《連載》もっと文楽!〜文楽技芸員インタビュー〜 Vol.3 鶴澤燕三(文楽三味線)
「技芸員への3つの質問」
【その1】入門したての頃の忘れられないエピソード
師匠の仕事で、女の黒髪を題材にした『黒髪』(栗崎碧監督)という短編映画の場面の一つとして、太夫1人と三味線3人、あとお七の人形で八百屋お七が黒髪振り乱して走るというのをやりに、太秦映画村のスタジオまで師匠の三味線を持って行った時のことです。今はだいたい長いままの三味線を持ち歩きますが、当時は外を出歩く時は必ず小さく折って収納していたんです。その師匠の三味線を現場で接ごうと思ったら根緒(三味線の弦と胴をつなぐ組紐)のかけ方が悪くて弦がビヨーンとなってしまって。共演する今の(鶴澤)清友兄さんが『何やってんだ、貸せ! 自分のやり』と半笑いで怒りながらやってくれて。研修生から上がって初めての、本公演以外の現場だったので、私自身がテンパっていて。非常に情けなくてバカバカしい失敗で、忘れられない初年度の出来事です。清友兄さんには感謝しています。
【その2】初代国立劇場の思い出と、二代目の劇場に期待・妄想すること
今の劇場では、小劇場の舞台の音響ですね。床で演奏した時の音はピカイチなので、新しい劇場でも必ず再現されることを願っています。
あとはとにかく文楽を見捨てないでください、と、それに尽きますよね。建て替えまでの6年間、他劇場をなんとか都合してやっていただけるということなんですけど、その間にジリ貧になってもう東京での公演はやらない、などということになったら困ります。新しい建物に関しては、私が口出しできることではありませんが、文楽にとって使い易い劇場であることを希望します。
【その3】オフの過ごし方
あまりこだわっていないですね。どこかに遊びに行くとか泊りがけで旅行するとか、そういうこともほとんどありません。車の中で聴くのはロック。ツェッペリン、ビートルズ、クイーン、ブルース・スプリングスティーンも聴くしイーグルスも聴くし、トム・ウェイツも聴きます。中学・高校時代からの延長で、家にあるレコードやCDからiPodに落としているので、今時のバンドは全然知らないんですよ。
取材・文=高橋彩子(演劇・舞踊ライター)
公演情報
『2月文楽公演 近松名作集』
会場:国立劇場 小劇場
心中天網島
天満紙屋内の段
大和屋の段
道行名残の橋づくし
国性爺合戦
楼門の段
甘輝館の段
紅流しより獅子が城の段
徳庵堤の段
河内屋内の段
豊島屋油店の段
※休憩あり
1等席 7,000円(学生4,900円)
2等席 6,000円(学生4,200円)
※車椅子用スペースがございます。
https://ticket.ntj.jac.go.jp/