エモくて泣けるNOTHING TO DECLAREの新作に迫る 日本人が聴くべき次世代のオルタナティブはここにある

インタビュー
音楽
2018.5.3
NOTHING TO DECLARE

NOTHING TO DECLARE

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Mas(Vo.&G.)、Yoshi(G.)、Masa(B.)、Mutsumi(Dr.)からなるNOTHING TO DECLARE(以下 : NTD)。スクリーモ~ラウドロックを出自とし、根底のエモーショナルさを肝に、ライブ毎、作品毎に進化を遂げてきた4人組だ。そんな彼らから覚悟と決意を込めた、まさに勝負作然としたニューミニアルバム『Are You Where You Are?』が届けられた。前作でグッと距離の縮まった、受け手の腕を更にグイッと掴み、引き寄せ、共に更なる眺めの良い場所へと連れ出さんとばかりに放たれている今回の6曲6種。どれもが、これまで以上の広がりが臨める、ポテンシャルを擁した楽曲ばかりだ。従来の彼ららしさに、スケール観と分かりやすさ、伝わりやすさが備わった今作についてを、ボーカル&ギターでソングライティング担当のMasに、その覚悟と決意を含め色々と問いた。NTDは今作で、更に広い場所へと躍り出し、集う者たちを引き連れ、次なるステージへと駆け上がる!!

Mas(NOTHING TO DECLARE)

Mas(NOTHING TO DECLARE)

━━前作アルバム辺りから、わりと受け手とのコミュニケーションを意識し始め、今作『Are You Where You Are?』では、それが更に確立され、且つ分かりやすく、伝わりやすくなった印象を作品全体から受けました。

その感想は嬉しいです。まさしくその通りなので。当初は、まだお客さんも全然いなかった時期だったこともあり、とりあえず4人で自分たちのやりたいことを、好きな形で音にしていたんです。周囲の環境も変化する中で、様々な場所でライブを演りたくなり、少しキャッチーな方向に向かい出しました。そこから徐々にですがお客さんもついてくるようになり、仲間も増え、中にはバンドを解散したり等、志半ばで去っていく仲間もいたり…それらを見届けてきた中で、背負うものが出てきだしました。

━━その背負うものというのは、例えば、お客さんやヤメていったバンド仲間だったりの意志や想い等?

そうです。自分たちが楽しむだけでなく、それをもっと大きなフィールドで届けるのが僕たちの使命だと自覚し始めたのは。その時の決意の表れとして出したのが、今回のアルバムのリード曲でもあるシングル「All or Nothing」でもあったんです。この曲はいわゆる、「俺たちは0か?100か?のどちらかだ。ならば俺たちは100で行こう!!」との決意も込めた曲でもあって。こうなったら、みんなの想いを背負って、行けるところまで行ってやろうと。

━━その「人の想いを背負う」ですが、それってかなりしんどいことですよね?なぜ、それを自らに課そうと?

不思議とそこにしんどさは無かったんです。むしろ逆に活動のバイタリティになったというか。そこをいいエナジーに変換して今に至れている感じですね。

━━今作はかなり幅も広がりましたよね?ラウドロックやスクリーモの枠では収まり切らないぐらい色々なタイプの楽曲が収まっていて。

曲数は少ないものの、やっていることや表した幅は今まで以上かなと。6曲入りながら振れ幅や楽曲のタイプという意味では色々な種類を収められたし。

━━作品制作中に浮かべる景色も、これまでとは違ってたんじゃないですか。前作がわりとライブハウスでの情景が浮かんでいたものに対して、今作はわりと景色観や情景感に移ってきたようなイメージがあります。

大きなフィールドを想像しながらというのは確かにありました。いわゆる<大きなフィールド=大勢の人に届く>との意味も含め。アレンジや音色の部分でも、より遠くに飛ばせる音、届けられる音を意識しましたから。

━━それに伴いギターソロ等にしても、かなり情景感が増したのでは?

シアトリカルまではいかないですが、1曲の中で常に喜怒哀楽を収めたいタイプの人間なので。これまでは1曲3~4分という限られた時間の中で、どうそれを入れ込めるか?でしたが、今回はそれがより出来た感はあります。以前も曲を長くすれば、それも可能だったんでしょうが、そこはあえて避けてきたので。今回ようやく、その決められた時間内でも納得の行くドラマ性を入れ込めました。

━━歌詞面での変化はいかがでしたか?

情景という面ではむしろ歌詞からの影響の方が強いかもしれません。歌詞を書く上で情景は重要だったんで。「Passing Moments」(M-6.)に関しては、テーマが海沿いと最初から明確にあったし。実はこの曲と「April Fool's」(M-4)は、自分の中では、これまで封印していたコテコテのラブソングだったりするんです。正直、以前まではこのような内容の曲は、このバンドには投影したくなかったですからね。

━━それを今回、なぜ解禁に?

