奈緒・風間俊介ら出演で『恭しき娼婦』(作:J.P.サルトル/演出:栗山民也)を上演

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2022.2.28


ジャン=ポール・サルトルの『恭しき娼婦』が、2022年6月4日(土)より19日(日)まで紀伊國屋ホールで上演される(その後、兵庫・愛知を巡演)。岩切正一郎の翻訳で、演出は栗山民也、出演は奈緒風間俊介ほか。

『恭しき娼婦』(原題:La putain respectueuse)は、ジャン=ポール・サルトル(1905年~1980年)が1946年に発表した戯曲(パリのアントワーヌ・シモーネ・ベリアウ劇場で初演)。フランスが生んだ20世紀最大の思想家の一人・サルトルは、実存主義を牽引した哲学者として世界に大きな影響を与えただけでなく、小説や映画脚本の執筆にも取り組み、劇作家としても数々の戯曲を世に残した。中でも、アメリカの人種差別が招いた冤罪を描く本作『恭しき娼婦』は、非情な世界における人間の“権利”、“尊厳”、そして“自由”といった、いつの世も人類が向き合う問題に正面から取り組み、最も完成度が高いと評されてきた。

今回そんな戯曲に立ち向かうのは、本作の上演をかねてから熱望していたという栗山民也。常に冷静かつ、研ぎ澄まされたまなざしと並外れた手腕で、その時代の世相を作品に反映させてきた演出家だ。

舞台はアメリカ南部。冤罪を被せられて逃走する黒人青年をかくまう娼婦リズィー。だが、その街の権力者の息子であるフレッドはリズィーに虚偽の証言をさせようと、その黒人青年と由緒ある家系の白人の男どちらを救うか選べと迫る。街全体で黒人が犯人と決めつける状況の中で、リズィーが下した決断は……。

物語を大きく動かす重要な決断を迫られることとなる娼婦のリズィーを演じるのは、映画・ドラマ・CMで活躍中の若手実力派女優・奈緒。2018年のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」でヒロインの親友役を愛嬌たっぷりに好演し注目を集めたかと思えば、翌年放送されたドラマ「あなたの番です」(NTV)では一転して主人公に執着する狂気じみた隣人を熱演、その演技力の高さを世に知らしめた。

一方、街の権力者の息子でリズィーに虚偽の証言を迫る白人のフレッドを演じるのは、ジャニーズ事務所きっての演技派俳優として確かな実績を積み上げてきた風間俊介。「3年B組金八先生」(99・TBS)で二面性を持つ人物を演じて話題を集めると、以降もどこか闇をもった個性的な役柄を見事に演じ上げ地位を確立。近年は「監察医 朝顔」(19-20・CX)での主人公の夫役など、爽やかな好青年を演じることも増加し、豊かな表現力で人々を魅了し続けている。

この実力派二人が、18年放送のドラマ「サバイバル・ウェディング」(NTV)以来となる共演で、人間の深層心理を炙り出す意欲作に挑む。さらに、冤罪を被せられ逃走している黒人役に野坂弘、ジョン役などに椎名一浩、ジェイムズ役などに小谷俊輔、フレッドの父で街の権力者である上院議員役に金子由之と、演技力に定評のあるキャストが集結する。栗山と、卓越した演技力をもつキャスト陣で創り上げる舞台に期待したい。

栗山、奈緒、風間から届いたコメントを以下に紹介する。

 

■栗山民也(演出)

サルトルのとても短かな、とても感情的な劇

学生の頃から、サルトルのこの劇のことは気になっていた。あの当時は、ヌーヴェル・ヴァーグと呼ばれたゴダールやトリュフォーなどの革新的な運動に理屈なく嵌っていたから、サルトルやカミュは、その思想的先駆者だった。そのサルトルが観念ではなく、アメリカの地を自分の足で歩いて描いたレイシズムを扱った劇「恭しき娼婦」は、他の作品とは確かに違っていた。妙に生々しく感情が裸だ。テーマは勿論、人種差別だけではないが、アメリカという資本主義国家のこれからの行方を、全身でしっかりと受け止めようとしていたかのようだ。

