソンディスコ試練の10番勝負というのをやって、ロックDJイベントに出たり、アイドルイベントに出たり、ラッパーとかとも対バンとかしたんですけど。それも全部、偏見を取っ払いたいというか。アニソンって結構すごくないですか?ということを違うジャンルにもぶつけていきたいという気持ちでやったんです。それを始めてからなんかその、アニクラ界隈からのディスる目が減ったような気がしましたね、あの当時。2013年かな。
撮影:大塚正明
――そういう活動をしている中で、コンビとしての流れはどうだったんですか?
鮫島:まあ、お笑いのライブはで続けていますし。ネタもずっと作り続けているんですけど。でもアニソンディスコがなかったら多分もうやめているなっていうのはありますね。吉本興業の中にいても多分、月2回のお笑いのライブ出て、たまになんかスペシャル版の夏の芸人大集合みたいなライブにたまに呼ばれるくらいのポジションで収まっているんだと思ったんですよ。ある時、僕芸人として疲弊しまくっている不健康な状態だけど、そこに、アニソンディスコという生命維持装置を身体にぶっこんで続けていると思ったんです。BAN BAN BANという漫才師、コント師で行ける時が来ればいいなという気持ちもあったんですけども、ある時期からなんかそれも違うなと思い始めて。この生命維持装置をつけた身体のままで人前に出て。こんなボロボロだけどなんか頑張れていますよという方が面白えなという気持ちになったんです。
――やっぱり意識の変革が。
鮫島:変わりました。
――山本さんも、一度心を病んだフリーザというキャラですが、やっぱりキャッチーじゃないですか。
鮫島:キャッチーですね。
――今それこそテレビも結構。
鮫島:そうなんです。今年入ってから月1本2本は絶対あるんですよね。
山本:ありますね。
――コンビでありがちだと思うんですけど。片方が何かしらで跳ねる時って、どういう気持ちなんですか?
鮫島:う~ん。アニソンディスコを始めた2010年より前だったら多分チクショーって思っていたと思うんですけど。最近は変わって、全然応援したいし。むしろ山ちゃんがいっぱい出て来れた方がアニソンディスコにも恩恵が返ってくるんで。どんどん出ろと。で、僕はちょっとテレビに出ることを諦めているんですよ。オーディションも受かんないし、もういいわ。その代わり俺はアニソンディスコにいるお客さん、それをどんどん広げて、絶対に生き残っていけるはずだって。むしろ、これ続けていればテレビの方から来るぞっていう。そんな気持ちでいるんですよ。もうなんか、あらゆるお笑いの猛者たちとひな壇で戦うのは無理だと思っているんですよ、俺。
――山本さんはどうなんですか?そう言っている鮫島さんに対して。
山本:僕自身もなんですけど、テレビに出ることは、広告としか思っていないです。BAN BAN BANの名前、アニソンディスコが出た時に「あ、テレビでていた人だ」って指さされるような広告としか思っていないんですよ。だから本当に、目先の人気とかより、目先の営業というか。テレビ出て「○○に出演中BAN BAN BAN!」と言って営業が増えればなって思いながら参加しているんですよ。
鮫島:なんかもうテレビに出て、飯食っていくっていう時代でもなくなってきている気がするんですよね。
――そうですね。
鮫島:僕ら以外にも今、吉本の中でどんどん自分でコンテンツを作り始めている芸人さんがいっぱいるんです。真剣にロックのバンドをしている人がいたり。自分でタクシーを営業している芸人がいたり。引越し屋をやっている芸人もいたり。みんな何かしらで番組に呼ばれることが出てきている。番組のひな壇じゃなくて個体として成り立つ芸人になればいいやという気持ちですね。あとは今いるお客さんを大事に。顧客満足度をガンガン上げていくという。イベンター芸人になろうかな思っていますね。
撮影:大塚正明
――これから先、いろんなイベントも、7周年も控えていますけども、アニソンディスコだけじゃなく、BAN BAN BANの未来像をお互いにどう思っているかというのを聞きたいなと思います。
鮫島:多分山ちゃんはこのまま色々番組に呼ばれてくれるのが一番良いと僕は思っていまして。アニソンディスコは最終的に僕が一人でも守れるイベントでないといけないと思っていますし。いつみんながいなくなるかもわからないですから。頼らないようなイベントにしようと思っています。コンビとしては、面白パーティー芸人であっちこっち呼ばれていくのが理想なのかなと。
山本:僕は、あれですね。変な話僕らは子供も、家族もいるので、家族もアニソンディスコだったり、BAN BAN BANだったりで幸せになってくれたら嬉しいなと思いますね。
――では、BAN BAN BANからこれを見ている人にメッセージを。
鮫島: BAN BAN BANは、我々は決してみなさんを裏切ることはないと思っていますので、信じてBAN BAN BAN、アニソンディスコについて来てください。絶対にみなさんを幸せにします。
――じゃあ最後に、お互い相方に一言。いないと思って。
山本:いないと思って!(笑)
鮫島:うわ、恥ずかしい。わあ~。ん~と……まだまだ一緒に頑張りましょう。
山本:えっと……私もですね、ずっと二人三脚でいきますので、これからもよろしくお願いいたします。
インタビュー・文:加東岳史 撮影・大塚正明