素直になれてきたんでしょう。僕が段々と自然体になれてきて、ようやくここにきて、このバンドで肩ひじ張らずに出来るようになってきて。それに付随してですね。「April Fool's」なんて、かなり以前からあった曲だったし。でも、「このタイミングじゃない」とその当時は思っていました。それでようやく今回、「今なら歌えるかも!!」と入れてみました。

 

例え行き過ぎちゃっても芯さえブレてなきゃいい

━━でも今、Masさんがおっしゃっていた、肩ひじ張らない自然体への流れって、そのままNTDのサウンドの流れにも当てはまるのでは?

確かに言われてみれば。初期はそれこそ自身のジレンマや葛藤を音やサウンドに投影していましたから。そこからお客さんや仲間がついてきてくれることを実感することで、一方通行じゃないと確信してきて。しっかりと音楽を通して、お客さんや聴き手と対話する。そうすることでレスポンスが得られることが身をもって分かりましたからね。

━━だけど芯は変わっていないですよね?キチンと根底のエモさはいつの時代も擁していて。

そこは自分たちの中で譲れないし、ブレちゃいけないと自覚してます。その辺りは常に4人でも話していて。曲作りに関しても音や構成の話よりも、このような「自身の芯」について話すことも多いですから。

━━「おいおい、それじゃ行き過ぎじゃない?」って?

いや、例え行き過ぎちゃっても芯さえブレてなきゃいいんです。逆にそこさえブレずにシッカリと表せていれば、表層では色々なタイプの曲を演ってもいいと思うし、逆に何をやってもOKになってくるんです。それが最近はより出来るようなってきた実感はあります。僕らの場合、一つの音楽性やスタイルを求道的に追い求めるタイプよりかは、広くありながらも芯はキチンと保っている、そんなバンドなので。それは今回の6曲を作って更に強く確信しましたね。

━━ここからは『Are You Where You Are?』の核心に触れていきたいんですが。今作からは凄く決意や勝負感をかんじました。

確かにそれはありました。自分たちは常に進化はしているつもりだし、これからもしていくつもりなんです。それもあって1曲目に「Are You Where You Are?」を持ってきたんです。頭にこの曲を持ってくることで、今までのファンには、「新しくなったよ、どうぞ」と自分たちの新しい部分を魅せられるし、これから出会う人たちには、分かりやすく自分たちを伝えられますからね。

━━でも、この曲調が一発目を飾ることで、ややをもすると“えっ!?”と、訝しがられる危険もあったのでは?

その懸念は全く無かったですね。ただこの曲はイントロが長いので、ラジオでかけてくれるのかな?ぐらいの心配はあったけど(笑)。

━━(笑)。勇気があります。試聴機で初聴きのお客さんにも同じことが言えますよね?

まっ、中には歌に入るまでが長いと感じる方もいるかもしれません。だけど、そこは恐れずに自分の好きなようにやってみました。

━━従来とはアプローチや方法論の違いはあれど、この曲は実にNTDらしさが凝縮されていると感じました。

ポイントはそこなんです。イントロ自体は長かったりするんですが、自分たちのやり方がよりシンプルになっているのが今回の6曲かなと思います。それぞれ歌詞も多くなく、よりギュッと凝縮されてるし。1番、2番のワードにしても、ポイントポイントを替えている程度に収めてますから。加えて、僕らの今の持ち味とも言える1番、2番が終わっての全員でのシンガロングとか。その辺りが僕らならではなんです。

━━その辺りの正解への道筋は?

気づいたら自然となってました。ライブでも溜めて溜めて最後に全員でボンというのが定番になってますから。そこが4人の意識が一つになる瞬間でもあるし。ここも自分たちの一つの芯なんです。

━━分かります。NTDの魅力の一つに、サビでのカタルシスがありますもんね。

サビはそれこそシンプルにそこにエネルギーを集約させようと。なので凄くシンプルだし、分かりやすいし、一緒に声を乗せたり、合わせられたり出来るようにしています。サビはよりお客さんと手をつなげられる箇所ですからね。その辺り、曲作りの際は慎重に作ってます。

━━そこにくると急に視界が開けたり、解放感を得れます。

その辺りは意識的だったりします。サビは開けて気持ち良くは自分の中で心掛けているんで。

 

先に進むから、ついてこれるヤツはついて来いよ

NOTHING TO DECLARE

NOTHING TO DECLARE

━━今回もみなさんの特徴でもある黒と白が基調なのは変化ないですが、これまでの白か黒かのどちらかに対して、合わさったグレーな部分や徐々に色が移っていくグラデーションさも今作からは新たに感じました。

その辺りは自信を持って歌詞を書け出したのが大きくて。いわゆる迷わず書けるようになってきたと言うか。僕自身が「みんなを引っ張っていく」といった意識になってきてますからね、最近は。

━━その引っ張っていく感は今作から非常に強く感じます。

引っ張っていく感は重要です。以前シングルで発表した「We Stand Alone」(2015年3月発売)では、「We」とあるようにお客さんと横並びで一緒に行こうだったものが、『Louder Than Words』 (2016年9月発売の2ndフルアルバム)以降から、「大丈夫だから」と鼓舞したり、励ましたりできるようになりましたからね。リスナーに伝えられる自信も出てきて。「ついてきてくれれば間違いないから!!」って。それがある意味ふっきれて、引っ張る感じの表れに繋がっていったんです。