「8分46秒」とは、米ミネソタ州で、あのジョージ・フロイドが白人警察官に膝で首を押さえつけられていた時間だ。「今」もあり、「昔」から何も変わらず、どこにでもある人間の差別。この劇のレイシズムは、現代の人種問題だけではなく、人間のすべてに対する「差別とは何か」を照射するかのようだ。静かに当たり前のように世界の底を重く流れ続ける疎外。

ずっと気になっていた劇だった。稽古が始まり、一つひとつの言葉がどんな響きで相手役と絡み合うのか、その瞬間に出会うことに今から心躍る。

【プロフィール】栗山民也(くりやま・たみや):東京都出身。早稲田大学文学部を卒業後、小沢昭一氏に師事。その後は木村光一氏の演出助手を経てフリーの演出家となる。ストレートプレイからミュージカルやオペラまで幅広く活躍し、2000年から7年間、新国立劇場演劇部門の芸術監督を務める。芸術選奨文部科学大臣賞、紀伊國屋演劇賞、朝日舞台芸術賞、読売演劇大賞最優秀演出家賞、毎日芸術賞千田是也賞、他、数多くの演劇賞を受賞。13年には紫綬褒章を受章。最近の主な舞台演出作に、『ザ・ドクター』『彼女を笑う人がいても』『スリル・ミー』(21)、『フェードル』『Op.110ベートーヴェン「不滅の恋人」への手紙』『ゲルニカ』『デスノート THE MUSICAL』(20)、『月の獣』『組曲虐殺』『カリギュラ』『人形の家 Part2』(19)など。

 

■奈緒(娼婦リズィー役)

出演のお話をいただき、自分にとっても本当に大きな挑戦になるなと思いました。自分にはまだ早いのではないか、という気持ちもあったのですが、栗山さんともいつかはご一緒させて頂きたいと思っていましたし、決まったからには一生懸命お稽古を重ねて、成長できるようにがんばりたいと思います。

この作品は、登場人物がそれぞれの決断をしていく中で、正義とは、人が持つ権利とは、ということを考えさせられますし、自分の信念や曲げたくないものを貫いて生きていくことの難しさを感じることになると思います。ただ、そこには絶対に希望が残ってほしいと感じましたし、現代の状況に置き換えて、これからも皆で手を取り合って戦っていこうという強い気持ちを伝えられる舞台にもなっていると思います。ぜひ劇場でご覧ください。お待ちしています。

【プロフィール】奈緒(なお):1995年2月10日生まれ、福岡県出身。2013年ドラマ『めんたいぴりり』(TNC)で女優デビュー。20歳で上京し、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』(18)で注目を集めた。19年には『のの湯』(BS12)で連続ドラマ初主演を務め、さらに『あなたの番です』(NTV)での演技が大きな話題となり、第102回ザテレビジョン ドラマアカデミー賞 助演女優賞を受賞。同年、『終わりのない』で舞台に初出演し、『ハルカの陶』で映画初主演を務めた。『君は永遠にそいつらより若い』『草の響き』『マイ・ダディ』での演技が評価され、第43回ヨコハマ映画祭 最優秀新人賞を受賞。また「sunao」名義でカメラマンとしても活動している。近年の主な出演作に【舞台】『DOORS』(21)、『今が、オールタイムベスト』(20)、【ドラマ】『雪国-SNOW COUNTRY-』(NHK・今春放送予定)、『にんげんこわい』(22・WOWOW)、『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(21・NTV)、【映画】『余命10年』(3/4公開予定)、『あなたの番です 劇場版』『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『彼女未来』『劇場版 シグナル 長期未解決事件捜査班』(21)などがある。

 

■風間俊介(フレッド役)

不条理なことが多い今の世の中で、こういった楽しいだけではない色々な困難に立ち向かう物語を、栗山さん、奈緒さんはじめ、このメンバーと一緒に創れることを嬉しく思います。栗山さんの作品は以前から拝見していますが、毎回、根幹、真理のようなものが炙り出されていくような、楽しかっただけで終わらない、帰り道に自問自答するような作品だなと思っていました。今回も、過去の時代を振り返りながら今の時代を見て、これからの未来を考えるような作品を創っていけるだろうと楽しみにしています。演劇を上演することも、観に行くことも、難しいと感じるこの世の中で、それでもこの作品に興味を持ち、観たいと思ってくださり、足を運んでいただけることに感謝して、良い作品をお届けすることを胸を張って約束したいと思います。ぜひ劇場にお越しください。

【プロフィール】風間俊介(かざま・しゅんすけ):1983年6月17日生まれ、東京都出身。1998年にドラマ初出演を果たすと、翌年には『3年B組金八先生』(TBS)で第3回日刊スポーツ ドラマグランプリ 最優秀新人賞を受賞。さらに2011年には『それでも生きてゆく』(CX)で第66回日本放送映画藝術大賞 優秀助演男優賞、第70回ザテレビジョン ドラマアカデミー賞 助演男優賞を受賞。俳優としての活動に加えて近年は、朝の情報番組『ZIP!』(NTV)の曜日パーソナリティや、連続ドキュメンタリー『RIDE ON TIME』(CX)のナレーション、バラエティー番組『林修のニッポンドリル』『VS魂』(CX)のレギュラーメンバーを務めるなど、これまでとは違ったフィールドでも頭角を現している。近年の主な出演作に【舞台】『「忘れえぬ 忘れえぬ」、「初恋」と「不倫」』『パークビューライフ』(21)、『最貧前線』(19)、【ドラマ】『カムカムエヴリバディ』(21・NHK)、『いりびと-異邦人-』(21・WOWOW)、『おしい刑事』シリーズ(19・21・NHK BS)、『記憶捜査~新宿東署事件ファイル~』シリーズ(19・20・TX)、『頭取 野崎修平』(20・WOWOW)、『麒麟がくる』(20・NHK)、【映画】『鳩の撃退法』(21)などがある。

 

公演情報

『恭しき娼婦』 
 
■作:ジャン=ポール・サルトル
■翻訳:岩切正一郎
■演出:栗山民也

 
■出演:
奈緒 風間俊介
野坂弘 椎名一浩 小谷俊輔 金子由之

 
■企画・制作:TBS/サンライズプロモーション東京
■発売日:2022年4月23日(土)AM10:00
■公式HP:https://www.tbs.co.jp/uyauyashiki_shofu/
■公式Twitter: @uyauyashiki

 
【東京公演】
■日程:2022年6月4日(土)~6月19日(日) (全20公演)
■会場:紀伊國屋ホール
■料金:全席指定9,500円(税込)※未就学児入場不可
■問合せ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
■主催:TBS/サンライズプロモーション東京

 
【兵庫公演】
■日時:2022年6月25日(土)12:00/17:00、26日(日)13:00 (全3公演)
■会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■料金:A席8,500円 B席5,500円(全席指定・税込)※未就学児入場不可
■問合せ:芸術文化センターオフィス 0798-68-0255(10:00~17:00 月曜休/祝日の場合翌日)
■主催:兵庫県/兵庫県立芸術文化センター

 
【愛知公演】
■日時:2022年6月30日(水)13:00/18:00 (全2公演)
■会場:日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
■料金:全席指定9,500円 車いす席9,500円(税込)※未就学児入場不可
※車いす席はメ~チケ(電話のみ)にて一般発売より取り扱い
■問合せ:メ~テレ事業 052-331-9966(祝日を除く月-金10:00~18:00)
■主催:メ~テレ、メ~テレ事業
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