━━おっしゃる通り今作はこれまでの「一緒に行こうゼ!!」とは違って響くんですよね。いわゆる、「ついてこいよ!!」だったり、「行くぞ!!」って感じがする。

「とりあえず、うちらは先に進むから、ついてこれるヤツはついて来いよ!!」って。

━━ある意味、バンドとして自信がついたんでしょう。それがないと「ついてこい!!」なんて言えない。ミスリードが怖いですから。

だけど、それがバンドマンのかっこいい部分でしょう。根拠のない自信って凄く大事ですから。それがありすぎると単なるエゴになっちゃうけど(笑)、自分たちで決めた以上、それを貫くのは、持つべき姿勢なので。そこはもう例え間違ってたとしても、「自分は行くよ!!」と大きく宣言しちゃってます。

━━それもリスナーやオーディエンスがキチンとついてきてくれるとの自信がないと、なかなか踏み切れない。

根拠の無い自信だけはありますから(笑)。そういった意味では自分たちの音楽を信じてるんです、僕ら。これからは人の背中を押せるし、人に共感を持ってもらえる、それをもってして引っ張っていきたいですね。

━━反面、作品は凄く丁寧で繊細な部分までキチンと表されているのも今作の特徴かなと。いわゆるライブバンドの出す、ライブが想起されるアルバムとは一線を画した、もう少し構築感のある作品印象を受けました。

今回は一つの作品として、音色や音作り、レコーディングをしましたからね。音色にしてもこれまであまり使わなかった空間系のエフェクターをかなり使ったり、若干抽象性を取り入れましたから。より雰囲気にもこだわりました。

━━それも手伝い、より世界観が伝わりやすいものになってます。

その辺りは、以前よりも叫ばなくなったのも関係しているかも。今やあまり叫ぶ必要もなくなりました。叫んでいる曲では今まで以上に叫んじゃってますが(笑)。でも、それ故のコントラストも出せたかなとおもいます。あとは色々なことをやってきたし、やっているバンドなので、こういった色々な楽曲が収まっているミニアルバムというフォーマットがマッチしたし、しっくりきたんです。自由に6曲6種、入れ込みながらもミニアルバムならではのバラエティさとまとまりの両立が出来ましたから。

━━今作を機に、これまでよりも層が広がるポテンシャルを多分に感じます。

僕たちもその辺りを目指し作りました。やはり自分たちでも新しいところへ行きたいし、みんなの想いを背負って進み続けていくとの決心をしての作品でもありました。それらも含めて、より大きなところや多くの人に届けるのが僕たちの責任でもあるので。今までの人たちとギュッと手を握ったまま、更に色々な方を巻き込んでいきたいです。

 

自分たちが見たい景色に向かうために現在の自分たちを越えていく

━━今作のタイトルは『Are You Where You Are?』ですが、これに込めた想いを教えて下さい。

訳すと「(今の)自分は(かつての)自分が思い描いていた場所に居るのか?」なんですが、自分たちが自分たちの行くべきところへ行くためテーマでもあります。でもこれって、みなさんが今の自分に問いかけてみると面白いんです。自分たちも今回、覚悟を決めた時に、一度自身を振り返ってみて、自分たちがやりたいと思っていたことが出来ているんだろか?と問いかけてみたんです。

━━実際、今作でその理想の地まで行き着くことが出来ましたか?

かなり近くはなりましたが、まだまだ向かっている最中です。今回のジャケットにも表しているんですが、この青い線というのが今の自分達の目指すところで。それを僕たちは階段をのぼりながら越えようとしているんです。その想いをデザイナーの栗原さん(栗原高明=LACCO TOWERのインディーズ時代から現在までの一連の作品のアートワーク等を手掛けてきたデザイナー)に表現してもらいました。まさにジャケットが今の僕らだと思ってます。

━━確かに非常に上手く、これまでとこれからが表れています。

自分たちが見たい景色に向かうために現在の自分たちを越えていくというか。

━━この階段の向こうにどんな景色が待っているのかといったワクワク感と、いい景色が待っていそうな予感、それを一段一段昇っているみなさんと。まさに現在のみなさんの状況が一目瞭然なジャケットです。

自分たちは、これまでわりとモノトーンできたんですが、今回、一色入れてみました。「自分たちにも色づけをしていく」との意味も込めて。この色が段々と増え、終いにはカラフルになっている。それが今後の目標でもあるんです。

━━最後に今後のNOTHING TO DECLAREのビジョンを訊かせて下さい。

5月20日から全国ツアーがあります。そこではこの新曲たちを持っていくので、是非遊びに来てもらいたいのと、先程からお伝えしているように、今作は一つの覚悟を決めて出した作品だったりもするので、この後も勢いは止めず、もっともっと色々なことに挑戦しつつ、更に大きな舞台を目指して行きたいです。みなさんを楽しませながら、自分たちも楽しんで、みなさんとどんどん輪を広げたり、高みに昇って行きたいです。今後も攻めて行きますので、みなさんついてきて下さい。


取材・文=池田“スカオ”和宏  撮影=菊池貴裕

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